牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第90話になります!

この小説も90話まで来て、100話まであと少しとなりました。

かなりの長編になってきましたが、これからもこの作品をよろしくお願いします!

さて、今回は新曲の歌詞を考える回となっています。

今回、あの作品の歌詞が登場するかも?

それでは、第90話をどうぞ!




第90話 「歌詞」

学園祭まであと1月ほどとなり、統夜たちは学園祭でのライブに向けて気合を入れて練習しようとしたのだが、部室が水道工事のため使用出来なくなっていた。

 

統夜たちは練習を行うべく他の部屋が使えないか探していたが、どの部屋も他の部活が使用しており使用出来ない状態だった。

 

そんな中、統夜たちは明日にはどうにかしようということで帰ろうとするが、桜高の入り口に刑事であり、統夜の友人である日代幸太が待っていた。

 

幸太は刑事として数日前に起こった行方不明事件を捜査していたのだが、幸太はその事件はホラーの仕業ではないかと推理をしていた。

 

統夜は幸太や唯たちと共にホラー討伐へ行くことになり、捨て犬に憑依したホラー、ヘルビーストと対峙した。

 

動物好きな統夜は動物の容姿を使ったヘルビーストの戦い方に苦戦を強いられるが、幸太や唯たちの手助けによって窮地を切り抜け、ヘルビーストを討伐することが出来た。

 

その後、統夜たちは幸太の奢りで夕食をとっていた。

 

その時にも学園祭の話になったのだが、澪はどうやらスランプに陥っているようだった。

澪は数曲分の歌詞を書いたのだが、全て動物ネタの歌詞だった。

 

付き合いの長い律曰く、澪が動物ネタに走る時は不調のようであった。

 

そこで、紬がそれぞれ歌詞を書いてみないかと提案し、明日発表することになった。

 

こうしてこの日は解散となり、翌日を迎えた。

 

この日の放課後、統夜たちは職員室にいるさわ子のもとを訪れて、どこか使える部屋はないか聞くことにした。

 

「……あれから色々探し回ったんだけど……。ないわね。軽音部が練習出来そうな場所は」

 

さわ子は軽音部が使えそうな部屋を見つけることは出来ず、統夜は予想通りと思っていたが、落胆を隠せなかった。

 

「えぇ!?ないってそんな……」

 

「これでも頑張ったのよ?理科室や調理室……。さらには会議室や校長室までお願いに回って……。1日でヒールがすり減ったわ」

 

さわ子は相当苦労したのかぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「すいません、先生。苦労かけて……」

 

「……部室が使えるようになるまでみんなでの練習は休みにするか?」

 

「文化祭前にそれはきつくないか?」

 

部室が使えないならそれまでは個人練習のみでどうにか過ごそうかということも考えたのだが、本番も近付いてるこの状況で、それが最良の選択とは思えなかった。

 

そんな中……。

 

「……貸しスタジオでも借りてみたら?」

 

「貸しスタジオか……。その発想はなかったな……」

 

「行ってみたい!」

 

唯は貸しスタジオに興味津々のようで、目をキラキラと輝かせていた。

 

「でも、けっこう高いんじゃないですか?」

 

「大丈夫♪まだ部費は残ってる♪」

 

軽音部は人数の少なく、コンクールなどの課外活動がないため、部費にはまだ余裕があった。

 

律は笑みを浮かべながら部費があることを明かしていた。

 

「りっちゃん……。りっちゃんががめつくて良かったよぉ!!」

 

「おい」

 

唯は目をキラキラとさせながら律に抱きつくのだが、律はそんな唯をジト目で見ていた。

 

こうして統夜たちは、部費を使って貸しスタジオを借りることになり、桜ヶ丘某所にある貸しスタジオへと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

貸しスタジオに到着した統夜たちは、受付でスタジオを借りる手続きを行っていた。

 

「それでは、こちらに代表の方のお名前とご住所をお願いします」

 

受付にいた店員が、受付に必要な用紙を渡してきた。

 

ここは部長である律が書くと思われたのだが……。

 

「澪、書いて♪」

 

「お前部長だろ?」

 

「ちぇー、わかったよ……」

 

律は用紙を書くのが面倒だったのか、澪に押し付けようとするが、澪に部長だろと言われて渋々用紙に必要事項を記入していた。

 

「あと、初回ご利用時には身分証明書を拝見しておりまして」

 

「身分証明書?」

 

身分証明書が必要とわかり、律は困惑していたのだが……。

 

「証明します!この人確かに軽音部の部長です!」

 

「いやいや、身分証明ってそういうことじゃなくてな……」

 

唯が口頭で律のことを証明しようとしており、統夜はこうなだめながら呆れていた。

 

「そうそう。生徒手帳で良いんじゃないのか?」

 

「アハハ、そっかそっか」

 

律は生徒手帳を取り出し、それを店員に見せると、それが身分の証明になった。

 

こうしてスタジオを借りる手続きを終えた統夜たちは、店員に案内された部屋に入った。

 

「……あっ、最初に言っておくけど、スタジオは飲食禁止だから気を付けろよ」

 

統夜はスタジオになっている部屋に入るなり、このような注意をしていた。

 

紬が間髪入れずにお茶の用意をしそうと思ったからである。

 

「え!?そうなの?私、お茶の用意しようと思ってた……」

 

