とある木原の確率操作   作:々々

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うまく話を締められない々々です。
今回は幻想御手のエピローグですね。

それではどうぞ!


病院のとある1コマ

「ふっふふ ふっふふ ふっふーふ」

 

 おっふろ おっふろ おっふーろー、と幻聴が聞こえそうな鼻歌を歌いながら病院内を分数は歩く。昨日の夜、神裂を何とか慰めたあと、明日改めて話をすることにして分かれた。ここの病院に連絡して救急車を頼み、インデックスに電話をして木原の元に来るように頼んだ。駆けつけて来たインデックスに事情を説明していると、救急車が来たため上条を預ける。見送ったあとはインデックスと小萌の家に向かいつつ、再び事情を話し始めた。もちろん記憶のことや神裂の過去のことは隠したが。

 そして今、入院している二人に会うため病院に来ていた。偶然なのか、ちょうどその日は常盤台組はプール掃除を、初春は犯人である木山に連れて行かれたという理由で警備員に事件の詳細を聴かれているため、彼の向かう先では彼の知り合いはちょうどいなかった。

 とは言っても、彼女がいる病室は複数人の患者もいるため二人っきりというわけではない。彼女がいる病室のドアを横にスライドさせる。彼が病室内を見回す、女子への配慮かこの部屋は同い年の女子しかいなかった。半周を終えたころ目的の少女、佐天涙子を見つけた。彼女は手元の雑誌に集中しており、木原が来たことに気がついていなかった。

 そんな彼女も周りが少し騒がしくなったため集中が切れた。そうして顔を上げると目の前には、幻想御手を使うかどうかを相談した先輩がいた。口調はともかく見た目は整っているためこの様に少し騒がしくなるのもうなずける佐天だったが、もっとも肝心なそんな彼が目の前にいるという事に気が付くには少し時間がかかった。

 

「…うわっ!!!」

 

 拍子抜けした声を出し驚く。そんな彼女に木原は笑った。

 

「それくらい元気なら心配は要らないかな。少し話したいことがあるんだが、ここだとちっと人が多いし騒がし過ぎるな…。談話室が有るからそこに移ろうか、歩けるか?」

 

「はいっ!」

 

 元気よく返事をしてスリッパを履き木原の後に続く。エレベーターに乗り込み木原が迷いもなく談話室がある階のボタンを押す。佐天はその事が気になったが、他にも乗客がいるため聞かなかった。目的の階に到着し、談話室へと歩いて行く。その途中で木原は飲み物を二本買った。ここの病院の飲み物は学園都市のゲテモノばかりを売っている自販機とは違い、大抵の皆が好き好んでいるものを売っている。それでも、ゲテモノ専用の自販機もあったりするが。そうして談話室の前についたが生憎と談話室は埋まっていた。

 

「そりゃそうか、俺達みたいにはなししたい奴らは結構いるし、ここだと数人で話せるしな。屋上に変えるがいいか?」

 

「私は大丈夫ですよ」

 

 木原の質問に笑顔で答える佐天。再びエレベーターに乗り屋上へ行く。そこには数個のベンチが置かれており、人は一人もいなかった。

 

「ここなら話せるな。こっち来いよ」

 

「ふふふ、前に公園でも同じこと言われましたよ」

 

 笑顔で木原の隣に座る佐天。その表情は前と違い明るかった。木原は佐天に飲み物を渡す。

 

「……」

 

「……」

 

 沈黙が生じる。

 

「どうしたんですか分数さん、いつもはいっぱいお話したり、私を質問攻めにするのに」

 

 明るく語る佐天に対し口を開く。

 

「それじゃお望み通り質問攻めにしてあげますか。あらかじめ言っておくが俺は涙子を責めるつもりはない」

 

 優しげな口調で言う。

 

「それでどうだった?少しズルをしたが能力者に成れた気分は」

 

「それはもう世界が変わりましたよ!今まで見ていた景色が全く違うものに変わって、今までの私って何だったんだろうって」

 

「ありきたりな質問になるが後悔はしてるか?」

 

「後悔は…してないと言えば嘘になりますね。初春や白井さんたちに悪いことをしちゃったなーと。でもですね、やって良かったとは思ってるんです。みんなと同じ目線に立てて嬉しかったんですから」

 

「それは良かった」

 

 そう呟いて飲み物を飲む。佐天にはそんな木原が物寂しげに見えていた。

 

