これは牙狼やけいおんとは関係のない話ですが、昨日のラブライブ!サンシャインの最終回を見たのですが、あの結末に思わずポカーンとしてしまいました。
これは2期はあるんですかね?個人的には見たいけど……。
さて、それはともかく今回はサバックの決勝戦になります。
統夜は最大の強敵である零に勝ち、優勝を勝ち取ることは出来るのか?
それでは、第79話をどうぞ!
初日から熱戦が続いたサバックであるが、最終日となった。
この日は、実力者たちに勝ってきた者同士がぶつかる決勝戦が行われる。
決勝に勝ち残ったのは、紅の番犬所付きであり、強大な力を持つホラー、グォルブや、魔戒騎士狩りを行っていたアスハを討伐した実力者で、若年ながらも頭角を現している月影統夜。
対するは、東の番犬所付きで、前回サバックの優勝者であり、統夜にとっても師の1人である涼邑零。
零は、黄金騎士牙狼である冴島鋼牙と対等の力を持っていると言われており、牙狼に次いで最強の騎士と言われている。
魔戒騎士たちは零の勝ちを予想していたのだが、準決勝での統夜の大金星を見ていたため、勝敗を予想出来ずにいた。
もしかしたら統夜が零を破ってそのまま優勝してしまうのか?そんな期待して持たせるほどだった。
どちらが勝つにしても、白熱した決勝戦になるであろうことは誰もが予想出来た。
(……いよいよ来たな。決勝戦が……。まさか俺が翼さんを破って決勝戦に勝ち進むなんて、今でも信じられないよ……)
統夜は、翼を破ってこの場に立っていることを未だに実感出来ずにいた。
(……正直、俺なんかが零さんに勝てるなんて思ってはいない……。だけど、零さんに見せつけてやるんだ!俺の力を!!)
実感出来ないからか、零相手に勝つ自信が持てずにいた統夜であったが、勝ち負けにこだわらず、自分の力をぶつける決意をしていた。
「……これより、決勝戦を行う!!」
このように開始を宣言する審判役であったが、心なしか言葉に気合が入っているように見えた。
「……紅の番犬所付き、月影統夜!!」
気合の入った声で呼ばれた統夜は、戦いの舞台であり、これまでも数々の激闘を繰り広げてきた円陣に足を踏み入れた。
そんな統夜の顔は気合が入りすぎているのか、少しだけ強張っていた。
「……対するは、東の番犬所付き、涼邑零!!」
零も審判役に名前を呼ばれたため円陣に足を踏み入れたのだが、いつもと変わらない飄々とした態度だった。
「……統夜、まさか決勝戦の相手がお前とはな」
「零さん……」
「だが、俺はお前には負けないぜ!一応先輩としての意地ってのがあるからな!」
零は2本の剣を抜くと、鋭い目付きで統夜を睨みつけていた。
(うっ……!これが、鋼牙さんと対等の力を持つ零さんのオーラ……。この殺気は本物だ……。今にでも逃げ出したいくらいだよ……)
零の放つ殺気は、牙狼に並ぶ者と言うにふさわしいものであり、その殺気に恐怖した統夜は決勝戦をほっぽり出して逃げ出したいとさえ思ってしまうほどだった。
(……!ダメだダメだ!!ここで逃げたら、今まで戦ってきた人たちに申し訳が立たない!!だから、まっすぐ向かっていくんだ!!)
