ポケモン「絵描き」の旅【未完】   作:yourphone

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レッドさんのミュウツーのお話です。
ミュウツーは29、30話にちょびっと登場します。

シリアス注意。
グロい描写注意。



ポケモン「優しき伝説」の旅~UA10000記念~

 

とあるカロス地方の港町。

そこに、伝説のポケモンと伝説のトレーナーが船を待っていた。

 

「私の昔話を聞きたい?楽しいものでは無いぞ?

……そうか。分かった。少し長くなるから座って聞いてくれ。」

 

トレーナーは部屋の椅子に腰掛ける。

ポケモンは軽く息を吸い、話始める。

 

~○~○~○~○~○~

 

私には二年前以前の記憶が無い。気が付いたら村に倒れていた。

聞いたところによると、何か強いポケモンと戦った後のようなボロボロの姿で川を流れてきたらしい。

私は村の(ポケモン)たちの看病で一命をとりとめた。

村の(ポケモン)たちは優しかった。

少しの間はな。

彼らが私を畏れの目で見始めたのは村にあるトレーナーがやって来たせい…だ。

 

そのトレーナーは何を考えていたのか村の(ポケモン)を攻撃し、乱獲を始めた。

 

勿論、今までも村にやって来てはポケモンバトルをするトレーナーは居た。

だが、常識の範囲内だったし数回来た後は二度と来なくなるのが普通だった。

 

……奴は毎日毎日やって来た。

村の(ポケモン)たちも初めはいつも通り戦った。

だが、奴がメタモンしか狙って無いと分かると、皆隠れるようになった。

正義感の強い(ポケモン)たちが立ち上がったが敵わなかった。

それどころか、ストレスをぶつけるかのように必要以上に痛め付けられた。

それこそ、死ぬ一歩手前まで、な。

 

私は村の(ポケモン)たちに大丈夫だ、問題ないと言われていたので仕方無く大人しくしていたが…直ぐに限界が来た。

私はそのトレーナーと戦った。奴の使うポケモンは強かった。が、私には遠く及ばなかった。

村の(ポケモン)たちに運ばれていくそいつを見て、私はこれで奴も懲りただろうと思った。

 

 

甘かった。

 

 

むしろ奴は積極的に来るようになった。

それも集団で、だ。

こんなでも私は『伝説』だ。そこらのトレーナーが何人増えてもそう簡単にはやられない。

奴が来る度に私は返り討ちにしたが……あまりのしつこさに、私はキレた。

 

キレてしまった。

 

私は奴自身を攻撃した。

殺しはしなかったが、トレーナーとして生活出来なくさせた。具体的には目を…何でもない。

とにかく、気が付いたら奴は血まみれで倒れていた。

村の(ポケモン)たちは遠巻きに私と奴を囲っていた。

 

『何故皆、嬉しそうな顔をしないのだろう?』

 

…その時に思ったことだ。今考えると、実に浅はかだな。

オーロッドが奴を近くの町に運ばれて行った。

私は、村の(ポケモン)たちに告げた。

 

「村を荒らす悪い奴は私が倒した。二度と来れなくしたから、もう荒らされる事は無いだろう。」

 

と。

村長である年取ったゾロアークは私にこう言った。

 

「それは、有難い。奴には困っていた。…だが、貴方はやり過ぎた。トレーナー自身を攻撃するなんて、正気の沙汰では無い。…正直、今すぐ村を出ていって欲しいが、我々は敢えて貴方を村に迎え入れます。その力が、他へ向かわないように。」

 

私は周りを見回した。

村の(ポケモン)たちの眼には、恐怖と、嫌悪が、混ざっていた。

私はその視線に堪えきれず、村の外れにある洞窟に引き(こも)った。

 

……。その後、奴がどうなったかは知らない。

やり過ぎた事に後悔はあるが、やったこと自体には後悔は無いからだ。

 

こんな私にも、友達が居た。というより、出来た。

名前は伏せるが、カビゴンとメタモンだ。

カビゴンは正義感が強く、奴を倒そうとして返り討ちに合ったポケモンの一人だ。

メタモンはなんというか、ニヒルだった。

 

…どうやって出会ったか?カビゴンが乗り込んで来たんだよ。メタモンを肩に乗せて。私の洞窟に。

しかも、奴に付けられた傷も癒えてないのに、だ。

しかも乗り込んで来て何て言ったと思う?

「やり過ぎだ」?違う。「俺のが強い」?少し違う。

 

正解は、

 

「何で奴を倒したんだ!オレが倒す筈だったんだぞ!」

 

だ。

そう言って殴ってきた。

余りに唐突で、余りに無遠慮で、『メガトンパンチ』をもろに喰らってしまったよ。

 

……。考えてみろ。他の人から避けられている自分の元に包帯グルグル巻きの巨人がやって来て、訳の分からない理屈を怒鳴り付けてきて、本気で殴ってきたんだぞ?

