如何にして隊長を尊敬している戦車道に対して真面目な黒森峰女学園機甲科生徒達は副隊長の下着を盗むようになったか 作:てきとうあき
3部作言ってましたが、みほ視点はやめた方がいいと思いましたので無しとなります。
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sakuさん(http://www.pixiv.net/member.php?id=298168)に表紙・挿絵としてこの小説仕様の絵のを頂きました。
IF外伝【もう、私の物】の最後の場面に挿絵として挿入させていただいてますので、よければご覧ください。
pixivの方は前後纏めて投稿する予定です。
-1-
彼女を始めて見たのは去年の黒森峰との練習試合の時であった。
その時、なんとなしに一つの戦車に気を惹かれたのだ。
その戦車は他の戦車とは明らかに違った動作をしていた。
勿論、技量的な面でも他とは一線を画していたが、特に気になった点は別の面にある。
動作が瞬間的に発生しており、全ての行動が早いのだ。
状況判断に優れているというのとも少し違う。
迷いがなく、躊躇いがなく、自分の思う様に自由に動いているといった風である。
そう、言ってしまえば"楽しんでいる"というのがその行動の節々から感じ取られるのだ。
操縦や砲撃の思い切りの良さと不安の無さ。
俗な表現になるがアンツィオ風に言えばまるで"ノリにノっている"といった体だろうか。
それは終了後に件の戦車から降りてくる搭乗員の表情を見て確信へと変わった。
しかし・・・その戦車長である彼女・・・・・・西住みほの表情を見て何か引っ掛かりを覚えた。
笑ってはいる。
笑ってはいるのだが何か他の搭乗員とは違う物を秘めている様な印象を抱かせる笑みであった。
そんな所があっても。いや、そんな所があるからこそだろうか。
私は猛烈なある欲求に支配された。
その欲求は私の心の奥の枯れ果てた筈の井戸の其処の石の隙間から湧き出ると、凄まじい速度で溢れ出し私の心を埋め尽くした。
いいなぁ・・・アレ。
アレ欲しいなぁ・・・。
その欲求は私の心を征服し尽くすと、私に餌を求める雛鳥の様に騒ぎ始めた。
最も仮にそれをイメージとして具現化したのなら、"雛鳥"などと可愛らしい表現には絶対にならないだろうが。
・・・・・・ほしいものは手に入れるのがわたしのやりかたね。
-2-
それから私は西住みほとその周辺環境である黒森峰と西住流について調べ上げた。
この聖グロリアーナには他校の偵察や情報収集等を行う非常に高度な情報機関が存在しているので、この手の事は十八番と言っても良い。
西住みほは当然として周辺環境、特に西住流との関係は重視して調べさせる事は忘れない。
本人との交流をしておくのも重要である。
幸い、サンダース程ではないが聖グロリアーナも裕福な学園艦だ。
黒森峰も質実剛健を旨としているので意外に思われるかもしれないが、あの学校も実は経済的にはかなり豊かだ。
そして互いに強豪校であるから練習試合を結構な頻度で組む事もそう不自然ではなかった。
練習試合の度に機会を作っては副隊長である彼女に話しかけ、折を見ては紅茶の席に誘った。
ここで私は戦車道についての話題は一切振らなかったし、それは同席者にも徹底させた。
最初はどうやら戦車道についての話だと思っていたらしく困惑していたが、趣味の話を振ると嬉々としてボコというヌイグルミについて語りだした。
