久しぶりにあのキャラを拝むことが出来ましたし。
今回の話は牙狼らしい回になっています。
これでもだいぶ抑えましたが、性的な表現が少々出ていると思いますので、そこを注意してご覧ください。
それでは第9話をお楽しみください!
ここは桜ヶ丘某所にある廃工場。
この中で、ひどくおぞましいことが起こっていた。
1人の男が1人の女性をこの場所に監禁し、性的暴行を行っていたのだ。
それだけでは飽き足らず、男は女性を暴行後、その命を奪ってしまった。
「……ふぅ、また女を探してこないとな……」
男はジーパンを履きながらこう呟いていた。
そんな時であった。
__貴様……。女を喰うのが好きみたいだな……。
「だ、誰だ!?」
突然聞こえてきた声に男は怯えていた。
__女を犯して命も喰らう。我と気が合いそうじゃないか。貴様、もっと女を犯したい。喰らいたいとは思わないか?
「そ、そうだけど何言ってるんだよ!」
__フッ、それでは貴様の体を我に捧げよ!!
全裸の女性の死体がゲートとなり、男の体に黒い帯のようなものが入っていった。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
誰もいない廃工場に男の断末魔が響き渡っていた。
そして……。
「ふふふ……。女を……食らうんだ……」
ホラーに憑依されてしまった男はどこかへと去ってしまった。
※※※
中間テストを無事に乗り越えた統夜は、この日も部室でお茶を飲んでいた。
統夜だけではなく、勉強が苦手な唯と律もどうにか赤点を回避し、誰かが補習で部活にいけないという事態は回避出来た。
「……いやぁ、今日の紅茶もやっぱり美味いなぁ……」
統夜は紅茶を飲みながらまったりとしていた。
「……統夜先輩、ずいぶんだらけてますね……」
『統夜。いくらなんでもだらけ過ぎじゃないのか?』
「まぁまぁ、いいじゃない。統夜君は魔戒騎士としてのお勤めもあるんだもん♪ここにいる時くらいはのんびりした方がいいと思うわ♪」
「うん♪ムギちゃんの言う通りだよ」
「確かに……。そう言われれば何も言えないな」
『やれやれ。お前らは統夜に甘すぎるぜ』
「えぇ?別にいいじゃん、イルイル」
『だから毎度毎度変なあだ名で呼ぶな!』
「アハハ……まだ言ってますよ……」
「イルバのやつ、いい加減慣れればいいのにな」
このような会話が行われ、音楽準備室はまったりとした空気に包まれていた。
その時、音楽準備室の扉が開くと、ポニーテールの少女が中に入ってきた。
「お姉ちゃん、いる?」
「あっ、憂。どうしたの?」
中に入ってきたのは平沢憂(ひらさわうい)。唯の妹であり、家では家事全般をこなすしっかり者である。
憂は梓のクラスメイトでもあり、一緒に軽音部のライブを見たことがきっかけで仲良くなった。
統夜たちも憂とは何度も会ったことがあり、その度に出来た妹だと感心していた。
「今日は遅くなりそうなの?」
「いつも通りだと思うよ」
「それじゃあ今日は寄り道しないで帰ってきてね。今日はお姉ちゃんの大好きなハンバーグにするつもりだから」
「わーい♪憂のハンバーグ♪久しぶりだなぁ♪」
唯は満面の笑みを浮かべており、それだけ憂のハンバーグが好きだということがわかる。
「良かったら統夜さんもいかがですか?一人暮らしでしたよね?」
「うーん、そうだな……」
統夜は考えるふりをしてイルバに視線を向けた。
(イルバ、別に食事くらいなら問題ないな?)
