インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
俺達はアリーナに移動してきた。
すでにラウラとヴィクターは、アリーナの中央で機体を展開し待機している。
自分達は千冬姉、山田先生と一緒に管制室にいる。
千冬姉が告げる。
「それではこれより、ラウラ・ボーデヴィッヒ、ロットウェル・ヴィクター両名の摸擬戦を始める。制限時間は10分、時間切れかどちらかが続行不可になった時点で終了とする。尚、今回はデータ収集の為、勝敗の優劣はつけない。二人共、準備はいいか?」
千冬姉の問いに、二人は無言で頷く。
「よし、それでは始め!」
先手を取ったのはラウラだった。シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンが火を吹く。対しヴィクターは、急な砲撃にも動じず、最小限の動作で砲弾を躱す。
初手を躱されたことを気にも止めず、ラウラは砲撃を続ける。
連続の砲撃を、ヴィクターは飛翔することで回避する。
しかしそのスピードは、自分達のISより数段上のものだった。
「何あれ!?あれで素のスピードなの!?アタシ達のISでも、高機動パッケージ状態じゃないと出せないスピードと同等じゃない!?」
鈴が驚嘆の声を漏らす。
その時、砲弾がヴィクターに直撃しそうになる。恐らくラウラが、軌道を予測して撃っていたものだろう。
回避が間に合わず、直撃する。その瞬間、黄金獅子が一瞬ぼやけて見える。すると、直撃すると思われた砲弾が消えた。それと同時にラウラの近くで爆発が生じる。
「ほう…」
それを見た千冬姉が、面白そうに笑みを浮かべる。
セシリアが困惑しながら千冬姉に尋ねる。
「先生、今何が起きたのかわかったのですか?」
「ああ、機体はかなりのスペックだが、それ以上にヴィクター本人が人間としてのスペックを超えている。なにせ砲弾を掴んで投げ返したんだからな」
砲弾を投げ返した!? 逸らしたり、弾くならまだわかるが、投げ返すって常人離れしている!
「砲弾が当たる前に、横から力を加えている。それだけなら『逸らす』ことになるが、通常一瞬だけ加える力を任意の方向に軌道変更ができるレベルで加え続けていた。弾を見切り、投げ返すなんていうのは、並外れた動体視力と運動能力を兼ね備えている証拠だ」
出鱈目すぎる。しかも、さっき投げ返した位置はラウラのすぐ近くだった。そんな離れ業をやって、その上精密に狙っている。千冬姉の言う通り、人間を超えているといっても過言ではない。
「なかなかやるな。ならこれならどうだ!」
ラウラが次の手に出る。ワイヤーブレードを飛ばし、ヴィクターの上下左右、そして後ろを囲む。そこに砲撃を加える。投げ返そうとすればワイヤーブレードに搦め捕られるという算段だろう。
今度こそ当たる。そう思ったときだった。
グオオオオオォォォォォォォッ!!!
獅子の咆哮が鳴り響いた。