Fate/Resident Evil 型月ハザード   作:あ^〜心がゆらゆらするんじゃ^~

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一話、ココハ ラクーンシティ

□主人公視点

 

 

 僕は今路地裏で暮らしている。所謂ホームレスというものだ。もしこの世界に路地裏同盟が存在するのなら僕も加盟したいところだ。

 

 何故、こんな事になっているのか。そもそもの原因は僕にもわからないが、事の発端は三日前。目が覚めたら見覚えの無い路地裏にいた。その前の記憶が曖昧なのだが自分で来たわけでは無いと言う事は確かだと思う。何故なら、ここは海外だ。自慢ではないが、僕はこれまでの人生において日本から出た事が無い。そんなパスポートを持ってない僕が目が覚めたら海外の路地裏にいたのだ。

 ついに世界がバグってしまったのだと諦め現状確認をしようと気持ちを落ち着かせると、身体にある違和感を覚えた。

 あったモノの感覚がなく無いはずのモノがあるのだ。具体的に言うとちん○んとお○ぱいだ。胸はやんわりと膨らみ足の付け根にある筈のモノが無くなっている。そして、以前には身に着けたことも無い桜色の和服に包まれている。

 焦りから汗が出て、急いで路地裏から出て街のショーウィンドウのガラスに映る自分の姿を確認した。

 そこには、見覚えのある(・・・・・・)淡い桜色の髪を静かに揺らした和装の美少女がいた。

 

 ――どう見ても桜セイバーだ。

 

 『Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚』に登場する、「剣士」のクラスのサーヴァント。その名も沖田総司。

 たぶん僕は型月の世界に来てしまったのだろう。最初は大聖杯によって召喚されたのかと思ったが、マスターどころか聖杯戦争の気配もない。霊体化する事も出来ない。だけど、桜セイバーになっているという事は型月の世界だろうという事は十分に有り得る。ならば、この世界に僕の家も何もかも無くなっているだろう。普通に生きて来た筈なのに、いつの間にかホームレスとか。人生何があるか分からない。

 和装の東洋人はどう見ても目立ち、人前に出るとどうなっても目立つため迂闊に行動も出来ず裏路地を彷徨いながら三日経ったのだ。

 今までなんとか生きてこれたのは、英霊なだけあって凄まじい身体能力のおかげである。すぐに吐血してしまうのは玉に瑕だが、コンクリートジャングルを駆け巡るのは今まで味わったことも無い爽快なものだった。パルクールレースにハマる人の気持ちもわかった気がする。

 

 

 このまま裏路地でホームレスとして生き続けるのは辛いものがある。だが、戸籍も無ければパスポートも無いのだ。英語もあまり話せないから会話も出来ない。どうしたものか、とビルの上から街を見下ろしてると、僕のホームラウンドである裏路地で人が争っているのを見付けた。ただの喧嘩かと思ったらどうにも様子がおかしい。目を凝らして見ると、片方の女性が正気を失った様子で男性に噛み付いていた。

 

「アレは食屍鬼(グール)?」

 

 観察を続けていると、噛み付かれた男性も同じ様に正気を失った。

 食屍鬼が襲ったら食屍鬼になっただろうか。もしかしたらネロのような魔術師派生の吸血鬼が碌でもない事を企んで碌でもない事をしているのかも知れない。最早、厄介事の臭いしかしない。

 とはいえ、アレが食屍鬼ならば何処かに死徒が居るバズだ。そう思いビルからビルヘ、音も無く建物の隙間を飛び回り街の様子を探る。

 驚いた事に先程と同じような光景が至る所で繰り広げられていた。

 やはり、あの食屍鬼は感染型のようだ。タタリのような街一つ滅ぼす様な大食漢吸血鬼が街にやって来ているのかもしれない。そんな大物とか僕だけではどう考えても手に余るだろう。

 しかしまあ、これだけ大胆に行動するという事は魔術師ではないだろう。神秘は秘匿すべし。僕が何もしなくても、魔術師やら埋葬機関やらがなんとかするだろう。

 