《あぁ、今のところは指令はないし、たまにはいいんじゃないか?》
イルバの許可も得られたところで統夜は再び憂に視線を向けた。
「ぜひご馳走になろうかな。俺としても助かるからさ」
「わーい♪やーくんとご飯だぁ♪」
子供のようにはしゃぐ唯を見て、統夜はクスリと笑みを浮かべていた。
「そしたら今日は一緒に帰るか?唯」
「うん!」
「いーなー、統夜。あたしも憂ちゃんのハンバーグ食べたいよ」
「まぁ、仕方ないだろ?統夜は一人暮らしで色々大変なんだし」
「そう言われればそうか」
澪にこうたしなめられると、律は納得したようだった。
「それじゃあ私はこれで失礼しますね」
「えぇ?憂も一緒にお茶しようよ」
「唯。憂ちゃんはこれから夕飯の支度をしなきゃいけないんだ。無理言うなよ」
「ごめんね、お姉ちゃん。……皆さんもすいません、休憩中に」
「え?あぁ、いや。気にしてないから大丈夫だよ」
さすがにこのティータイムが軽音部の日常とは言えず、統夜は苦笑いをしながら話をごまかしていた。
「ありがとうございます。……それでは、失礼しました」
憂はペコリと頭を下げて一礼すると、そのまま音楽準備室を出て行った。
『……やれやれ。相変わらず優秀なお嬢ちゃんだな』
憂がいなくなったことを確認してからイルバは口を開いた。
「あぁ。本当に憂ちゃんは良く出来た子だよな」
『本当にあのお嬢ちゃんは唯の妹なのか?こうも姉妹で違うとはそう疑いたくもなるぜ』
「あぁ、ひどいよぉ!イルイル!」
『だから変なあだ名で呼ぶな!』
「イルバ、観念しろ。唯は恐らくイルイルと呼ぶことをやめないぞ」
『やれやれ……。それは参ったぜ』
「そんなことよりも、そろそろ練習しましょうよ」
「えぇ?もう?」
梓が練習を提案したが、唯が反対の意見を出していた。
「そうだな。ずっとティータイムってのもあれだし、練習しよう」
統夜は席を立つと、壁に置いてあるギターを取り出すと、演奏する準備を始めた。
「ほら、普段合わせられない統夜がやる気出してるんだから私たちも練習するぞ」
「……そうだな。練習するか」
「もっとお茶したかったなぁ……」
統夜が率先して動いたことにより、律と唯も渋々席を立って、それぞれの楽器の準備を始めた。
全員の準備が終わったところで統夜たちはようやく練習を開始したのであった。
※※※
1時間ほど練習したところでちょうどいい時間となり、この日は解散することになった。
途中までみんなで下校し、解散した。
統夜は番犬所に寄ることはなく、唯と一緒に唯の家へと向かっていた。
「……何か唯と2人で帰るなんて久しぶりだよな?」
「あっ、そういえばそうかも」
統夜が平沢家で夕食を共にするのはこれが初めてではなかった。
統夜が一人暮らしをしていると知った憂は時々夕食を一緒に食べないかと誘っている。
ホラー狩りをしていると家事もあまり出来ないので統夜はありがたく憂の申し出を受けていた。
「この前一緒にご飯を食べたのは春休みになる前だっけ?」
「そうだったか?俺は忘れちまったな」
統夜は魔戒騎士として毎日忙しくしているので、最後に夕食をご馳走になったのはいつか忘れてしまっていた。
「……ねぇ、やーくん」
「ん?どうした、唯?」
「魔戒騎士のお仕事って……やっぱり大変なんだよね?」
「あぁ。ホラーはいつ現れるかわからないからな。そんなホラーから人を守る。それが魔戒騎士だ。だからやっぱり大変だよ。命だっていつ落とすかわからないからな」
統夜は事実だけを述べると、唯の瞳から涙が出てきていた。
「ちょ、泣くなよ!?」
「グスン……。だって……やーくん……死んじゃいやだよぉ……」
「……大丈夫だ」
統夜は優しい表情で唯の頭を撫でていた。
「俺は簡単に死ぬわけにはいかないからな。俺は何があってもお前らを守るって決めてるんだ」
「……!そ、それって……」
「みんなは俺にとって大切な友達だからな」
「え?」
『おいおい』
唯は俺にとってかけがえのない存在だからくらい言ってくれるかと彼女は密かに期待していた。
しかし、統夜のあまりの鈍感ぶりに唯は思わず泣き止んでしまい、イルバはただただ呆れていた。
《統夜。お前はもうちょっと気の利いたことは言えんのか?》
(?だって本当のことだろ?他に言うことなんてあったか?)