特定の趣味に通じている人に良くある事だが、彼女もそのボコの事になると途端に早口になる様だ。
私はそれを決して嫌な顔を見せず、絶妙なタイミング相槌を打ち、笑顔を浮かべて楽しそうに見えるように努めた。
いや、実際に彼女と話しているのは非常に楽しかったが、そのボコという物には然程も興味が沸かなかったのだ。
もちろん、そうは決して見えないよう見せる為に此方から質問を投げたりもした。
その時も知ったかぶったり、無理に同調しているようには見せず、今日はじめて聞いた初心者であるが興味を持って色々と知りたいといった風を装ってだ。
案の定、彼女は非常に親身になって色々教えてくれた。
そうして短いが楽しい時間をすごした後に彼女に提案した。
「今度、一緒にボコを買いに行くのに付き合ってくれませんこと?」
彼女は非常に喜んで了承してくれた。
・・・・・・それもそうだろう。何せ彼女の周りにはボコの趣味に同調してくれる人はいないのだから・・・。
連絡先も聞き出し、予定が合えば一緒に行こうと約束をしてその日は別れた。
それから"偶然"互いの学園艦同士が同時に寄港するタイミングが増えた。
学園艦は生徒達の自立心を向上させるというのが基本的な意図であり、操艦自体も生徒が行っているだけあってその航行に関しては生徒達の裁量が非常に大きくなっている。
その権限を"生徒"のどの部分が保有しているかは学園艦による処である。
学校によっては生徒会であったり自治会であったりするが、戦車道強豪校に共通するように当校でも戦車道関係者による裁量が強くなっている。
無論、航行ルートを決定するにはそれなりの理由が必要ではあるが、"それなり"の理由を用意する事など造作も無いことであった。
そもそも航行ルートの提案が対立する事など無いし、他も反対する理由も無いのだから問題なく自分の要望は通っていった。
ましてや、"黒森峰と練習試合をする"という大義名分を容易く用意できるのだから。
機会が増えれば練習試合以外でも西住みほ―――もうみほさんと呼んでもいいだろう―――と一緒になる機会も多くなった。
最初はみほさん以外にもそのお友達が4人ほど一緒であったが、徐々に二人きりで過ごす時間が多くなった。
約束のボコを買いに行く日、待ち合わせ場所に15分前につくと噴水の前にそれは可愛らしい格好をしたみほさんが立っていた。
私とのデートに気合を入れてくれたと思うと嬉しいが、こんな子が一人で立っていたら悪い虫がつくだろうに。
「おまたせ、みほさん」
「そんな!勝手に私が早く来てただけですから!」
聞けば楽しみすぎて2時間前に来ていたらしい。
それは・・・なるほど、予想以上の反応だ。
今までの彼女の情報を思い出す。
姉以外の人間は自分を見上げてくるばかりで、彼女にはこうして二人で遊びに行く対等の友人がいなかったのだ。
・・・・・・馬鹿な人たちね。戦車道しか知らないから・・・。
戦車道にだけ限定した関係を築けば彼女と対等でいられる訳が無いのに。
最も、黒森峰の生徒に戦車道以外で考えろとは無理な話だ。
良くも悪くもそれが黒森峰なのだろう。
ことこの場合においてはそれで助かっているのだが。
そのお蔭でいいヒントをもらった。
私も戦車道においては彼女とは対等になれない。
"今の"彼女にはそうではないが、西住みほという存在に対しては対等には決してなれない。
戦車道においては彼女は異才の存在であった。
それを念頭において彼女を観察し、情報を吟味すると一つの事に気づいた。
"彼女は戦車道を楽しんでいないのでは?
