インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
「よし、全員集まったな。それでは説明を頼む」
千冬がそう言うと、男性が会釈をして話を始める。
「治療して頂きありがとうございます。私の名はロットウェル・ヴィクターといいます。お好きなように呼んで下さい。」
「貴様がここに来たのは何が理由だ?」
始めに口を開いたのはラウラだった。いきなりキツい口調だが、仕方ない。理由がこちらに危害を加える内容かもしれないからだ。
「わかりました。では、私が何者なのか。そこから説明させて頂きます」
彼は静かに語り出した。
「私はある研究をしていました。人類の救済を目的とした研究です」
人類の救済?一体何の研究なんだ?
「パラレルワールドという概念をご存知ですか?」
シャルロットが答える。
「ある選択肢において『もしこっちを選んでいたら』というイフの世界、そしてそれが平行かつ無限に世界が存在するっていう概念ですよね?」
「大方そんな感じですね。付け加えて言うと、その平行世界は我々人類が意図的に選択した可能性だけでなく、自然に発生した出来事の可能性で変わる世界もあるということです。簡単な例だと『もし恐竜が絶滅しなかったら』というような可能性ですね」
「ですが、それが貴方の言う人類の救済とどのように関係があるんですの?」
「私の研究は、平行世界の観測。そして、自分のいる世界に適用できるか検証することでした」
「もっと解りやすく説明しなさいよ!」
鈴がイライラしながら言う。確かに理解が追いつかない。
「そうですね。簡単に言うと、他の世界での成功例を自分のいる世界に適用できるかを検証するということです」
「だが、あくまで『あるかもしれない』というだけの話だ。不可能な話だと思うが?」
「ええ、確かに確証の無い話と思うでしょう。しかし私は目の当たりにしたのです。明らかに私のいた世界とは異なる技術をもった人間を。その為、私はこの研究を始めたのです」
?『私のいた世界』?ということは…
「もしかして、あなたは此処とは違う世界から来たんですか?」
「え?あぁ、そういえば言ってませんでしたね。はい、私は別の世界から来ました」
「「「ええーーー!?」」」
さ、さらっと凄いこと言ったよこの人!
「まぁ別の世界と言っても、見たところ文明の発達の仕方や段階等は、私のいた世界と同レベルのようなので特に違いは無いかと」
「服装は変わっているがな」
そこは関係ないだろ、ラウラ。
「さて、話を戻しましょうか。私はこの研究を、人類を導く熾天使の名を借り『セラフプロジェクト』と名付け研究を開始しました」