統夜は零の放つ殺気の恐怖を振り切ろうと剣を抜くと、零を睨み返した。
「……!へぇ……」
零は統夜の放つ殺気に関心していた。
統夜の放った殺気は、零に並ぶものであり、自分より若いのにここまでの殺気を放てることに零は関心していた。
しかし、零はそれで臆することはなく、相変わらず飄々としていた。
「……統夜!余計な問答はここまでだ!後はこいつで語るとしようぜ!」
「はいっ!!」
統夜と零は同士にそれぞれの剣を構えた。
「……」
武器を構えよ!という前に2人が武器を構えてしまったため、審判役は何も言うことが出来ず困惑していた。
統夜と零はそれぞれの剣を構えると、無言で互いを睨みつけていた。
闘技場一帯を静寂が支配しており、魔戒騎士たちは言葉を発することが出来ずに息を飲んでその様子を見守っていた。
「……そ!それでは!試合、開始ぃぃ!!」
審判役がどうにか試合開始を宣言したことにより、決勝戦が始まった。
「はぁっ!!」
「でりゃぁ!!」
試合開始が宣言されるなり、統夜と零は互いに高くジャンプをすると、互いに剣を一閃して、剣と剣が激しくぶつかり合った。
2人はそのまま地面に向かって着地をするのだが、その間も2人は激しい格闘戦を繰り広げていた。
地面に着地するのと同時に2人は瞬時に攻撃をやめ、後方に下がり、相手の出方を窺っていた。
しかし、その時間はごく僅かであり、2人は同時に駆け出すと、互いに剣を振るった。
統夜は2本の剣を相手にしなければならないのだが、1本の剣でどうにか零の剣を受け止めていた。
「へぇ、本当に成長したな、統夜。驚いたよ」
「ありがとうございます、零さん。だけど、俺の力はこんなもんじゃないですよ!!」
「その意気だ!来いよ!!」
統夜と零は互いに激しく剣を打ち合っていた。
「……うっ……くっ……!」
零の放つ剣撃は一撃一撃が重かったので、統夜は表情を歪めていた。
(さすがは零さんだ……。あれだけがむしゃらに攻めてるのに、隙が全然ない。ちょっとでも気を抜けば、そこを付け込まれる)
2本の剣から放たれる零の攻撃はかなりのもので、統夜はその攻撃を受け止めるのが精一杯だった。
そんな中、どうにか零の隙を見つけようとするが、零には全然隙がなかった。
「おらおらぁ!どうした、統夜!!もっともっと攻めてこいよ!!」
零は激しく攻撃を繰り出しながら統夜を煽るような言葉を吐いていた。
「……っ!」
統夜は零の言う通り思い切り攻めたかったのだが、零の猛攻を防ぐのに精一杯だった。
どうにか意地で何度か反撃を繰り出すものの、それは簡単に凌がれてしまった。
統夜は何度目かの零の一閃を剣でどうにか防いだのだが、その後零は蹴りを放つと、統夜を吹き飛ばした。
「ぐぅぅ……」
吹き飛ばされた統夜は、どうにか体勢を立て直し、反撃を繰り出すために剣を一閃した。
零は統夜の攻撃を軽く防ぐが、統夜はすかさず連続で攻撃を繰り出していた。
「……っ!へぇ……」
零は統夜の繰り出す激しい連続攻撃に関心しながら攻撃を受け止めていた。
統夜の繰り出す攻撃は激しいものであったのだが、零は余裕そうな表情をしていた。
(……本当に統夜は強くなったな。まるで、昔の鋼牙と戦ってるみたいだぜ……)
零は、統夜の戦い方にかつての鋼牙の姿を重ねていた。
(こりゃちょっとでも気を抜けば、一気にやられそうだな……。まぁ、統夜に優勝を譲ってやってもいいが、俺はそう簡単に負ける訳にはいかないよなぁ!!)
零は余裕そうな表情をしているものの、統夜の成長に驚き、焦りすら見せていた。
そんな表情を見せようとしないのは、統夜以上の経験からなるものであった。
(……さすがだな、零さん。こんなに攻めてるのに、いつものように飄々としてる……。だけどっ!!)
統夜は零を追い詰めるために力強く剣を握りしめて剣を一閃するが、その一撃を見極めていた零がジャンプして、統夜の攻撃をかわした。
「なっ……!?」
零の予想外な行動に統夜は驚きを隠せなかった。
ジャンプして統夜の攻撃をかわした零は、降下する勢いのまま2本の剣を同時に振るった。
統夜はどうにか剣で零の攻撃を防ぐのだが、零は統夜の懐に接近すると、2本の剣の柄を使って統夜にボディーブローを放った。
「がぁっ……!!」
零のボディーブローが統夜の鳩尾に直撃すると、統夜はその一撃で意識を失いかけた。
零の攻撃はここで終わらず、今度は統夜の鳩尾目掛けて蹴りを放ち、統夜を吹き飛ばした。
零の2度にわたる攻撃で、統夜は吹き飛ばされたのだが、起き上がることが出来なかった。
2度も鳩尾に強烈な攻撃を受けたら、一般人なら即気を失うレベルだった。
しかし、統夜の意識は朦朧としてはいたものの、意識を失うほどではなかったのである。
「へぇ……。あれ受けて気絶しないのか。流石だな」
零は統夜が気を失うことなく、どうにか起き上がろうとしている様子を見て、驚いていた。
「……さぁ、統夜!この状況をどうにか打破してみろよ!!そのためにあえてトドメを刺さなかったんだぜ」
零は統夜の鳩尾にボディーブローを放ったタイミングで剣を振るっていれば、その時点で勝ちは決まっていた。
しかし、ここから統夜がどう巻き返すかを見たかった零はあえてトドメを刺さず、ボディーブロー程度にとどめておいたのである。
「これで立てないなら……。終わりにするぜ」
零は鋭い目付きで統夜を睨みつけ、その声色も低くてドスのきいたものであった。
(……うっ、目が霞んでやがる……。だけど……そう簡単に負けられるかよ!!)