「涙子の能力ってなんだったんだ?」

 

「友達が言うには風力操作(エアロハンド)らしいです。こうやって手を出して待ってると手のひらで気流が出来てました」 

 

 今は出ませんですけどね、佐天は笑いながら言った。

 

「らしいって事は涙子はそうは思ってないのか?」

 

「はい。私も幻想御手を使っていた時はそうなのかと思ってたんですけど、昨日目覚めてから少し違うことに気がついたんですよね」

 

「ほーう」

 

「私と同じく幻想御手を使って入院している人からは何かを感じることが出来るんですけど、看護師さんやお医者さん、そして今思ったんですけど()()()()からも感じられないんですよね。分数さん分かりますか?」

 

「AIM拡散力場の観測及び干渉か」

 

 小さな呟きだったが佐天の耳には届いていた。

 

「AIM…拡散力場?」

 

「流石にまだ習ってないか、正式名称はAn_Involuntary_Movement拡散力場。

『An_Involuntary_Movement』ってのは簡単に言えば『無自覚』てことだ。能力者が無自覚に発してしまう微弱な力のフィールド全般を指す言葉なんだが」

 

 これはマズイ、木原は思った。学園都市広しと言えど、AIM拡散力場関連の能力者は少ない。彼の知り合いである滝壺も能力追跡という稀有な能力を持っているがそれ故に暗部に堕ちた。それほどこの街はAIMに関係する能力を欲しているのだ。

 

「あんいんぼるたりーむーぶめんと?それが私の能力と関係してるんですか?」

 

「あぁ、AIM拡散力場は能力者が無自覚で作っちまうものなんだ。そしてそこには超能力者も無能力者も関係がない」

 

 そういう事だ。その言葉を最後に付け足した。その言葉の意味を佐天は理解していく。理解していき一つの疑問を抱いた。

 

「無能力者もって事は分数さんは無能力者でも無いってことですか!?でもっ、たしか大能力者だって」

 

 言葉を詰まらせる木原。それを語るには随分と深い所まで話さなくてはならない。ただでさえ能力によって危険に晒せれるであろう涙子をこれ以上危険に晒しなくないという思いが生じる。

 

「そ、それはなだなぁ」

 

 故に、どことなく触りだけを聞かせることにした。佐天の性格上誤魔化すのは無理だと判断したからだ。自分は研究者であること、確率が分かるのはここに来る前からだと、そういう人にはAIM拡散力場が生まれないこと。現実味を帯びらせることでその場を誤魔化す。それに佐天は納得した。というより難しい言葉が多かったり、木原のエキスパート直伝の話術にやられたりしたのだが。

 

「それでだ、涙子の能力開発を俺にやらせてほしい」

 

「はい!?」

 

 突然申し込みに驚く。木原は言葉を続けた。

 

「涙子のその能力はこの街でも珍しい物だ。だからこそ、科学者たちはどんな道に逸れたことでも研究をしたがる。正直言って、後輩がそんな目に遭うのは嫌なんだ。俺が開発すると言ってもそんなバンバンやるつもりは無いしな、飾利との遊びや日常生活を犠牲にしなくてもいい。能力に目覚めたからちょっとやってみようみたいなのでいいからさ」

 

 マシンガントークを飛ばす木原に佐天は笑って答えた。

 

「ふふふ、分数さんの精一杯私を守ろうとする気持ちが伝わってきました。さっきの話を聞いて分数さんならいいかなぁって、でもこんなに簡単に決めちゃっても良いんですか?なんかこう、仰々しい書類とか、私がちゃんと能力者なのかとか」 

 

「涙子が特にやらなきゃいけない事は無いさ。俺がきちんとした手順で学校に連絡するから、それまでは待機でいいよ」

 

 これからの日程を話しつつ、午前の面談時間が終わった。佐天を送り届けたあと、もう一人の知り合いの病室に向かう。その時の彼の表情は「これで犠牲者を減らせた」そんな風にも見えたのだ。

 

 

 

 




★祝★佐天さん能力者入り★
この設定を今後どう使うかは決まってません。

ってこで今回は何をしたかったのか分からない話でしたね。実際蛇足感が半端ないですが。

感想、評価まってまーす、ヒロインアンケートもやってまーす!

一巻終わったらキャラ紹介でもしますかね。需要はあるんでしょうか…

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