《やれやれ……。お前さんがこんなんじゃ恋人なんて出来なさそうだな……》
(あのなぁ……)
イルバと統夜はテレパシーで会話をしており、そうしているうちに唯の家に着いてしまった。
(やれやれ……。お嬢ちゃんたちも報われないな)
唯たちの気持ちを察しているイルバは呆れていたのであった。
「ただいまー!」
「お邪魔します」
唯と統夜は家の中に入り、そのままリビングへと向かった。
「あっ、お姉ちゃんおかえり!統夜さんもいらっしゃい♪」
「憂、ただいま」
「憂ちゃん、お邪魔します」
「ちょうど晩御飯の支度が出来たのでちょっと待ってて下さいね」
「わーい♪楽しみだなぁ♪」
「ごめんな、憂ちゃん。俺までご馳走になってさ」
「いえ、気にしないで下さい。統夜さん、一人暮らしですし、困った時はお互い様ですから♪」
「やってもらってばかりじゃ申し訳ないからさ、俺も手伝うよ」
「駄目ですよ、統夜さん。統夜さんはお客さんなんですからのんびりしてて下さい」
そう言うと憂は台所へと消えていった。
(仕方ない……。何もしないのは申し訳ないけど、のんびりさせてもらうかな)
統夜は魔法衣とギターケースをソファに置かせてもらい、憂の支度が終わるまで待つことにした。
そして待つこと10分。準備が整ったみたいなので統夜と唯がダイニングに向かうと美味しそうな料理が並んでいた。
「おっ、美味しそうだな」
「エヘヘ……。久しぶりに統夜さんが来てくれたので頑張っちゃいました♪」
「アハハ……。そう言ってくれると嬉しくなっちゃうな」
統夜は憂が張り切って料理を作ってくれたと言うことが嬉しかった。
「さっ、冷めないうちに召し上がって下さい」
「あぁ、いただきます」
「いただきます♪」
統夜と唯は同時にハンバーグを一口食べたのだが……。
「うん!すごく美味いよ!」
「美味しいよぉ、憂♪」
満足そうにハンバーグを頬張る統夜と唯を見て、憂はクスリと笑みを浮かべていた。
「それにしても料理も上手だし、他の家事だってやってるんだろ?憂ちゃんならいいお嫁さんになれそうだな」
「ふぇ!?そ、そんな……お嫁さんだなんて……」
統夜の言葉を聞いた憂は顔を真っ赤にして俯いていた。
「やーくん……」
「ん?どうしたんだ、唯?」
「憂は嫁にやらん!ふんす!」
「なんでそうなる……」
娘を嫁にやらんと言う父親のようなことを言っている唯を統夜はジト目で見ていた。
(それにしても……。暖かい食卓か……。魔戒騎士になってからは忘れてたけど、いいもんだよな……)
統夜は憂の作った夕食を食べながらわずかながらの平和な時間というものをかみしめていた。
※※※
統夜が唯の家で夕食を食べていた頃、桜ヶ丘某所にある廃工場で再びおぞましいことが起きていた。
数人の男の集団が1人の女性に性的暴行を行っていたのである。
男たちは己の欲望のまま行為に及んでいた。
複数の男に犯され、その女性の身も心もボロボロになっていた。
そんな中、強姦魔のリーダー格の男が残りのメンバーを帰らせると、男はさらに行為に及んでいた。
リーダー格の男は実はホラーに憑依された男であり、男は己の欲望のまま、女を犯していた。
さらにそれだけでは飽き足らず、男は女を己の「餌」として文字どおり身も心も喰らい尽くした。
「ふぅ……。やはり恐怖に怯えた女の味は格別だな……」
ホラーである男がこのような行為に及ぶのはただ単純に己の欲望を満たすだけではなく、最高の餌を得るためであった。
「……だが……まだ足りない……」
男は一枚の写真を取り出すと、そこには憂が写っていた。
「……ククク……次はこの女だ……!」
男は次のターゲットを憂に定めていた。
※※※
次の日、この日は学校は休みであった。
そして部活も休みであったため、統夜はじっくりと鍛錬を行ってからエレメントの浄化を行うことにした。
鍛錬が終わり、リビングでのんびりしているとテレビで流れていたとあるニュースが気になり、テレビに釘付けになっていた。
それはこの桜ヶ丘で次々と女性が行方不明になっている事件であった。
女性に共通点はなく、中には桜ヶ丘高校を卒業したばかりの女性もいた。
1人の女性が行方不明になる前に何者かに車に押し込められるところを見たという目撃証言があったため、警察がその車の調査をしているとのことであった。
(次々と女性が行方不明か……。まさかホラーか……?)
