世界の復讐者へ   作:こめぴ

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最近気がついたこと。
それは初心者なのに下手に長編に手を出してはいけない。
そして自分が楽しめないと続かない
とりあえず今までのは凍結。
これを10万字程度で完結させます。
これが目標です。


プロローグ

その場所には濃厚な血の匂いが漂っていた。

何十という死体が積み上げられ、パチパチと燃えていた。血の匂いに加え、鼻が曲がりそうな人が焼ける匂いがする。

家を燃やす炎は夜の暗闇を照らしていた。

 

そんな中、1人の少年は地面に座り込んでいた。

腕の中にもう二度と目の覚ますことがない少女を抱いて、炎で赤く照らされた顔を眺めていた。

涙はもう乾いてでることはなかった。

 

「なんで……こんなことになっちゃったんだろうな……」

 

叫びすぎてかすれた声で少年は一人つぶやき、空を見上げた。

 

その夜空は、いつもとなんら変わらない、憎たらしいほどに綺麗な星空だった。

 

 

 

「あれ?リュート、今から狩り?」

 

「ああ。確か食料なくなってきただろ?だからちょっと取ってこようかと思ってな」

 

ある日、俺は釣竿やら槍やら弓やらを持って狩りに出かけようとした時、声をかけられた。

声をかけたのは俺がこの村に来てからずっと世話になっている家の一人娘であるルーナだった。

 

「そうそう、またトイレの掃除サボったでしょ?お爺様が起こってたわよ」

 

「だからこうやってお詫びにたくさん食料とってきてやろうってんだろ?」

 

「だからって……理由になってない気がするけど」

 

はぁ……と呆れたようにため息をするルーナ。

そんな呆れられてもな。

これが俺なんだからしょうがない。

 

「あまり村長に迷惑かけちゃダメよ?この村はレジスタンスの村の中でも人が少ないんだからみんなが協力しないといけないのよ?」

 

「ああ、わかってるよ。こんな人の少ない村だからこそ地上に家建てても帝国のクズどもに見つからないんだろうけどな」

 

確かにここは人が少なく、色々と不便だ。きちんとした施設もないしな。だけど帝国には住みたくない。聞くのは悪い噂ばかりだ。

税の徴収がひどいとか、独裁政治が過ぎるとか。

この村にいるのはそういった帝国が嫌になって出てきたやつらだ。

要するにレジスタンスだな。

 

「まあいいわ。食料が足りないのも事実だし。頑張ってね。あと怪我にも気をつけて」

 

「わかってるよ」

 

こいつは少々心配性すぎるのだ。

俺が初めてこの村に来た時、要するにこの村の前で生き倒れていた時もこうだった。

あれやってあげる、これはいらない?

記憶がないと知ってからは更に酷くなった。

身の回りの世話を全てやろうとするんだ。

おせっかいとはああ言うことを言うのだろう。

だが、記憶がなく不安だった俺を元気付けたことも確かだ。

だから俺はあいつには頭が上がらない。

文句を言いながらもつい従ってしまうのだ。

 

「あと、誰にも見つからないように。特に帝国の奴らには」

 

先ほどまで穏やかだったルーナの表情が一気に真剣なものになる。

彼女も帝国から逃げてきた一人。

国の奴らがどれほど恐ろしいかわかっているのだ。

やつらは慈悲というものが全くない。

俺たちを見つければ最後、全滅するまで追いかけてくるだろう。だからこの村のやつらは村からの出入り、村の外からの来客には細心の注意を払っている。

 

「ああ……わかってる」

 

俺もそれに真剣な表情で返し、村を出発した。

 

 

 

「よし、大漁大漁」

 

あのあと俺は太陽が西に沈み始めるまで狩りをし続けた。

今日は動物はあまりいなかったが魚がたくさん取れた。

いなかったというのはすこし言い方が違うか。俺が動かなかったから動物はあまり取っていない。やっぱり走り回って動物一匹仕留めるより、同じ場所で釣りをしている方が楽だから釣りばかりしていた。

これだけいればジジイも文句は言わないだろう。すこし昼にお腹が空いて食べてしまったが、余った分でもかなりの量がある。

 

「これで多分3日は持つな」

 

ふと西の空を見た。

相変わらず綺麗な夕日だ。燃えるように赤い太陽の光が周りの雲を赤く染めている。

初めてこの夕日の凄さを感じたのはいつだっただろうか。

初めの頃は夕日なんて気にしたこともなかった。

(確かルーナに教えられて気づいたんだよな……)

 

あの村の奴らにはいろんなものをもらった。

ルーナの事は言わずもがな好きだし、ジジイだって迷惑をかけてしまっているかもしれないが、嫌いなんてことは全然ない。むしろ好きだ。

記憶をなくして生き倒れていた俺を拾ってくれた恩は到底返しきれない。

 

「もうちょっと釣ってくかね」

 

もっと魚を持って行って村の奴らを驚かせてやろう。

そう思い釣りを再開しようと腰を下ろそうとするがーー

 

(あ……れ?)

