「……居ないんだけど」
「バウッ」
一通りサザナミタウンを見て回ったけど、ペティが居ない。海岸には居なかったし、ポケモンセンターとかフレンドリィショップ、シロナさんの別荘にも居なかった。
「どこ行ったんだろ……メイコさんも見当たらないし」「バウッバウッ」
「ハッサン、何か見つけたの?」
「クゥゥン……」
あ、違うんだ。ただの相づちだったみたい。
「いっそのこと、夕飯まで無視してみるのも良いかな…………」
『へんしん』を溶いて上から探すっていうのも方法の一つではあるけど、そろそろお昼だから人が見てるんだよね。この場所なら大丈夫だとは思うけど。
「……っていうかテレビでそこそこ騒がれたし、最低限イッシュ地方なら結構有名人なんだよね、僕」
「バウ?」
「つまりここで『へんしん』したところで誰も驚かないんじゃ……いやいやいややっぱ止めとこ」
「バウッ」
さて、じゃあちょっと戻るかな。ハッサン、移動お願いね。
~○~○~○~○~○~
えっと……。
「ペティ、ちょっと現状把握していい?」
「ペァギュ」
オッケー。
まず、さっきシロナさんの別荘に戻った。これはオッケー。
次、なんか疲れてたから寝転がった。これもオッケー。
その時レナさんに膝枕してもらった。……オッケーオッケー。
そして、今。起きたらペティに咥えられて何処かに連れ去られている―――
「オッケーじゃない!」
「ペァギュ?」
「うひゃあっ」
ペティ首かしげないで落とされそうで凄く怖いよ!?
「ペァギュ、ペァギュ」
「ひぃっ、うわっ」
だからって頷かないで~!
「ち、ちなみに、ど、何処に向かってるの?」
「……ペァギュ」
『ペァギュ』じゃ分かんないって。
まあ、寝起きというのもあってそれ以上の反抗はしないけど。
そうしてたまに落とされそうになりながら数分後。
「ここは……『思索の原』……!?」
「ペァギュアァァァァア!」
ど、どういうこと!? 確か『思索の原』ってヤグルマの森からしか行けないんじゃないの!?
『いいえ。森は繋がっているのです』
そんな声と共にビリジオンが姿を現わす。
『お久し振りですね、ブール』
「……喋れたんですね。お久し振りです」
『いえ、これはテレパシーです』
「うん、まあ、正直どっちでも良いです」
何だかんだで喋れるポケモンは居る(はずだ)し、準伝説ともなればテレパシーはデフォルトで付いてる能力だろう。ルカリオだって出来るし。
「それで……ペティ、どうしてここに?」
「ペァギュアァ。ペァギュ……ペァギュアァァァァア!」
『…………成る程、話は分かりました。……しかし……貴女がそうなるのも中々珍しい。ふふっ』
「ペァギュ……」
おお……ビリジオンの笑い声とか、ペティのたじろいだ姿とか、レアだ。SRだ。
『ではブール、新たにこの草笛を授けましょう』
「あ……ありがとうございます。……その」
『分かっています。悪しき者に奪われたのでしょう? 貴方の責任ではありません』
「……そう言ってもらえるとありがたいです」
うん……実は直前になって思い出したから。貰った事さえ覚えてなかったから。ごめんなさい。
『それに、むやみやたらに吹かれても困りますしね。貰った事を忘れてるぐらいがちょうど良いのです』
バレてる!? これ、バレてるよね!? ねぇ!?
「あ、あはは……」
「ペァギュアァァァァア」
『えぇ。ブール、これからも頑張ってください。……ただ、
「
『あの悪しき者に毒されたキュレムとの戦いで使った
「……」
ごめん、一瞬『みちづれ』の事かと思った。
「あれはもうやらないですよ。そもそもあれ使うような状況には滅多にならないですし」
『可能性はゼロではないでしょう?』
「いやいや、あれ使うような相手なんて伝説のポケモンだけですって」
『その伝説のポケモンが何体居ると思っているのです?』
「え……」
『それに貴方は、人間ならば一目見ることすらできない私に出会っています。それも二回』
ここは笑うべきなのかな?
「使いませんよ。本当に必要な時以外は」
『…………その本当に必要な時、とは?』
「俺の仲間に手を出した時」
レナさんとか、メイコさんとか、ハッサン、ペティ、ギィカ、レイカ、他にも居る。
俺が本気で怒った時、『ブラッディモード』を使わないとは言い切れない。だから、そこまでは約束しない。
『……『ブラッディモード』は貴方を
ゴウッと風が吹き、次の瞬間にはビリジオンは居なくなっていた。
「……帰ろう、ペティ」
「ペァギュアァ」
「うわっ」
ペティがのしかかってきた。そのまま、暫く一緒に遊ぶ。たまにはこんな事もしないと、息が詰まっちゃうよね。
―――でなければ、死にます。
「それで皆を助けられるなら、それでも良いよ」
ビリジオンの最後の言葉に、小さな声で言い返す。
「ペァギュ?」
「ん? どうしたどうした? もっと掛かってきなよ!」
「ペァギュアァァァァア!」
『思索の原』に笑い声が響いた。
2043文字です。
お待たせしすぎました。いやぁ、他に書いてる小説が忙しくて……。
次からは残る二つのジムバッチを回収して、ようやく四天王戦……の前にチャンピオンリーグが……うあぁぁぁあ!?