今回でサバック激闘編は終了なのですが、今回は統夜の出番がほとんどありません(笑)
それだけではなく、けいおん!要素がほぼ皆無になっています(笑)
今回は統夜の後輩騎士であり、次回作の主役に考えている奏夜がメインの話になっております。
もしかしたらあのキャラが登場するかも?
それでは、第85話をどうぞ!
……ここは東京、秋葉原。
この地は電気街として有名だけではなく、アニメや漫画などオタク文化を象徴する街としても知られている。
この日も秋葉原の街は多くの人て賑わっていた。
そんな中、真夏であるにも関わらず茶色のロングコートを着た少年が秋葉原の街を歩いていた。
少年の名は如月奏夜。数ヶ月前に魔戒騎士になったばかりの少年である。
奏夜は魔戒騎士になったばかりのため、未熟な部分は多いものの、早くもその才能を開花させつつあった。
数週間前に行われたサバックでは、初戦敗退という残念な結果ではあったが、才能の片鱗を他の魔戒騎士たちに見せつけていた。
奏夜はこの日もいつものように魔戒騎士の日課であるエレメントの浄化を行っていた。
「……はぁっ!!」
奏夜はオブジェから飛び出してきた邪気を魔戒剣の一閃で斬り裂いた。
邪気が消滅したことを確認すると、奏夜は魔戒剣を緑の鞘に納めた。
「さて……。キルバ、あと浄化しなきゃいけないポイントはどんくらい残ってる?」
『あぁ。今日はだいぶ浄化をしたからな。あと一箇所くらいだな』
奏夜の相棒である魔導輪キルバは、今日の仕事のノルマを奏夜に伝えた。
「あと一箇所か……。したらそいつを浄化したらいつもの場所に行こうかな」
『おいおい、今日もあそこに行くのか?お前も好きだな』
「あそこは家から近いし、あそこの饅頭がまた美味いんだよ」
『ま、いいんじゃないのか?』
キルバも納得したところで、奏夜は次のオブジェへ移動した。
そのオブジェは今いる場所からそんなに離れておらず、早々にオブジェから飛び出してきた邪気の浄化を行った。
※※※
この日最後の仕事を終えた奏夜が訪れたのは、奏夜の家の近くにある老舗の和菓子だった。
奏夜は魔戒騎士になってから番犬所から今の家を与えられ、今はそこに住んでいる。
魔戒騎士になる前は家らしい家はなく、秋葉原周辺を転々としていた。
『それにしても、相変わらず古臭い建物だな』
「そうか?俺はこういう建物は好きだけど」
奏夜はキルバとこのような会話をかわしてから店の中へと入った。
「いらっしゃいませ!……って、そーくんだ!!」
店の中に入ると、カウンターにはオレンジのように明るい髪で、サイドポニーの少女が接客していた。
その少女は奏夜のことを知っているようで、奏夜が入るなり満面の笑みで奏夜を歓迎していた。
ちなみに、奏夜は穂乃果に「そーくん」と呼ばれているのだが、未だそのあだ名には慣れていなかった。
「……おう、穂乃果。今日は店番なんだな」
「そうなんだよ。せっかくの夏休みなのに……」
この少女、高坂穂乃果は近くの中学校に通う中学校3年生で、この和菓子屋「穂むら」の娘である。
奏夜は魔戒騎士になって今の家に引っ越した時にここにも挨拶をしたのだが、その時に穂乃果と奏夜が同い年だとわかり、それがきっかけで仲良くなった。
穂乃果には妹もいるのだが、奏夜はその妹とも仲良くなったのである。
それからすぐに穂乃果の幼なじみである2人がいるのだが、その2人とも友人となった。
「……そーくん、真夏なのにまたそのコート着てるよぉ〜。暑くないの?」
「別に暑くはないぞ?むしろこれ着ないと暑いんだよな」
「ふーん。そうなんだ……」
「……あっ、そうそう。穂乃果、「ほむまん」を2つくれないか」
「はいよ、毎度あり♪」
奏夜の言っている「ほむまん」とは、この「穂むら」の名物となっている饅頭であり、1番人気の商品である。
奏夜も初めて食べた時からその味に魅力され、時々ほむまんを買いにこの穂むらをよく訪れている。
そんなことがあったからか、奏夜は穂乃果と友達と言えるような関係になっていた。
穂乃果はほむまん2つを丁寧に袋に入れると、奏夜はお金を支払い、穂乃果は奏夜に商品を手渡した。
「……はい、毎度あり♪」
「おう、ありがとな、穂乃果」
奏夜は穂乃果にお礼を言って店を出ようとするのだが……。
「あっ、待って!そーくん!」
穂乃果が奏夜を呼び止めたので、奏夜は足を止めた。
「……?どうした、穂乃果?」
「もうすぐで店番が終わるんだけど、そーくんも一緒に遊ばない?海未ちゃんとことりちゃんも来るよ!」
穂乃果は奏夜に遊びの誘いをしていた。
「うーん……そうだなぁ……」
奏夜は遊びの誘いを受けるべきか考えていた。
(……なぁ、キルバ。ちょっとくらいなら大丈夫か?)
