あたしと比企谷の友達Diary   作:ぶーちゃん☆

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初めましての方は初めまして。
以前お会いしたことのある方は、また覗いてくださりありがとうございますm(__)m



今回は俺ガイルの中でも、さがみん程ではないにせよ、そこそこ嫌われ者のキャラクター、折本かおりに焦点をあてた作品となります。
さがみんといい折本といい、相変わらず一部の方にしか好まれないようなマニアックな選択でスミマセン。

まぁさがみんに限らず、私はヒロインの友達とか回想モブヒロインとか男の娘とか、そもそもが一部の読者さましか受け付けないマニアックなモノばかり書いてる斜め作者ですけれども……


というわけで、今回も一部の読者さま向けの作品ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。





再会編
日記1ページ目 この再会(であい)がもたらすものは


 

 

 

「今晩……君は、来ちゃいけない」

 

「ぼくたちはずっと一緒だ」

 

「……キャーっ……」

 

 劇の最中であろうとも、我慢しきれなかったのであろう、観客の女の子達から、無理やり押さえたかのようなキャーキャーというこもった歓声がそこかしこから聞こえてくる。

 んー、まぁ確かに気持ちは分からなくもないくらいに格好良いわ。

 

「やー、噂には聞いてたけど、マジで格好良いね、千佳…」

 

「かおりうるさい……! 今いいとこなんだから黙ってて……!!」

 

「……」

 

あんたどんだけ集中してんのよ……ウケる。

 

 

 

 あたし 折本かおりは、海浜総合高校に通う花の女子高生。あたしが花とかウケる!

 本日は、高校に入ってから出会った親友の仲町千佳と共に、ウチの高校からも程近い、県内有数の進学校である総武高校の文化祭に遊びに来ているのだ。

 千佳の中学時代の友達が総武に通っているらしくて、その子から招待してもらったんだとか。

 

 で、今はその招待してくれたという友達の事などさておき、千佳は絶賛ミュージカルに夢中なのである。

 まぁなにせ前々からずっと言ってたからねー、コイツ。総武の葉山くんと会ってみたいって。

 

 葉山くんはここらの高校女子の間では超がつくほどの有名人。モデルみたいなルックスの上に、結構強いらしい総武高校サッカー部のエースで主将ってんだから、そりゃこの界隈じゃ女子高生のアイドルになっちゃうよね。

 そんな葉山くんが星の王子様の主役の一人を演じてるっていうんだから、このクラスの出し物に女子が群がるのもまぁしょうがない。

 しかも王子様役の子がこれまた可愛いもんだから、この教室内は開幕からずっと黄色い空気に包まれている。

 

 

 とまぁそんなわけで、初めて入った総武高校でのあたしの思い出の一ページは、なんか知んないけどこの妖しい雰囲気のミュージカルで埋まってしまうことは、誠に遺憾ながら間違いないのだろう。

 

 てかこれってミュージカルだよね? さっきから歌も踊りも全っ然出てこないんだけど。これじゃミュージカルじゃなくてただの演劇じゃん。ウケる!

 

 

× × ×

 

 

「いやー、マジで超格好良かったよねー」

 

 ミュージカルという名のただの演劇も終演を迎え、あたし達は慣れない総武の廊下を適当にぷらぷら歩きながら、先ほどまで夢中だった演劇談義に花を咲かせている。

 また花咲いちゃったよ、ウケる。

 

「ねー、超ヤバいって! てかそう思ってたんなら、かおりももうちょい集中して見てなよー、あの尊いミュージカルをさぁ!」

 

 と、尊い……?

 

「いやいや、あたしもちゃんと見てたってば! 葉山くんは噂通りに超格好良かったし、ほら、王子様役の女の子も超可愛いかったよねー」

 

 そうなのだ。元々の目的は葉山くんが主役を演じるという演劇を見るだけのはずだったんだけど、いざ劇が始まってみると、相手役の女の子がこれまた魅力的で、そんな二人の謎の熱がこもった演技に、観客の子たちは怪気炎を上げていたのだ。

 だからあたしもちゃんと見ていたよ? って証明の為に、あえて葉山くん以外の話のネタを振ってみたのだが……

 

「……は? あんたなに言ってんの? 王子様役の子、男の子だから」

 

「……うっそ!? マジで!?」

 

 いやいや嘘でしょ。あんなに可愛い男なんて存在すんの?

