インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
「ヴィクターさん、その胸のは…?」
彼の左胸に光る球体がある。それは炎のように明滅し、心臓のように脈動している。
「これが、黄金獅子第2のコアです」
「何故貴方の体に?黄金獅子のコアは、フランちゃんに組み込まれているんですよね?」
山田先生が恐る恐る聞く。
「えぇ、本来ならフランの中にあるコアで充分なのですが、私の胸にあるのは私自身の延命措置です」
「延命?一体何があったんですか?」
ヴィクターの表情が少し曇ったが、彼は淡々と話を続ける。
「コアの完成により、プロジェクトは最終段階に入り始動も間近でした。しかし、私の研究を利用しようとしたのでしょう。ある組織が強奪しようと襲撃をしてきました」
自分達にも似た経験はある。クラス対抗戦での無人機の襲撃や、学園祭では白式を亡国企業に強奪されかけたこともある。
「あくまで探索のための機体で、武装は皆無に等しく迎撃は不可能でした。私は黄金獅子を奪われないために、強引に起動させ次元跳躍を行ったのです」
「それで私達のところに来たって訳?」
「いえ、この世界には5回目の跳躍でたどり着いたのです。最初の跳躍の際、無理矢理の動作だったため私の体にも影響があり、心臓の6割が破損、左腕も損失してしまいました」
「そんな死にかけた状態から、よく生き延びられたものだな」
話についていけないが、とんでもない体験をしているのはよくわかる。
「幸いにも、悪用されることを恐れ、所持していた試作品のコアがあったため、試作品のコアを黄金獅子と繋げ、私の心臓の代わりにして生き延びることが出来ました」
ヴィクターが服装を正しながら話を続ける。
「咄嗟の跳躍ゆえ、元の世界の情報を入力しておらず戻れなかった私は、黄金獅子の再調整を行い、そのまま世界を放浪していました。そしてここの前の世界に着いたとき、その世界では戦争の真っ只中でした。私も巻き込まれ、その戦いの最中機体を損傷し、緊急手段として跳躍を行い、ここにたどり着いた。以上が、私がここに来た経緯です」
「素性はわかった。その上でひとつ訊こう。お前は私達に敵対する意思はあるか?」
千冬が問いただす。それに対しヴィクターは、
「貴方方とは初対面ですが、悪い人物には見えません。それに…」
フランを撫でながら続ける。
「もし貴方方が危害を加えるつもりなら、この子が警戒しています。こんなに穏やかに眠っているのが、貴方方が信頼できる人物という証拠です。何より怪我の治療をして頂いた方々に敵対する理由などありません」
「そうか、ところで歳はいくつだ?」
「へ?20歳ですが…」
「よし、ならお前にはこれからIS学園の生徒として生活してもらう」
「「「えぇーーーー!?」」」