《まぁ、指令があればロデルが鳩を飛ばすだろう。だから別にいいんじゃないか?》
キルバの言う通り、奏夜の所属する翡翠の番犬所の神官であるロデルは、魔戒騎士たちに指令を伝える時に使い魔である鳩を飛ばし、指令書を渡すということをよく行っている。
そのため、指令があれば使い魔の鳩が指令書を持ってきてくれるだろう。
そう判断したキルバは、遊んでも問題ないのではと奏夜に遊ぶ許可を出した。
「……まぁ、少しくらいなら大丈夫だぞ」
「やったぁ!!それじゃあ終わるまで待ってて!」
「あぁ。それじゃあほむまんを食いながら待ってるよ」
奏夜は店内にある椅子に腰掛けると、先ほど購入したほむまんを頬張り、穂乃果の店番が終わるのを待っていた。
奏夜がほむまんを完食したところで、穂乃果の幼なじみである園田海未と、南ことりがやってきて、共に穂乃果の店番が終わるのを待っていた。
2人が来てしばらくすると、穂乃果の母親が店に現れ、交代の時間となった。
穂乃果は店番が終わるなり、自分の部屋へ直行すると、着替えを済ませて店内へと戻ってきた。
「みんな、お待たせ!」
「いえ、奏夜とお話してたのでそんなに待ってはいないですよ」
「うんうん♪そーくんとお話してると飽きないからねぇ♪」
奏夜は穂乃果の店番が終わるまで、海未やことりと他愛のない世間話をして時間を潰していたのである。
ちなみに、ことりも奏夜のことをそーくんと呼んでいる。
「むー……!海未ちゃんとことりちゃんだけずるいよぉ!!」
自分だけ奏夜とゆっくりと話が出来なかったため、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませていた。
「お前は店番だっただろうが……」
「奏夜の言う通りですよ。それに、話などいくらでも出来るではありませんか」
「……まぁ、確かにそうか」
ふくれっ面になった穂乃果を海未がなだめるのだが、その説明で穂乃果は納得したようだった。
「とりあえず、行こうぜ。どっか行くんだろ?」
「うん!そうだね、さっそく行こうよ!お母さん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!気を付けて行ってきなさいよ!」
穂乃果の母親に見送られ、奏夜たちは穂むらを後にした。
その後、奏夜たちは穂乃果が行きたいと言ったゲーセンで遊んでいた。
秋葉原という街に住んでいる手前、奏夜はゲーセンなどの知識はあった。
むしろ奏夜は魔戒騎士としては珍しいくらいのゲーム好きという一面もあった。
奏夜たちは1時間ほど様々なゲームで楽しんでいた。
ゲーセンで遊んだ後は、行きつけのファストフード店で休憩をしていた。
奏夜たちはハンバーガーやポテトを頬張りながら世間話に花を添えていた。
(……なんか、この3人といると、本当に楽しいよな……)
奏夜は穂乃果たちと知り合ってまだ日は浅いものの、一緒に遊んだり食事をしたりするのが楽しく、心地よいものと感じていた。
(……!もしかして、この3人が俺にとって守りたい人……なのかな?)
