激闘続いたサバックもいよいよ準決勝になります。
今回、統夜は翼と対決します。
皆さんご存知の通り翼はかなりの強敵ですが、統夜は翼に勝って決勝へ駒を進めることは出来るのか?
それでは第77話をどうぞ!
激闘続くサバックも、終盤戦である6日目を迎えた。
魔戒騎士たちは、朝食を済ませた後に闘技場へ向かった。
準決勝に勝ち進んだ4人の魔戒騎士は、これから行われる準決勝に備えて、闘技場で待機していた。
朱雀は、自分の特等席で準決勝まで勝ち進んだ4人の魔戒騎士をジッと見つめていた。
この4人の魔戒騎士は、実力のある魔戒騎士で、ここまで勝ち進めたのも朱雀も納得する程の実力者ばかりであった。
東の管轄を任され、前回のサバックで優勝した涼邑零。
閑岱の地を守る魔戒騎士であり、前回のサバックでは零に敗れたものの、準優勝した山刀翼。
最近元老院付きの魔戒騎士となり、それに相応しい力を見せた鷹山宗牙(たかやましゅうが)。
紅の番犬所に所属し、高校3年生ながらも大きな事件を解決させ、その実力をいかんなく発揮した月影統夜。
初日からサバックの試合を見ていた朱雀は、この4人の実力を認めており、ここまで勝ち進んだ4人の魔戒騎士に心の中で賞賛を送っていた。
今回サバックは、初日から熾烈な戦いが続き、ハイレベルな戦いが続いた。
これは、朱雀にとっては喜ぶべき誤算であった。
魔戒騎士狩りがあったせいで、魔戒騎士たちの数が減ってしまっていた。
そのため、今回のサバックはいつも以上に質の下がった大会になるだろうと朱雀は予想していた。
しかし、サバックに参加した魔戒騎士たちは、魔戒騎士狩りがあったことを感じさせないほどの激闘を繰り広げていた。
そのため、今回のサバックは今まで行われたサバックの中でも1番と言ってもいいくらい質の高い大会となっていた。
「……さて、もうすぐで準決勝が始まるか……。あの4人の魔戒騎士はどのような激闘を見せてくれるのか……」
これから行われる試合に期待しているのか、朱雀は笑みを浮かべていた。
そして……。
「……これより、準決勝を行う!」
審判役の一声で、準決勝の開始が宣言された。
「第1試合!紅の番犬所付き、月影統夜!」
統夜は審判役に名前を呼ばれたので、戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。
「対するは、閑岱付き、山刀翼!」
今度は翼の名前が呼ばれ、翼も、戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。
「……統夜、ここまでよく勝ち進んできたな」
「……翼さん」
「今のお前がどれだけの力を持っているのか、この戦いで見極める!」
翼は審判役に言われる前に槍を構えていた。
「……っ!」
統夜もそれに感化されて、剣を抜いたのであった。
「そっ、それでは、両者、武器を構えよ!」
審判役は慌ててこのように宣言すると、統夜は抜いた剣を構え、翼を睨みつけていた。
「統夜、俺に見せてみろ!お前の力を!」
「えぇ!翼さん、あなたに見せますよ!今の俺の力を!!」
統夜も、今の自分の全力。そして、自分がどれだけ成長したかを翼に見せつけるつもりだった。
「……これは凄い戦いになりそうだな」
「なぁ、どっちが勝つと思う?」
「そりゃ、山刀翼だろ。前回のサバック準優勝の実力者だし、月影統夜だって強いけど、その山刀翼には勝てないと思う」
「そうだよなぁ。俺は月影統夜に頑張ってほしいけどなぁ」
試合を見学していた魔戒騎士たちは、統夜のことを評価しながらも、翼には敵わないだろうと思っていた。
「……まぁ、やはり相手が相手だからこのような評価はわかるな」
あちこちから聞こえてくる魔戒騎士たちの話を聞いていた大輝は、その的を得た話に納得していた。
「そうかもな。あの人のオーラ、ただ者じゃない」
翼はただ棒立ちのように突っ立ってるだけと思いきや、その翼の放つオーラはかなりのものであり、統夜以上に様々な修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の勇士だということが理解できた。
