今回の主役はブールの手持ちの『ギィカ』、ギガイアスです。
「ゴロッ!ゴロッ!」
(まったく!頭にきちゃう!)
走りながらダンゴロは思う。
(そりゃあ私たちの種族が一番強いと自惚れている訳じゃ無いけど、だからといってプライドが無い訳じゃ無い!)
ダンゴロは激怒した。
必ずかの暴虐インコに一泡吹かせなければならぬと決意した。
その為には、強くなる必要があった。
「ゴロゴーロッ!」
(強くなって!目にもの見せてやる!)
そして、一週間がたった
「バスゥ…。」
「バスラオ!」
いつの間にか、ダンゴロはガントルへと進化していた。
ただただ強さを求めたダンゴロ…いや、ガントルは、もはや地下水脈の洞穴の主として君臨していた。
「いけっ!マルスケ!」
「ルシャア!」
このトレーナーもガントルの噂を聞き付けたのだろう。ガントルの苦手な水タイプや草タイプを連れてきていた。
「ガットゥ!」
「ルシャァッ!?」
「マルスケ!?」
だが、何分弱い。
最後のフタチマルはなかなかだったが…他のポケモンはあからさまに『ついさっき捕まえました』とばかりに扱いなれて無かった。
(ここも潮時ね)
逃げていくトレーナーを眺めながら考えるガントル。
ここに居るポケモンたちで自分にかなう相手は居なくなった。
トレーナーが来るのを待っても良いが、本当に強い…それこそあのドーブルぐらい強い相手は現れないだろう。
故に、ガントルは旅立つ。
今までの自分のほぼ全てであった洞穴を抜け出し、外へ。
~○~○~○~○~○~
ゆっくり、しっかりと大地を踏み締め、ガントルは
傍目には歩くよりも遅い。だがガントルからしてみれば、確かに走っている。
ガントルの硬く重い身体は敵の攻撃をしっかりと受け止めてくれるが、こうなるとダンゴロの頃の軽い体が懐かしい。
「うおっすげえ。ガントルだ。しかもボロボロ…これはゲットのチャンスだな!?」
だが、ガントルにとってそう悪い事ばかりでも無いようだ。
歩いている…訂正、走っているだけでそこいらからトレーナーやポケモンがうじゃうじゃと寄ってくる。
ただただ強くなりたいガントルにはむしろ、ご褒美だ。
連戦に次ぐ連戦で『がんじょう』は意味をなさない。
一歩間違えたら、いや、間違えずとも即刻倒れるほどに体は削れている。
だが、ガントルは戦い続けた。
戦い、走り、戦い、走り。
昼夜を問わずこれを繰り返した。
小道を駆け、草むらを抜け、森を踏破し、長い橋を渡り、見たことの無い高い建物に囲まれ・・・遂に、倒れた。
~○~○~○~○~○~
気が付けば何か良く分からない事になっていた。
それが、目覚めたガントルが真っ先に思った事だ。
『いとをはく』でも喰らったのか、身体中に白い紐状のものが繋がっている。
体が動かない。『しびれごな』を掛けられたの?
しかし、それにしては疲れが取れている。タブンネに『いやしのはどう』でも使ってくれたのか。
勿論、違う。
親切な大工が、ローブシンを使ってポケモンセンターまで運んでくれたのだ。
実際、ガントルは死にかけていた。
タマタマがスピアーに食べられるように、ヒトカゲの尻尾の火が消えるように、ペアと離されたギアルが動かなくなるように、ガントルはただの岩になりかけていた。
ジョーイさんは、鬼のように怒っていた。
「何でこんなになるまで戦ってたの!?」
「ガトゥ…。」
「せめて木の実食べるとか、タブンネに頼むとかしなさい!」
「ガトゥ…。」
「今回は何とかなったけど、毎回こうなるとは限らないのよ!?」
「ガトゥ…。」
「いい?これからはこんな無茶はしないこと!良いわね!?」
「ガットゥ…。」
しおらしく頷くガントル。
だが、それは無茶をしないと約束した訳でも、ましてや強くなる方法に妥協した訳でも無かった。
というか、ジョーイさんの話は全然聴いていなかった。
あの鳥にギャフンと言わせるにはまだ足りない。
ギリギリの戦いで勝つことは、あるいは出来るかもしれない。
だが、それではいけない。
もっと、もっと圧倒的な差を見せないと。
(その為には…進化が必要不可欠ね。リーダーのように、ギガイアスにならないと)
~○~○~○~○~○~
さて、ここで考えて欲しい。
ガントルの進化方法は少し特殊だ。普通に育てるだけでは絶対に進化しない。
では、どうすれば進化するのか。
答えは、『通信交換』。
そう。あのボッチ殺しの進化方法だ。
つまり、トレーナーが二人居なければガントルは進化出来ない。
故に、ギガイアスは野生には存在しない。
と、思われがちだが。
実際には存在する。
ゲンガーやカイリキー、フーディンやゴローニャも野生で存在する。
更に言えば、『道具を持たせて通信交換』しなければいけない、ニョロトノやハガネール、ドサイドンやポリゴンZでさえも、野生にいる。
何故か。
答えは、カブルモやチョボマキの図鑑説明文に書かれている。
要するに、『電気的な刺激』を受ければ良いのだ。
だが、当のガントルはそんなことをは知らない。
ならどうして進化したかと言うと…偶然だった。
~○~○~○~○~○~
ガントルはイライラしていた。
「ゴッゴーロゴロゴロ!ゴロゴロゴッゴゴロ!」
(もう治ったわ!大丈夫だからここから出してよ!)
精一杯アピールするが、ジョーイさんには伝わらない。
強くなりたいガントルとしては、さっさとここを出て強者の居る場所へ行きたい。
だが、ガントルは瀕死状態だったのだ。そう簡単には出してもらえない。
ここはゲームの世界ではなく、現実の世界なのだ。ゲームでの『ひんし』と現実での瀕死は大幅に違う。
人間よりよっぽど生命力に溢れたポケモンでさえ、最低三日は回復に専念しなければいけないのだ。
よってこの場合ジョーイさんのが正しいのだが、如何せんガントルは若かった。
動かない筈の体を無理矢理動かし、暴れたのだ。
『じならし』『うちおとす』『ストーンエッジ』『ロックブラスト』
使える技を全て使い、部屋から出ようと暴れ、近くにあった機械を踏みつける。
壁に体当たりをかまし、強化ガラスを割り、外に出ようとする。
バチバチッ
ふと耳に入った音が気になり、ガントルは一度部屋を振り替える。
目の前で機械が暴発。
ヒウンシティ全体をを停電にさせるほどの電流がガントルの体を駆け巡る。
そして、進化が始まる。
~○~○~○~○~○~
ガントル・・・いや、ギガイアスが始めに取った行動は、『外へ出る』事だった。
下を見る。前よりも地面が遠い。
上を見る。空が、雲が近い。
(行ける…これなら、きっと!)
勝ちへの予感。進化の際に大幅に技が変わったのを感じた。その技の使い方は本能で分かる。
体が震える。
全身のエネルギーコアを光らせ、吼えた。
「ギッッガアァァァァァ!」
ギィカがブールに負けた理由は、懲りずに連戦してたのもあるけど、一番はブールの主人公補正に勝てなかったのがある。
ではこれからも、ポケモン「絵描きの」旅、宜しくお願いします!