奏夜は穂乃果たちと出会い、守りし者とは何なのか、なんとなくではあるものの、理解することが出来た。
「……奏夜?どうしました?」
海未はボケっと考え事をしている奏夜が気になり、声をかけた。
「へ?い、いや!何でもないよ!」
「そうですか?それなら良いのですが……」
海未は完全には納得していないものの、何を聞いても何でもないと誤魔化されると判断し、聞くのを諦めた。
「……そういえばさ、やーくんの着ているコートなんだけど、似たようなコートを着た人をどっかで見たことがあるんだよねぇ……」
「え!?そうなのか!?」
自分のような格好の人間を見たことがあるという穂乃果の言葉に、奏夜は驚きを隠せなかった。
(……もしかして、穂乃果のやつ、知らず知らずに魔戒騎士に会ったことがあるのか?)
穂乃果が自分と似たような格好の人間を見たということはそれしかないと考え、穂乃果が魔戒騎士のことを知っているのでは?と心配していた。
「あっ、もしかしてそれって統夜さんじゃない?」
「あ、そうそう!統夜さんもそんな格好してたっけ」
「!!?」
奏夜は穂乃果たちが統夜の存在を知っているとは思っておらず、目を大きく見開いて驚いていた。
「?そーくん、どうしたの?そんなに驚いた顔して」
「お、お前ら……。統夜さんを知ってるのか?」
「うん!今年の始めくらいに怖い人に絡まれてるところを統夜さんが助けてくれたんだ」
(怖い人……?まさかホラーじゃないよな……)
まだまだ情報が足りてないので、怖い人というのがホラーではないかと心配していた。
「なぁ、統夜さんが何者なのかも知ってるってことだよな?」
「えぇ、知ってますよ」
「!!?」
「確か、桜ヶ丘って街の高校に通う3年生で、軽音部に入ってるとか」
(……ホッ、良かった……。知ってるっていうのはそっちだったか……)
穂乃果たちが知ってる統夜が魔戒騎士ではなく、高校生だということを知り、奏夜は安心していた。
「というか、そーくんは統夜さんのこと知ってたんだね!」
「奏夜は統夜さんとはどういう関係なんですか?」
(うっ……!やっぱりこの質問が来たか……)
奏夜はこの質問が来ることを予想していたが、どう答えるべきか迷っていた。
少し考えた末奏夜が出した答えとは……。
「あぁ、俺と統夜さんは古くからの知り合いで、俺は統夜さんのことを兄貴みたいに慕ってるんだよ」
奏夜の話は嘘が多く含まれていたが、どうにか誤魔化すためにこう答えていた。
「ふーん、そうなんだ……。あ、そうだ!!」
何かを思いついた穂乃果は携帯を取り出した。
「?穂乃果、携帯でどうするつもりだ?」
「今、みんなで写真を撮って統夜さんに送ってあげるんだよ!統夜さん、きっと驚くよ!」
「それ、面白そう♪」
「えぇ、良いかもしれませんね」
穂乃果の提案にことりと海未は乗り気のようだった。
「……まぁ、みんながそこまで言うなら……」
写真を拒否する理由はなかったため、奏夜は渋々写真を撮ることを了承した。
こうして、奏夜たちは4人並んで写真を撮り、その写真を統夜に送った。
……その頃、桜ヶ丘にいる統夜は……。
「……はぁっ!!」
現在はエレメントの浄化の真っ最中であり、オブジェから飛び出した邪気を、魔戒剣の一閃で斬り裂いた。
邪気が消滅することを確認した統夜は、魔戒剣を青い鞘に納めた。
「……イルバ、これで全部か?」
『あぁ、今日はこれで終わりだな』
これ以上浄化すべきオブジェはないことを知り、統夜は安堵していた。
「それじゃあ、どっかで休憩するかな……って、ん?」
統夜の携帯に反応があったため、統夜は携帯を取り出した。
「……メールは穂乃果からか……。久しぶりだな……」
統夜は穂乃果とメールアドレスの交換をしており、時々メールのやり取りをしていた。
今日は久しぶりに穂乃果からメールが来たのである。