 

突然めまいがして、視界が歪んだ。

飴細工のようにドロドロと溶け合うように。

そしてまるで世界が回っているかのように平衡感覚がなくなる。

 

世界が歪み、溶けあい、混ざり合い、次の瞬間に訪れたのは暗闇。

俺の意識は暗転した。

 

 

……思えばこの時から俺の人生は動き出した。

平和に過ごしてきた俺の人生が狂いだした。

 

 

 

突如、視界が明るくなった。

さっきのめまいはなんだったんだろうか。

俺はそんなことを考えるが、視界に写っている光景にそんな疑問は一気に吹き飛んだ。

 

そこはもう地獄絵図だった。

 

「うわぁぁあああ!」

「逃げろ!」

「女子供を早く避難させろ!男どもは戦え!」

「お母さぁぁぁああん!」

「武器を取れ!もうそこまで来てるぞ!」

 

「ころせぇぇえ!」

「皆殺しだ!」

「女も子供もみんな殺せ!」

「レジスタンスを殲滅しろ!」

 

家々はほとんどすべてが燃えていて、無事なものなんて1つもない。中には逃げ遅れて家と一緒に燃えている奴も見ることができる。

村の奴らは逃げ惑い、男たちは侵略者たちに抵抗するもむなしく殺される。

うちの村の奴らも弱いわけではないのだ。レジスタンスを名乗るんだから相当の実力はつけている。

だがそんな実力も数の暴力の前では無力だった。、

 

あいつらのことは一度だが見たことがある。間違いない。帝国の騎士団だ。

なぜこの場所がばれた?

もしかして俺が奴らに場所を教えてしまった?

いくつもの疑問が頭の中をぐるぐると回る。

 

その騎士団の中でも一際異彩を放つ女がいた。

他の奴らは甲冑をつけガチガチに身を固めているのに、そいつがつけているのは布の服に肘や手の甲、膝などにプロテクターをつけているだけ。

そしてその手に持つのは純白の細剣(レイピア)

彼女は女でありながらこの場の誰よりも強者の風格をただよわせていた。

 

そんな中、一人の男がその女に立ち向かった。

彼はこの村で1番の実力者とされる男で、実際にもう騎士団の騎士を何人も殺していた。

 

「覚悟!」

 

男は女に斬りかかるべく女の元に走っていく。

しかし女がとった行動はただ剣を抜き、構えることもせずただ男の方に切っ先を向けることだった。

 

(なんだあいつ……なんかやばい)

 

何か嫌な予感がした気がした。

そしてその嫌な予感は的中した。

その剣が光り始めた。

その光はどんどん強くなっていき1番輝いたところでーー

 

「はあっ!」

 

女はレイピアを思いっきり突き出した。

 

その瞬間目を疑うようなことが起きた。

その光が剣から放出され、男を貫いたのである。

 

男には腹に直径20センチほどの大きな穴ができた。いうまでもなく即死である。

 

村一番の実力者が一歩も動かずに倒された。

その事実は村の奴らの戦意を喪失させるのに充分働いた。

その時から今までなんとか持ちこたえてこれていた男たちも次々と殺されていった。

 

女はさっきと同じ手順で次々と殺していった。

あとすこしで森に逃げることができるところまで行けたやつも光線で無残に殺された。

村にいても殺される。逃げてもあの光線で殺される。

まさに逃げ場がない状態だった。

 

俺はこれでももう18になるし、剣の練習もしているのである程度は戦える。

今こそ拾ってもらった恩を返すべき時なのかもしれない。

俺もあの男たちに混じってみんなが逃げるための時間を命がけで稼ぐべきなのかもしれない。

しかし俺の体は突然目の前に現れた虐殺劇に驚きすぎて動くことはもちろん言葉を発することすら忘れていた。

 

しかし俺の意識は目の前で子供とその母親が背後から切りかかられそうになっているのを目撃してやっとはっきりする。

 

(危ないっ!)