・・・・・・なるほど、西住流は彼女にとってただの枷でしかないのだ。
そう理解してから私は彼女と戦車道以外の交流を持つ事に専念したのだ。
こうして戦車道とは関係ない事で二人で遊びにいくなど無かったのだろう。
一緒にボコのヌイグルミを買いに行くと、みほさんにお勧めのヌイグルミを選んでもらった。
その可愛らしい顔に真剣な表情を浮かべてヌイグルミを選定している様は、見ているだけでとても楽しかった。
「これ!これなんてどうでしょうか」
そうしてしばらくするとどうやら決まった様だ。
「このボコ、目が青くてダージリンさんに似ていると思うんですよ!」
なるほど、確かに目が青い。
そのボコがいた棚に目を向けると微妙なカラーリング違いが何種類か並んでいた。
「みほさんはこのボコを持っているのかしら?」
「いえ、その子までまだ手が回ってないんです」
そう・・・とだけ返事をして選んでもらったボコとその隣に並んでいたボコを手にとってレジに進んだ。
そして買った瞳が青いボコをみほさんに渡した。
「え?これって!」
「今日付き合ってくれたお礼よ。
折角選んでもらって悪いのだけど、こっちはみほさんに貰って欲しいの。
私はこっちを持つわ」
そう言って買ったもう一個の方のボコを見せる。
選んでもらったボコの茶色の瞳をした色違いを。
「みほさんには私に似たボコを持っていて欲しいの。
私は此方のみほさんに似た茶色の目をしたボコを大事にするわ」
そう言うとみほさんは感極まったように静かに泣き出した。
「あ、ありがとうございます・・・大事に・・・絶対大事にします!」
「そこまで喜んでもらえて嬉しいけど、泣くと可愛いお顔が台無しよ。
はい、ハンカチ」
私はそう言いながらもハンカチは渡さず、自分の手で目元を優しく拭いてあげた。
そして、軽く頭を抱きしめるように寄せて囁いた。
「私達はもうお友達。そうでしょう?」
-3-
時が流れ、私はみほさんと更なる交流を深めた。
練習試合を何度かしては談笑をしたし、二人で出かける事も増えた。
此方の学園艦に招いて茶会もした事もある。
アッサム等此方の他の生徒とも関係を深めて欲しかったのだ・・・将来の為に。
事前準備は十全だろう。
土壌を耕すのも、種をまくのも、水遣りも充分すぎる程だ。
しかし、収穫のチャンスは来ない。
こればかりは容易くできない。
何か決定的な事が起きないと彼女は黒森峰から・・・西住流から離れない。
その最大の課題を何とかする機会がなんと自ら手を動かす事無く訪れた。
全国大会決勝戦で黒森峰が敗退。
敗因はみほさんが自らのフラッグ車を放置して人命救助に向かった事だ。
掛替えの無い好機だ。
好機をただ見送るだけの愚者になってはいけない。
自ら行動し、準備し、努力して動いた者だけが好機を物にして勝利するのだ。
私はOG等の戦車関係者の人脈をフルに活用して、みほさんを叩く流れに持っていかせた。
時には西住流門下生に対して「決勝で無様に敗退したそうね。本家の次女さんが原因で」など煽らせたり、時には戦車道雑誌関係者には「西住流らしく無い行動」「自ら勝利を捨てた」等という風潮に持って行かせた。
西住流関係者に当人にツテがあれば、直接家元に苦言を言わせた。
勿論、後々に自分の関与を疑わせる様な甘い事はしない。
伊達にルネッサンス時代に追加のスパイが貰える訳ではないのだ。
そして、みほさんの動向も常に監視させていた私に、みほさんが黒森峰学園艦を離れて熊本の実家に帰るという情報が届いた。
私は即座に熊本に赴き、みほさんが熊本についた初日は恐らく母親である家元と対面して話あっているだろうから一晩どこかで過ごし、次の日から行動起こした。
朝から西住家を訪ねて呼び鈴を鳴らした。
『どちらさまでしょうか』
「ダージリンと申します。みほさんに会いに来ました」
『お約束はされていますか?』
「いいえ」
『・・・しばしお待ちください』
そう言うとインターホンが無音になった。
恐らく、みほさんに確認しているのだろう。
『みほお嬢様は誰にも会いたくないと仰っています。