紬はこの部屋が飲食禁止だということに驚いていた。

 

「アハハ……。やっぱりな……」

 

統夜の予想は見事に当たっており、統夜は苦笑いをしていた。

 

「おぉ、これはこれは……」

 

唯はスタジオになっている部屋の周囲を見回していた。

 

「……思ったより狭いんだね」

 

「「「贅沢言うな!」」」

 

唯がこの部屋に対して文句を言っており、統夜、澪、律の3人がツッコミを入れていた。

 

「……おっ!」

 

唯は大きな鏡を見つけると、鏡の前に立った。

 

「鏡かな?鏡じゃないかな?鏡だよ!」

 

唯は何故か575のリズムで鏡の存在を説明していた。

 

「……ねぇ、もしかして私のギー太の背負い方ってちょっとマヌケっぽい?」

 

「あぁ」

 

「やっと気付いたのか」

 

律と澪は唯のギターの背負い方がマヌケっぽいと感じており、それを正直に答えていた。

 

「うーん……」

 

唯はそのことがわかると、真剣な表情で考え事をしていた。

 

その後、すぐに準備をするのかと思いきや、統夜を除く全員が大きな鏡を利用して髪型を整えていた。

 

「……」

 

統夜はそんな唯たちをジト目で見ていた。

 

《やれやれ……。女ってのは面倒な存在だな……》

 

(そんなこと言うなって。女の子なんだから身だしなみを気にするのは当たり前だろ?)

 

《天然ジゴロがよく言うぜ……》

 

(天然ジゴロ?)

 

統夜とイルバはテレパシーでこのような会話をしており、統夜は未だに天然ジゴロという言葉の意味を理解していなかった。

 

「……鏡があると、つい……ねぇ♪」

 

「女の子ですものねぇ♪」

 

「うん、そうよねぇ♪」

 

「え、演奏中の自分の姿もチェック出来ますしね!」

 

「う、うん!そうだな!」

 

「……」

 

唯たちはまるで統夜に釈明するように鏡を見て身だしなみを整えていたことを説明していた。

 

しかし、統夜は未だにジト目で唯たちを見ていた。

 

「と、統夜!そんな目であたしたちを見るなよぉ!」

 

「はいはい……」

 

統夜は律の言葉を軽く流しながらギターの準備を行っていた。

 

「ほら、お前らもさっさと準備しろよ。わざわざ部費を使ってスタジオ借りてるんだからな」

 

「わ、わかってるよ!」

 

統夜の叱責に唯たちは慌てて楽器の準備を始めていた。

 

終始ダラダラしてこのまま終了時間になってしまっては、せっかくの部費の無駄遣いになってしまうからである。

 

「よし、時間も限られてるんだ。さっさと始めるぞ!」

 

限られた時間を有意義に使うために統夜が唯たちを先導していた。

 

「おぉ、今日のやーくんは何か燃えてる……」

 

「そうですかね?私はいつも通りの統夜先輩だと思いますけど」

 

唯はテキパキと指示を出す統夜を見てやる気に満ちていると思っていたが、梓は統夜はいつもと変わらないと感じていた。

 

「ほら、そこの2人!無駄話してないで、チューニングを確認しろ!」

 

「「す、すいません!」」

 

統夜に怒られた唯と梓は慌てて音程が狂っていないか確認していた。

 

こうして、どうにか演奏準備を整えることが出来た。

 

「よし……。始めるぞ!」

 

「わ、わかったよ!1・2・1・2・3・4!!」

 

律がスティックを叩いて合図をすると、まずは「ふわふわ時間」の練習を行った。

 

楽器の演奏を始めると、先ほどまでグダグダしていた唯たちも演奏スイッチが入ったようで、真剣な表情で演奏していた。

 

それが功を奏したのか、今の演奏は本番以上の出来になっており、その後も時間の許す限り練習を行っていた。

 

こうして、貸しスタジオでの練習は、予想以上に実りのあるものとなった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

そして貸しスタジオでの練習が終わると、統夜たちは統夜が最近贔屓にしている喫茶店に来ていた。

 

「……さてと、今日は思ったよりも充実した練習が出来たよな」

 

喫茶店の中に入り、6人が座れる席に全員が座ると、律は今日行った練習に満足していた。

 

「そうだな。みんなの演奏もバッチリ合ってたしな」

 

「はい!私もしっかり練習出来て楽しかったです!」

 

貸しスタジオでの練習には澪や梓も満足しており、唯と紬も同じ気持ちであった。

 

「あぁ。今日は何とか練習出来たし、次は新曲の歌詞決めか?」

 

「そうだな。それぞれ歌詞を書いてきただろうし、歌詞の発表でもするか!」

 

「えぇ……」

 

律は歌詞の発表を切り出すが、梓は自身なさげな表情をしていた。

 

すると……。

 

「いらっしゃい、統夜。今日はずいぶんと賑やかね」

 

「あぁ、ヒカリさん。お疲れ」

 

統夜はヒカリと親しげに話をしており、唯たちはその様子を見て首を傾げていた。

 

「……ねぇ、統夜君。そちらの方とはお知り合いなの?」

 

「あぁ、この人は東ヒカリさん。カオルさんに憧れて画家を目指してる人だよ」

 

「東ヒカリよ。よろしくね」

 

「「「「「よ、よろしくお願いします」」」」」

 