 

そう叫んで敵の兵士を突き飛ばそうとした。

しかし無残にも母親も子供も敵の剣で斬り殺されてしまった。

 

俺の行動が間に合わなかったというわけじゃない。

 

(なんで……声が出ない!なんで体が動かない!)

 

俺の体はまるで一本の木になったように全く動かないようになってしまった。

しかも声も全く出すことができない。それどころか脳の命令に従って口がきちんと動いているかすら疑わしい。

 

結局俺は村の奴らが次々と殺されていくのを何もできずに眺めていることしかできなかった。途方もないほどの無力感が俺を襲った。

家族同然に思っていた人たちが殺されるのを見ているだけで何もできないなんてなんの地獄だろうか。

その人を助けるために戦うことも、身代わりとなることもできない。

まるで俺はこの出来事を世界の外側から見ている傍観者のようだった。

 

そして、それはまたもや唐突に起こった。

 

(また……か)

 

めまいが俺を襲った。

先ほどと同じように世界が周り、暗転する。

薄れる意識の中、殺される奴らの叫び声だけが俺の耳に入ってきた。

 

(何がどうなってるんだ……)

 

俺の疑問に答えてくれる奴はどこにもいなかった。

 

 

 

「はっ!」

 

俺は飛び起きるようにして目を覚ました。

ここはどこだ。

すぐさま周りを見渡す。めまいの前と場所が変わっているが、村周辺であることは間違いなさそうだ。見覚えのある景色がある。

空を見上げるともう夕日はとっくに沈み、夜となっていた。月の位置から夜になってそれなりに時間が経ったことがわかる。

 

(そうだっ!村の奴ら!)

 

先ほど見た地獄を思い出し顔を青くする。

しかし周りはさっきの地獄がなかったかのようにおだやかな空気が流れていた。

 

(もしかしてさっきのは夢?……いや、夢にしてははっきりしすぎてた)

 

自分の中では夢じゃないとわかっていても、どこかで夢であることを願っている自分がいる。

ふと村の方向の空を見ると赤く染まっていた。

 

さっきの家々が燃やされていた情景を思い出す。

 

(まさか……っ!)

 

俺は即座に走り出した。村に向かって走った。

 

何度か急ぎすぎて足がもつれ転んでしまったがそれでも走り続けた。

早く村の奴らにあってさっきのことが夢であると共鳴したかった。

 

あそこを抜ければ、また村の奴らに会えるはず!

ルーナも「もう、遅いよ!晩御飯に遅れちゃうじゃない!」なんでお小言を聞かせてくれるはず!

ジジイも、ルーナのお母さんも、いつも色々くれたおばさんも、無駄な知識を披露してくれたおじいさんも、剣を教えてくれたおじさんも、みんなが元気にしてるはず!

 

そう願い、森を走り抜ける。

 

「みんな!」

 

そう叫んで森を抜けたが、帰ってきたのはーー

 

何よりも残酷な現実だけだった。

そこには先ほど見た景色となんら変わりない、虐殺された村人の姿がそこにあった。

 

 

「う………」

 

「うぁぁぁあああああああああ!!!」

 

叫んだ。

泣き叫んだ。

喉が潰れるかと思うほどに泣き叫んだ。

 

この村に来てから村人との思い出が次々とフラッシュバックし、俺の悲しみをますます引き立てていく。

 

俺はこの夜空の下、吠えるように泣き続けた。

 

俺以外に誰も生きているやつがいないこの空間で、俺は泣き続けた。

 

しばらくすると俺の涙も止まり、落ち着いてきた。

いや、悲しみはまだまだあるが、涙は枯れ、喉は叫びすぎて痛みすら感じてきたので強制的に落ち着かされたというべきかもしれない。

 

「そうだ……ルーナ……」

 

もしあの夢がこれだとしたら、俺はまだあいつが死んだのを見たわけじゃない。

ならまだ死んだとは決まってないじゃないか。

生きている可能性もあるじゃないか。

なんてありもしない希望にすがるように⑥を探し始めた。

正直そんな希望にすがってないとどうにかなってしまいそうだったから。

 

が、世界はどこまでも俺をいじめたいらしい。

 

ルーナと俺が過ごしていた家。

 

