秒速8キロメートル   作:テノト

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お久しぶりです。
学校の方がかなり忙しくなってきたのと、最近持病の発作(と言っても喘息ですが)が酷くてこちらに集中できません。
上は言い訳ですが、実際自分の思ったようにうまく書けません。何でや……。
というわけで、こちら難産でございました。
というかぶっちゃけ原作再編のような何かとなっております。

感想、評価、その他ご意見などありましたらお寄せ下さい。


試合の先の死合

 俺の前には、一つの大きな壁がある。

 翔に言わせれば俺はただの理想論者で、何も考えていない、知りもしてない子供だ。

 翔の前に聳え立つ理想と現実を分ける壁。俺にはそれが見えないから、男でISが使えるということの意味を理解出来ていない。

 理解できるはずもない。

 命の危機を自分の力で回避することなんて、経験していない。それどころかモンドグロッソの時には千冬姉に助けられて、そのせいで多方面に迷惑をかけた。

 だから自分を守れる力、他人も守れる強い力を持った千冬姉に憧れて、自分もその力を求めている。

 翔は人との間に壁を作って、自分の影響で他の人に迷惑をかけないようにしている。でもそれは寂しいだけじゃないか。だから俺には理解が出来ない。ISっていう力を持ってしてもそうする理由が分からない。

 たから友人として翔の気持ちを理解して、何があいつの助けになるのかを知りたい。

 そう思ってこの場にいる。

 

「一夏、覚悟は出来てるわね」

「だからこうしてここにいる」

「ふん。あんたのそういうところ、ほんとに好きよ」

「へっ。こっちも鈴のそういうところは好きだな」

「っ!?……んんっ!!それじゃ、遠慮なく殺しにかかるわ!」

 

 鈴は俺のそんな気持ちを汲み取って、翔があの時見た死の恐怖を再現すると進み出てくれた。

 本当に良い友人を持ったよ、俺は。

 そして俺は、翔のことを真の意味で理解できる、親友になりたいんだ。

 そのための第一歩。

 俺は今、踏み出すんだ……!

 

 ビーッとブザーが鳴り響いて試合は始まった。

 鈴は一気にこっちに肉薄してインファイトが始まる。

 

「へぇ、今のを防ぐんだ……!」

「そりゃどうもっ!」

 

 鈴は連結式の鉈というか戟というか、それで肉薄した勢いを殺さずに脳天目掛けて思い切り兜割りをしてきた。その一撃に迷いはなく、殺気に溢れている。

 俺はその一撃を雪片弐型で受け止めいなす。

 ISは絶対防御で操縦者の生命維持は確実に守られている。けれどそれを許容できる範囲を超えた攻撃は、死にこそしないものの痛みや怪我を伴う。

 今の兜割りだって、まともに受けていたら大怪我は免れない。それを躊躇なく打ち込んできたのだ。

 俺は内心焦った。

 受け止めたりいなしたり、そういうことは技術があれば出来る。そうではない。

 剣道をやっていたから分かるが、竹刀や木刀を防具も何も着けていない人の頭には、おいそれと降り下ろせるものではない。

 

「そらそらそらぁっ!防いでばっかでだらしない!」

「くっ!」

 

 連結したり切り離したりしながら、インファイトを仕掛けてくる鈴の一撃一撃は重く、そしてトリッキーだ。

 俺はそれを割りとギリギリでいなしている。

 俺だってISに乗って雪片で相手を切ることは出来る。そこに躊躇いはない。けれど、俺は主に胴を狙うことが多い。無意識に顔や急所は外しているのだろう。

 けれども鈴は確実に本命を急所へ叩き込んでくる。

 脳天、首へ降り下ろし、鳩尾を突くその攻撃。それらは絶対防御への信頼を揺さぶってくる。もしや自分はこの一撃で死ぬんじゃないかと。

 

「おらぁっ!」

「ぐっ!やってくれるじゃない……!」

 

 ダメだ!一度落ち着け!冷静になれ一夏!