ヒカリは簡単な自己紹介を済ませ、唯たちはペコリとヒカリに会釈をしていた。

 

「それで、注文は決まったの?」

 

「あ、えっと……」

 

統夜はメニュー表を開くと全員がメニュー表に釘付けとなり、何を注文するかを決めていた。

 

全員の注文が決まると、ヒカリは伝票にそれを記入していた。

 

「……はい。ちょっと待っててね」

 

ヒカリはウインクをすると、そのまま厨房へ向かっていった。

 

「……何か、この前会った時より優しい雰囲気な感じがします」

 

梓は1度ヒカリのことを見ており、その時は棘のある感じで統夜に接していたのだが、今は刺々しい感じは一切なく、穏やかな雰囲気を出していた。

 

「……まぁ、あの人は色々誤解してたけど、その誤解が解けたからかな?」

 

「そうだったんですか……」

 

「まぁ、その話はおいおいするからまずは歌詞の発表をしないとな」

 

統夜はヒカリがホラーの存在を知った経緯を話すと話が長くなると思い、話題を変えていた。

 

「おっ!そしたら統夜から歌詞を発表するか?」

 

「まぁ、別にいいけど……」

 

統夜は鞄から歌詞が書かれた紙を取り出すと、律はそれを受け取り、統夜の歌詞を読み始めていた。

 

「……集まれアニマルって……。お前も動物ネタかよ!」

 

統夜の歌詞が最初から動物を用いたものであり、律はツッコミをいれていた。

 

「え!?本当なのか!?」

 

澪も動物ネタの歌詞を書いていたので

、統夜の歌詞に食いついていた。

 

律は発表の前に統夜の歌詞を読み進めていたのだが……。

 

「……思ったよりもシンプルでわかりやすい歌詞だな……」

 

統夜の考えた歌詞は予想以上にわかりやすい歌詞で、動物ネタであったのだが、律は統夜の歌詞は悪くないと思っていた。

 

しかし……。

 

「……ん?」

 

律は歌詞を読み進めていくとある部分に目が止まり、そこをジト目で見ていた。

 

「……「Let's Let's Dance 超かっこイーグル。いつも余裕シャークシャーク……」」

 

「……ぷっ!なんか面白い歌詞だね!」

 

律がジト目で見ていた部分の韻の踏み方が面白いと思ったのか、唯は笑っていた。

 

「そうだろ?これは先週くらいから知り合いの動物学者と一緒に考えたんだぜ!」

 

「へぇ、その学者さん、ずいぶんと独創的ね♪」

 

「……却下」

 

この歌詞は唯や紬には公表だったのだが、律は統夜の歌詞は無いと判断し、却下していた。

 

「何でだよ!面白い歌詞だとは思わないか?」

 

「何だよ、この変な韻の踏み方は!それにこれ、「がむしゃライオン」って……」

 

「そうか?私は面白いと思うけど」

 

「そうですかね……」

 

澪は統夜の独創的な歌詞が気に入ったのかキラキラと目を輝かせていたのだが、梓はそれを理解出来ずに首を傾げていた。

 

「……まぁ、他にもツッコミたいところはたくさんあるけど、統夜の歌詞は没だからな」

 

「くっそー!良い歌詞だと思ったんだけどなぁ……」

 

統夜は自分が知り合いの動物学者と考えた歌詞が没にされると、悔しがりながらポリポリと頭を掻いていた。

 

「へぇ、歌詞を考えてるんだ」

 

注文されたものを持ってきたヒカリが、このように声をかけてきた。

 

「ま、そんな感じかな」

 

「懐かしいわねぇ……。私も桜高だったんだけど、美術部と軽音部を掛け持ちしてたのよ」

 

ヒカリは注文されたものをテーブルに置きながら自分のことを話していた。

 

「え!?ヒカリさんって軽音部だったんですか!?」

 

「俺も知らなかったから驚いたよ」

 

「ウフフ、そうでしょ?」

 

統夜たちの驚いたリアクションが嬉しかったのか、ドヤ顔をしていた。

 

「ヒカリさんって演芸大会にも出てましたよね?ギター上手いなって思ってたんです!」

 

「ふふん!そうでしょそうでしょ?今は絵に専念してるから下手にはなってるけど、それでもあなたたちには負けないっていう自負はあるわよ」

 

ヒカリは作詞作曲も自分で行う程センスを持っており、時々しかギターを弾かない今でも統夜たちよりは上手いと自負していた。

 

「今度、ギターを教えて下さい!」

 

「えぇ、もちろんいいわよ」

 

「……軽音部でやってたのはデスメタルとかではないだろうな?」

 

「そ、そんなのじゃないわよ!普通の曲よ!普通の!」

 

「そっか……。ならいいんだけど……」

 

ヒカリは軽音部時代に普通の音楽をやっていたことがわかり、統夜だけではなく唯たちも安堵していた。

 

「……あぁ、そういえば、私の先輩の時は凄いメチャクチャだったって聞いたことがあるな……」

 

「それって……」

 

「さわちゃんだな……」

 

「さわちゃん?」

 

ヒカリはさわ子と会ったことがないため、名前を聞いてもわからず、首を傾げていた。

 

「私たち軽音部の顧問の先生なんですけど……」

 

「色々とメチャクチャな人で……」

 