 ――そう思っていた時期が僕にもありました。

 

 魔術協会や聖堂教会が動く前に政府が動いてしまった。確かにあれだけ大規模な食事が行われれば誰でも気付く。

 ウイルス感染と判断したのだろう政府は鉄の壁で瞬く間に街を封鎖してしまった。流石サムおじさんだ。何事も規模がでかい。だが、爆撃大好きサムおじさんの事だ。封鎖ときたら次に来るのはたぶん空爆だろう。

 このままこの街に居れば僕も巻き添えを貰ってしまう。吸血鬼も僕がいないところでやってくれればいいのに、とぐちりながら抜け道を探すも、隙間なく封鎖され機関銃を持った兵士に守られている。

 今の僕なら突破出来るだろうけど他に方法があるなら強行突破は最終手段だ。それにこんな事に巻き込んでくれた吸血鬼も出来るなら切り捨てたい。

 逃げる手段を探しながら、混乱する街の中を彷徨く。今は僕の格好を気にする人間は居ないので気が楽だ。

 

「キャアアア!」

 

 街の中心部には人は少ないが、居ない訳では無いらしく悲鳴が上がった。今まで通りに見捨てて行こうと思ったが、襲われていたのは少女のようで見てしまった後では見過ごすのも気分が悪い。

 

「新撰組一番隊隊長、沖田総司。推して参る! ……なんちゃって」

 

 刀を抜き、頭をよぎった台詞を口に出す。気分が高揚し頭の中が戦闘に切り替わるのを感じた。縮地によって瞬時に距離をつめ同時に八体の食屍鬼の首に剣を通し少女の前に躍り出る。剣術は身体が覚えていた。

 少女と向き合い自分の身体で食屍鬼を少女の視線から隠す。静かに納刀すると後ろでバタバタと倒れる音が聞こえた。

 

『あの、ありがと。お姉さんはだれ?』

 

「……」

 

 さて、助けたはいいがどうしたものかと嘆息する。僕は英語が得意ではない。だからと言って黙って置いて行こうにも、助けた少女を置き去りにして行くのは流石に人としてどうだろうか。

 

『お姉さん?』

 

 黙っている僕に対して不安に思ったのだろう。僕の顔を見上げながら少女は再び僕に呼び掛けた。

 このまま黙っているのも悪いと思い、取り敢えず自己紹介をする事にする。それくらいなら僕でも出来る。名前は、沖田総司でいいか。この身体は沖田総司だし。

 

『私の名前は沖田総司』

 

『おきたそーし? 私、知ってるわ。日本の有名なサムライの名前ね。本物なの? もしかして私を助けに来てくれたの?』

 

『そう』

 

 早口で捲し立てられるが、殆ど何を言っているか分からない。分からないので適当に返事を返しておく。

 日本とかサムライと言っている所を見るとサムライかどうか聞いているのだろう。どちらかといえば大和撫子だが、外国人にしてみれば刀を持ってる和装の日本人は誰でもサムライに見えるのだろう。

 返事をすると何故か抱きつかれたが、サムライは珍しいのかも知れない。

 

『ありがとう、そーし。私の名前はアンジェラ。アンジーって呼んで』

 

『分かった。アンジー』

 

 取り敢えず、何故か懐かれてしまったようなので連れて行くか。途中で誰か居れば押し付ければいい。そう思い僕はアンジーの手をとった。

 

□アンジェラ視点

 

 

 一瞬にして世界は変わってしまった。

 

 いつもの様に学校に行き勉強をしているとお父さんの会社の人たちがやってきた。彼らは怖いくらいに急いでいて、言われる通りについて行って車に乗った。

 しかし、急いでいたせいか車はすぐに事故に遭って私は意識を失った。

 

