機動戦士ガンダム00 ~切り拓く明日~   作:ジャスサンド

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今回はやや短めです。

スパロボVでのクロスアンジュとSEEDDESTINYの絡みが想像以上に多くて嬉しい


MISSION14 夜襲

日の輝きが沈んでそれなりの時が経過した夜。

砂漠地帯特有の乾燥し冷えきった空気が広がるようなそんな砂だらけの土地に爆発が巻き起こった。

その爆発源はアザディスタン軍のモビルスーツアンフであった。

太陽光受信アンテナの警護にあたっていた改革派のモビルスーツが攻撃を受けたのが原因であった。

そして爆発は一度では済まされなかった。

最初の爆発をきっかけに改革派のアンフが仲間と思っていたアンフの凶弾に倒れていく。

改革派の警護対象である太陽光受信アンテナを標的にした保守派が軍に忍び込み、改革派のアンフを強奪しそのまま行動を開始したのだ。

内乱の場と化した太陽光受信アンテナにいたのは彼らだけではない。

ユニオン軍に属するグラハムが率いるフラッグファイターがアンテナが標的にされる可能性を見越して、付近の空域を哨戒していたのだ。

その甲斐あって事の収拾がつく前に駆けつけることができた。

 

 

『中尉味方同士でやりあってますぜ』

 

『どうします?』

 

「一体どちらが裏切り者だ!?」

 

 

ダリルとハワードの戸惑いにグラハムは同意する。

ただ中身が違うだけで見かけ上同じ機体で同じ機体を撃ち合っているのだ。

見かけでしか判別できないグラハムらが手を出しかねていると、フラッグの通信とレーダーが乱れ、冷めた空気を駆ける赤白い光条がアンフを片っ端から撃ち抜いていく。

 

 

「この粒子ビームの光は、やはりガンダムか!?」

 

 

もはや視認するまでもない。

通信機器の妨害と長距離からの射撃、世界広しと言えどもそれらの両立が可能な機体をグラハムは他に知らない。

 

 

 

 

太陽光受信アンテナよりかなり距離を置いたところに、GNスナイパーライフルを携えたデュナメスとその傍らに待機するシェーレがあった。

 

 

『ゼンダンメイチュウ、ゼンダンメイチュウ』

 

『どっちが裏切り者かわかんねえんだ。喧嘩両成敗で勘弁してくれ』

 

「向こうからしたらたまったもんじゃないだろうな。見ず知らずの他人に自分たちの喧嘩止められちゃあな」

 

『見ず知らずなんてことはないだろ。俺らは十分名前が知れてると思うけどな』

 

「それもそうだ…テロリストとしてな」

 

『そういうこった』

 

 

デュナメスとシェーレの搭乗者らはそんな軽口を叩き合い、モニターが映し出す沈黙するアンフを確認する。

 

 

『ともあれこれで任務完了だな』

 

「ああ、とっとと戻ろうぜ。こんなところでぼさっと突っ立ってたらあのフラッグに何されるかわかったもんじゃねえ」

 

 

太陽光受信アンテナに傷を付けずに済んだことに安堵したのも束の間、どこからともなく飛来した四つの光点が夜の黒き空を引き裂く。

それらがミサイルだと知りデュナメスとシェーレは瞬時に銃口を向け、打ち落としにかかる。

 

 

『何!?ミサイルだと!』

 

「どこからぶっこんできやがった!」

 

 

GNスナイパーライフルとGNビームライフルから放たれた光の線がミサイルに接近するも、着弾する寸前に四つしかなかった光の一つ一つから小さな光がばらまかれた。

そして拡散した小型ミサイルらはアンテナ施設を破壊し、無音だった砂漠に轟音を撒き散らす。

 

 

「やられた、くそったれめ!」

 

『ジルウェ、フラッグが来るぞ!』

 

「ったく、次から次に面倒だな!」

 

 

悲観している暇はないようで、フラッグの一機が飛行形態でこちら目掛けて直進してくる。

シェーレがハルバードを引き抜き対抗しようとした時デュナメスが前に出てライフルを発砲した。

 

 

『こいつは俺が引き受ける!お前はミサイルを発射した奴を頼む!』

 

「…了解した」

 

 

それだけ告げるとシェーレは地から脚を離しミサイルが飛んで来た方角へと向かう。

フラッグ二機もミサイルを発射した者を追っているようで、変形を解いて人形になるとシェーレの接近に銃口を構えた。

だがそこから弾が発射されることはなく一時的に静止しただけでジルウェに手を出しはしなかった。

その間シェーレは二機のフラッグの脇をすり抜けていく。

 

 

「状況のわかる奴らで助かった。今俺らがドンパチやったって何の得にもならねえからな」

 

 

二機のフラッグの機影も消え砂漠の夜空を横切るシェーレの下方、砂を突き進む機体があった。

機影をピックアップしシェーレのモニターが機体をあっという間に識別する。

 

 

「イナクト…?何故AEUの機体が、まさかAEUの差し金か…いやそれはない」

 

 

口に出してからジルウェはそれはないと即座に否定してみせる。

AEUがアザディスタンの内乱に関与して得られる利益に見当がつかない。

 

 

「だがあれは確かにAEUの機体だ…余計な詮索は後回しだ。あれがミサイルを撃ったのは違いない。脚をもぎ取るのが先だ!」

 