「そのへんにしておけ。言いふらしてるのがバレたら後が怖いぞ」

 

統夜はこのような警告をすると、唯たちはさわ子の昔の話を言いふらしたのがバレたらさわ子がどれほど怒るかを想像していた。

 

それが怖かったのか、唯たちの顔は真っ青になっていた。

 

「?よくわからないけど、私は仕事だからもう行くわね。どうぞ、ごゆっくり」

 

ヒカリはこれ以上喋っていたら仕事に支障をきたすと判断し、そのまま仕事に戻っていった。

 

統夜たちは注文したスイーツを頬張りながら歌詞の発表を続けることにした。

 

「……それじゃあ次は誰が発表してくれるんだ?」

 

律は統夜の次に誰が発表するかを聞いていた。

 

すると……。

 

「はいはい!私が発表する!」

 

唯が自信満々に手を上げて立ち上がった。

 

「……大丈夫か?」

 

律は不安げだったが、とりあえず唯の歌詞を聞いてみることにした。

 

「……ご飯はすごいよ!何でも合うよ!」

 

「へ?ご飯?」

 

統夜のと同じくらい独創的な歌詞に統夜はポカンとしていた。

 

それは唯以外の全員が同じ気持ちのようで、残りの4人も統夜のようにポカンとしていた。

 

そんなことはおかまいなしに唯は続けていた。

 

「ラーメン、うどんにお好み焼き。炭水化物と炭水化物の夢の……」

 

「ちょちょちょ……ちょっと待った!」

 

唯の歌詞があまりに独創的すぎるため、律は唯にストップをかけていた。

 

唯は止められたことに対して不満そうにしていた。

 

「えぇ?サビがなかなか面白いのに……」

 

「……何だよ」

 

律は先ほどの統夜の歌詞と似たのが来るだろうと予想しながらも聞いてみることにした。

 

「……いち、に、さん、し、ごはーん!!」

 

律の予想は見事に的中し、律は落胆からか頭をテーブルにぶつけていた。

 

「……ちなみに、タイトルは「ごはんはおかず」だよ」

 

「……無いな」

 

「あぁ、却下だな」

 

統夜と律はジト目で唯のことを見ており、2人揃って唯の歌詞を却下していた。

 

「えぇ!?やーくんの歌詞より良いと思ったんだけどなぁ……」

 

唯は歌詞が没になったのか不満だったのか、ぷぅっと頬を膨らませていた。

 

《……まぁ、俺様から言わせてもらえればどっちもどっちだがな》

 

イルバとしては統夜の歌詞と唯の歌詞は同レベルだと思っていた。

 

(そうかなぁ……)

 

統夜は自分の歌詞が唯と同レベルだと言われたのが気に入らなかった。

 

「……そしたら次は誰がやるんだ?」

 

「はいっ!私がやります!唯ちゃん、仇はとってあげるね♪」

 

「おいおい、仇って……」

 

言葉のアヤであることはわかっていたのだが、統夜はジト目で紬を見ていた。

 

紬は自分の書いた歌詞が書いてある紙を取り出すと、自分の歌詞を読み始めた。

 

「……吹きすさぶ冷たい風が肌をさす……」

 

「……おっ、いい感じじゃないか?」

 

頭の部分は良い感じの歌詞になっており、統夜は感嘆の声をあげていた。

 

律たちも、紬の歌詞に大いに期待していた。

 

しかし……。

 

「……芳江は犯人を断崖絶壁に追い詰めた……」

 

「へ?芳江?」

 

「断崖絶壁?」

 

サスペンスで良く出てきそうなフレーズが出てきており、統夜と律はキョトンとしていた。

 

「健一さん……。あなたが……あなたが……。犯人だったんですね!」

 

《おいおい、これじゃまんま2時間もののサスペンスじゃねぇか!》

 

(そうだな。それは俺も思ったよ……)

 

紬の考えたあからさまに2時間サスペンスのような歌詞に統夜とイルバは呆れ果てていた。

 

「はい、却下」

 

「えぇ!?」

 

律は即座に却下するのだが、紬は不満そうにしていた。

 

「なぁ、ムギ。それって歌詞なのか?」

 

あまりに歌詞らしくない内容だったので、澪が確認を取っていた。

 

「うん!今までにない路線がいいかなって♪」

 

「なさ過ぎだろ!……つか、ムギってサスペンスが好きなんだな……」

 

「うん!実は好きなのよ♪」

 

「へぇ、そうなんだな」

 

紬がサスペンス好きなのは意外だと思っていた統夜は少しだけ驚いていた。

 

「……次は梓な」

 

紬の歌詞も没であり、律は続いて梓を指定していた。

 

指名された梓の表情は強張っていた。

 

「あっ……はい……」

 

梓は鞄から一枚の紙を取り出すと、ゆっくりと立ち上がった。

 

しかし、梓は恥ずかしいのか、頬を赤らめてはにかんでいた。

 

「あっ、あの……。やっぱり読まなきゃダメですか?」

 

恥ずかしいのか自信がないのか、弱々しい口調で言っていた。

 

「まぁ、無理して読まなくてもいいけどな。俺のも律が読んじゃったしな」

 

「梓、あたしが読むか?」

 

律は梓を気遣い、このように提案するのだが……。

 

「い、いえ!私、やっぱりやります!」

 

覚悟を決めたのか、梓は自分の考えた歌詞を読み始めた。

 