 俺は自分の焦る気持ちを、死への恐怖を押さえるために鍔迫り合いになった鈴を弾き、蹴飛ばして距離を取る。

 あのままインファイトを続けていれば、俺は確実に恐怖に飲み込まれていた。そして何の成果もなく惨めったらしく負けていただろう。

 一瞬だが俺は鈴のあの場から離れたことで落ち着きを取り戻していた。

 そしてまた向かってくるであろう鈴に備えるために向き直った瞬間。

 

「ッッ!?」

 

 衝撃が俺を襲った。

 何だ?何が起きた!?

 吹き飛ばされる最中に確認したが、鈴はこちらには全く攻撃の届きやしない距離にいた。

 吹き飛ばされた俺は転げ回り、勢いが小さくなったところで受け身が取れた。

 その瞬間、鈴が猛烈な速さで突進を仕掛けてくるのを確認した。

 

「瞬間加速かっ!」

「っせやぁ!!」

「がぁっ!!」

 

 回避も間に合わないし、いなせる勢いじゃない!

 俺は鈴のその重い横凪ぎを雪片で受け止めたが、防ぎきることは出来なかった。

 防げなかったその一撃は、俺の左肋を深く抉った。

 

「──────っ!!」

 

 

 痛い、熱い!痛い!!

 なんだこれは……!こんなの初めてだっ……!

 

 俺を抉った一撃は、まるで火傷のような痛みと熱を感じさせ、激しく俺を責め立てた。血の流れ出るような錯覚さえ感じる。

 当たった場所は胸部装甲がない部分で、いわゆるコレが絶対防御を超過した(・・・・・・・・・)攻撃……。

 これが、翔や明菜が見た死の恐怖……。

 しかも、この時二人は非武装でテロリストは三人がかりだった。

 翔を塞ぐ大きな壁を感じることが出来た……のか?

 嫌な汗が頬を伝う気がした。

 いや、これはほんの一端に過ぎないのだろう。あくまでこの感覚は一種であって、テロリストの行動は多種多様なことも考えなくてはならない。

 どっと恐怖が倍増してのしかかった。

 

「あんたが望んだ光景、これがそれよ。それもこんなの末端もいいところ」

「…………」

 

 鈴が攻撃の手を止めて語りかけてきた。

 余裕の表情を浮かべているかと思ったが、そんなことはなかった。何て言えばいいか、複雑な表情だ。

 

「こんなこと頼むのなんて、やっぱおかしいよな。お前の気持ちも分からずにごめんな」

「……ばーか」

 

 そうだ。俺は鈴とは相互確認が言葉なくても取れるくらいには、友人だと思っている。そんな友人のことを殺そうなんて正気の沙汰じゃない。

 仮に俺が鈴に殺すつもりでかかってこいと言われても、きっと手を緩めて中途半端なことをやっていただろう。

 鈴は真っ直ぐに受け止めて俺の望みを叶えてくれた。正気の沙汰じゃないことをやってくれた。

 じゃあ俺はどうする?簡単だ。

 

「だから俺は俺なりに、今見つけたこの壁を乗り越える。答えを出す」

「渡良瀬とは違う答え、なのね」

「当たり前だ」

 

 俺はやっぱり、翔みたいにいろんなことは考えられない。だから、俺の考え無しが周りを危険に晒すかもしれない。

 けれどバカな俺はそれを真っ直ぐに、馬鹿正直に受け止めて、その危険からみんなを守って見せる。その力を求めて、欲している。

 だから俺は強くなる。

 ここで立ち止まったりはしない。

 

「ここからが本番だ」

「あら、あんなにビクビクしてたのに強がっちゃって」

「ほっとけ!」

 

 瞬間加速で一気に迫り、斬りにかかる。

 その一瞬、鈴の両肩にあるアンロックユニットがスライドするように開き、空間が歪む。

 これがあの衝撃か!