 

ビームライフルの一射が放たれるもイナクトはアングルを向けもせずに、射線上から逃れた。

イナクトの脚部をもぎ取るはずだった射撃は砂を巻き上げるのみに終わり、目標には掠りもしなかった。

ビームを難なく回避したイナクトは照準を向けられたと知り逃避から一転、機体を翻し自らを撃ったシェーレに突っ込んでくる。

 

 

「野郎、やる気だな。うけてやるさ」

 

 

ソニックブレイドとGNハルバードが交わり、イナクトとシェーレは互いに真横を抜ける。

ハルバード片手にシェーレは機体が完全に振り向くより早く引き金を引き、背中をさらけ出すイナクトを狙い撃つ。

しかしイナクトはその行動を読んでいたとしか思えないような手早さでビームを避け、旋回すると仕返しとばかりにライフルに取り付けられた武装からミサイルを連射した。

異なる軌道を描く四つの光の玉をシェーレは身動ぎすることなく、落ち着いた銃身運びで一つにつき一射。

無駄なく全弾撃ち落とす。

ミサイルの爆発で黒煙が立ち込めシェーレとイナクトの境目は黒一色に埋め尽くされる。

 

 

「くそ、照準が!」

 

 

黒煙に消えた機体を捉えられずジルウェはライフルの銃口をイナクトがいた空間に向けたまま、シェーレを上昇させた。

高度を上げ上空から見下ろして敵機を探すも、既に機体は行方をくらまし何処かへと逃れてしまった。

黒煙でジルウェの視界が遮られたたった数瞬の内に戦闘を止め、逃走に戻ったのだろう。

 

 

「無駄のねえ奴だ、あのイナクトのパイロット……フラッグがこっちに追い付くのも時間の問題だ。ひとまず戻るか」

 

 

逃がしたのはネックだがそのミスをいつまでも引き摺っているわけにはいかない。

ジルウェは機体を元来た方とは別方向に動かし速やかに場から離脱した。

 

 

--------

 

 

 

 

 

アザディスタン都市部にもまたテロの手が潜んでいた。

クーデターを起こしたアンフと正規軍のアンフが炎に照らされた街中で弾丸を撃ち合い、あちらこちらで火花を散らしていく。

刹那の駆るエクシアが都市部に降り立ったのはその時であった。

エクシアはアスファルトの路面に脚を付けるや否や近場のアンフをGNブレードで一刀両断。いとも容易く機能停止に追いやる。

そして刹那は動く次の獲物を求めて己の意志の赴くままにガンダムを操る。

その彼の操縦するエクシアの戦いぶりを国連大使アレハンドロ・コーナーはホテルの窓を隔てた一室で見分するように眺めていた。

 

「避難しなくてよいのですか?」

 

「リボンズ君も見ておくといい。ガンダムという存在を」

 

 

自らの側近を務める緑髪の少年の進言にアレハンドロはそう返すと、再びエクシアに視線を戻す。

一見鮮やかに思えるが繊細さに欠ける無造作な剣捌き、直線的とさえ見える粗が目立つ読みやすい機体運び。

 

 

「あれがガンダム、素晴らしい性能だ…だが力任せだ、ガンダムの性能に頼りすぎている。パイロットは確か刹那・F・セイエイ、だったか」

 

 

本人も自覚しているのか定かではないのか感情を剥き出しにした戦い方だ。

ミッションでも問題行動を起こしていると聞く。

何故ヴェーダが彼を選んだのか他のマイスターより得体の知れない存在だ。

 

 

 

「あんな着飾った男の側にいて楽しい?リボンズ」

 

 

全機のアンフを鎮圧したエクシアを見つめるアレハンドロの側を離れホテルの廊下を歩く、リボンズの耳に唐突にそんな言葉が届いた。

リボンズは目端に声の出所を一瞥すると、口元に意味しげな微笑みを浮かべる 。

 

 

「なんだ君か?こんなところに何の用だい?」

 

「質問を質問で返さないでくれる?今質問してるのは私、そっちから先に答えを返すのが礼儀というものじゃないの」

 

「ふふ、それもそうだね」

 

その返しにリボンズは期待通りの回答だとでも言うかのように呟くと、瞬きをして二度口を開く。

 

 

「今はその必要があるのさ。人類を導くために彼の近くにいることがね」

 

「人間に従うのなんてあなたが一番嫌いそうなことだと思っていたけど、存外そうでもないのかしら」

 

「わかってるくせに、僕が人間と対等に、ましてや下に見られるのを良しとしないのを君も知っているだろう?」

 

 

無人の空間に視線を保ちながらリボンズは静かにほくそ笑む。

 

 

「今日はえらくご機嫌ねリボンズ」

 

「そうだね、そうかもしれない。久しぶりに彼に会えたからね」

 

「彼?」

 

「ちょっとした知人だよ、もっとも顔を合わせたことは一度もないけれど」

 

 

そう言って止めていた足を進めるリボンズ。

話しかけていた相手も去ったようで声も聞こえなくなったのを認識したリボンズは夜風に消えるエクシアにある種の念を込めた眼差しを送った。

 

 

(刹那・F・セイエイ、僕は君に期待しているよ)

 

 

 

 


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