「……いつもゆらゆら揺れている……あなたの視線を感じるの……」

 

「まぁ♪いい感じ♪」

 

紬は梓の歌詞が良い感じだったのか、感嘆の声をあげていた。

 

「見つめて……見つめないで……」

 

「キタキタぁ♪」

 

「あぁ、いい感じだな!」

 

梓の歌詞を、律と統夜は良いと思っていた。

 

「もうすぐあげるから……」

 

「おぉ!」

 

唯も梓の歌詞に感嘆の声をあげていた。

 

ここまでは全員に公表で最後まで良い感じになると思われたのだが……。

 

「……もうちょっと待っててね……。トンちゃん♪」

 

梓がトンちゃんの名前を言った瞬間、統夜たちはポカンとしていた。

 

「と、トンちゃんに餌をあげる歌?」

 

「……何か惜しいな……」

 

「……書き直し」

 

「ダメですか……?」

 

「途中までは良かったんだけどな……。トンちゃんの部分を直せばかなり良くなると思うぞ」

 

「あぅぅ……」

 

自分の歌詞は没ではなかったが、書き直しと言われてしまい、梓は涙目になっていた、

 

「それで……律はどうなんだ?」

 

「え?あたし?」

 

律は書いてあるであろう紙を統夜に見せてきた。

 

「えっと……。「いくらはいくら?」。「電話に出んわ」。「猫が寝込んだ」……」

 

「いやぁ、イマイチ笑えないんだけどさぁ……」

 

「……」

 

統夜は律の考えた歌詞とは言えないダジャレのタイトルがくだらなかったのか、ジト目で律を見ていた。

 

「そ、そんな目であたしを見るなよ!」

 

「歌詞作れよ!歌詞!」

 

澪は歌詞ではなくダジャレを作ってきた律にツッコミをいれていた。

 

「ねぇねぇ、澪ちゃんは歌詞を書いてきたの?」

 

澪だけ歌詞を発表してないので、紬が確認をとっていた。

 

「あぁ!「アライグマが洗った恋」と「キリン凛々」どっちが見たい?」

 

澪は昨日と変わらず動物ネタであり、何故か澪は自信があるのか目をキラキラと輝かせていた。

 

「……相変わらず澪は不調か……」

 

律は澪が未だにスランプだということを見抜いていた。

 

「……どっちも没だ。澪、動物ネタ以外はないのか?」

 

「えぇ!?何でだよ!統夜だって動物ネタだったろ?」

 

「まぁ、そう言われたら2つとも見るだけ見てみたらいいんじゃないのか?」

 

統夜は澪の歌詞を見てみると言うと、澪の表情がぱぁっと明るくなっていた。

 

統夜たちはとりあえず澪の書いた歌詞をチェックするのだが、あまりにも内容がメルヘン過ぎたため、とても歌詞として使用出来るものではなかった。

 

そのため、澪以外の全員は澪の歌詞を没にすることを決めた。

 

澪はその決定に泣きそうになるのだが、統夜たちはどうにか澪をフォローしていた。

 

統夜たちは注文したスイーツを食べながら歌詞決めを行っていたのだが、結局決定的な歌詞を作ることは出来ず、歌詞作りは明日以降に持ち越しとなった。

 

歌詞の発表が終わると統夜たちは会計を済ませて喫茶店を後にした。

 

店を出る時、ヒカリは満面の笑みで「また来てね」と言って見送ってくれた。

 

「……部室、どうなってるんだろう……」

 

喫茶店を後にしてすぐ、唯が不安げにこう話を切り出してきた。

 

「いつも行っていると、ありがたみってものがわからないわよねぇ……」

 

「……まぁ、そういうもんだよ」

 

統夜たちは使えなくなって初めて部室のありがたみというものを実感していた。

 

そんなことを考えていると、1台の車が統夜たちの前に止まった。

 

「……あっ!さわちゃん!」

 

統夜たちの前に止まった車に乗っていたのはさわ子であり、統夜たちはさわ子の車まで駆け寄った。

 

「……部室の工事、終わったわよ!」

 

「「「「「「え!?」」」」」」

 

予想外の吉報に、統夜たちは驚いていた。

 

「予定より早かったわね」

 

「良かったぁ♪」

 

「やっと……部室に戻れるんだね!」

 

「旅は終わった……」

 

統夜たちは安堵と喜びの気持ちを表していた。

 

「大袈裟ねぇ……。……楽器、乗せてもいいわよ。明日、学校まで運んであげる」

 

「だったらぁ、家まで乗っけてってよぉ♪」

 

「乗せてぇ♪」

 

「だから、6人は無理だって言ってるでしょ?」

 

律と唯がさわ子の車に乗せてと懇願しており、さわ子は苦笑いしながら困り果てていた。

 

「……ま、明日から部室が使えるなら俺も安心して騎士の使命を果たせるよ。だから、俺は番犬所に行くよ」

 

部室の問題が片付いたとわかった統夜は、唯たちと別れてそのまま番犬所へ向かった。

 

この日は指令がなかったため、街の見回りを行ってから家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

そして翌日の放課後……。

 

「帰ってきたー!!」

 

音楽準備室に入るなり、唯のテンションは最高潮になっていた。

 

朝のうちにさわ子が楽器類やトンちゃんの水槽を元通りにセットしてくれたため、部室は今までと同じになっていた。

 

