Dies irae ~Unlimited desire~ 作:ROGOSS
「そうか、私は……私は!」
「ゴチャゴチャうるせぇ!」
「これは失礼。だが、まさか卿が私の真意を当てるとは思わなんだ……」
虚空を仰ぐラインハルト。フッと笑うとポツリと呟いた。
「否、カールは、あえて私の言わなかったのだろう。ふふ、まぁ良い。それでも良い。今、この真なる目覚めと共に私は新たな境地を得られたのだから」
「境地……?」
訝しながら訪ねる士郎にラインハルトは満面の笑みを浮かべる。
笑顔であるはずなのに、そこから無限に渦巻く殺意が感じ取れるというのはラインハルトらしいと言えばそうなのであろう。
ああ、いつも飽いていた。いつも飢えていた。生まれた場所を間違えたのだと、諦観して絶望していた。その檻を、壊してくれたのは卿だ、カール。そして今、気づかせてくれたのは目の前の正義の味方に他ならない。なるほど、確かに私は彼に救われたと言えよう。感謝するぞ、礼を言おう。
何たる至福。何たる幸福。胸を満たす充足感に宇宙さえ弾けそうだ。
ゆえに、全てを
『そうとも、それでこそ我が生涯の友』
「私は今、生きている!」
「だから……俺が
「あぁ、見せてくれ! 卿の夢を!」
盟友の気配が遥か上空に現れたが、そんなもは些細な問題に過ぎなかった。
目の前に立っている衛宮士郎という正義の味方を全身全霊で
あの覇道は、護符の力を持っている。あらゆる理不尽から己と他人を守り、悪を切り裂く。言わば、負けることのない勧善懲悪の力。
「ゆえに私の覇道で塗りつぶそう。どちらが新世界のミチを開くか」
ああ、胸が躍る。こうでなくてはならない。
あなたは本気をだしていないと、かつて言われた。
それは万能感に酔う少年の日の妄想めいて、しかし本当にそういうものであった自分は、この世界からずれたのだ。
何をやってもつまらぬ。何を見てもくだらぬ。あらゆる開放感や達成感、人の満足というものを胸に懐いたことがない。
であれば、よし。我が条理を全として、破壊の君たる本分をみせよう。壊し、呑み込んで塗り替える。私が生きるべき私の世界を流れ出させ、旧秩序を一掃する。否、私が世界を統べる。壊すことでしか愛せぬのだから、壊れぬ世界を創れば良い話なだけなのだから。
ゆえに、今この瞬間―壊す覇道と護る覇道の戦争こそが、我が全力を示す絶好の機会なのだ。
卿らに愛を。よくぞここまで成りおおせた。
一度言ってみたかったのだよ、相手にとって不足はない。
「では、いざ参らん。新たなる祝福の天地へ」
まなじりを決してこちらを見上げる御敵へと……
「来い」
最終にして最大、最高の戦をしよう。
「
私はこの時だけを求めて、無限の
そう、これは正真正銘、最後の勝負だ。
残るはラインハルトただ一人、その総軍は数百万を超える戦死者の群れ。
「ヴァルハラだと……」
グラズヘイムだと?
そんなに闘っていたいなら、本当の地獄でやってくれ。
関係の無い人を巻き込むな。自分の思い通りになるとつけあがるな。
「俺がそれを創ってやる。護るために」
瞬間、ラインハルトが鎮座する玉座への
そうだ、来い。私はここだ。ここにいる。
待ちきれぬ待ちきれぬ待ちきれ待ちきれぞ……
共に全力、共に全霊、ならば出し惜しみなどするべきではあるまい。
回れ契約の
先程までの卿とは違うのだろう? 応えずともわかる。だから……全力で……私に……打ち勝って見せよ!
「
せいぜい健気な抵抗を試みるがいい。
もはや遅い、間に合わん。遍く総て、私の色に染まるがいい。ここは私の城なのだから。
いいや違うぞ。まだ始まってもいない。
ここはお前の城なんかじゃない。
お前に染められるわけがない。
ここは……俺のよく知っている……
「
「
壊したことがないものを見つけるまで……否、愛せぬ者がいなくなるまで。
森羅万象、三千大千世界の悉くを。
「
護り抜くんだ、何処までも
一緒に戦った者の思いを願いを心を、誰かに奪わせはしない。今、この時でも感じているのだから……
『衛宮君、勝ってね』
あぁ、ベアトリスも。
『頼んだスよ! 衛宮さんなら大丈夫ッス!』
わかってるよ、シャルロット。
『頼んだぞ士郎。あとは……任せる』
任せろ、戒の意思は俺が継ぐから。
『見せてみろ。お前の終焉を』
まだ言ってるのか。マキナ、お前も開放を望んでいた一人だったな。
『理想を抱いたまま溺死せぬよう、足掻くのだな』
言ってろ。お前の出来なかったことを俺はやる。
今、思いは一つだ。だから……
「
「
集え、集え、満ちて溢れよ
「
『士郎、あなたはどこへ行っても気高い戦士ですね』
違うんだセイバー。なんでもない、ただの子供に過ぎなかった俺を……それはそれで幸せだったのだろうけど……けど、セイバーが変えてくれてたんだ。たくさんの人が変えてくれたんだ。
こんなにも、強く思える気持ちなんて知らなかったと断言できる。
「
『好きです、士郎。私は貴方を……王としてではく……』
わかってる。そうだ、俺もセイバーが大好きなのだから。
「
今度こそ、皆でラインハルトを打倒しよう。
「
「
では一つ、皆様私の歌劇を御観覧あれ。
「
その筋書きは、ありきたりだが。
「
役者が良い。至高と信ずる。
「
ゆえに面白くなると思うよ。
「
「