「……ん?写メが添付されてるな」
統夜はメールに添付されている写メをチェックするのだが……。
「……!!」
その写真があまりに予想外過ぎて、目をパチクリとさせていた。
「なっ……!そ、奏夜!?何で穂乃果たちと!?」
統夜は奏夜が穂乃果たちと一緒に写真に写っていることに驚いていた。
『そういえば奏夜は中3だったな。だったらあのお嬢ちゃんたちと知り合いでもおかしくはないんじゃないか?』
イルバは奏夜と穂乃果たちが一緒に写真に写っていることを冷静に分析していた。
「ま、まぁ確かにそうか……」
イルバの分析に納得したものの、統夜は未だに驚きを隠せなかった。
「……ん?どれどれ?【統夜さんは奏夜君のお兄さん的存在だって言ってますけど、本当ですか?】か……」
統夜は写メと共に送られたメールの一部を音読していた。
『なるほどな。奏夜のやつあのお嬢ちゃんに自分と同じ魔戒騎士だとは言えないからな』
「ま、そうだよな」
統夜は軽く答えると、穂乃果から来たメールを返信し、街の見回りを行うため歩き出した。
「……あっ、統夜さんからメール返ってきた!」
一方、秋葉原某所のファストフード店で休憩していた奏夜たちは、世間話をしながら統夜からの返信を待っており、たった今、メールの返信が来た。
穂乃果はすぐメールをチェックしていた。
「……えっと……。【あぁ、俺も奏夜のことは弟みたいに思ってるよ。穂乃果たちと友達だったとは驚いたけどな】だって!」
「ほら、俺の言った通りだろ?」
奏夜は自分の言い分が正しいと強気に主張していたのだが……。
(良かった……。上手く話を合わせてくれて……。流石は統夜さんだ……)
統夜が話を合わせてくれたことに奏夜は安堵していた。
「それにしても統夜さんって優しいよね!」
穂乃果は統夜からのメールに返信しながら統夜の話をしていた。
「そうですね。私もそう思います」
「優しいし、世話好きみたいだし、統夜さんってお兄ちゃんみたいだよね♪」
ことりは統夜のことを兄のように慕っており、その発言に穂乃果と海未はウンウンと頷いていた。
奏夜も統夜のことを本当に兄のように尊敬しており、憧れの存在であった。
奏夜たちはファストフード店を出るまで、統夜についての話や、他愛のない世間話で盛り上がっていた。
「いやぁ、楽しかったねぇ♪」
「そうですね。ここまで楽しいお話が出来たのは久しぶりな気がします」
穂乃果と海未はファストフードを出るなり、先ほどまでかわしていた会話が楽しくて、それを思い出してニヤニヤしていた。
「ねぇねぇ、次はどこに行こっか?」
「そうだな……」
ことりが次向かう場所を訪ねて、奏夜がそれを考えていたその時だった。
《……!奏夜、どうやら指令みたいだぞ!》
ロデルの飛ばした鳩が近くにいることを探知したキルバはテレパシーで奏夜に伝えていた。
(……!もうちょっと遊びたかったけど、指令じゃ仕方ないな)
奏夜は遊ぶことを諦め、騎士の使命を果たすことにした。
「……なぁ、みんな。悪いんだけど、俺、この後用事があるんだよ」
「え?そうなのですか?」
「だから、今日は先に帰らせてもらうな」
「そっかぁ……。用事じゃ仕方ないもんね……」
奏夜が用事だと知り、ことりは残念そうにしていた。
「……むー……」
奏夜が先に帰るのが納得いかないのか、穂乃果は頬をぷぅっと膨らませて奏夜を睨みつけていた。
「穂乃果、奏夜は用事なのですから仕方ないではないですか」
海未は穂乃果が奏夜ともっと遊びたいから拗ねていると察し、このようになだめていた。
「……用事ってそんなに大事な用事なの?」
「あぁ。どんな用事かは言えないけど、俺にとっては大事な用事だよ」
「……」
奏夜は正直に話すのだが、穂乃果はまだ納得していなかった。
「ごめんな。埋め合わせは必ずするから」
