インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ   作:ラ・ピュセル

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第4話

暫くして、山田先生が猫を抱えて医務室に入ってきた。全身白い毛並み、金と銀のオッドアイの珍しいというか、どこか不自然な感じの猫だった。

その猫は、ヴィクターさんを見るなり山田先生の腕から抜け出て、駆け寄っていく。膝上まで行くと、ヴィクターさんに甘え始める。

 

「か、可愛い…」

 

ラウラが触りたそうにウズウズしている。

確かに猫のこういう仕草は可愛いけど、そういう話じゃないだろ。この猫が黄金獅子にどのように関係があるのかということだが…

 

「ごめんな、お前を放置してて。寂しかったろう?よしよし。あぁ、いつ触っても気持ちいい毛並みしてるなお前は」

この人、なんかマイペース過ぎる気がしてきた。

 

 

 

「すみません、話が脱線してしまって」

 

ヴィクターさんに撫でてもらって落ち着いたのか、猫は彼の膝上で丸くなっている。

箒がヴィクターに聞く。

 

「さっき、コアの話をしてて猫のことを思い出したということは…」

 

「はい、この子の名前はフラン。私のパートナーであり、黄金獅子のコアです」

 

「やはり。でもどうしてその猫がコアになっているんですか?」

 

「そのことを含めて、先程の話の続きをしましょう。ここからは、此処に来た経緯の話となります」

 

 

 

「セラフプロジェクトは順調に進んでいましたが、ある壁に突き当たったのです。世界を調査しようにも、それは機械によるデータ上だけのものになることです」

 

「それってどういう問題があるわけ?」

 

鈴の質問にヴィクターが答える。

 

「生物の感情、データ化出来ない部分がどのようになるのかが不明なのです。いくらよい環境といっても、ストレスが溜まりやすいといった環境であるなら、最適とは言えません」

 

「それって、機械の判断が当てはまらない場合があるってこと?」

 

「えぇ、その為コアには生物の意識を組み込んだものが必要だったのです。しかし、人間の意識をコアに組み込むには、莫大な演算能力が必要になり実質不可能な話でした」

 

「それでこの猫が、コアに組み込まれているという話ですの?」

 

ヴィクターが頷きながら答える。

 

「前提として、人間社会に接点がなければ意味がありません。その中で猫が一番適していたので、フランをコアに選んだのです」

 

そこまで言うと、ヴィクターがフランに話しかける。

 

「さて、このままじゃ少し不便だからそろそろ頼むよ」

 

それに対し、フランが目を見開く。それと同時にフランの体が一瞬金色に輝いた。

すると、ヴィクターの左側に金色の粒子が現れ集まっていく。光が収まると先程見た黄金獅子の腕のようになっており、ヴィクターの肩にくっついている。ヴィクターがその腕を触りながら言う。

 

「フランが近くにいないと、これが使えないんですよ」

彼はそう言うと、服を上半身だけ脱いだ。その左胸には燃えるように光る球体が埋め込まれていた。


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