インフィニット・ストラトス ワールド・オブ・イフ 作:ラ・ピュセル
待ち合わせ場所に指定したIS学園正門前には、既に一夏とヴィクター以外の面子が揃っていた。それに加え、楯無・簪の更識姉妹もいた。
「シャルロットちゃんが誘ってくれてね、私達も大した用事は無いから参加させてもらうことにしたの」
楯無の開いた扇子には『参戦』の文字。簪も楯無の後ろで、無言で頷く。
「私の服を選びに行くだけと思っていたが、だいぶ大所帯になったな」
「いつもこんな調子だぞ」
「そうそう、誰かさんのせいでねー」
一夏の発言に、鈴がジト目で一夏を睨みながら言う。
「ん?俺なんかマズい事言ったか?」
それを聞いたヴィクターも、呆れたようにやれやれと首を振る。
「今ので彼女達がどれだけ苦労しているか、容易にわかるぞ、まったく」
女性陣一同も、その通りだといわんばかりに頷いている。
「ここなら、ヴィクターさんに似合う服があると思いますわ」
一行はセシリアの勧める店に来ていた。ブティックという呼び方がしっくりくる高級そうな店である。女性優位な今の世の中、高級な店というのは女性向けの商品やサービスとなっているものだが、ここは珍しく男性女性両方に向けたものだった。
「いらっしゃいませ…って、え?IS学園の制服で男性ってことは、もしかして織斑一夏さんですか!?」
あ、ヤバい。この時俺は、制服を着てくるんじゃなかったと後悔した。店員の発言により、店内にいた客や従業員が一斉にこちらを向く。
「今、織斑一夏って言った!?」
「嘘!?どこにいるの!?」
あっという間に店内の客達によって、一同は囲まれてしまった。
「お前、学校の外でもこんな調子なのか?目当てはお前だろうけど、動物園の希少な動物みたいな気分だぞ…」
俺の隣でそうぼやくヴィクター。そんなヴィクターに1人の女性客が目を向ける。
「あの、IS学園の制服を着てるってことは新しい代表候補生ですか?」
その一言で店内全員の視線がヴィクターに集まる。
「ちょっと待て、もしかして私もか?」
すまん、ヴィクター。私服が目立つからIS学園の制服なら大丈夫だろうと言った俺のミスだ。
「新しい代表候補生!?ホント!?」
「織斑さんに負けず劣らずイケメンじゃない!」
「連れてる猫も可愛い!」
あっという間にヴィクターの方へ人が流れていく。
「そういえば、まだヴィクターのことは公には知られてないんだったね…」
シャルがその様子を眺めながら呟く。自分もIS学園に入った当初はこんな様子だったのかと眺めている状況だ。
「おい一夏!眺めてないでどうにかしてくれ!」
うん、後でヴィクターには飲み物でも奢ってあげよう。