インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ   作:ラ・ピュセル

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第8話

ワイヤーブレードにより退路を断たれ、唯一とれる行動が、ガードして少しでもダメージを減らすしかない。全員がそう思った時、獣の雄叫びのような音が周囲に響き渡る。

その直後、ヴィクターを囲っていたワイヤーブレードが弾かれたようにしなり、砲弾もヴィクターに当たる前に爆発、四散した。

攻撃を防ぎ切ったヴィクターは急接近し、格闘戦に持ち込もうとする。

 

「くっ!まだまだ!」

 

ラウラもプラズマ手刀を展開し応戦する。ヴィクターは、始めから腕に付いていた爪で格闘戦をするようだ。動物のような四足歩行に見える構え方をとり、人型では出来ないような挙動でラウラを翻弄している。

 

「先程の現象、解析が完了しました!」

 

山田先生が声を上げる。

 

「さっきの、ワイヤーブレードが弾かれたようなのですか?」

 

箒が確認を取る。

 

「はい。あの現象は振動によるものです。共振というものを知ってますか?」

 

俺は覚えていることを口にする。

 

「えーと、物体が振動するとき、その物体が特定の振動数に達すると、振動だけで物体が自壊するっていうものですよね?」

 

「ええ、ですが彼のやっているものは規模とプロセスが違います。彼は空気の振動で音が伝わるのと同じ理屈で、対象に振動を与えています。また、その振動は振動数があまりに大きくなっていて、物理的な干渉が大きくなっています。結果的に振動が空気中に見えない壁のようなものを成形し、それに触れると振動が伝わり自壊、もしくは弾かれるのだと思われます」

 

シャルが顎に手を当て思案する。

 

「つまり彼相手の場合、物理攻撃は効かないってことか。僕の武装は実弾兵器がメインだから相性が悪いな」

 

「それだけじゃありません。元が振動のため遠距離武装としても機能することが可能です」

 

ふと、フィールドを見ると凄まじい光景だった。フィールドのあちこちに、爪で切り裂いたような痕が残っている。二人の方はいまだ格闘戦をしている。ラウラは疲労が目に見えているが、ヴィクターは勢いが全く衰えず攻め立てている。

ヴィクターの強烈な一撃が入ろうとした瞬間、動きが止まる。ラウラの方に目を向けると、左目が光っている。AICを発動させたのだ

 

「もらったっ!!」

 

ラウラがプラズマ手刀を構え突貫する。流石にAICを使えば妨害は無いと判断したのだろう。躊躇なく突っ込んでいく。

そこに獅子の咆哮が襲いかかる。モニターに表示されてる、ラウラのシールドエネルギーが急速に減っていく。

ヴィクターが冷静に話す。

 

「貴方の動きを止める能力、確かに脅威だが欠点が一つ。その力は対象の外側を止めるだけだということ。その内側から生じた実体の無いものには停止が効かないことです。だから黄金獅子の『轟獣烈破』は防げなかった」

 

千冬姉がアナウンスで宣言する。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒの続行不可により、摸擬戦を終了とする!」


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