「帰ってきましたよぉ〜……生還したよぉ!」

 

「なんかいいなぁ」

 

「なんかホッとします」

 

「うん!ここで練習出来るなんて、ありがたいよね!」

 

無事に部室に戻ってきて、唯たちは改めて安堵していた。

 

「まぁ、有り難みなんてこんなことでもない限りわからないだろうしな」

 

「統夜先輩が言うと説得力がありますね」

 

「アハハ、そうか?」

 

「もう、あちこちうろうろしなくていいのね……」

 

「いいんだよ!毎日ここに来ていいんだよ!」

 

「よっしゃあ!まずは……」

 

「お茶淹れよっか♪」

 

相変わらずの紬の言葉に統夜たちは思わずズッコケそうになっていた。

 

「アハハ……。その前に1曲やろうよ!」

 

珍しく唯がティータイムの前に練習をしようと言っていた。

 

統夜たちも練習したい気分だったので、ティータイムの前に練習を行うことになった。

 

 

 

 

練習を行い、現在はティータイムを行いながら、全員で新曲の歌詞を考えていた。

 

「……なーにも思いつかん」

 

律は必死に歌詞を考えるのだが、良いアイディアが思い浮かばなかった。

 

「案外難しいですよね……。歌詞を書くなんて……」

 

「そうだよなぁ……」

 

統夜も頭を悩ませながら歌詞のアイディアを考えていた。

 

「……行け、風の如く。宿命の剣士よ……。……って!こんなんじゃダメだよなぁ……」

 

『そうだな。だが、不思議だな。俺様は案外そのフレーズは悪くないと思うぜ』

 

統夜はワンフレーズだけ思いついたので口ずさむのだが、それが良いアイディアだとは思えなかった。

 

しかし、イルバは何故か統夜の口ずさんだフレーズを気に入っていた。

 

「……振り返らず走れ……。その時代を駆け抜けて行け、激情の中で……」

 

統夜は再びフレーズが浮かんできたのか、それをノートにメモしていた。

 

「統夜先輩、今のフレーズ良い感じですね!」

 

「そうか?でも、ムギの作ってくれた曲のイメージに合わないような気がするんだよなぁ……」

 

「なぁ、統夜。そんなことはあまり考えてみないで作ってみたらどうだ?そしたら何か良い歌詞が出来るかもしれないぞ」

 

律は統夜にとりあえず考えてみたら良いのでは?とアドバイスをしていた。

 

「そうだな。何とか考えてみるよ」

 

統夜は思いついたフレーズを次々とノートに書いていった。

 

「……夜明けが来るのを待たず僕は1人旅に出るよ……。これ、良いかもしれない……」

 

統夜は良いフレーズが思いついたのか再び歌詞を書き始めた。

 

そんな中、唯は歌詞を書くことをせず、紅茶を飲んで余裕そうにしていた。

 

『おい、唯。歌詞を考えなくても大丈夫なのか?ずいぶんと余裕そうだが』

 

そんな唯の様子が気になったイルバがこのように訪ねていた。

 

すると……。

 

「うん!もう3つも作った!」

 

唯はミカンの皮を剥きながら飄々としていた。

 

統夜たちはその事実に驚き、唯の作った歌詞をチェックした。

 

「……!おいおい、ちゃんと韻を踏んだりしてるし、良いんじゃないのか?」

 

統夜たちは唯の歌詞が予想以上にしっかりしていたため、驚きを隠せなかった。

 

『おい、唯。本当にこれはお前さんが作ったのか?昨日はあんな歌詞を書いたやつとは思えないのだが』

 

「ちょこーっとだけ、憂に手伝ってもらった」

 

(絶対に……)

 

(ちょこっとじゃ……)

 

(ないな……)

 

(やはりそういうことか……)

 

統夜たちはこの歌詞はほとんどが憂のアイディアなのだろうと予想していた。

 

唯は眠かったのか、大きな欠伸をしていた。

 

「唯ちゃん、ずいぶんと眠そうね」

 

「エヘヘ……。歌詞書くのに夢中になってあまり寝てないんだよねぇ……」

 

『おいおい、夜更かしか?感心しないな』

 

「イルバの言う通りだ。去年みたいに風邪ひいたりしないでくれよ?」

 

唯は去年の学園祭前に風邪をひいてしまったため、今年はそんなことがないよう、統夜たちは心配していた。

 

「大丈夫だよ!おミカン様がついてるから!」

 

唯も風邪をひかないよう考えていたようであり、毎日ミカンを食べてビタミンの補給を行っていた。

 

「ミカンパワーを分けてあげよう!」

 

唯はまだ皮を剥いていないミカンを2つ取り出すと、それを澪の両頬にくっつけていた。

 

「アハハ……。何やってんだか……」

 

統夜はそんな唯を見ながら苦笑いをしており、歌詞作りを続けていた。

 

結局、この日もまともな歌詞は完成することはなく、解散となった。

 

 

 

 

 

部活が終わり、唯たちと別れた統夜はいつものように番犬所を訪れた。

 

この日も指令はなかったため、統夜は街の見回りを行っていた。

 

しばらく街を歩き回っていたが、この日も特に異常は見つからなかった。

 

そのため、明日に備えてまっすぐ家に帰ろうと思ったその時だった。

 