 明らかにあたしより女子力が圧倒的に上じゃん。

 

「だってホラ、パンフレットに書いてあるじゃん。【男だらけの出演者がゲストの皆様をめくるめく夢の世界にお連れいたします……。支配人、腐海よりつかわされたプリンセス・海老姫】って」

 

 信じらんない……マジであの子って男の子なんだ……

 だ、だからあんなに妙な雰囲気だったのかぁ……これってBLとかいうヤツじゃん。だいたい腐海よりつかわされたプリンセスってなによ……

 てかあんなに夢中になってた千佳って、実はそっちのケがあったりすんの!? ツッコミどころ多すぎでしょ……さすがにそれはちょっとウケないわ……

 

 あたしが若干戦慄じみた視線を送っていると、千佳は少しだけ気まずそうにこほんと咳払いをひとつ。

 

「ん! まぁそれはさておき、そろそろちょっとお腹空かない?」

 

「減った!」

 

「じゃあどっか寄ろっか?」

 

「それあるー!」

 

 いくら格好良い男の話で盛り上がってようと、怪しげなBLの話に耳を傾けようとも、しょせん年頃の女とはいえ花より団子なのよね。

 文化祭なんてその団子がそこらじゅうにぶら下がってるようなものだし、花よりも団子を選ぶ我ら年頃の女たるあたし達は、演劇の話もそこそこに、適当に飲食店を催してそうな教室へと吸い込まれていくのだった。

 

 

× × ×

 

 

「んー……まあまぁ」

 

 ズルズルと麺をすすり、途中まで楽しみに取っておいた卵をくちゅっと潰して、いい塩梅にツユと混ぜながらごくりと飲んだあたしがボソッと一言。

 

「まぁ高校生の文化祭の出し物のお蕎麦屋さんじゃこんなもんでしょー」

 

 そんなあたしに、千佳がお揚げをはむはむしながら同意を示す。

 

 てか他校の文化祭に遊びに来て、よりにもよって月見そばとキツネそばを食べてるあたし達ってどうなのよ? 女子力低すぎなんじゃない?

 別に男子と来てるわけじゃないし、お腹膨れそうなお蕎麦でいんじゃない? と千佳からの提案で決まったわけだけど、まぁ別にあたしは男子が居ようが居まいが普段からこんなもんなので特に気にしない。ただ文化祭を楽しんでる女二人が蕎麦をズルズルすすっているサマがちょっとウケたってだけのお話。

 ま、蕎麦屋の他にはマンネリ気味で完成度が低そうなメイドカフェか、校庭にあった屋台のたこ焼きか焼きそばくらいしかなかったから、ある意味ベストチョイスかもねー。

 

「それはそれとしてさぁ、はぁぁ〜……やっぱ超格好良かったよね〜、葉山くんって!」

 

 どんぶりから直接ツユを飲みながら、千佳が満たされたような溜息を吐く。

 セリフは恋する乙女みたいなのに行動がオヤジっぽくてウケる。

 

「ね。さすがご近所のアイドルだわ」

 

 なんかご近所のアイドルとかちょっとバカにしてるみたいだけど、心からの褒め言葉なんですよ? 葉山くん。

 

 

 とは言うものの、正直なところ千佳には悪いけど、あたしはそれほど葉山くんに興味があるわけではない。

 なにせ話したこともない男なんだもん。ただ格好良いってだけでそこまで興味を持てという方が酷な話じゃない?

 

 実際に付き合ってみれば──あくまで友達って意味でだけど──興味も湧いてくるかも知れないけど、現状ではモニター越しにみるアイドルとなんら変わらない。

 例えば観光地なんかで、有名なお寺とかを見学した時に「へぇ、すごーい。……で? あとはどうしてればいいの?」って感覚に近い感じかな?

 ここら辺が、今も目の前でほわっと幸せそうな表情を浮かべている千佳みたいな恋に恋する乙女と、女子力が低いあたしの違いなのかも。

 

「てかそんなに葉山くん見れて嬉しいんならさ、総武の友達……なに子ちゃんだっけ? に紹介してもらえばいーじゃん」

 

「んー、紹介してもらえたら嬉しいんだけどねー、別に知り合いでもないから難しいんだってさぁ……。それになんか葉山くんは女王様に警護されてるらしくってさ」

 

 女王様“を”警護じゃなくって女王様“が”警護なの? ウケる! その女王様って何者!?

 

「へぇー、ま、よく分かんないけど、要は千佳の友達も、女子同士の複雑な人間関係に恐れおののいてるってわけか」

 

「そーらしいのよねー。なんか下手なことしてバレたら命の保障がないんだってー」

 

「命の保障! 女王様恐すぎウケる!」

 

 てかこれで近くに女王様が居たらあたしらもヤバいじゃん。絶体絶命過ぎて面白すぎる!

 

「じゃあその友達と関係無いとこで、ちゃちゃっと声掛けてみりゃいーじゃん! 友達になってくださいってさ」

 

「無理無理無理〜! わたしには無理だよそれ〜。わたしかおりみたいに神経図太く無いし」

 

 ちょっと!? そこであたしの図太さを例えに出す必要性とか無くない? 別に図太く無いし!