そこにあいつはいた。いや、それはあった。

 

あいつの鳩尾あたりに剣が貫通し地面に刺さり、ルーナはブリッジのような体制で死んでいた。その剣は他の剣のように無機質な鉄の色ではなく青白く綺麗とさえ思えてしまう剣で、ルーナが死んでいる姿はどこか神々しさすら感じてしまった。

 

俺は何も言わず剣を地面とルーナの体から引き抜き、ルーナの体をそっと抱きしめた。

 

前に手をつないだときに感じた温もりはもうなく、血の通ってない人形のように冷たくなっていた。それに加え死後硬直で硬くなって本当に人形のようだった。

その表情は物語によくあるまるで寝ているようなおだやかな表情ではなく、殺される瞬間に時間が止まったような、恐怖と絶望をその顔に写していた。

 

なぜかもう涙は出ない。

 

「くはっ」

 

吹き出すように口から息が漏れた。

 

「あはははははははははははははは!!」

 

今度は狂ったように笑い出した。

悲しみを通り越しておかしくなった。

おかしくなったと言われればそれまでかもしれない。でも俺はそんな言葉で終わらせて欲しくない。

この心境を誰が理解できようか。

知らないうちに俺は全てを失った。

居場所も家族も信頼も。

 

ああ神よ。これで満足か?俺を不幸にして満足か?

 

「ははははは、はは、は………はぁ……はぁ」

 

もう笑うことにも疲れ息も絶え絶えになる。

 

「……殺してやる」

 

ほとんど潰れてかすれた声で呟いた。

その声は自分の声とは思えないほど冷たく、暗い。

 

傍に置いておいたルーナを刺していた剣をもち、杖のようにして立ち上がる。

 

「殺してやる。王も、王族も、騎士団も皆殺しだ。ルーナを殺したこの剣で、ほかでもないこの剣で殺してやる」

 

そう宣言するその声は恨めしそうで、憎そうで、それでいてどこか清々しさすら感じた。

 

俺はこの時から、いや、この日から狂い始めた。

 

 

 

ガサッ

 

背後にそんな音がした。

おかしい。

この村の人間は全員死んだはずだ。それにこんな場所に他の人間が足を運ぶとは思えない。

となるとーー

 

(敵か……?)

 

もしかすると騎士団?

 

ちょうどいい。

手始めにこいつから殺そう。

 

自然と口角が上がる。

そういう反応が出るあたり、俺はもう狂ってきているのかもしれない。

 

だが俺の予想は大きく外れた。

 

「誰?誰かいるの?」

 

聞こえてきたのは明らかな女性の声。

しかもそれは敵を警戒する声ではなく、何かを心配するような声だった。

 

(……敵ではない、か)

 

そう判断し姿をあらわすため歩き出した。

だが警戒することはやめない。

いつでも応戦できるよう戦闘態勢になったまま姿をあらわす。

 

そこにいたのはやはり声で予想した通り一人の女、いや少女だった。

相手の血のような赤黒い髪には覚えがある。

確か度々村に来ていた。

この村は規模が小さく、他のレジスタンスと支援を受けていた。その連絡のために何度か来ていた覚えがある。

初めて見た時はあの髪の色がどこか不気味で怖く思っていた覚えがある。

 

「君は……」

 

あっと驚いた表情を彼女は見せた。

どうやら向こうもこちらのことを覚えていたようだ。

しかしどこか不思議そうな顔をして俺の顔をじろじろ見ている。

 

「なんだ?何か顔についてるか?」

 

「いや、なんか前見た時と随分雰囲気が変わったなと思って。」

 

「どんな風に?」

 

「なんというか……怖くなった。顔が」

 

顔がってそれ雰囲気じゃないじゃないか……。

それにしてもそうか。雰囲気が変わったか。もしかしてさっきの決意で心境の変化があってそれが影響したとかだろうか。

まあ、ほぼ初対面の人間に顔が怖いと言えるあたりこいつもすこしずれているのかもしれない。

 

「ほぼ初対面のやつの顔を怖いとか言うなよ。それを言うならお前だってそうじゃないか。気持ち悪い髪の色しやがって」

 

その瞬間、ほとんど条件反射で、それに加え直感で剣を構えると、ガキンと相手の剣と当たる音がした。

彼女は一瞬で腰にあった真っ黒の刀を抜き、距離を詰め、切り掛かってきたのだ。

すこしでも反応が遅かったらやられていた。

正直今回受け止めることができたのは奇跡に近い。

つばぜり合いで接している部分がガリガリと火花を出しながら擦れる。

 