「……じゃあ今度パン奢ってくれる?」
「お安い御用だ」
奏夜はむしろパンだけで許してくれるならと心の中で安堵していた。
「……じゃあ、許してあげる」
「悪いな、みんな。それじゃあ、またな!」
奏夜は穂乃果たちに別れを告げると、穂乃果たちの見えないところへと移動した。
さらに人気のないところに移動した奏夜は、ロデルの飛ばした鳩を待っていたのだが、少し待つと、その鳩が奏夜の前に現れた。
奏夜は鳩の持つ指令書を受け取ると、鳩はそのまま番犬所に戻っていった。
指令書を受け取った奏夜は、魔導ライターを取り出すと、指令書を燃やして指令の内容を確認した。
奏夜の確認が終わると、魔戒語で書かれた文字は消滅した。
「……よし、行こう、キルバ!」
『了解だ、奏夜』
指令を受けた奏夜は、キルバのナビゲーションを頼りに、ホラーの捜索を開始した。
※※※
奏夜がホラー捜索を開始してしばらく経ち、先ほどまでは夕焼け空だったが、今は日も落ち、夜になっていた。
そんな中、1人の少女は家に帰ろうと歩いていたのだが、その途中、近くをうろついていたホラーに見つかってしまった。
そのホラーはまだ人間に擬態していたため、少女は何も気にすることはなくスルーしようとするのだが、ホラーは人間からホラーの姿に変わると、その少女を喰らうべく襲いかかった。
少女は必死に逃げようとするのだが、人間の足でホラーから逃げ切れるわけも無く、あっさりと追い詰められてしまった。
「あぁ……あぁ……」
絶体絶命の状態となった少女は恐怖に怯え、その瞳からは涙が滲み出ていた。
「ククク……。そうだ、その表情だ。恐怖に怯える女の味は格別だからな!」
この状態こそホラーの望むものであり、ホラーは笑みを浮かべていた。
「いや……来ないで……」
「さて、いただくとするか……」
ホラーが少女を捕まえ、捕食しようとしたその時だった。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
叫び声と共に奏夜が現れると、奏夜はホラーを蹴飛ばし、少女を危機から救った。
「ぐぅぅ……貴様……!!」
ホラーはあと一歩のところで食事を邪魔され、苛立ちを募らせていた。
「あ、あの……。あなたは?」
「それはいいから、早く逃げろ!死にたくなければな!」
奏夜が少女に逃げるよう警告すると、少女は一目散に逃げ出していった。
『……奏夜!そいつはムドラ!刺々しい見た目で強そうに見えるが、実際はたいしたことはない!だが、油断するなよ!』
「あぁ、わかった!」
奏夜はキルバからこのホラーについての説明を受けると、魔戒剣を抜いて、ムドラを睨みつけた。
「……!貴様、魔戒騎士か!せっかくの食事の邪魔をしおって!!」
「悪いけど、お前らの邪魔をすんのが俺たちの仕事なんだよ!!」
奏夜はムドラ目掛けて突撃すると、魔戒剣を一閃した。
その一撃はムドラに受け止められてしまい、ムドラは反撃と言わんばかりに奏夜を吹き飛ばした。
「くっ……!」
吹き飛ばされた奏夜はすぐに体勢を立て直した。
「魔戒騎士とはいえ、所詮はガキか。たいしたことはないな」
ムドラが奏夜を馬鹿にする発言をすると、奏夜は少しカチンときたのか、不機嫌な表情になっていた。
「俺がただのガキかどうか……その目で確かめろ!」
奏夜は魔戒剣を力強く握りしめると、再びムドラに向かっていった。
ムドラはそんな奏夜を迎撃しようと攻撃を仕掛けるが、奏夜は無駄のない動きでムドラの攻撃をかわし、魔戒剣の一撃を叩き込んだ。
その一撃でムドラにダメージを与えることは出来なかったが、怯ませることには成功した。
「おのれ……!」
ムドラは反撃と言わんばかりに体の棘を奏夜目掛けて放つが、奏夜はまるでダンスのような動きでムドラの攻撃を全てかわした。
「なっ……!?何だ、あの動きは?」