統夜は気を失ってもおかしくない状況だったが、気力だけでどうにか立ち上がった。
試合を見学していた魔戒騎士たちは、統夜が立ち上がることを予想していなかったので、驚きの声をあげていた。
「……立ったか。そうでなくちゃ面白くないからな。だけど、それで攻撃は出来るかな?」
統夜は辛うじて立っている状況だったので、足取りはかなりフラフラだった。
(……く、くそ!まだだ!せめて、零さんに一矢報いるまでは!)
統夜はフラフラな足取りで零に近付いていった。
零はここで攻撃を繰り出すことは出来るのだが、あえて攻撃は仕掛けず、統夜の出方を待っていた。
「……うっ、ぐぅ……」
統夜は弱々しくも剣を一閃するのだが、そんな攻撃で零を捉えられる訳もなく、片方の剣を振るって統夜の剣を弾き飛ばした。
その瞬間、闘技場内のざわつきが大きくなっていた。
この時点で誰もが零の勝ちを確信していた。
そんな中、零は再び蹴りを放って統夜を吹き飛ばした。
この零の攻撃に魔戒騎士たちは疑問の声をあげていた。
あそこで統夜に切り傷をつければ零の勝ちだったのにそれをしなかったからである。
中にはただ統夜を痛ぶっているだけと勘違いをして、非難の声をあげる者もいた。
「……うっ……くっ……」
「どうした、統夜。もう終わりか?」
「……ま……まだまだ……」
統夜はどうにか立ち上がろうとするが、立ち上がることは出来なかった。
「統夜、お前はよく頑張ったよ。だが、今のお前じゃ俺には勝てない」
零の放ったこの言葉には氷のような冷たさを帯びていた。
「お前が限界だっていうなら、引導を渡してやるよ」
零は統夜の反撃を期待していたのだが、これ以上の反撃は無理と判断し、勝負をつけることにした。
(……くそっ!ここまでか……!負けるにしても零さんに一矢報いたかったのに……!)
統夜は立ち上がろうにも立ち上がれず、悔しさを滲ませていた。
(……こんな一方的な負け方……唯たちには見せられないのにな……)
統夜の脳裏には、唯たちの姿が浮かんでいたのだが、それで統夜はハッとした。
(そうだよ。負けるにしたってみっともないところを見せるわけにはいかないんだよ!!)
ここで統夜の意識はだいぶハッキリとするようになり、先ほどまでは立ち上がる気力もなかったのだが、唯たちのことを考えたら不思議と力が湧いてきていた。
「……統夜、これで終わりだ!!」
零は統夜にとどめの一撃と言わんばかりに剣を振るうのだが、その瞬間に統夜はカッと目を見開いた。
そして統夜はゴロゴロと横回転すると、零のとどめの攻撃をかわしたのである。
『えぇ!?』
今の攻撃で勝負は決したと思っていた魔戒騎士たちは、一斉に声をあげてしまった。
「……!そうだ、統夜。それでこそだぜ!」
統夜がまだ戦えることを察した零は笑みを浮かべていた。
統夜は起き上がると、弾き飛ばされた剣を回収するために駆け出した。
「……させないぜ!!」
零は統夜が剣を回収するのを阻止するために、片方の剣を統夜目掛けて投げつけた。
「……!?」
背後から零の飛ばした剣が迫ってくることを察した統夜は、ギリギリまで飛んでくる剣を動きを見極めてから回避し、剣を回収した。
「……統夜、よくあの状態から立ち直ったな」
「えぇ。この決勝戦で一方的な負けは見せられませんからね!」
「それは俺も同じ気持ちだぜ!来い!決着をつけようぜ!!」
「はい!!」
こうして体勢を立て直した統夜は、零に向かっていくと、剣を一閃した。
しかしそれは零に軽く防がれてしまった。
零は反撃と言わんばかりに剣を振るうが、統夜は無駄のない動きで零の攻撃をかわしていた。
「……へぇ、やるな……」
(……ここだ!!)