申し訳ないですがお引取りを』
それほど長くない時間だけ待たされると予想通りの答えが返ってきた。
「みほさん本人の口からそれを聞けませんか?」
『・・・申し訳ありませんがお引取りを願います』
「・・・解りました。私はそこで待っていますのでみほさんの気が変わりましたらお願いします」
それだけ言うと、私は正門から少しだけ離れて塀にもたれる形で立った。
さぁ、持久戦と行こうか。
-4-
正午になり太陽が頭上で輝くようになった。
日傘をさしているがそれだけではこの暑さはどうしようもない。
しっかりと水分を取って脱水症状に陥らないように気をつける。
倒れるには"まだ"早い。
夕方になり、気温はだいぶ落ち着いてきたが流石に10時間弱立ち尽くしているのは足が辛くなってくる。
だがまだ萎える訳には行かない。
何人かの使用人が正門横の小門から出入りする時に私を見ていくが、私は関せずと起立を続けた。
夜になった。
まだ気温はそれほど低くはなっていないが、流石にまだ夏とはいえ夜は冷え込むだろう。
横に置いた鞄から上着を取り出して着込む。
そうするとまた小門が開き、そこから割烹着の女性が顔を出した。
「・・・貴女はみほお嬢様とどういう関係なのですか?」
その声には聞き覚えがあった。
恐らく、インターホンで対応した者だろう。
「友人です」
私は即答した。
「ただの友人の割には随分熱心ですね」
「ただの友人ではありませんから」
ふむ、この様子だと本当にみほさんに私の事が通っているか怪しい物だ。
最もそれも致し方ないのかも知れない。
恐らくみほさんの事だ。
使用人たちからも大切にされているのだろう。
となるとこんな怪しい人物の話を傷心のお嬢様の耳にわざわざ入れる事も無いと判断してもおかしくは無いだろう。
「みほさんに伝えてください。
私はまだ貴女のボコを大切にしています。
もし、みほさんが私のボコをまだ持っていてくださるのなら、私達は友人の筈です」
「・・・解りました。
しかし、期待しないようにお願いします」
これで流石に唯の他人とは思うまい。
後は時間の問題だろう。
深夜となった
流石に足が限界となったので地面にハンカチを敷き、腰を落とす。
なに、まだ気力と精神は十分だ。
カノッサの屈辱で有名な神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は雪の中で裸足で三日間祈り破門の解除を願った。
張良は自分に靴を拾わせた老人に五日後の朝にここに来いと言われ、まだ日が昇らぬ深夜の内から赴いて待った。
劉備は三顧の礼で孔明を迎える時に、王であるにもかかわらず野人であった彼が昼寝をしている事を知ると起こさずに立って待った。
どれだけ熱意があるのか、どれだけ真剣なのかを判断してもらうにはこうして身を削るのが一番だ。
こんな程度の事でみほさんが手に入れれるのならば安いものだ。
必要ならフィンセント・ファン・ゴッホの様にアルコールランプの上に手をかざすことだってしてやる気概である。
・・・流石に深夜でも立ち尽くしているのは不自然だろう。
軽く膝を抱えて目を瞑った。
まだ明日もあるのだから体力を温存しなくては・・・。
朝になった。
再び立って日傘をさして待つ。
正午になった。
用意していた飲み物が尽きた。
まぁ頃合だろう。
数時間がたった。
汗が濁流のごとく流れ、目が霞んできた。
足は振るえ、意識が朦朧としてきた。
ふふふ、そろそろ丁度良いかもしれない。
私は視線を向けず、意識だけを正門に据え付けられた監視カメラに向けた。
あれからあのカメラが此方をずっと向いているのは気づいていた。
そうだ、良く見るといい。
私はもはや体力の限界で失神寸前だ。
倒れるのも時間の問題である。
そうしていると"正門"が開いた。
勝利を確信して其方に視線を向けると、予想通りみほさんが必死になって此方に向かってきた。
私はみほさんの方へと駆け寄ろうとしたが、足がもつれて上手く走れずに転びそうになってしまった。
それをみほさんが胸に抱きしめる形で受け止めてくれる。
