語りを聞くは
赤き羽
語り声が
とうとう響く
僕は貴族…金持ちの家に産まれた、自分で言うのもなんだけどお坊っちゃんなんだ。
僕の両親は二人とも良い人だったよ。
僕が産まれた時からともだちの…ポケモンの気持ちが分かる事に気付くまでは。
母はこの事に気付くと、僕を嫌悪し始めた。「なんでこの子はそんな気味の悪いことを言うのだろう」ってね。
父は、五歳の僕を傷だらけのポケモンしかいない箱庭に閉じ込めた。
この箱庭にいたポケモン達はだいたいがポケモンハンターに傷つけられていた。残りはトレーナーに捨てられたポケモンだった。
僕は箱庭に閉じ込めた父を
ともだちはいるし、衣食住も 揃っていたし、何より母の冷たい目を向けられなくてすんだから。
外を知らなかった僕は「この世の人は皆悪い人。僕と父だけが良い人なんだ」と考えた。
だから、父から「この間違った世界の為に手を貸してくれ」と言われたとき、すぐに頷いたんだ。
~○~○~○~○~○~
「それが間違いだったんだ。」
「・・・」
「メイコく…ちゃん?」
「…はっ!?寝てない、寝てないですよ!」
「ええと…つまらなかったかな?」
「いや、ちゃんと聞いてたし。聞き漏らしてないし。・・・なによその目は。疑ってんの?」
「え?いや、疑ってなんかいないよ?」
「ふーん?…まあ、五、六歳のガキんちょだったんだし、そんな状態だったんならむしろ当然の判断よね。」
「・・・聞いてたんだ。」
「やっぱり疑ってたんじゃないの!」
「ま、まぁまぁ。」
~○~○~○~○~○~
話を続けるよ。…寝ないでね?
父はプラズマ団のトップだった。プラズマ団っていうのは人間とポケモンの分離を目的とした集団で、意外と大勢の団員がいた。
街角で演説をした。ポケモンハンターを捕まえてポケモン達を解放した。傷付いたポケモン達を保護した。
正直、楽しかったよ。尊敬する父の手伝いを出来たわけだしね。
そんなある時、とある少年と出会った。彼は新米のポケモントレーナーで、三人の友達と一緒に演説を聞いていた。
三人のうち、一人は否定的に首を振って先に行った。
一人は少し心に響いていたと思う。ポケモンセンターに走って行った。
一人は呆れた顔をしていた。
そして、その少年は実は演説なんか聞いてなかった。
少年は「あんたがNだな」と話しかけてきたんだ。
「…そうだけど、なぜ僕の事を?」と返した。僕はその少年と会った事なんか無かったし、その頃はNなんて名乗って無かったけど。
少年は「前世の記憶さ。おまえ、ちょっとこっちにこいよ」とかいって僕を近くの路地裏まで連れていった。
そこで僕は初めて第三者から見たプラズマ団の行動を知ったんだ。
演説は騒音になり、ポケモンハンターを私刑にして、人のポケモンと野生のポケモンをいっしょくたに解放した。傷付いたポケモンはポケモンセンターにも行けずに傷が悪化した。
僕は動揺して、ポケモンバトルを挑んだ。結果はぼろ負けだった。手も足も出なかった。
~○~○~○~○~○~
「僕はプラズマ団を抜けた。今はこうして一人旅をして、人とポケモンの生活を見学させてもらっているんだ。」
「ふーん。だから別の世界が在るって知ってたのね?」
「知ってたというか…三人も同じ事をいう人がいるんだ。信じない訳にはいかないよ。」
「・・・成る程お坊っちゃんね。」
「え?」
「何でもないわ。流石に眠いから、おやすみ。」スヤースヤー
「もう寝たの!?…僕も寝ようかな。」
この人たちなら…もしかしたら…。
1432文字です。
Nさんの昔話(?)でした。