インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
ワイヤーブレードにより退路を断たれ、唯一とれる行動が、ガードして少しでもダメージを減らすしかない。全員がそう思った時、獣の雄叫びのような音が周囲に響き渡る。
その直後、ヴィクターを囲っていたワイヤーブレードが弾かれたようにしなり、砲弾もヴィクターに当たる前に爆発、四散した。
攻撃を防ぎ切ったヴィクターは急接近し、格闘戦に持ち込もうとする。
「くっ!まだまだ!」
ラウラもプラズマ手刀を展開し応戦する。ヴィクターは、始めから腕に付いていた爪で格闘戦をするようだ。動物のような四足歩行に見える構え方をとり、人型では出来ないような挙動でラウラを翻弄している。
「先程の現象、解析が完了しました!」
山田先生が声を上げる。
「さっきの、ワイヤーブレードが弾かれたようなのですか?」
箒が確認を取る。
「はい。あの現象は振動によるものです。共振というものを知ってますか?」
俺は覚えていることを口にする。
「えーと、物体が振動するとき、その物体が特定の振動数に達すると、振動だけで物体が自壊するっていうものですよね?」
「ええ、ですが彼のやっているものは規模とプロセスが違います。彼は空気の振動で音が伝わるのと同じ理屈で、対象に振動を与えています。また、その振動は振動数があまりに大きくなっていて、物理的な干渉が大きくなっています。結果的に振動が空気中に見えない壁のようなものを成形し、それに触れると振動が伝わり自壊、もしくは弾かれるのだと思われます」
シャルが顎に手を当て思案する。
「つまり彼相手の場合、物理攻撃は効かないってことか。僕の武装は実弾兵器がメインだから相性が悪いな」
「それだけじゃありません。元が振動のため遠距離武装としても機能することが可能です」
ふと、フィールドを見ると凄まじい光景だった。フィールドのあちこちに、爪で切り裂いたような痕が残っている。二人の方はいまだ格闘戦をしている。ラウラは疲労が目に見えているが、ヴィクターは勢いが全く衰えず攻め立てている。
ヴィクターの強烈な一撃が入ろうとした瞬間、動きが止まる。ラウラの方に目を向けると、左目が光っている。AICを発動させたのだ
「もらったっ!!」
ラウラがプラズマ手刀を構え突貫する。流石にAICを使えば妨害は無いと判断したのだろう。躊躇なく突っ込んでいく。
そこに獅子の咆哮が襲いかかる。モニターに表示されてる、ラウラのシールドエネルギーが急速に減っていく。
ヴィクターが冷静に話す。
「貴方の動きを止める能力、確かに脅威だが欠点が一つ。その力は対象の外側を止めるだけだということ。その内側から生じた実体の無いものには停止が効かないことです。だから黄金獅子の『轟獣烈破』は防げなかった」
千冬姉がアナウンスで宣言する。
「ラウラ・ボーデヴィッヒの続行不可により、摸擬戦を終了とする!」