「へぇ……今のを受け止められるとは思ってなかった」

 

「たまたまだよ。ていうかなんだよ何も言わずに切りかかってきやがって。死ぬとこだったじゃねえか」

 

「この髪私好きなの。それをバカにしたから許さない。死んだら……まあそこまでの命だったって諦めて」

 

「わかったわかったから。俺が悪かった。だからこの刀を下げてくれ」

 

そう言って彼女は渋々刀を鞘に収めた。

 

おいおいこいつ無茶苦茶言ってるぞ。レジスタンスにはこんな物騒なのがいるのか。いや、俺のところが平和すぎただけで意外と他はこんな奴ばっかなのか?

 

はぁ……とため息をつきながら鞘に剣を収めると、彼女が俺をジロジロと見ているのが気になった。まるで値踏みされているようですごく不快だ。いや実際にされているんだろうけどな。

 

「お前結局何しに来たんだよ」

 

「私はこの村が襲われたって聞いたから調査に来た。この様子だと事実らしいね。見たところあなたはその生き残り?」

 

「ああ、運悪く生き延びちゃったよ。村の外で襲われてた時間気絶しててな」

 

「そう、よかったわね」

 

なんだか冷めた子だ。この村の有り様を見ても顔色1つ買えないところを見ると、人の死を見たことは一度や二度ではないのだろう。

 

「お前はもっと何かないのか?」

 

「何かって?」

 

「そりゃ……一般人をこんなに殺しやがって!帝国め、許さないぞ!……的な」

 

「まあ、ないことはないけど、敵を排除するのは当たり前。だから帝国は当たり前のことをしただけ」

 

その言葉に思わずカチンときた。切りかからなかった俺を褒めてやりたいところだ。おそらく俺が切りかかったところでこの子には勝てないだろうが。

 

この有り様を当たり前と言うなら、村の奴らが死んでいったのが当たり前みたいじゃないか。村の奴らの死をバカにされたようで悔しかった。

 

無意識に手を強く握ってしまったので爪が手のひらに食い込む。

 

だがこの少女はこう続けた。

 

「だから私たちが帝国を殺すのも当たり前。そして……あなたが復讐のために奴らを殺すのも当たり前」

 

その言葉にスッと悔しさが息をひそめた。

 

なるほど、こいつはこういう考え方なのか。

感情に左右されず、理論で、理屈で動く。

確かにレジスタンスには有望かもしれない。

 

……いや、ちがうな。表情にすこし苛立ちが見える。

多分こいつは激情家で、その理由として理屈を無理やり当てはめる感じか。

 

「私たちは利害が一致している。だからどう?私と一緒に来ない?」

 

「お前それもしかして勧誘してるのか?」

 

「そうだけど?」

 

何言ってるの?と言いたげに首をかしげる。

 

「そこはもうちょっといいこと言ってくれれば格好ついたのにな」

 

「うるさい、斬るよ」

 

そういって彼女はむっとした表情を浮かべ、刀に手をかける。

渾身のセリフをバカにされてムカついたのだろうか。

 

それと斬るよってのをやめろ。

お前のは冗談にならない。

 

「冗談だって」

 

「……ならいいけど。それで、返事は?」

 

ここで一度考えてみる。

ここで彼女の組織に入るのは間違いなくプラスだろう。

そこには俺より強い奴は何人もいるはずだから、そいつらに教えて貰えば俺も強くなれる。それに俺は別に強いと思っていない。だから一人で復讐を挑んでもきっと返り討ちにあう。というか例え強くても返り討ちにあうだろう。

なぜなら最大の力、数の力が向こうにはあるからだ。

だが組織に入ることである程度はカバーできる。

だが、マイナスのこともある。

まず好きに動けなくなる。

組織である以上一人一人に役割があるだろう。だとするとあいつを殺したいからあいつを殺す班に入れて!なんてこと軽々しく言えないのだ。それに他のメンバーだって似た境遇のやつがいるだろうしな。

 

 

この点を踏まえて考える。

 

……よし、メリットの方がでかい。

 

返事は決まった

 

「わかった。入るよ」

 

「私の名前はユキナ。歓迎する、ようこそレジスタンス『スキアーソル』へ」

 




今度こそ完結できるように頑張ります。

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