零が自分の攻撃をかわされたことに驚く中、統夜は零の隙をついて剣を振るった。
この一撃に手応えを感じていた統夜はここで勝ちを確信した。
しかし、零は剣が自分の体に迫る前にジャンプをして統夜の攻撃をかわしたの。
「……!?嘘だろ!?」
統夜はここで攻撃をかわされるとは思っていなかったのか、驚きを隠せなかった。
零はジャンプの着地と同時に統夜目掛けて投げつけた剣を回収し、すかさず統夜目掛けて駆け出した。
「……はぁっ!!」
統夜は迫ってくる零に向かって剣を一閃するが、零は無駄のない動きで統夜の一閃をかわした。
そして、零は2本の剣を同時に振るい、それより少し遅れるが、統夜も剣を振るった。
2人の振るった剣はかなりの威力だったのか、2人の手にした剣は同時に弾き飛ばされてしまった。
しかし……。
「くっ……」
統夜の手には微かではあるが、切り傷がついてしまい、その場に跪いた。
「……へぇ……」
その数秒後、零の手にも、微かな切り傷がついてしまった。
「……しょ、勝負あり!!」
審判役は試合終了を宣言したが、すぐに勝者を宣言しなかった。
しかし、統夜の方が先に傷をおったことを審判役は見逃さなかった。
「……勝者、涼邑零!!」
統夜と零の対決は、紙一重の差で、零の勝利となった。
零が勝者と知った魔戒騎士たちは大きな歓声をあげていた。
「おぉ!涼邑零の勝ちか!!」
「惜しかったな!あと一歩だったのに!」
「だけど、良い試合だったぞ!!」
魔戒騎士たちは、惜しくも敗れた統夜に賞賛の声を送っていた。
負けるにしても前回優勝者の零相手に奮闘したことが評価されたのである。
「……統夜、惜しかったな」
「そうですね。だけど、決勝の舞台に立てただけでも十分凄いですよ」
「そうですよね!負けちゃったのは残念ですけど、凄い試合でした!」
大輝、戒人、奏夜の3人は、統夜が惜しくも敗れたことに対して残念がっていたが、その健闘ぶりを讃えていた。
「……流石の統夜も零には敵わなかったか……」
準決勝で統夜に敗れた翼は、零の実力を誰よりも理解しており、自分を破った統夜もまだまだ零には敵わないだろうと思っていた。
「……統夜、惜しかったな。俺も危なかったぜ」
「いえ、俺の完敗です。流石ですね、零さん」
統夜は零との真剣勝負に敗れ、悔しくないと言えば嘘になるが、それを悟られないように平静さを装っていた。
零はそんなことは見通していたのだが、あえてそこは追求せず、笑みを浮かべた。
「零さん、今回は俺の負けですが、次は絶対に負けません!!」
統夜は「ふんす!」と気合を入れると、零に手を差し伸べた。
「望むところだ!次も俺が勝たせてもらうぜ!」
零はニコッと笑みを浮かべると、差し伸べられた統夜の手を取ると、固く握手を交わした。
こうして、激戦を戦った2人は、互いの健闘を讃えて握手を交わしたのであった。
魔戒騎士たちは、2人が固い握手を交わすのを見ると、2人の健闘を讃えて、スタンディングオベーションをしていた。
大輝、戒人、奏夜も当然スタンディングオベーションに参加し、翼、ワタル、エイジの3人も統夜の健闘を讃えていた。
こうして、7日間に渡るサバックは零の優勝という形で幕を閉じた。
※※※
サバックの決勝戦が終わるなり、サバックの閉会式の準備が行われていた。
準備が全て終了すると、全ての魔戒騎士たちは、 数々の激闘が繰り広げられた円陣に集まっていた。
「……これより、サバック閉幕の儀を執り行う!」
サバックの責任者として、この大会を取り仕切ってきた朱雀が、サバック閉幕の宣言をした。
「今回のサバックは予想以上の熱戦が繰り広げられた。諸君らの健闘ぶりは魔戒騎士狩りを感じさせないものだった。過去行われたサバックの熱戦に負けない程の質の高さであった!」
朱雀は、今回のサバックをこのように振り返り、今回のサバックを絶賛していた。
「その激闘を制した涼邑零は、前回に引き続きサバックを制した魔戒騎士である」
