Dies irae ~Unlimited desire~ 作:ROGOSS
「
そうだ、俺はあの時何を思っていたのか思い出した。守りたいと願い、守り抜こうと誓った。本当の
「
マキナが攻撃の姿勢を解き防御態勢をとる。
空が歪み、大地が揺れる。無限の剣がカタカタと揺れるような音が、どこからか聞こえてきた。瞬間、黄金に輝くコロシアムが暗転する。現れたのは、無限の荒野だった。
「
目映い光が士郎へ降りかかり、薄っと浮かび上がるように現れた女騎士が士郎に寄り添うように立ち上がる。
古めかしい中世のヨーロッパの甲冑を身にまとった騎士は、マキナへ鋭い視線を向けた。
「なるほど、これがお前の創造か。使えぬとクリストフからは聞いていたが」
「そうだ。今までの俺だったら使えなかった。だけどなっ!」
投影した干将莫耶を士郎は手に取り構える。女騎士も同じく、剣をマキナへと向けた。
「気が付いたんだ。守るためには力が必要だって。だからこそ……認めたんだっ! 守りたいなら、闘いから逃げてはいけないと。本当に望んでいるのは、
「
「それでもっ! それが悪を滅ぼす手段なら、仕方のないことだと割り切った! これ以上目の前で泣く人を増やさないためにっ!」
「……ふふ、良いだろう。ならば見せてみろ!」
「行くぞっ!」
死の一撃が士郎へと振り下ろされる。続けて、右から左から下から。拳は流れるように、士郎を捉えようと動き続けた。
創造位階に達したからといっても、マキナの一撃を受け止めることはできなかった。受け止めた瞬間、全てが粉々に粉砕されることなど容易に想像できた。
だが、それはあくまでも士郎が受け止めてはいけないという話だ。
この世に生を持たず、また聖遺物でもない女騎士が受け止めることはできた。彼女はあくまでも士郎の理想とした英雄の一人であり、そこに歴史も意思も存在しない。
マキナの拳がいかに凶悪といえども、破壊するモノが存在しないものは壊すことができなかった。
「もらったぁ!」
一瞬の隙をつき、士郎がマキナの首を斬り落とそうと刃を向ける。
「なるほど。無いものは壊せぬ。当然の道理と言えよう。だがっ!」
マキナは空いている左手で干将莫耶を掴み、粉砕する。
「まだだっ!」
士郎の創造と共に展開された
「これで終わりだっ!」
士郎が両手で剣を持ちマキナへと振るう。
剣はあくまでも実体化したものである。ゆえに、マキナはその剛腕で砕こうと動きをとった。
しかし、女騎士の一撃も士郎の攻撃と同時に振り下ろされた。
「くうっ!」
2方向から来る斬撃を腕一本で受け止めることは出来ない。かといって、かわすとしても士郎との距離はあまりにも近く、間に合わないとマキナは瞬時に判断を下す。
「うおォぉぉぉっ!」
「面白いっ!」
マキナの首へ衝撃が走った。女騎士は敵の首を取ったことを確認すると、士郎へ僅かばかりに視線を向けると静かに消えていった。
残ったものは勝者と敗者のみ。マキナは首を抑え倒れ、士郎は肩で息をしながら強敵の最後を見逃さない、と言わんばかりに食い入るように見続けた。
「これが終焉。安息の死……いや、まだ終わらぬか」
「……!」
マキナがゆっくりと立ち上がる。
それだけの傷を負っていて、まだ闘うのか!
士郎は身構えたが、マキナは士郎の予想を外れ闘志の抜けた目で士郎を見つめただけだった。
「お前が俺に……意外だったぞ。俺の兄弟が安息を与えると思っていたのだがな」
「兄弟?」
「忘れろ。気にするようなことではない。だがな、これで終わったわけではない。死してなお、俺たちは闘いをやめられれぬ。
「……お前は英雄だ。だから、俺がそんなことはさせない。ここで終わりだ」
「ならば、見せてみろ。お前が何をし、何を成せるのか。それまでしばしの休憩だ」
「任せろ」
マキナがゆっくりと光の粒子に包まれ、城の底へと落ちていく。
先へ続く道は開かれている。ゆえに、士郎は歩き始めた。
このくだらない妄想を終わらせるために。