「・・・あっ ぃおしゃん」
「・・・・・・っ!ダ、ダージリンさん!ダージリンさん!」
水分が足りてないからか、みほさんの名前を呼ぶも擦れてまともな発声にならなかった。
そんな私の名前をみほさんが泣きながら連呼したのだった・・・。
-5-
私はみほさんに抱かれながら屋敷の中に運ばれ、布団に寝かされて飲み物と消化に良い食事を与えられた。
みほさん自ら運んできてくれた麦茶を少々みっともない勢いで飲み干す。
「・・・何でダージリンさんは私に会う為のここまでしてくれるの?」
私がコップを空にするとみほさんが不思議そうで不安そうな表情をしながら聞いてきた。
「そんなの決まっていますわ。
みほさんは私にとって大事なお友達ですもの」
「友達だからしてくれるの?」
ますます不安そうになりながらも聞いてくる。
・・・なるほど。
「勘違いしないで欲しいのだけど、全ての友人にこんな事ができるほど私は聖人じゃないですわよ。
大事な友人だから・・・みほさんだからしているのですよ。
みほさんが辛い目にあっていると聞いて居ても立ってもいられなくて駆けつけたのです」
みほさんの表情に見て解る様に安心と喜びが満ちていく。
「でも、ダージリンさん!嬉しいけどこんな無理をしては駄目ですよ!」
そう言いながらもみほさんは嬉しそうに私の口元に用意されたおかゆを運ぶのであった。
空腹が満たされると急に強烈な眠気が襲ってきた様でうつらうつらとしてきてしまった。
そんな私にみほさんは微笑ましい物を見るような、そして大事な物を見るような視線を向けてくれた。
「ダージリンさん、眠くなったら寝てください。
起きて元気になったらお話しましょう・・・」
私はその言葉に甘えて夢の中へと落ちていった。
きっと、夢の中では私はみほさんとずっと一緒にいるのだろう。
そしてそれはもう直に夢ではなくなるのだ。
-6-
「みほさんに聖グロリアーナに来て欲しいの」
よっぽど疲れていたのか。あれから私は次の日の朝まで寝てしまった。
朝食を頂き、みほさんと対面すると開口一番に本題を切り出した。
「・・・転校するのでしょう?」
「はい・・・良く解りますね」
「事情は良く知っていますし、みほさんとは短い付き合いですけど濃い付き合いをしてきたと思っていますから」
「でも・・・ごめんなさい。私、戦車道はもうやらないつもりなので・・・だから戦車道の無い学校へ行こうと・・・」
とても言い辛そうにみほさんが告白した。
折角私がここまで身をかけてきたというのに申し訳ないと思っているようだ。
「いいんじゃありませんこと?やりたくないものはやらなくて」
私がそう断じると、みほさんはえっ!と顔を上げた。
「で、でもダージリンさんは聖グロの隊長ですし!
私を勧誘しに来たんじゃないで「みほさん」
私はゆっくりと言い聞かせるように言った。
「私が今までみほさんを戦車道の・・・西住流の西住みほとして接してきましたか?」
そう、これこそが西住みほを手に入れる為に今まで打ってきた布石だ。
戦車道の西住みほではなく、西住流の西住みほでもなく、唯の個人としての西住みほを欲しているのだと。
「私はただの・・・大事な友人としてみほさんに来てもらいたいのです。
私の傍にいてくださればそれで構いません」
そう、誰を愛そうが戦車道を捨てようが構わない。
最後にこのダージリンの傍にいれば良い。
「本当に・・・?やらなくてもいいんですか?」
「別に無理に戦車道をする必要は無いのよ。
やりたくなったらまたやればいいし、やりたくなければ止めればいいの」
「戦車道を・・・西住流でもなんでもない私でいいんですか?」
「ええ、西住みほとして私の友人であってくれれば」
また何時ぞやの時の様にみほさんの目から涙が零れる。
「ふふふ、みほさんは良く泣く子ね。
でも安心して。もう貴女に悲しい涙は流させない。
これから一緒に笑ったり、泣いたとしても喜ばしい涙を流しましょう」
私もあの時の様に彼女を抱きしめた。
彼女から見えない所で勝利を確信した笑みを浮かべながら・・・。