「……ん?電話か?」

 

統夜の携帯に反応があったため、ポケットから携帯を取り出した。

 

「……唯か。こんな時間に珍しいな……」

 

確認すると、唯から電話だったため、統夜はすぐに電話に出た。

 

「……もしもし、どうした、唯?」

 

電話に出るなりこう訪ねたのだが、唯の口から信じられない一言が飛び出してきた。

 

『やーくん……。どうしよう……。風邪ひいた……』

 

「なっ、何ぃ!!?」

 

唯の爆弾発言に統夜は驚愕していた。

 

風邪をひくなと言った矢先だったからである。

 

「ちょっと待ってろ!今行くから!」

 

統夜はそう言って電話を切ると、律たちに連絡を取った。

 

統夜は全員に唯の家の前で待ち合わせをしようと話すと、唯の家に行く前にコンビニに立ち寄った。

 

そこでスポーツドリンクや果物、さらにプリンなどを購入してから唯の家に向かった。

統夜が唯の家の前に着くとすでに全員が集まっており、統夜たちは唯の家に入ったのだが……。

 

「……え?風邪をひいたのは憂ちゃん?」

 

家の中に入ると何故か元気そうな唯に出迎えられ、リビングに案内された後に事情を聞いた。

 

すると、風邪をひいたのは自分ではなく憂の方であった。

 

「焦らせるなよ……。って、憂ちゃんでも大問題だけど……」

 

風邪をひいたのは唯ではなくとりあえず安心はしたのだが、両親が家を空けることが多い中、憂が風邪をひいたというのは、平沢家としては大事件だった。

 

「わ、私、どうすれば……」

 

唯は憂が風邪をひいたことでどうすればいいのかわからず、気が動転していた。

 

「唯、とりあえず落ち着け」

 

澪はすかさず唯にフォローをいれていた。

 

「……それで、肝心の憂ちゃんは?」

 

統夜は唯にこう聞いたのだが、キッチンの方から物音がしたので、その方向を向くと……。

 

「みなさん……いらっしゃい……」

 

憂は風邪をひいてるからか顔を赤くしていた。

 

そんな状態であるにもかかわらず、人数分のお茶を用意していた。

 

「お茶……良かったら……」

 

風邪のため力が入らないのか、トレイがプルプルと震えておりとても危なっかしいものだった。

 

憂の予想外な行動に澪、律、紬の3人はテンパってしまい、梓はため息をついていた。

 

とりあえず統夜はお茶入りのトレイを奪い取り、それをテーブルに置いた。

 

そして、全員で憂を部屋まで連れていくと、ベッドに寝かせた。

 

「ほら!ちゃんと横になってなきゃ!」

 

「ごめんね……梓ちゃん……」

 

「熱はそんなに高くないわ」

 

紬は憂の体温を測るのだが、幸いにも熱は高くなかった。

 

「良かった……」

 

「ま、しっかり栄養を取ってしっかり眠ったらすぐに治るさ」

 

統夜は熱が高くないということから、このようなアドバイスを送っていた。

 

「……それじゃあ、唯。あたしらは帰るな」

 

「え!?みんな帰っちゃうの!?」

 

「……みんながいたら憂ちゃんもゆっくり眠れないだろ?」

 

統夜たちは、憂をしっかり眠らせるために、このまま帰ることにした。

 

「うぅ……。私、1人でちゃんと出来るかなぁ……」

 

「私がいるから大丈夫だよ、お姉ちゃん……」

 

「……っておいおい!それはダメだろ!」

 

「憂は看病される側でしょ!?」

 

統夜はすかさずツッコミを入れ、梓は憂を叱責していた。

 

「ご、ごめん憂!私なら平気だから!」

 

唯はこう言ったものの、とても不安そうな表情をしていた。

 

しかし、統夜たちは唯1人の力で看病してもらうことにして、そのまま帰ることになった。

 

「……唯ちゃん、何かあったら連絡してね」

 

「またすぐ来るから」

 

「唯、俺はもうしばらく街の見回りをするから何かあったら連絡しろよ?すぐ駆けつけるから」

 

統夜たちは唯を安心させると、そのまま唯の家を後にした。

 

統夜たちを見送った唯はすぐさま憂の部屋に戻り、憂の看病をしていた。

 

「お姉ちゃん……。私、1人で大丈夫だから……」

 

「でも……」

 

「お姉ちゃんがいると、風邪を移しちゃわないかなってかえって心配だから……」

 

憂は唯に風邪を移させる訳にはいかないと思っており、このようなことを言っていたのである。

 

「憂……」

 

「部屋に戻ってて……」

 

「……うん」

 

唯はとりあえず憂の言う通りにすることにしたのか、憂の部屋を後にしようとしていた。

 

「憂、何かあったら呼んでね」

 

「うん……」

 

唯は憂の部屋の電気を消すと、そのまま憂の部屋を後にした。

 

唯はとりあえずお粥を作ろうと思い立ち、キッチンへと向かった。

 

唯は普段料理は作らないため、卵を落としたり、鍋を落としたりと悪戦苦闘していた。

 

しかし、どうにかお粥に必要なものを鍋に入れると、グツグツと煮込み、お粥作りはどうにか順調に進んでいった。

 

そんな中、唯は考えていた。

 

(大切な……大事なもの……。いつもそばにいてくれる……。でも、それが当たり前になっていると気付かない……)