 

「ッ!」

「ちぃっ!」

 

 強引な機動で真横に跳ぶ。

 そして鈴も仕掛けてくる。鈴の周りの空間は常に歪んでいる。

 右へ左へ回り込む機動を描きながら、鈴の意図した方へ飛ばないようにフェイントで牽制しつつ、自分の得意な距離へ持ち込む。

 あのアンロックユニットから不可視の砲弾が飛んでくることはわかった。

 砲身が見えないからセシリアのブルーティアーズのように避けることは出来ないから、完全に避けることは出来ていない。脚部や腕部は避けきれずに当たっている。けれどもそれのダメージを最大限に押さえるために、衝撃には逆らわず、むしろ自分からその方へ飛ばされることで何とか受け流している。

 これでようやく俺の距離に持ち込めた!

 

「らぁ!」

「くっ!あんた、かなり無茶苦茶するわね!」

「オオオオオッッ!!」

 

 横凪ぎ、袈裟斬り、切り上げてからの小手狙い。がむしゃらに振り回すのではなく、鈴に反撃されないように絶え間ない剣撃を浴びせる。

 鈴は至って冷静に俺の攻撃を捌く。けれども守り続けるのには限界がある。特に、俺の本命は零落白夜によるバリア無効化攻撃だ。それがいつくるかわからない鈴は、ただ防ぐだけじゃいつからこいつでやられるのを分かっているはずだ。

 ならこの至近距離でもあの不可視の砲弾で俺を吹き飛ばし、無理矢理にでも距離を開けるはずだ。

 俺はそれをチャンスだと考えている。

 授業で習ったが、イメージインターフェースを用いた武装は、武器を自分のイメージで操作するように作られたものだ。

 だからそれを使う時、意識をそっちへ向けなきゃならなくなる。分かりやすいのは、セシリアのブルーティアーズだ。

 ブルーティアーズのようなビット兵器は、複数機を空中で操作し射撃管制も頭の中でイメージしなきゃならないから、他のことに手が回らなくなる。

 鈴の使っているこの不可視の砲弾も、トリガーを引いてるわけじゃないし、砲身もないのだから普通の兵器ではない。ならきっとイメージインターフェースによる武装だと賭けた。

 だからきっと鈴が砲弾を撃つ一瞬だけ、鈴の意識は少しこちらから逸れる。

 俺たち武道経験者にとって、それは余りにも致命的だ。その一瞬を活かして、俺は鈴に零落白夜を打ち込んで勝ちを納める。

 

「くっ……」

 

 鈴が強めに俺を弾き、一瞬だけ意識がそれた。

 今がチャンス!

 

「零落白夜っ!」

「───甘いわ!」

「なっ!?」

 

 俺が零落白夜を発動させ、弾かれた隙間を詰めるように突きを繰り出す。

 けれどそれは戟の斬り上げで軌道をそらされ、鈴はそのまま巴投げのような形で俺の下に潜り込み、勢いの殺せていない俺の背面に回り込んだ。

 そして俺の無防備な背中に向けて、鈴の周りの空間が歪むのを確認できた。

 マズい、このままだど……!

 

「一夏!これで終わりよ!」

「クソッ!」

 

 認めたくないけれど、この瞬間俺は自分の甘さと敗けを悟った。

 けれど、絶対に一矢報いてやる!

 俺は白式を急制動し、下に潜り込んだ鈴へ真っ直ぐ上から叩き斬るように、回転しながら零落白夜を叩き込もうとした。

 そして切っ先がなんとか触れる瞬間、

 

 

 

 ────スドドドォォォォォン!!

