囁き耳を
通り抜け
時代は古代
気分は
シッポウ博物館のその広さと展示品にはため息が出る。もちろん、感嘆のため息だ。
「昔の時代の土器に、ポケモントレーナーが居なかった時代の武器まであるなんてね。」
ブール君とメイコ君はレッドさんと何を話しているんだろうか。
レッドさん…か。不思議な人だ。あの人の目は澄んでいてとてもポケモントレーナーとは思えないのに、彼の使ったププリンはメイコ君曰く『修羅』。 そんな育成が出来る人じゃなさそうだし、ププリンの性格なんだろう。きっと。
「…まあ、彼とポケモンバトルはしたくないね。」
そんなことにはならないと思うけど。あ、これは…。
「…世界は…雷と炎に…包まれた。…真実の…王子は…雷に…撃たれ、その…短い人生を…終わらせた?」
僕が居た所にあった石板と内容が違ってる・・・。真実ではなく理想の王子が、雷ではなく炎に焼かれて死ぬはずだ。
「うーん。これが間違ってる…それとも、あれが?いや、両方違う可能性もあるのか…。」
「おや、珍しい髪色だね、お客さん。」
後ろを向くと、髪の毛が凄い女の人が立っていた。
「ええと、おか、あなたは…?」
ついついお母さんと呼ぶところだった。何故だ?
「あたしかい?あたしはここの館主にして、シッポウジムのジムリーダーであるアロエって言うんだ。」
「はじめまして、アロエさん。僕は…」
「おっと、別にお客さんのプライバシーをほじくるような真似はしないよ。まあ、ジムに挑戦するって言うなら名前ぐらいは聞いてあげるけど。」
凄く上から目線。なのになぜか、腹がたたない。これが『包容力』か。
「いえ、ジムに挑戦する気は無いです。」
「そうかい?やけに強そうなポケモンを持っているのに、残念だね。あんたなら現チャンピオンのアデクのじじいを倒せそうなのにね。」
「ははは、流石に買いかぶり過ぎですよ。・・・それで、僕に何か用でも?」
まさかジムの挑戦者かどうか確かめに来たわけでは無いだろう。
「雰囲気が不思議だから…なんてね。あんたの独り言が聞こえちまっただけさ。」
「はあ。」
独り言?なにか聞かれちゃ不味いことでも言ったかな?
「あんた、その石板を読めるんだね?」
「はい。古代語を少し習っているので…。」
「『古代語を少し』ねぇ。嘘はいけないよ、坊っちゃん。その石板の下にある説明をよく読んでみな。」
「?」
改めてよく見ると確かに説明用のプレートが掛けてあった。
「ええと、『この石板は○○年○月○日アララギ博士がジャイアントホールで発掘したものの精巧なレプリカである。これに掘られている文字は古代文字だ。しかし、あまりにも古い時代のものなので解読が出来ていない』…成る程。」
「あたしがあんたに声を掛けた理由を分かってくれたかい?」
「ええ。」
解読不可能な文字をすらすらと解読していたからか。
「確かに僕はこの文字を読めます。それで、何が言いたいんですか?」
「ふふ。良い顔してるね。きな。良い場所に連れてってやるよ。」
「…。分かりました。」
~○~○~○~○~○~
「これは・・・!」
「凄いだろう?大き過ぎて展示が出来ない代物さ。」
博物館の裏にあるジムの地下にこんな巨大な研究室があるなんて。いや、それよりも驚くべきことがある。
「この石板…いや、岩盤に書いてあること。あんたなら読めるだろう?」
「…ええ、多分。」
石板と言うには大き過ぎる物にびっしりと文字が記されている。
「大雑把な内容だけで良い。教えてくれないかね?もちろん報酬は出そう。」
「…。」
・・・よし、覚えた。解読は後で良いかな。
「すみません、お断りします。」
「へぇ?なんでか聞いても良いかい?」
「友達と待ち合わせをしてるんです。博物館で待っているって伝えてあるんですよ。」
ブール君とメイコ君は僕の事をどう思っているんだろうか。友達か、せめて仲間ぐらいに思ってくれてたら良いな。
「…そうかい。なら仕方無いね。まあ、気が向いたらまたここに来な。」
「はい。あ、あの一番始めの単語は『我らの』です。」
「え?」
「流石に何もしないで戻るのは気が咎めるんですよ。」
「そうかい。ありがたいね。博物館に戻るにはそこの扉の先を真っ直ぐ進めば良いよ。ただし、他の部屋には入ら無いでもらいたいねぇ。」
「分かりましたよ。では、さようなら。」
~○~○~○~○~○~
博物館に戻ると、見覚えのある青い集団が博物館に溢れていた。
「ふっふっふ。プラーズマー!この博物館は我らプラズマ団が乗っとりましたよ!」
「お父さん!?何故ここに!?」
青い集団の中心には僕を育ててくれたゲーチスが立っていた。
「ん?ああ、探しましたよ。偶然ですが、見つかったのでよしとしましょう。さあ!あなたこそ我らプラズマ団のトップです!」
「う…。」
嫌だ。
「どうしたのです?今までみたいにわたしの事を闇雲に信用すれば良いのです。さあ、手を!」
ああ、駄目だ。逆らえない。手を…伸ばす…。
ドーーーン
「な、なんだ!」
「ま、また
「またですか!」
「はい!今回はあの骨からポケモンを蘇生させるとかなんとか…。」
「馬鹿者!何故止めなかったのです!?」
「すみません!」
「ちっ。ここまで大袈裟にするとジュンサーがうるさく…くそっ!」
ゲーチスがこっちを向く。
「あなたの
「な…!こんな博物館で
「ハハハハ!復元出来たぞ!」
「グギャ~~!!!」
「くっ!アクロマの奴!仕方無い!あなたが
扉を壊し、プラズマ団たちをお父さんもろとも吹き飛ばし、それが現れる。
それは、カイリューのようで、しかし色がおかしかった。
「グゲリガゴリッシャ~!」
とてもポケモンの声とは思えない叫びだ。
でも、苦しんでる!助けなきゃ!…でも、どうする?お父さんの言う通り、
「ハッサン!『とっしん』!」
「ピカチュウ、『10まんボルト』。」
「ババゥ!」
「ピカ~~チュ~!」
「Nさん!大丈夫ですか!」
「そこで待ってなさい、お坊っちゃん!!!」
この声は!
「ブール君!メイコちゃん!」
2668文字です。
アクロマ、何してんの!?