 なんて失敬な友達持っちゃったんでしょ、あたし。

 

「……じゃあかおりが声掛けてみてよー……」

 

「え〜、あたしそんな危険を犯してまで、そこまで葉山くんに興味ないしなー」

 

「たく……これだからかおりは女子力不足なのよ……」

 

 ほっといてよ……

 

 

 そしてそこまで語り合ったあたし達は、どんぶりに残ったツユを途中まで飲んで、ごちそうさまー、と蕎麦屋さんを出展していた2Cの教室をあとにするのだった。

 

「はぽん! 我の味が恋しくなったなら、再び我が城へと赴くがよいわ!」

 

 なんか奥から変な声が聞こえた気がしたけど気にしないでおこう。

 

 

× × ×

 

 

 腹も膨れたことだし、今一度各クラスの出展でも見て回ろうかという話に落ち着いた。

 

「かおりー、言っとくけどエンディングセレモニーのちょっと前くらいまでには体育館に行くんだよ!? 葉山くんバンドするんだからね!? 早く行かないといい場所なくなっちゃうから!」

 

「あー、もううっさいなー、何度も聞いたっての」

 

 ホント何度目? その説明されんの……

 そんなに心配なら、もう体育館行ったら……?

 

「あ! 見て見てかおりー! なんか3Bってトコでトロッコロッコってアトラクションやってるらしいよ? なんかコースター的なヤツかな!? 行ってみようよー」

 

 コイツ自由だなー……まぁあたしも人のこと言えないけど。

 こんなんなのに、なぜかあたしよりも千佳の方が周りから常識人と思われてるってあたりが納得いかない。

 

「……ぷっ、はいはい。行きましょ行きましょ」

 

 ちょっとなに笑ってんのー!? との千佳の喚きを軽く受け流し、あたし達は校門でやっていた受付で貰った校内案内を頼りに、その3Bとやらへ向かう。

 まさかそこで運命的な再会(であい)をすることになるなんて、思いもせずに。

 

 

 

「あ、あったあった! あれだよね、トロッコロッコって」

 

「んー、そうみたいね。なんか並んでるし、あたしらも並ぼっか」

 

 予想外の装飾になってそうな教室へと到着したあたし達。

 たかだか文化祭で、ここまで洞窟みたいな装飾を施すとかどんだけ気合い入ってんだか。でもあたし、そういうノリって嫌いじゃないよっ! 超ウケる!

 

 きゃーきゃーと悲鳴がおきている教室の横を通り、いざ列に並ぼうとしたところで、千佳が不意に感嘆の声を上げた。

 

「うわっ……見てよかおり! あの子、超美人じゃない!? 葉山くんといいあの子といい、総武ってレベル高っか!」

 

 千佳が指差したその先、3Bの教室から出て来た男女二人組。その女の子の方が超綺麗。

 ほんのりと頬を染めて気まずそうな面持ちのその子は、千佳が思わず感嘆の声を上げてしまうのも分かるくらいに、本当に美人さん。

 

 でも……あたしの目が捉えたのは、そんな美人が照れくさそうに頬を染めている相手の方だった。

 その美人さんと一緒に居るのが場違いなような佇まい。いや、顔の造形に関して言えばそこそこ整っているし、まぁイケメンの部類と言えなくもない。

 でも、どんよりと濁った目や程よく折れ曲がった猫背が、それらを全て台無しにしている。

 

 

 ──あたしはコイツを知っている。会うのは二年ぶり? 三年ぶり?

 その程度のことさえ定かじゃないくらいに印象の薄いヤツなんだけど、それでもあたしはコイツを知っている。

 

 あまりのレアキャラ具合と、こんなにも薄い印象なのに、美人と二人きりで文化祭を回っているというギャップの面白さに、気がついたらあたしはコイツに声を掛けていたのだった。

 

 

「あれ? 比企谷?」

 

 

 

 続く

 

 






というわけでまさかの新連載始めちゃいました(*´∀`*)

前々からずっと書きたくて、ホントは他に書かなきゃいけないものを書き終えてから始めたかったんですけど、どうしても自制心よりも執筆欲が勝ってしまって、とりあえずプロローグだけ書いちゃいました(苦笑)

欲望に負けてとりあえず1話だけしか書いてないので、2話以降の更新はまだまだ未定です(汗)



さて、今回のお話は

もしも八幡と折本の再会が原作よりももっと早かったとしたら、その出会いは二人に何をもたらすのか?

っていう考えから書いてみたものです。

ちなみに、今までは極力主人公の視点のみで書いてきましたが、今回の作品はその話その話でこの人の視点で書いた方が面白いかも!と思った視点で自由に書いてみたいと思っております。

先の話もまだまだ未定ですし、今回もそんなに長くならない予定なので、完結まで頑張りたいと思いますのでよろしくお願いいたします!


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