Dies irae ~Unlimited desire~ 作:ROGOSS
あれが……大隊長なのか。
あの強さに思わず心をうちのめされる。
今のままでは勝てない。あの絶対的な強さには勝つことできない。
ならばどうすればいい……強くなるしかないというのか。
「俺はあとどれだけ命を奪えばいいんだ」
人の気配を感じてフと顔を上げる。
士郎は目の前で立っている男の顔を見ると固まった。
「戒……どうして……」
「……これが僕の本当の姿だ」
櫻井はそう言いながら頭を下げた。
全身に黒の軍服をまとい、腕章を付けた姿は黒円卓の騎士の証で間違いなかった。
今まで俺を騙していたのか? 違う、だとしたら……
「どうして今まで俺を殺さなかった。殺す機会はいくらでもあっただろ!」
「僕は士郎を殺したくない。君を友人だと思っている。だから、これ以上首を突っ込まないでくれ」
悲しそうな表情を浮かべ櫻井が懇願する。
だが、その言い分を飲むわけにはいかなかった。ここまで関わっていながら、都合のいいところで逃げることなど許されない。
「それは無理だ。俺はもう引き返せない」
「……どうしてもダメなのか」
「ダメだ」
「たとえ実力行使になったとしてもか」
「そうだ」
「どうしてなんだ! どうして君たちはそうやって……! 汚れるのは僕だけでいいのに!」
「君たち?」
士郎の言葉で櫻井は我に返ると口をつぐむ。
それ以上は、どう聞こうとだんまりを決め込んだままだった。
やがて櫻井は背を向けると歩き始めた。
「どこへ行くんだ!」
「もう一人を止める。士郎はそのあとだ」
「ベアトリスのことか!」
「……君の対しての最後の警告だ。手を引いてくれ。君たちがその手を汚す必要はない」
「戒だったら良いっていうのか!」
櫻井は振り返ると寂しそうに笑った。
その笑顔に士郎は沈黙する。
怒りでもなく悲しみでもない。その笑顔のもととなっているのは、自傷とまで言えるほどの卑屈さだった。
「櫻井戒は全身腐っているんだよ」
●○●○●○
「シュライバー!」
「なんだよベイ。僕に何か用なの?」
シュライバーは面倒くさそうに答えると、ルガーをベイへ突きつけた。
その一撃がどれだけ危険なものかは理解していた。それでもここで有耶無耶にすることは許せない。
感情に乏しい騎士団の中でも、黒円卓を面々を家族同然と思っているヴィルヘルムにとって、シュライバーはの行為は許せなかった。
「お前、どういうつもりだ」
「どういうって?」
「どうしてマレウスを殺した」
「そんなの決まってるでしょ」
近くにいたからだよ、手をヒラヒラさせながらシュライバーは答える。
あぁ、そうだったな。お前にとっちゃ仲間も家族もないもんな。
すべてが通りさった後の轍程度しか考えられない獣には、何にもわからないよな。
期待した俺がばかだったよ。
ヴィルヘルムは静かに形成を唱える。
シュライバーは笑いを堪えながらヴィルヘルムを見た。
「僕と殺しあうのかい? いいねぇ、60年前の続きといこうじゃないか」
「あぁ、ムカつくんだよ。お前のすべてが」
「よろしい、私も卿達の戦いを見せてもらおう」
天から降り注ぐ黄金の声。
姿は見えずとも、そこにラインハルトはいた。いつものように椅子に座り、興味深そうに2人を見ている。
「さぁ、存分にやりたまえ。もともと実力至上主義の私たちだ。勝った者が真の
「そうですね、ラインハルト卿。機会をいただきありがとうございます」
「仕方ないな……このまま死んでも文句はないよね!」
「死ぬ? 馬鹿なことを言うな。どうして俺がお前に勝てない。階級がすべてじゃないってことを教えてやるよ」
「ははは! 面白いねベイは! 殺して殺して殺して殺して殺したいよ!」
「あぁ、待ってろ。今何もかも吸い出しやるよ」
「あぁ、この興奮……最高だ!」
シュライバーがもさらにモーゼルをヴィルヘルムへと突きつける。
ヴィルヘルムの体から棘が突き出してきた。後ろには薄っすらと、息子を見る母の姿が浮かび上がっている。
「ぶっ殺してやるよ! 獣にゃぁ、しつけが一番だろ」
「あぁ、殺してやる!」
シュライバーの目が見開いた。
獣と吸血鬼の闘いが始まった。
生存
ラインハルト・ハイドリヒ
メルクリウス
ヴァレリア・トリファ
ヴィルヘルム・エーレンブルク
櫻井戒
ベアトリス・キルヒアイゼン
ウォルフガング・シュライバー
エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ
衛宮士郎
死亡及び不明
ルサルカ・シュヴェーゲリン
ロート・シュピーネ
アンネ・リーゼロッテ
リザ・ブレンナー
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン
戦闘中
シュライバーvsヴィルヘルム
ベアトリスvs戒