ムドラに奏夜の予想外かつ奇怪な動きに驚きを隠せなかった。
奏夜は先輩騎士である桐島大輝にダンスの動きを戦いに取り込んだら面白いと言われ、実践してみたら予想以上に自分にしっくり来たのである。
そのため、奏夜は戦いの時に時折ダンスの動きを取り入れることで、自分らしい戦闘スタイルを確立した。
「……えぇい!偶然は2度も続かん!!」
ムドラは再び体の棘を奏夜目掛けて放つのだが、奏夜は再びダンスのような動きでかわしながら、避けきれないものは魔戒剣で弾き飛ばしていた。
「くっ……!あのガキ……。腐っても魔戒騎士か……!」
ムドラは奏夜の独創的な戦い方に困惑していた。
「一気にケリをつけてやる!……貴様の陰我、俺が断ち切る!!」
奏夜はムドラに向かってこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
そこから放たれる光に包まれると、金色の輝きを放つ鎧を身に纏った。
奏夜の身に纏った鎧は「陽光騎士輝狼(キロ)」。
牙狼とは違う黄金騎士で、牙狼の系譜の家元ではないものの、輝狼の鎧は、まるで太陽の光のような輝きを放っている。
「……なっ!?き、貴様、牙狼か!?」
「やれやれ……。みんなこの鎧を見ると牙狼と勘違いするんだよな……。光栄な話だけどさ……」
奏夜の鎧は黄金の鎧であるため、牙狼と間違えられることはよくあるのである。
奏夜自身は牙狼と間違えられて、嬉しいとさえ思っているのであった。
「……それはともかく、俺はお前を斬る!それが俺の使命だからな!」
奏夜はムドラを睨みつけると、魔戒剣が変化した陽光剣を構えた。
「……お、おのれ!紛い物の黄金騎士などにやられる俺ではない!!」
ムドラは輝狼の鎧から放たれる黄金の光に畏怖していたのだが、どうにか自分を奮い立たせて奏夜に襲いかかった。
奏夜はギリギリまでムドラを引きつけると、ムドラの攻撃をかわし、反撃で陽光剣を一閃した。
その一撃でムドラは真っ二つに斬り裂かれた。
体を斬り裂かれたムドラは、断末魔をあげ、その体は、爆発と共に消滅した。
ムドラが消滅したことを確認した奏夜は、鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を緑の鞘に納めた。
「……さて……。仕事も終わったし、帰るとしますか」
ムドラの討伐を終えた奏夜はどこも寄り道をすることなく自宅へと向かっていった。
こうして、統夜の後輩騎士である如月奏夜の1日は過ぎていった……。
……サバック激闘編・終
__次回予告__
『長い夏休みが終わったな。だが、すぐにこんなイベントがあるとはな。次回、「持久」。まぁ、こんなイベントは面倒でしかないがな』
今回は奏夜メインの回で、さらにはラブライブ!から穂乃果、海未、ことりが登場しました。
奏夜の家は穂乃果の家の近くであり、この設定は次回作に繋がっていきます。
前書きでも書きましたが、今回でサバック激闘編は終了で、次回からは新章に突入します。
新章のタイトルは何なのか。楽しみにしていてください!
活動報告に書いたヒロインアンケートですが、現在2つ票をいただいています。
アンケートをくれた2名の方、ご協力ありがとうございます!
現在、梓をヒロインにするという案と、誰もヒロインにしないという案の2つがあり、僕としてもどちらが良いか決めかねています。
なので、ヒロインアンケートをまだまだ募集しようと考えています。
活動報告の欄だけではなく、感想や個人的なメッセージでも良いので、気軽にヒロインが誰が良いか教えてくれると非常に嬉しいです!
次回はマラソン大会の話になります。
魔戒騎士として鍛えられた統夜は、その有り余る体力で、マラソン大会をどう工夫して走るのか?
それでは、次回をお楽しみに!