インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
「酷い目に遭った…」
ぐったりした様子で、ヴィクターは椅子にもたれ掛かる。あの後、なんとか無事にヴィクターの服を購入し、そのまま購入した服に着替えて移動してきたのである。現在のヴィクターの服装は、ジーンズに白シャツというシンプルなものである。
「すまん、ヴィクター。よくよく考えればIS学園の制服の方が目立つの忘れてた」
「オマケに一夏に続いて2人目の男性操縦者だしね。世間からしたら注目の的だよ」
シャルも苦笑いしながら、そう言った。
「まあまあ、ちゃんと服も買えたし、ここからはのんびり見て回りましょう?」
楯無さんに促され、一向は新しく出来たというカフェに向かうことに決めた。
その時、フランが毛を逆立てて威嚇を始めた。その視線は空の向こうを見据えている。
「おい。どうしたんだ、フラン?」
俺の疑問に答えるように、ヴィクターがフランを撫でながら言う。
「やれやれ、せっかくのオフだというのに…。無粋な連中だ」
ヴィクターは悠然と左手を、フランが睨んでいた方向に翳す。直後、こちらに向かってビームが飛んでくる。しかしそれは、ヴィクターによって掻き消される。
「敵襲!?亡国企業か!?」
ラウラの発言にヴィクターが頷きながら答える。
「恐らくは。責任は私が持つから、戦闘準備をしてくれ!」
全員がISを展開すると同時、それは飛来してきた。以前襲撃してきた亡国企業の無人機『ゴーレム』、それが10機である。しかし気になる点があった。全体のシルエットがシャープなものになっており、顔にあたる部分にはピエロのような意匠がある。
「箒、鈴、シャルロット、簪、君たちは一般人の避難誘導を頼む。残りのメンバーで迎撃を行う」
ヴィクターが皆に指示を出す。
「その編成の根拠は?」
楯無さんがヴィクターに問う。
「先程の攻撃と機体の構造、それから察するに射撃をメインにした強襲用と推測した。それが10機ともなれば、近接戦闘を主体にした紅椿と甲龍は向いていない。その2人で避難誘導をしてもらい、万が一にも阻止仕切れなかった場合には遠距離戦が可能なシャルロットと簪に迎撃してもらう」
「十分。それじゃ皆、その作戦でいきましょう」
ヴィクターの説明に納得したというように、楯無は構えをとる。
「避難が済んだらすぐに戻る。それまで頑張ってくれ!」
そう言って箒達4人は誘導を始める。依然、無人機達はこの場に留まっている。
「この様子だと、狙いは一夏か私だな。ある意味好都合だが、その分気を引き締めろよ一夏」