「落ち着きましたか?」
「はい。それよりメイコさんは大丈夫なんですか?」
ここは緊急治療車両。
メイコさんはここのベッドで治療を受けている。
「安心してくださいブール殿。此所のスタッフは優秀です。奇跡的な手術を何度も行っています。」
「でも……。」
「それに、メイコ殿もポケモンです。そう簡単には…やられませんよ。」
言葉を選んでくれたのが分かる。
ギギギアルの『かみなり』の暴発。その高圧な電気はメイコさんを打ち据えた。
メイコさんの体はペラップ。電気タイプの技は弱点だ。一撃で戦闘不能になってもおかしくはない。ポケモンである以上、仕方の無いことだ。
問題は、倒れた姿が余りにも
普通ポケモンが戦闘不能になっても、息をしたり心臓が動いていたりその他もろもろの理由で動いている。
触れれば体温を感じ、鼓動が聞こえ、呼吸を確認できる。
メイコさんは、ピクリともしていなかった。
「そうですね…。」
「何にせよ、駅に着くまで私達に出来ることは此所で回復を待つ事だけです。」
「そうですね…。」
取り乱していた。
まさかメイコさんが倒れるとは思ってなかった。メイコさんは最強。メイコさんならあのミュウツーでさえ倒せると信じて疑わなかった。メイコさんが他のポケモンに倒される姿が想像出来なかった。何時でもどんなときでもあの悪口と軽口を聴けると思ってた。落ち込んでも強引に前を向かせてくれると信じていた。
それが、暴発していたとはいえ、『かみなり』一発で死にかけるなんて……信じられなかった。
「…ノボリさん。」
「何でしょうか?」
「さっきは取り乱してすみませんでした。」
「何をおっしゃりますか。あれで取り乱さないポケモントレーナーなんて居ませんよ。」
そうだろうか。
いや、そうなんだろう。これを疑ってはいけない。それは、全てのポケモントレーナーに対する侮蔑だ。
「……何度体験しても、やはり、この様な待ち時間は辛いものですね。」
「え?それって…。」
「私達双子が小さかった頃、何度かクダリが死にかけたんですよ。」
ノボリさんが話始める。その内容の重さに驚く。
「クダリはあの通り無邪気で元気で、何時でも笑顔です。幼い頃もそうでした。その性格が気に入られるのか、よくポケモンと遊んでいました。それは良いのですが、シャンデラと遊ぶ度に冥界に行きかけるんですよ。」
なんとも言えない。何と言うことも出来ない。
「フフフ。まあ、最近はその様な事は無くなりましたけど。」
何て言えば良いのか。俺には分からない。
だから、
「いや…はい。良かったですね。」
この程度の言葉しか出てこない。
「ああ、いや、気を使わせてしまいましたか。そんなつもりは無かったのですが。まだまだですね。」
「ノボリさんは十分立派なサブウェイマスターですよ。」
「そうですかね。未だに自信が有りません。……おや、駅に着いたみたいですね。」
電車を降りて急いでポケモンセンターへ。
医者に手渡されたメイコさんはまだ目を開けてなかったが、息を吹き返していた。
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おお、メイコよ。死んでしまうとは情けない!
シリアスでしたね。
次回は…どうするか。