統夜は一連の犯行がホラーの仕業ではないかと推理していた。
『統夜。お前まさか今ニュースでやってた事件に首を突っ込むつもりじゃないだろうな?』
「だって、ホラーの仕業かもしれないだろ?だったら……」
『俺たちの役目は犯人を捕まえることではない。ホラーを斬ることだ。人間の起こした事件は人間に任せておけばいいのさ』
「……っ、そんなの……!」
『統夜。お前さんは英雄や神にでもなるつもりか?全ての人間を救うなど不可能なことだ。それに、そんな理由でホラーを野放しにするのは本末転倒だ』
「……!それはわかってる。だけど!」
『統夜。ここで問答をしていても仕方ない。そろそろ出掛けるぞ。今日は普段出来てない分エレメントの浄化をしなきゃいけないんだからな』
「わ、わかってるよ」
統夜はテレビの電源を消して魔法衣を羽織ると、エレメントの浄化に出掛けた。
統夜は平日まともにエレメントの浄化が出来ないのでその穴埋めとして、土日の部活がない日にエレメントの浄化を集中して行っている。
それにより統夜よりも長くエレメントの浄化を行っている紅の管轄の騎士たちの負担を少しでも減らすためである。
昼頃までじっくりとエレメントの浄化を行い、それから番犬所に向かった。
「統夜……指令です」
イレスがこう告げると、イレスの付き人の秘書官が赤の指令書を統夜に渡した。
統夜は指令書を受け取ると、魔導ライターを取り出し、指令書を燃やした。
そして浮かび上がってきた指令は……。
「……己の欲望のまま人を喰らうホラーあり。ただちに殲滅せよ」
というものであり、統夜が指令を読み上げると魔戒語の文字は消滅した。
『こいつはホラーリザリー。ホラーの中でも特に人間の命を軽んじるとんでもなく胸糞の悪いホラーだぜ』
「人の命を軽んじる……だと?」
イルバの言葉に統夜は反応し、怒りを覚えていた。
「統夜。現在4人の女性が行方不明になっています」
「……!まさか、それって……」
統夜は今朝見たニュースを思い出していた。
ニュースでは人数までは言っていなかったが、女性が行方不明になっているということが共通していた。
「?統夜、どうしました?」
「あ、いえ……。今朝のニュースで女性が行方不明になってると聞いたものですから、もしかしてホラーの仕業かもと思いまして」
「そうでしたか。その可能性はあるかもしれませんね」
「とりあえず、これ以上犠牲者を出さないためにホラーを早急に見つけ、殲滅します」
「頼みましたよ、統夜」
統夜は番犬所を後にすると、ホラーの捜索を開始した。
※※※
数時間後、時間も昼から夜になろうとしており、ホラー捜索も本格的に行っていた。
そんな中、統夜は偶然唯の家の近くを歩いていた。
その時だった。
「……ん?あれは憂ちゃんだよな?」
買い物帰りなのだろうか憂の姿が向こう側から見えた。
統夜は駆け寄って声をかけようかと思ったその時だった。
「!!」
突然男3人組が現れると憂を捕まえて無理やり車へ押し込んだ。
統夜は慌てて車へ向かうが、統夜が車の前に到着するのと同時に車は発進してしまった。
統夜は慌てて車を追いかけようとしたのだが……。
『統夜、よせ!』
イルバが統夜を止めると、統夜は足を止め、車はそのまま行ってしまった。
「イルバ!?なんで止めるんだよ!」