 

 

 

 アリーナ内部に恐ろしい爆音が響き渡る。それと同時に、アリーナ中央に砂煙が巻き上がった。

 鈴も俺も、そっちを見ていて固まっている。

 白式が警告通知をした。

 ──────中央に熱源、ロックされています。

 

「な、なんだ?何が起こっている!?」

「一夏!試合は中止よ。急いでピットに戻るわ」

「いったい何が起こってるんだよ……!」

「いいから早く出るわよ!」

 

 鈴が俺の横に飛んできて、俺の腕を引っ張るようにする。

 砂煙が晴れて、その原因が姿を表す。

 深い灰色の甲冑のような見てくれに、顔も頭も体もすっぽりと覆い隠す首のない全身装甲(フルスキン)。腕は肩から垂れ下がって地面に着くほど長い。

 普通のISとは一線をかくして異様だ。

 頭部にある無機質に動くモノアイが俺を捉えて止まった。

 次の瞬間、腕部に付いている銃口をこちらに向け、発砲してきた。

 

「マズい……!」

「キャァ!」

 

 俺の腕を引っ張っていて反応の遅れた鈴を抱え、奴の攻撃をかわす。

 飛んできたのはビーム弾で、かわしたそれがアリーナの壁面を大きく抉り崩す。

 あの威力……。アリーナの上面に展開している遮断シールドはISと同じものを使用している。つまり、奴はエネルギーシールドを貫通するだけのヤバい威力を持ったビーム兵器を撃ってくるのだ。

 一発でも貰えば大怪我をするだろうと考えると、冷や汗が垂れてくる。

 

「…………」

「も、もういい加減下ろしなさいよ!」

「あ、悪い」

 

 鈴が俺を振り払う。

 いつまでも引っ付いてたのは悪いと思うけど、そんな邪険にしなくても……。ほんとに緊急だったんだから。

 

「で、どうする?」

「あたしが時間を稼ぐからあんたはそのうちに逃げなさい。どうせ直ぐに上級生や国の舞台が突入して鎮圧するだろうし」

「一人で残って時間を稼ぐって、無茶だろ!」

「うっさいわねぇ!実戦経験ないあんたがガタガタ言わないで!」

「俺も残ってやる。二人でやった方が倒せるかもしんないだろ?」

「あんた本当に……!」

『織斑くん!凰さん!手短に説明しますと、今アリーナはハッキングによって完全に封鎖されて閉じ込められている状態です!今、上級生がハッキングに対抗してますから、解除されたら突入部隊が行きます!それまで持ち堪えて下さい!』

 

 言い合う俺らに山田先生から通信が入った。

 

「こうなったらやるしかないだろ?鈴!」

「あーもうっ!分かったわよ!」

 

 鈴も状況が状況だから、認めざるを得なかったのだろう。

 さっきの試合以上に死を感じるこいつとの戦闘。改めて俺は神経を尖らせた。

 

「あたしがやつの隙を作るわ。そしたらあんたのそいつで一撃離脱!援護攻撃はするからあんたは一撃ぶちこむことに集中しなさい!」

「わかった、鈴を信じる!」

「ヘマすんじゃないわよ!」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 織斑くんと鈴ちゃんのこの試合は、どことなく異様だった。

 特に、鈴ちゃんは様子がおかしかった。

 攻撃一回一回が人を殺さんばかりの勢いで、明らかに急所を狙って打ち込んでいることも分かった。

 見ているとあのハリケーンの中のことを思い出して、私の左腕がガクガクと震えて脂汗が噴き出した。

 私は観客席じゃなく、ディスプレイで見るコントロール室で観戦していた。

 オルコットさんや篠ノ之さんが誘ってくれたからここにいる。翔くんもいた。

 そんな見る人が見れば分かる無茶苦茶な試合に、先生たちやオルコットさんに篠ノ之さんも目を丸くしていた。

 そしてこの事件。

 二人は完全に隔離され、戦力も未知数な所属不明のIS相手に大立ち回りをしている。

 私の左腕が一層震えた。

 

「お、織斑先生!私も二人の救援に向かいますわ!出撃許可を!」

「ダメだ。お前があそこにいってどうする?ブルーティアーズでは、連携練度のない現状況ではフレンドリーファイアの危険性が高い。今は近接特化のあの二人に任せて置くのが最善だ」

