Dies irae ~Unlimited desire~ 作:ROGOSS
「ん……?」
目が覚めた。
倦怠感は残っているが痛みはまったく感じない。
試しに体中を触ってみるが、傷口すらなかった。
「なんだこれ……」
不思議に思いならがもあたりを見回す。
見慣れない部屋だった。
ここはどこなのだろうかと思いにふけっていると、ノックの音が部屋に響いた。
緊張感を走らせながらも士郎は、どうぞと声をかけた。
扉を開けて入ってきたのは、大柄の若い日本人だった。
異国の地で同じ日本人に出会えたことに思わず胸を撫で下ろした。
「良かった。目が覚めたみたいだね」
「ありがとうございます。あの…あなたが俺を?」
「そうだよ。たおれている君を見つけてね、酔っているのかと思ったけどそうじゃないみたいだったから連れてきたんだけど、迷惑だったかな?」
「そんなことありませんよ。ありがとうございます、本当助かりました。」
「それは良かった。僕は戒。櫻井戒だ。」
「衛宮士郎です。」
「衛宮君。」
櫻井はおかしそうに笑うと士郎の顔をまじまじと見た。
その様子に困惑していると櫻井は失礼、と言って言葉をつづける。
「僕を何歳だと思っているんだい?」
「歳ですか…?」
その屈強な体格を見るに10代ではないと予測する。
落ち着いた物腰からからも、どこか大人びた雰囲気が感じられていた。
「20代ですか?」
「あははは。僕はまだ18だよ、衛宮君」
「えっ?!」
予想外の答えに驚いていると、いつも言われることだからと櫻井は言った。
「あまり歳は変わらないんですね」
「そうだよ。だから、敬語はいいよ衛宮君」
「わかったよ櫻井」
「うん、そのほうがいい。観光でベルリンへ?」
どう答えるべきか迷う。
考えようと頭を覚醒させるも、どこか言葉では表せない靄がかかり上手く思考することができなかった。
しょうがない。
怪しまれないためにも多少の嘘は必要か。
「そうだよ。旅行できたんだけど・・・だけど財布とかは無くしてさ」
「それは本当かい?!あとで警察に届けておこう」
「ありがとう」
「よかったら・・・ここでしばらく生活をしないかい?お金ないんだろう?」
櫻井の提案は嬉しかったが士郎は丁寧に断った。
いつ、あの狂気の怪人に襲われるかわからない今、無関係な人のそばにいてはいけない気がしていた。
それでも櫻井が食い下がることはなかった。
話し相手がほしいんだ、などと自分も寂しいことを押しながら言葉巧みに士郎を誘い続けていた。
ついに士郎は言い訳が思い浮かばなくなり、櫻井の提案に甘えることにした。
「よかった!しばらく間よろしくね、士郎」
「何から何まで悪い・・・よろしく、戒」
「うん。下に食事がある。起きれるようになったら来るといい」
櫻井はそういうと部屋を出て行った。
士郎は一人部屋で昨夜のことを思い浮かべた。
あの怪人が士郎を見逃すとは思えなかった。
まったく歯のたたない彼らをどう撃退するか。
当面の課題を胸に士郎は、部屋を後にした。