ポケモン「絵描き」の旅【未完】   作:yourphone

33 / 109
人々の
囁き耳を
通り抜け
時代は古代
気分は(たかぶ)


Mr.N in 博物館~待ちぼうけ~

シッポウ博物館のその広さと展示品にはため息が出る。もちろん、感嘆のため息だ。

 

「昔の時代の土器に、ポケモントレーナーが居なかった時代の武器まであるなんてね。」

 

ブール君とメイコ君はレッドさんと何を話しているんだろうか。

レッドさん…か。不思議な人だ。あの人の目は澄んでいてとてもポケモントレーナーとは思えないのに、彼の使ったププリンはメイコ君曰く『修羅』。 そんな育成が出来る人じゃなさそうだし、ププリンの性格なんだろう。きっと。

 

「…まあ、彼とポケモンバトルはしたくないね。」

 

そんなことにはならないと思うけど。あ、これは…。

 

「…世界は…雷と炎に…包まれた。…真実の…王子は…雷に…撃たれ、その…短い人生を…終わらせた?」

 

僕が居た所にあった石板と内容が違ってる・・・。真実ではなく理想の王子が、雷ではなく炎に焼かれて死ぬはずだ。

 

「うーん。これが間違ってる…それとも、あれが?いや、両方違う可能性もあるのか…。」

 

「おや、珍しい髪色だね、お客さん。」

 

後ろを向くと、髪の毛が凄い女の人が立っていた。

 

「ええと、おか、あなたは…?」

 

ついついお母さんと呼ぶところだった。何故だ?

 

「あたしかい?あたしはここの館主にして、シッポウジムのジムリーダーであるアロエって言うんだ。」

「はじめまして、アロエさん。僕は…」

「おっと、別にお客さんのプライバシーをほじくるような真似はしないよ。まあ、ジムに挑戦するって言うなら名前ぐらいは聞いてあげるけど。」

 

凄く上から目線。なのになぜか、腹がたたない。これが『包容力』か。

 

「いえ、ジムに挑戦する気は無いです。」

「そうかい?やけに強そうなポケモンを持っているのに、残念だね。あんたなら現チャンピオンのアデクのじじいを倒せそうなのにね。」

「ははは、流石に買いかぶり過ぎですよ。・・・それで、僕に何か用でも?」

 

まさかジムの挑戦者かどうか確かめに来たわけでは無いだろう。

 

「雰囲気が不思議だから…なんてね。あんたの独り言が聞こえちまっただけさ。」

「はあ。」

 

独り言?なにか聞かれちゃ不味いことでも言ったかな?

 

「あんた、その石板を読めるんだね?」

「はい。古代語を少し習っているので…。」

「『古代語を少し』ねぇ。嘘はいけないよ、坊っちゃん。その石板の下にある説明をよく読んでみな。」

「?」

 

改めてよく見ると確かに説明用のプレートが掛けてあった。

 

「ええと、『この石板は○○年○月○日アララギ博士がジャイアントホールで発掘したものの精巧なレプリカである。これに掘られている文字は古代文字だ。しかし、あまりにも古い時代のものなので解読が出来ていない』…成る程。」

「あたしがあんたに声を掛けた理由を分かってくれたかい?」

「ええ。」

 

解読不可能な文字をすらすらと解読していたからか。

 

「確かに僕はこの文字を読めます。それで、何が言いたいんですか?」

「ふふ。良い顔してるね。きな。良い場所に連れてってやるよ。」

「…。分かりました。」

 

~○~○~○~○~○~

 

「これは・・・!」

「凄いだろう?大き過ぎて展示が出来ない代物さ。」

 

博物館の裏にあるジムの地下にこんな巨大な研究室があるなんて。いや、それよりも驚くべきことがある。

 

「この石板…いや、岩盤に書いてあること。あんたなら読めるだろう?」

「…ええ、多分。」

 

石板と言うには大き過ぎる物にびっしりと文字が記されている。

 

「大雑把な内容だけで良い。教えてくれないかね?もちろん報酬は出そう。」

「…。」

 

・・・よし、覚えた。解読は後で良いかな。

 

「すみません、お断りします。」

「へぇ?なんでか聞いても良いかい?」

「友達と待ち合わせをしてるんです。博物館で待っているって伝えてあるんですよ。」

 

ブール君とメイコ君は僕の事をどう思っているんだろうか。友達か、せめて仲間ぐらいに思ってくれてたら良いな。

 

「…そうかい。なら仕方無いね。まあ、気が向いたらまたここに来な。」

「はい。あ、あの一番始めの単語は『我らの』です。」

「え?」

「流石に何もしないで戻るのは気が咎めるんですよ。」

「そうかい。ありがたいね。博物館に戻るにはそこの扉の先を真っ直ぐ進めば良いよ。ただし、他の部屋には入ら無いでもらいたいねぇ。」

「分かりましたよ。では、さようなら。」

 

~○~○~○~○~○~

 

博物館に戻ると、見覚えのある青い集団が博物館に溢れていた。

 

「ふっふっふ。プラーズマー!この博物館は我らプラズマ団が乗っとりましたよ!」

「お父さん!?何故ここに!?」

 

青い集団の中心には僕を育ててくれたゲーチスが立っていた。

 

「ん?ああ、探しましたよ。偶然ですが、見つかったのでよしとしましょう。さあ!あなたこそ我らプラズマ団のトップです!」

 

ゲーチス(お父さん)が手を差しのべる。

 

「う…。」

 

嫌だ。プラズマ団(あんなとこ)には戻りたくない!

 

「どうしたのです?今までみたいにわたしの事を闇雲に信用すれば良いのです。さあ、手を!」

 

ああ、駄目だ。逆らえない。手を…伸ばす…。

 

ドーーーン

 

「な、なんだ!」

「ま、また()()()です!」

「またですか!」

「はい!今回はあの骨からポケモンを蘇生させるとかなんとか…。」

「馬鹿者!何故止めなかったのです!?」

「すみません!」

「ちっ。ここまで大袈裟にするとジュンサーがうるさく…くそっ!」

 

ゲーチスがこっちを向く。

 

「あなたの()()を呼び出すのです!今すぐ!」

「な…!こんな博物館で()()を呼び出せというのか!駄目だ!いくらお父さんの命令でも()()は出せない!」

 

「ハハハハ!復元出来たぞ!」

「グギャ~~!!!」

 

「くっ!アクロマの奴!仕方無い!あなたが()()を出さないのなら、この博物館が粉々になるだけです!総員!退避!退避です!」

 

扉を壊し、プラズマ団たちをお父さんもろとも吹き飛ばし、それが現れる。

それは、カイリューのようで、しかし色がおかしかった。

 

「グゲリガゴリッシャ~!」

 

とてもポケモンの声とは思えない叫びだ。

 

でも、苦しんでる!助けなきゃ!…でも、どうする?お父さんの言う通り、()()を出すしか無いのか…!

 

「ハッサン!『とっしん』!」

「ピカチュウ、『10まんボルト』。」

 

「ババゥ!」

「ピカ~~チュ~!」

 

「Nさん!大丈夫ですか!」

「そこで待ってなさい、お坊っちゃん!!!」

 

この声は!

 

「ブール君!メイコちゃん!」




2668文字です。
アクロマ、何してんの!?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。