 目が覚めると私は引っ繰り返った車の中にいて、シートベルトを外し這いずりながら車を出た。

 車から出ると、いつも見ていた筈の景色なのに違うものになっていた。あちこちで事故で壊れた車が煙を上げ、建物のガラスは割られていた。

 怖くなった私は、学校に戻る事にし歩を進める。しかし、途中で私は化け物に出会ってしまった。

 最初はただの人かと思ったけれど、様子がおかしく、そして私に気付くと襲い掛かってきた。

 悲鳴を上げながら一心不乱に走る。しかし、前からも同じ様な化け物が現れ。もうダメかと思ったその時。

 

 ――優しい桃色の風が私を包んでいた。

 

 包んでいたと言うのは錯覚で、桃色の風だと思ったそれは美しい人間だった。淡い桃色に光るストロベリープラチナブロンドの髪を風に揺らし、髪と同じ様な色と紅色の日本風の服に身を包んだ東洋人だ。

 東洋人は儚い見た目とは裏腹に、とても強く。強いと言うのはどう倒したか見ていないので結果論だけど、私が分からないほど一瞬で化け物を倒してしまった。

 

 彼女は私の東洋人のイメージ通り寡黙で余り話さないが、名前をオキタソーシと名乗った。前に学校の図書室で読んだ、歴史の本に出てくる日本のサムライと同じ名前だ。その、本と違ってソーシは女性だが昔の事を書いた本だ。間違えてしまうこともあるだろう。だって、その本に書いてあった以上にソーシは強くカッコ良かったから。

 しかし、ソーシは昔の人だ。昔の人のソーシが何故? もしかして、私を助ける為にやってきてくれたのだろうか? そんな淡い期待を持ちつつ訪ねると、そうだと彼女は言ってくれた。半信半疑だったが、きっとソーシはヒーローなのだろう。ソーシが居れば、きっと何が来ても大丈夫だ。そう思える、安心感と強い存在感がソーシにはあった。

 差し出された、手をとる。私に合わせて歩幅を合わせてくれるソーシ。強いだけではなく優しく。正しく彼女は私の思い描くヒーローだった。




・桜セイバー―数多くの居るセイバーの亜種。真名は沖田総司。原種は青セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)。他に黒セイバー(闇落ちアーサー王)、赤セイバー(皇帝ネロ)、 紫セイバー(ジャンヌ・ダルク)、魔神セイバー(オダ・ノブナガ、沖田総司) 、セイバーライオン(サバンナの王者)などが存在する。みんなちがってみんないい。

・食屍鬼―吸血鬼が血を人に与え動く死体になったモノ。しかし本作品に出てくるのは食屍鬼ではなく、Tウィルスによってゾンビになってしまった人間達。

・ネロ―ネロ・カオス。魔術師あがりの死徒。永遠を求めた結果体内に666の獣を内包し混沌と化した。本作には出ない。……と思う。

・タタリ―元天才錬金術師の吸血鬼。の呼び名の一つ。未来を計測し「人類滅亡」に辿りついてしまい、それを回避するため数多くの策を講じるも何れも失敗に終わり「より明確な人類滅亡」という計測結果を見せ付けられ発狂してしまった。その後、死徒となり「人類滅亡」を回避するためタタリとして虐殺を行ないつつ、より強大な存在である真祖の肉体を得て再び第六法に挑もうとしている。本作には関係ない。

・魔術協会―神秘を秘匿し魔術を発展させる為、日々根源を目指し精進する魔術師達によって組織された組織。マジキチ。本作には存在しない。

・聖堂教会―型月世界最大の宗教団体に存在する、教義に反したモノを熱狂的に排斥する者たちによって設立された、「異端狩り」に特化した巨大な部門。マジキチ。本作には存在しない。

・路地裏同盟―やんごとなき理由によって裏路地に住まざるを得なくなってしまった少女達によって、厳しい裏路地の環境でも生きていくために作られた集団。裏路地の平和を守るため、日々裏路地を見回り悪しきものと戦う。おそらくは型月界唯一の良心。

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