彼の目には
感謝有り
心の傷を
抉る涙よ
ゾンビカイリューはレッドさんのミュウツーによって粉々にされた。
Nさんは「彼は最後にありがとうって言ってたよ。」って言ってくれたけど…どうしても考えてしまう。
もっとやり方は無かったのか。上手くやれば生きたままあのカイリューを救えたんじゃ無いか。
「ブール君。」
「なんですか、レッドさん。」
「僕を恨むかい。」
「なんでですか?」
「あの方法しか思いつかなかったから。」
「…レッドさんを恨むのはお門違いでしょう。あれが最善だった。恨むなら、あのカイリューを救う力の無かった自分を恨みます。」
「そう。」
レッドさんは少し淋しげな顔をして黙った。
「んあ?なーんでそんなしんみりした空気になってんの?」
「…メイコちゃん、今はそっとしてあげて。」
今頃になってジュンサーさんがやってくる。
「こ、これは!?」
「遅い。もう終わった。」
「レ、レッドさん!?それはどういう…」
「おっそいのよ!ここの警察はなんなの!?トロイの!?馬鹿なの!?とっくのとうに犯人共は逃げ去ったわよ!プラズマ団!プラズマ団を探しなさい!」
「は、はい!」
メイコさんがジュンサーさんを追い払う。強引だなぁ。
「そうだ、ブール。アクロマは強制的に足を洗わせたからもうこんなことは起きないわよ。」
「そうなの?ありがとう、メイコさん。」
「…元気ないわね。どうしたの?」
「メイコちゃん、こっちに。」
「何よ。」
Nさんがメイコさんに説明する。
「…ああ、成る程。トラウマ必至と。」
「そういう事。だからそっとしてあげて?」
「だが断る。」
メイコさんがこっちに来る。
「はい、ブール。何考えてんのよ?」
「…。あのカイリューを救う方法。」
「無いわよ。」
「え?」
「世の中、そんな都合の良い方法なんて無いのよ。そんなん考えてないで、もっと建設的な事を考えなさい。例えばハッサンを鍛えるとか。」
メイコさんの言う通り。終わった話、後の祭り、無駄な思考。
「…でも。」
「でもじゃない。詰まんないこと考えてないで前向け、前!」
「だって!可哀想じゃん!悲しいじゃん!助ける方法を考えて何が悪いんだよ!」
「・・・悪いとは言ってないわよ。」
イライラしてきた。と、誰かが話かけてきた。
「ブール、といったか?」
「はい。…ってミュウツー!?」
話かけてきたのはレッドさんのミュウツーだった。
「え、しゃ、しゃべ、シャベッタアアア!」
「これはテレパシーだ。じゃなくて、すまなかった。」
「え?」
「あのカイリューを壊したのは私だからな。」
「…別に謝らなくても」
「助けられたかも知れない…のにか?」
「は?」
今なんて?
「私ならあのカイリューを助けられたと言っている。」
「嘘でしょ?」
「本当だ。カイリューの体を固定できたかも知れない。」
「な…な…!?」
「おいおい、馬鹿な事を言ってんじゃねーよ、ミュウツー。そんなことしたら死んだ方がマシな程の苦痛を与える事になるだろうが。」
アカさんが割り込んでくる。
「…そんなにも自分を恨ませたいの?」
レッドさんに変わる。…頭が回りそうだ。
「それで万事解決だろう?恨まれるのには慣れてる。」
「え、ええと?」
「ミュウツーの言った事は忘れて。」
「しかし…。」
「誰かきた。戻って、ミュウツー。」
どこかから、アフロみたいな髪型のおばさんが出てくる。
「うひゃぁ、派手にやってくれちゃって。こりゃあ直すのが大変だね。あ、これ壊れちゃってるじゃないか!」
「アロエさん、お久しぶりです。」
「ん?おお!レッドじゃないか!久しぶりだねぇ!」
アロエさん?…アロエ…あ!シッポウジムのジムリーダーじゃないか!
「お、坊っちゃん。お友達と会えたのかい。」
「ええ、お陰さまで。ただ、見ての通りひどい有り様ですけど。」
Nさんとも顔見知りっぽい。
「ほんとにねぇ。あそこは防音が完璧過ぎて騒ぎに気づきにくいのが欠点だね。で、何があったんだい、レッド。」
「プラズマ団がでしゃばった。あのデカイ骨格が復元されて暴れた。僕たちで壊した。」
「はぁ!?あれはうちの看板だったのに!…はぁ。今言ってもしょうがないね。プラズマ団の連中は?」
「アイアントが散る様に逃げた。」
「そうかい。ご苦労様。」
と、アロエさんがこっちを見る。
「んー?坊主はジムの挑戦者かい?ごめんね、見ての通りジムバトルなんて出来るような状態じゃ無いんだ。他を当たってくれないかね。」
「あ、はい。」
強引さはメイコさんとどっこいどっこいだね。
「…あんた今あたしに失礼な事を考えたでしょ。」
「いやいやまさか。」
…今回の事は頭の中にしっかり入れておこう。ゾンビカイリューの事を忘れない様に。
でも、前向きに行こう。それが俺のキャラだから。
「…吹っ切れたみたいね。」
「うん。」
1897文字です。
まさかのジムバトルの先送り。