どうして友達になれたのか不思議な出会い方だろう?

 

だが、私と彼らは友達だ。親友…だ。

 

洞窟から飛び出して外を走り回るなんて出来なかったが、何時も三人で喋っていた。

何処から聞き付けたのか偶然か分からないが、偶にやって来るポケモントレーナーを返り討ちにした。

三人で協力して、洞窟を広げ、住みやすくしたりした。

楽しい時間だった……あの時までは。

 

あの時も、何時も通り三人で喋りあっていた。

そこに、なんというか、赤い奴らがやって来た。

いや、やって来たなんて物じゃない。攻めて…そう、攻め入ってきたんだ。

奇襲だったせいで、親友たちは直ぐに倒された。

私は二人を洞窟の奥に避難させ、一人で奴らに立ち向かった。

ゴルバット…グラエナ…ヒノヤコマ…一人一人は強くないが、いかんせん多すぎた。

倒しても倒しても、きりが無かった。

 

結果として、私は()()()()()()

ただ、金髪で……言い表しにくい髪型をした眼鏡の研究員に、そいつの出した機械に…屈した。

 

…そう、君たちが壊してくれたあれだ。

 

一つ付けられると技を出せなくなった。

二つ付けられると動けなくなる。

三つ付けられると激痛で思考がぶれる。

四つ付けられると感情を()()()()()()される。

五つ付けられると……意識を持ってかれた。

 

それからの私の行動は君の方が詳しいだろう。

 

意識を持ってかれたと言ったが、偶に戻ってくる時もあった。

目の前は全て真っ赤で、絶え間無く激痛が走る。

まともな思考が出来ず、まるで全てを壊すことが生き甲斐のような感情が湧いてくる。

心の中では駄目だと叫んでも、体はただただ殺戮を繰り返した。

目を逸らすことさえ出来なかった。

私を見る眼は、恐怖、嫌悪、憎悪、諦念、絶望、敵愾心、恨み、怨み、その他名前すら着いてない負の感情が渦巻いていた。

 

……だが、例外もいた。そう、君と親友たちだ。

君は、憐れんだ眼で見てきた。

親友たちは…。…悲壮な決意を…込めていた…。

 

言うことを聴かない私の体は、親友たちさえ…攻撃…した。

『はどうだん』を撃ち込んだ。『サイコブレイク』で…吹き飛ばした。

それでも親友たちは、諦めなかった。

 

…私は、自分を許さない。許せない。許されてはいけない。

 

出来るなら、親友たちに謝りたい。私の被害に合った人たちに謝りたい。

だが、私のせいで家族を無くしたポケモンたちが許さない。町を壊された人々が許さない。何よりも、私自身が許さない。

 

親友たちは…許すだろう。許して、しまうだろう。

ゲラゲラと笑って。全くやれやれと言って。

 

だから、出来ない。二度と彼らと会うことは出来ない。

血にまみれたこの手では、体では。

死んでも、生き続けても償うことの出来ない罪を、(ごう)を背負った私では、親友に会う資格は、無い。

 

だからこそ、君には感謝しているよ、レッド、アカ。

君は、私を止めてくれた。捕まえてくれた。

そして君は今から別の地方へ行くのだろう?なら私は彼らに会うことは、恐らく一生無いだろう。

 

…逃げている?そうかもしれない。いや、実際逃げているのだろう。

だが、私はもう二度とあの恐怖の眼で見られたくはない。あの憎悪の視線に堪える事は出来ない。君と、君たちと一緒に居れば人を傷付ける事は無い。畏れられることも少なくなる。ただの一匹の『ポケモン』として見てもらえる。

 

軟弱だと思うか?それでもいい。

むしろ、そうでなければならない。

笑われようと怒鳴られようと哀れまれようと、私は自分の力に、そして利用しようとするこの世界に対して臆病に生きねばならない……死ぬことを君が許さないのなら。…そうか。

 

~○~○~○~○~○~

 

ボォーーー

 

船が港にやって来る。

 

「船が来たようだな。では、ボールに戻ろう。」

 

トレーナーはポケモンをボールに戻す。

 

ボールから出た赤い光がポケモンを包む。

 

「さよなら、私の親友。」

 

そしてトレーナーは部屋を出て、船へ向かう。

 





UA10000(いちまん)突破、ありがとうございます!

補足。
村はゲームで言う『ポケモンの村』の事です。
ミュウツーの親友のカビゴンはカロス地方七番道路で寝ているあいつです。
親友のメタモンは…分かるよね?


番外編は、UAが5000増える毎に投稿しようと思ってます。
これからもポケモン「絵描き」の旅をよろしくお願いします。

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