 

憂が風邪をひいたことにより、唯は憂がかけがえのない存在であることを再認識していた。

 

しかし、いつもそばにいるのが当たり前だと思っていたので、そんな当たり前なことも気付くことが出来なかったのである。

 

そんなことを考えながら唯はお粥を作り、その後、唯は歌詞を書いていた。

 

今回の体験で思うところがあり、それが唯の筆を進めていたのである。

 

唯は一晩かけて、自分の思いを歌詞にまとめることが出来た。

 

 

 

 

 

そして翌日、憂は目を覚ますと、昨日と比べるとだいぶ体が軽くなっていた。

 

憂はゆっくりと起き上がるのだが、自分の机で眠っている唯の姿を発見した。

 

そして、その傍には唯が作ったお粥が置いてあったのだが……。

 

「……あれ?お粥の上に目玉焼き?」

 

唯はお粥を作ったのだが、その上に目玉焼きやウインナーを置いていたため、お粥というよりはピラフっぽい見た目になっていた。

 

憂はそれを嫌だとは思っておらず、唯が一生懸命作ってくれたと思うと自然と笑みを浮かべていた。

 

「……あれ?」

 

憂は唯が何かを書いているのを発見すると、その紙に手を伸ばし、その紙を見てみた。

 

すると……。

 

「……「U&I」……」

 

その紙は歌詞を書いたものであり、タイトルは「U&I」というものだった。

 

「……君がいないと何も出来ないよ……。君のご飯が食べたいよ……。君がいないと謝れないよ……。君の声が聞きたいよ……」

 

憂はこの文面を読んだ時、自分にあてたメッセージだということがわかり、嬉しさのあまり笑みを浮かべていた。

 

「クスッ……。お姉ちゃん……ありがとう……」

 

憂は穏やかな表情で眠る唯にお礼を言うと、そのまま部屋を出て朝食の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

「……という訳で、投票の結果、唯の歌詞に決まりました!」

 

この日の放課後、紬の書いた曲の歌詞をどうするか、最終的に決めることになった。

 

唯は昨晩書いた歌詞を統夜たちに見せるのだが、その歌詞は統夜たちに好評であり、満場一致で唯の歌詞を採用することになったのであった。

 

「エヘヘ……。いなくなって初めて大切なものの有り難さがわかるっていう気持ちを込めてみました!」

 

「本当に凄いです!これ、本当に唯先輩が書いたんですか?」

 

『これは、間違いなく唯1人の力で書いた歌詞だろうな。お前さんの気持ちが伝わってくるぜ』

 

「あぁ、そうだな。それに、憂ちゃんと部室がこの歌詞を作らせたんだと思う」

 

唯がここまでの歌詞を書けたのは、部室が使えなくなったことと、憂が風邪をひいたことが要因だと推察していた。

 

律も同じことを考えていたようであり、ウンウンと頷いていた。

 

「凄いわ、唯ちゃん!私、感動しちゃった!」

 

紬もこの歌詞を気に入っており、改めて唯にその気持ちを伝えていた。

 

「いやぁ……。才能が開花しちゃったっていうかぁ……」

 

「「『自分で言うな!!』」」

 

統夜、律、イルバは褒められて有頂天になっている唯にツッコミをいれていた。

 

「……あぅぅ……。私の歌詞……」

 

最終的に澪の歌詞は採用されなかったため、澪は涙目になっていた。

 

「わ、わかったよ!2曲作ろうな!2曲!な、統夜?」

 

律は今にも泣きそうな澪をフォローするためにこんなことを言っており、さらには統夜にも話を振っていた。

 

「おい、ここで話を俺に振るなよ!」

 

統夜はいきなり話を振られて律の申し出を断るつもりだったが……。

 

「あぅぅ……」

 

「うぐっ……!」

 

今にも泣きそうな澪を見たからか、統夜は面と向かって断ることが出来なかった。

 

「わかったわかった!何曲だって作ってやるから!」

 

統夜はこう言って澪をフォローすると、澪の表情がぱぁっと明るくなった。

 

こうして、学園祭で演奏する曲が決まり、後は学園祭に向けて練習あるのみだった。

 

しかし、統夜は澪の書いた歌詞を使った曲作りを強いられてしまい、騎士の使命を果たす合間に大変な仕事をすることになってしまった……。

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『ほぉ、統夜のクラスで演劇をやることになったのか。しかも、あれをやることになるとはな……。次回、「主役」。こいつは面白いことになりそうだぜ!』

 




今回はとある作品の歌詞が出てきましたが、皆さんわかりましたでしょうか?

牙狼からは3つほど出てきましたが、他にも出てきました。

正解は、今放送されている「動物戦隊ジュウオウジャー」のエンディングです。

統夜が動物好きだという設定にしてから、歌詞の話でこの歌詞は出したいと思っていました。

そして、統夜が知り合いと言っている動物学者はジュウオウイーグルこと風切大和ですが、この頃の大和はまだジュウオウジャーではありません。

ジュウオウジャーとのコラボも面白いかなと思っているので現在考えています。

さて、次回は統夜たちのクラスで何の発表をするか決める回になっています。

けいおん!!本編ではロミジュリですが、今作ではそこは大きく変えていこうと思っています。

そこも踏まえて、次回をお楽しみに!


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