「でもスターライトだけを使って、初歩的ですが一々声に出せば話しは別なはずですわ!」

「……わかった。アリーナの遮断シールドが薄くなり次第、突入できるように準備をしておけ。お前の腕を信じよう」

「ありがとうございます!」

 

 そんな短いやり取りがあって、オルコットさんはかけていった。

 

「わ、私にも何か出来ませんか!?」

「牧瀬?お前もか……」

 

 私は左腕を抑えながら織斑先生に尋ねた。

 怖いことは怖い。だけど、二人に私みたいな怪我をして欲しくない。だから、何か二人を助ける方法があるならやりたかった。

 

「お前はダメだ。そんなに震えた腕でどうやって引き金が引ける。今のお前では足を引っ張るだけだ。まさか感情論だけで動いてるわけではないだろうな?」

「そ、それは……」

 

 なにも、言い返せない。

 居ても立ってもいられないだけで、本当になにも考えていないことだから。

 私の内心、焦った感情をものの見事にすっぱ抜かれてしまった。

 

「取り合えず全員落ち着け。我々が焦ったところで事情は代わりはしない。腰を据えて適格な行動を厳として、冷静に行うことが今一番求められているのだ。コーヒーでも飲んで落ち着こう」

「あ、織斑先生……」

 

 そう言いながら織斑先生はコーヒーに砂糖を入れて、一口、二口で飲み干した。

 山田先生は何か言いたげにしていたが、織斑先生に睨まれて口を塞いだ。

 私も織斑先生みたいに余裕をもって落ち着かないといけない……。

 

「よし分かった。このまま待っていても仕方がない。アリーナの観覧席の生徒を一ヶ所に集め、その反対側の遮断シールドを破壊して強硬突入を敢行する。現段階で投入出来る戦力である、ブルーティアーズと桜花を配置しろ。秋桜はシールド破壊の補助のみを行え」

「え?」

 

 織斑先生の決定に声を出したのは翔くんだった。

 

「待ってください!桜花に戦力があっても、僕は戦闘皆無の素人です。客観的に見ても、邪魔になるだけですよ」

「渡良瀬!お前こんな時に何を弱腰な!」

「篠ノ之さん、戦力は足し算だけじゃないんだ。実力がバラけるとそれは引き算にも割り算にもなるんだよ」

「篠ノ之さん!乱暴はやめて!翔くんを離して!」

「止めるな牧瀬!こんな軟弱な男……!」

「やめて!翔くんを悪く言わないで!」

「ちょっ、ちょっと二人とも落ち着いて!」

 

 翔くんが織斑先生に反論すると、篠ノ之さんは翔くんの胸ぐらを掴んだ。

 たった一つの行動と一言で、一瞬にして私は落ち着きを失い、篠ノ之さんの手を叩いて胸ぐらを掴む手を解かせた。

 

「落ち着けバカども」

「「痛っ!」」

 

 そのまま篠ノ之さんと取っ組み合いになりそうな空気を、織斑先生の拳骨で止められ両成敗となった。

 

「決定は変えん。渡良瀬は戦力として投入する」

「で、でも本当に……」

「薬の投与とナノマシンの使用を許可する。話しは博士から伺った。権限も委譲されている」

「…………」

 

 薬物?ナノマシン?

 私はそんな単語を聞いて頭に?が浮かんだ。

 当の言われた翔くんは開けた口をグッと力強く噛み締めて、苦々しい声で一言だけ呟いた。

 

「……了解です」

「よし。では観覧席に向かえ。オルコットにも連絡を入れておく。システムにハッキングを仕掛けて遮断シールドの出力を一時的に小さくするから、タイミングを計って突入しろ」

 

 織斑先生がそう言って私たちを送り出し、私と翔くんも駆け出した。

 

「翔くん、今回こそは成功させようね。多分、絶対大丈夫だよ!」

 

 自分の震える腕と心を抑え込んで、苦い顔のままの翔くんに笑いかける。

 翔くんはただ前を向いて、こっちに応えてはくれなかった。

 

 

 


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