朱雀は、零がサバックを二連覇したことを説明した。
「サバックのルールに則り、涼邑零はサバック殿堂魔戒騎士となり、今後のサバックには出場出来なくなる。それを肝に銘じるが良い」
「……はい、ありがとうございます」
零はサバック殿堂魔戒騎士となった喜びと共に、深々と一礼していた。
サバックは数年に一度執り行われる魔戒騎士による神聖な武術大会であるのだが、その大会に二連覇した魔戒騎士はサバック殿堂魔戒騎士と認定され、今後サバックの大会に出場することができなくなる。
しかし、サバック殿堂魔戒騎士という名は魔戒騎士にとってこの上ない名誉であった。
だが、過去にサバック殿堂魔戒騎士になった者の数は少なく、零は3人目のサバック殿堂魔戒騎士となったのであった。
「さて、涼邑零よ。サバックを制した者は「死人の間」へ入ることが許され、死者の魂に会うことが許される。祈るがよい。誰に会いたいのか」
「はい!」
零は目を閉じると、死人の間で会いたい人物のことを思い浮かべていた。
(零さん……。誰に会いたいんだろうか……。そういえば零さんは婚約者をあのキバに殺されたって聞いたことかあるけど、もしかしてその人なのか?)
統夜は、零が会いたいだろう人物に思い当たる節があった。
しかし、それが本当に合っているのかはわからなかった。
目を閉じて会いたい人物を思い描いていた零は、目を見開き、会いたい人物のイメージを思い浮かべることが出来たようである。
「……どうやら、決まったようだな。……涼邑零。死人の間へ!!」
朱雀はこのように宣言すると、死人の間への扉を開いた。
それを確認した零はゆっくりと歩き出し、死人の間へと入っていった。
零が死人の間に入っている間、魔戒騎士たちは言葉を発することなくその様子を見守っていた。
そして、零が死人の間から戻ってきたのは、十数分後だった。
「……これにて、サバックの閉会の儀は終了する。今宵も宴を用意する。各自、戦いの疲れを癒し、明日からの使命に備えよ!」
今日も宴があると知り、魔戒騎士たちは歓声を上げていた。
「……以上、解散!!」
こうして、朱雀の宣言によってサバック閉幕の儀は終了し、7日間に渡るサバックは幕を閉じた。
※※※
こうして夜になり、サバック終了を祝う宴が催されていた。
魔戒騎士たちは昨日に引き続き、用意されたご馳走に舌鼓を打ち、酒を飲み、大いに盛り上がっていた。
そんな中、統夜は桜ヶ丘に帰る支度を行っていた。
「……あれ?統夜さん、宴には参加しないんですか?」
統夜が帰る支度をしているのを見ていた奏夜は、統夜の行動に首を傾げていた。
「まぁな。だって宴は自由参加だろ?俺はそういう宴には興味がないしな」
『良く言うぜ。1秒でも早く桜ヶ丘に帰りたいって思ってるくせに』
「あっ、イルバ!バラすなよ!!」
イルバが統夜の真意をあっさりバラすと、統夜の顔は真っ赤になっていた。
奏夜はそんな統夜の姿を見て苦笑いをしていた。
「それに、サバックは終わって明日からはいつもの日々が戻ってくるからな。騎士の使命を果たしながら俺はもっと強くならなきゃって思ってる」
「へぇ……。統夜さん、十分強いのに、高みを目指す気持ちは忘れてないんですね」
「当たり前だろ。俺がその気持ちを忘れないのは守りたい人がいるからだよ」
「守りたい人……」
「まぁ、お前にもいつか現れるさ。この命を懸けてでも守りたい人ってのがな」
「……」
奏夜は、統夜のいう命を懸けてでも守りたい人という言葉が気になっていた。
「そういう人が現れればお前にもわかるはずだぜ。守りし者とは何なのかをさ」
「……守りし者が……何なのか……」
「まぁ、そういうことだ。奏夜、また東京には遊びに行くからまた会おうぜ!」
「えぇ!統夜さん、待ってます!!」
統夜はこのように奏夜に別れを告げると、荷物をまとめて自分の泊まった部屋を後にした。
