インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
「どういうことだよ、千冬姉!?」
パコンッ!!
すかさず頭部に衝撃が走る。
「織斑先生だ。何度も言わせるな。生徒になれと言ったのは事態を大きくさせない為だ。『ISではない。しかしほぼISと同じ物』、そんなものが世の中に知れ渡ってみろ。各国が何をしでかすか知れたもんじゃない。それなら、ISの研究の一環という名目で保護し、それの使用者としてこいつを生徒にするのが、一番の得策だ」
千冬は箒の方を見ながら、
「それに、アイツが絡んでくる可能性は低いとは言えない」
成る程、束さんのことか。確かにこんな状況を知ったら絶対飛んでくる。いや、多分もう情報を掴んでるかもしれない。
「というわけだが、一応本人に了承を得なくてはな。」
ヴィクターも頷きながら言う。
「重ねて感謝を申し上げます。私も貴方方に協力いたしましょう」
ヴィクターが手を出し、千冬も同意するように握手をする。
「さて、さっそくだが関連機関への報告として、黄金獅子のデータ収集をさせてもらいたいが大丈夫か?」
「構いませんよ。ですが、次元跳躍のシステムに関わるデータだけは秘匿として頂きたいのですが…」
「わかった、それは保証しよう。それと…、ボーデヴィッヒ」
千冬が唐突にラウラを呼ぶ。
「はい、何でしょうか?」
「少し、ヴィクターと手合わせしてみろ」
ラウラが納得したように頷く。
「機動性能のデータ取りですね」
「ああ、強い相手とならデータが取りやすいが、更識だと差が大きすぎるだろうからな」
「じゃあアリーナの準備をしてきますね」
山田先生がそう言って部屋から出ていく。
「あの、摸擬戦て言っても戦闘は大丈夫なんですか?」
俺は少し心配になってきた。さっきの話からだと、戦闘は苦手な様子だったが…。
ヴィクターは気楽に言う。
「それなら大丈夫です。少し矛盾した話ですが、私は非戦主義でありながら、それなりに戦えますよ」
「どういうことですか?」
「私が戦う時は、結果として人命が失われることが無い。もしくは、逆に私が戦って人命が救われる場合という話です。私が関わって人が亡くなるのは、私の主義に反します」
成る程、つまり相手を殺さない摸擬戦なら戦えるって話か。
「さてと、そろそろ私達も準備しないと。すみませんが、摸擬戦の場所まで案内して頂けませんか?」
ヴィクターがベッドから出る。
俺は思っていたことを言う。
「敬語じゃなくていいですよ。貴方の方が年上ですし、これから一緒にいる仲間ですから」
ヴィクターは少し驚いた反応をしたが、すぐに笑みを浮かべて手を差し出す。
「わかった。これからよろしく、一夏。私の方も同じようにして欲しい」
俺は頷きながら手を握る。
「ああ、わかった、ヴィクター。こちらこそよろしく」