『朝も言ったが、あれは人の起こした事件だ。解決は人間に任せればいいだろう』
「何言ってるんだよ!?憂ちゃんがピンチなんだぞ!?放っておけるか!」
『統夜。お前は自分の役目を忘れたのか!?魔戒騎士であるお前はホラーを探すのが最優先だろう』
「…………」
イルバの言葉に統夜は拳を力強く握りしめ、唇を噛んでいた。
『統夜。俺たちは全ての人間を救えるわけではない。それはお前もわかっているだろう?』
「……それがどうした!」
『統夜?』
「憂ちゃんは俺にとって大切な友達なんだ!友達1人救えなくて……何が魔戒騎士だ!」
『統夜、お前は魔戒騎士の使命を忘れたのか!?』
「俺は罰を受けたって構わない。俺は憂ちゃんを助ける!」
統夜の意思は固く、イルバはこれ以上反論が出来なかった。
『やれやれ……。不本意ではあるがあの車が走り去った方向からホラーの気配がする。どうせ行くならさっさとお嬢ちゃんを助けてこい』
「あぁ!」
統夜は全力で走り出すと、憂を救うために動き始めた。
※※※
統夜が憂を救うために動き始めた頃、憂は目を覚ました。
「うん……?ここは……?……って、えっ?」
憂が目を覚ましたのは明らかに怪しい廃工場で、しかも自分は腕を縛られ、身動きがとれない状態だった。
「おっ、どうやらお目覚めみたいだな」
憂の目の前には怖そうな男4人組がいたので、それを見た彼女の顔は真っ青になっていた。
「ここはどこですか!?私を一体どうするつもりですか!?」
「ゲヘヘ……。んなの決まってんだろ」
男の1人が下衆な笑いをすると、憂の胸を軽くタッチした。
「きゃ!?な、何するんですか!?」
「こんな誰も来ない廃工場に男がこんなにいて女を縛ってる……。犯す以外ないだろ」
「えっ……。嘘……?」
憂も高校生であるため、性についての知識は知っていた。
それ故にこの後自分がどのような目に遭うのか想像がついていた。
「い、嫌ぁ!?やめて!!」
憂は恐怖に震えながらも悲鳴をあげた。
「おっと、叫んだって無駄だぜ。こんな所だ。誰も助けになんて来れないさ」
「でもよぉ、さっき赤いコートを着たガキがこっちを追いかけようとしてたよな」
(赤いコート……。もしかして統夜さん?)
憂は赤いコートを着ている少年に心当たりがあった。
「勘が良かろうと所詮はガキだ。まぁ、念のため見つけて始末はするか」
「そ、そんな……?」
「お、お嬢ちゃん知り合い?もしかして彼氏?」
「ならなおさら都合がいいじゃねぇか。お嬢ちゃんを犯してガキを殺す。ガキの方にも最高に絶望を与えられるだろうぜ」
「いや……やめて……」
「そういえばこのお嬢ちゃんに姉がいたよな。次はその姉でもいいよな」
「やめて!!」
憂は統夜だけではなく唯まで巻き込まれるのかと思うと耐えられなかった。
「うるせぇなぁ……。さっさとヤッて黙らせるか」
「そうだな。俺はもう我慢出来ねぇよ!」
「あぁ!思ったより巨乳だし……俺好みだぜ!」
「まずはお前らの好きにしろ。俺は後から楽しませてもらうから」
リーダー格の男がこう言うと、3人の男が憂に迫った。
(嫌……。初めては好きな人って決めてるのにこんな……)
これから自分は酷い目に遭う。その事実に憂は涙を流していた。
(誰か……!助けて……!!)