そして宿舎を後にすると、サバックの間世話になったこの宿舎に対して深々と一礼をしていた。
そしてそのまま桜ヶ丘へ帰ろうとしたのだが……。
「……おっ、統夜。もう帰るのか?」
たまたま宿舎の近くを通りがかったアキトが、統夜に声をかけた。
「あぁ。俺は別に宴に興味はないし、なるべく早く桜ヶ丘に帰りたいって思っててな」
「ふーん。そんなに早く桜ヶ丘に帰りたいんだなぁ」
何で統夜が早く桜ヶ丘に帰りたいのかを察したアキトはニヤニヤしていた。
「な、何だよ!ニヤニヤして!」
「別に?何でもないっての!」
こう答えるものの、アキトはニヤニヤをやめなかったため、統夜は首を傾げていた。
「あっ、そうそう。統夜は明日にでもあいつらに会いに行くんだろ?」
「あぁ。そのつもりだけど」
アキトの言っているあいつらとは、唯たちのことであった。
統夜もそのことは理解していたので、アキトの言葉を肯定していた。
「師匠が統夜の試合をまとめたのを明日持ってくるって言ってたぜ。その時は俺も師匠について行くけど、師匠から連絡があると思うぜ」
アキトの協力を得て、サバックの全試合を専用の魔導具を用いて記録していたレオは、唯たちに統夜の試合を見せるために、統夜の試合をまとめたものを編集していた。
それはまもなく終わるようで、明日には統夜たちにそれを見せることが出来るようになっていた。
そのため、レオは宴には参加していない。
「そっか。レオさんには明日改めて礼を言うつもりだけど、アキトもありがとな」
「まぁ、俺は師匠の手伝いをしただけだからな。礼なら師匠に言ってくれよ」
「アハハ、わかったよ。それじゃあな」
統夜はそのまま宿舎を後にしようとしたのだが……。
「……統夜!」
アキトが統夜を呼び止めたので、統夜は足を止めた。
「……?どうした、アキト?」
「あのさ、決勝戦、惜しかったな」
「あぁ、そのことか。あの試合に関しては、完敗だったさ。やっぱり零さんは強かったよ」
統夜はこのように決勝戦を振り返っていた。
「まぁ、零さんは師匠や鋼牙さんの盟友だからな。殿堂入りは納得だよ」
「そうだよなぁ。だけど、次零さんに会った時は俺はもっともっと強くなる。いつかは零さんを越える騎士になってみせるさ!」
「ずいぶんと大きく出たな、統夜。まぁ、お前ならそんな騎士になれると思うぜ」
「アキトも自分の夢を叶えるために頑張れよな」
「当たり前だ!俺は俺の夢を叶えるために頑張るさ」
アキトの夢とは、自分の作った魔導具で、多くの魔戒騎士や魔戒法師の手助けをすることである。
そのために、アキトは魔戒銃を完璧なものにするため、日夜努力をしていたのである。
「……それじゃあ、俺はそろそろ行くよ」
「おう。それじゃあ、統夜。またな」
統夜とアキトはすぐに会うことになると予想されたため、「じゃあな」ではなく、「またな」と答えていた。
アキトと別れた統夜は宿舎を後にし、魔界道を通って桜ヶ丘へと向かった。
こうして、7日間に渡る統夜の激闘は幕を閉じたのであった。
しかし、サバックが終わったからといって魔戒騎士の使命が終わることはない。
これからも統夜は、守りし者として、多くの人を守っていくことになるだろう。
魔戒騎士としての統夜の戦いの日々はこれからも続くのであった。
……続く。
__次回予告__
『やっと桜ヶ丘に帰ってきたな。だが、やることが多いから色々と面倒だぜ。次回、「帰郷」。新たに統夜の日常が始まる!』
統夜は惜しくも零に敗れて準優勝で終わってしまいました。
それでも、初出場で準優勝というのはかなりの快挙だと思います。
零はサバック二連覇を果たし、サバック出禁組となりました。
統夜や翼もゆくゆくはサバック出禁組になるのでしょうか……?
サバックも無事終わったということで、次回は統夜は無事に桜ヶ丘に帰ってきます。
そして、次回は統夜のサバックの試合を振り返ります。
統夜の激闘の記録を振り返ることになります。
それでは、次回をお楽しみに!