憂な心の底から助けを願った。
その時であった!
ガシャァァァン!!
突然何が壊れる音が聞こえると思ったら、天井から1人の男が降ってきた。
「「「「「!!」」」」」
突然の出来事に憂だけではなく男たちも目を丸くしていた。
「な、なんだてめぇは!」
天井から降ってきた男は赤いコートを身にまとっていた。
「て、てめぇはあの時のガキか!?」
「バカな!なんでここがわかったんだよ!?」
赤いコートの少年……統夜は憂に迫る男たちを回し蹴りで吹き飛ばすと、憂を縛るロープを解いた。
「憂ちゃん、無事で良かったよ」
「統夜さん……。どうして……?」
「憂ちゃんのことを絶対助けたいって思ったからだよ。奴らに変なことはされなかったか?」
「む、胸を触られたくらいで後は……」
「何ぃ!?」
胸を触られたと聞いて統夜の怒りは頂点に達していた。
『おい、統夜。他にもやることがあるだろうが』
「あっ、そうだった」
「え?今の声……どこから?」
憂が謎の声に首を傾げていると、統夜は魔法衣の懐から魔導ライターを取り出し、火をつけた。
統夜は一人一人当てていくが、憂を襲おうとした3人には何の反応もなかった。
しかし、少し離れたところで見切れていた男に魔導火を近付けると不気味な文字が浮かび上がってきた。
「……お前がホラーか」
統夜は魔導ライターをしまうと、今度は魔戒剣を取り出して、それを抜いた。
「ちっ、よりにもよって魔戒騎士かよ。ついてねぇなぁ」
「御託はいい。ただ斬るだけだ」
「てめぇら、こいつを殺せ。殺したらそこの女と好きなだけヤらせてやる」
男3人はリーダー格の男……ホラーの言葉でやる気が出たのか鉄パイプを手に統夜に襲いかかった。
「憂ちゃん、目を閉じて耳を塞いでくれ」
「え?」
憂は戸惑いながらも統夜の言う通りに目を閉じて耳を塞いだ。
統夜は魔戒剣の切っ先をイルバの口に当てて摩擦を加えるとそこから衝撃波が放たれた。
その衝撃波をモロに受けた3人の男はその場に倒れた。
憂は目を開けると3人の男が倒れていたので憂は驚きを隠せなかった。
「え?統夜さん、この人たち……」
「大丈夫。気絶してるだけだよ」
憂を安心したところで統夜は魔戒剣を構えてホラーを睨みつけた。
「貴様……。よくも俺の至高な時間の邪魔をしてくれたな」
「至高な時間だと……?」
「まだ全然足りないが、恐怖に怯える女の味……堪能させてもらったよ。その身も魂もな」
「ひどい……」
「俺が犯して喰らった女どもは俺の血肉となった。ま、くだらない命だったがな!」
「……ふざけるな……!自分勝手な理由で命を弄ぶなど絶対に許さねぇ!」
統夜は怒りに震えながら魔戒剣をホラーめがけて一閃するが、ホラーは軽々とかわした。
「ムキになるなよ、魔戒騎士。所詮は何億いるうちの1人だろ?なぜそこまで個人の命にこだわる?」
「当たり前だ!人の命は一つ一つが重くかけがえのないものなんだ……。軽い命なんて……何一つとない!」
「やれやれ、訳がわからんな。まぁ、さっさと貴様を殺してそこの女を喰うとするか」
ホラーは本当の姿を現した。
そのホラーはまるでゴキブリのような容姿のホラーであった。
『統夜。こいつがホラーリザリーだ』
「あぁ。わかった」
統夜はそれだけ言うと魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
そこから放たれる光に包まれ、統夜は奏狼の鎧を身にまとった。
「身勝手な欲望で人の体と心を喰らい、命を軽んじる貴様の陰我……。俺が断ち切る!」
統夜は皇輝剣を構えると、リザリー目掛けて一閃した。
その一撃を受けたリザリーは何も抵抗することが出来ず、真っ二つになった。
奏狼の皇輝剣の一閃で切り裂かれたリザリーは断末魔をあげながら消滅した。
統夜はリザリーが消滅したことを確認する前に鎧を解除した。
そして、元に戻った魔戒剣を青い鞘に納めた。
「憂ちゃん、大丈夫だったか?」
統夜はリザリーを討伐するなりすぐに憂に歩み寄った。
「は、はい……」
憂は統夜に助けてもらって嬉しいのだが、戸惑いの気持ちが勝っていた。
それも仕方ない。
仲の良い先輩がおぞましい怪物相手に臆することなく立ち向かうだけではなく、見たことない鎧を身につけて怪物を倒したとなれば誰だって驚くだろう。
「すごく心配したけど、無事でとにかく良かったよ」
「統夜さん……」
憂が統夜に飛びつこうとしたその時、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
しかも、サイレンはこちらに近づいてきていた。
「やべっ!思ったより警察が早いな……」
統夜は憂を救出する前にこの場所を警察に通報していたのである。
「憂ちゃん、とりあえず逃げるぞ。警察に見つかったら面倒だから」
「あのっ、あの人たちは?」
「あいつらだって強姦魔なんだ。警察に捕まえてもらって罪を償ってもらうさ」
統夜はリザリーに加担した男3人のことは許せなかったが、魔戒騎士は人間を斬ることはできない。
それだったら人間の法で裁いてもらおう。
そう考えたのである。
統夜と憂は警察が来る前にその場を離れることにした。
※※※
「……よし、ここまで来れば大丈夫だろ」
「そ、そうですね……」
統夜たちは憂の家の近くにある公園まで移動した。
「あっ、あの……。統夜さん」
「ん?」
「助けてくれて……ありがとうございます……」
「気にするなよ。憂ちゃんは俺にとって大事な友達なんだ。助けるのは当たり前だよ」
「それに……。あの怪物は一体なんだったんですか?それにあの銀の鎧も……」
「憂ちゃん、その話は聞かない方がいいよ。その話を聞いたら元の穏やかな生活に戻れる保証はないからな」
「………」
統夜はこう警告をすると、憂は何も言えなくなった。
「それよりもさ……」
統夜は憂の頭を優しく撫でた。
「ふぇ?と、統夜さん?」
「助けるのが遅くなってごめんな……。怖かっただろ?」
統夜が優しく語りかけると、憂の瞳から涙が浮かんできていた。
そして、憂は統夜に抱きついていた。
「うわぁぁぁぁぁん!怖かった!本当に怖かったよぉ……!」
「あぁ、もう大丈夫だからな」
統夜は憂が泣き止むまで優しく頭を撫でて憂のことをなだめていた。
(憂ちゃんにはずいぶんと怖い思いさせちまったな……。そうならないようにこれからもホラーは切り続けていかないとな……)
統夜は泣いている憂を見ながら今まで以上に魔戒騎士として精進しよう。
そう心に誓ったのであった。
……続く。
__次回予告__
『友よ。覚えているか?おまえと共に戦ってきた日々がまるで昨日のようだぜ。……次回「記憶」。悲しい歴史が今明かされる!』
今回のホラーは相当な屑ホラーでしたね。
今回登場したリザリーは「牙狼 魔戒ノ花」に登場したホラーですが、設定は少し変えています。
魔戒ノ花のリザリー登場回もけっこうなグロ回でした。
そして何気に憂ちゃん初登場です。今まで憂ちゃんは出てきませんでしたが、今後も出していきたいなと考えています。
次回からは2話かけて統夜の過去回になります。
統夜がどのように魔戒騎士になったのか。重要な話になると思います。
それでは次回をお楽しみに!