「ですが、統夜さんだって負けてないですよ!俺は統夜さんに頑張ってもらいたいです!」
奏夜も、翼の放つオーラを肌で感じながらも、統夜のことを応援していた。
だが、それは戒人と大輝も同じ気持ちだった。
そして……。
「……それでは、試合、開始!!」
審判役が試合開始を告げるなり、統夜は翼に接近すると、剣を振るうが、それは翼に軽々とかわされてしまった。
「なっ……!?」
統夜は先制攻撃をあっさりかわされると思っていなかったので、驚きを隠せなかった。
「そんな単調な攻撃で俺を捉えられると思うな!」
翼は反撃と言わんばかりに槍の柄の部分を統夜に叩きつけると、その一撃で統夜を吹き飛ばした。
「くっ……!」
先制攻撃に失敗し、翼に吹き飛ばされてしまった統夜だが、すぐに体勢を立て直した。
そこは統夜と翼の、魔戒騎士としての経験の差が出てしまっていた。
「……統夜!今度は俺から行くぞ!」
翼はこう宣言すると、統夜目掛けて突撃し、槍を一閃した。
統夜はその一撃をどうにか剣で防いでいた。
「……っ!!」
翼は連続で槍の突きを放つのだが、統夜はなんとか翼の連続攻撃をかわすことが出来たのであった。
「ほぉ、この突きを凌ぐとはやるな!だが、これで終わりだと思うな!」
翼は休むことなく攻撃を繰り出しており、統夜は防戦一方だった。
(……っ!全然反撃する隙がない!これが、翼さんの本気……なのか?)
統夜は翼と何度も稽古として戦ったことはあるのだが、ここまで激しい攻撃を繰り出してきたのは初めてだった。
統夜は翼の猛攻を防ぎながら翼の本気を肌で感じとっていた。
「……統夜、押されてるな……」
大輝は、翼の猛攻を見ながらこう呟いていた。
「……流石は翼さんだ。あの牙狼と互角と言われるだけのことはあるな」
戒人も、翼がどれくらいの魔戒騎士であるかを理解しているため、翼の戦いぶりにただただ感心していた。
「まぁ、統夜はその山刀翼相手に善戦してる方だと思うがな」
翼は1回戦から準々決勝まで、対戦相手を開始数分で破っていた。
しかし、統夜はそんな翼相手にどうにか持ちこたえていたのだが、それもどれだけ続くのかわからなかった。
「……統夜さん、頑張ってください!」
奏夜は、翼相手に苦戦を強いられている統夜にエールを送っていた。
統夜は、翼の猛攻をどうにか耐えながら、反撃の機会をうかがっていた。
(……くっ、このままだと確実に負ける……!どうにか反撃しないと……)
統夜は反撃しようにも、翼の攻撃が激しいため、思うように反撃が出来なかった。
「……どうした、統夜!!お前の力はその程度なのか?この状況で反撃をしてみせろ!!」
翼は統夜に隙もないほどの猛攻を見せながらも、統夜からの反撃を待っていた。
(……!こうなったら、一か八かだ!次、翼さんが突きを出してきたら、反撃してみせる!)
統夜は翼の猛攻を凌ぐ作戦を思いついたのだが、それを一か八かで実践してみることにした。
「反撃出来ないなら……これで終わりにする!!」
なかなか反撃してこない統夜に失望したのか、翼は突きを出して統夜にトドメを刺そうとしていた。
(……!来た!今だ!)
統夜は翼が突きを放った瞬間、統夜はしゃがんで翼の突きをかわすと、そのままクルリと前転をしながら、翼と距離をとった。
「……!?何だと!?」
翼は、統夜の予想外な行動に驚きを隠せなかった。
統夜の作戦はどうにか上手くいったので、そのまま翼と距離を取り、体勢を立て直すことが出来た。
「ほぉ、面白いかわし方をするじゃないか。俺相手にここまで持ちこたえるとは、成長してるようだな」
「えぇ、俺はいつまでもあなたの知ってる俺じゃないです!俺の力は、こんなもんじゃないですよ!!」
「ふっ……。だったら、こいつを凌げるか?」
翼は、耳につけているイヤリングに触れると、術を放つ体勢に入った。
「……っ!まさか、あの体勢は?」
統夜は、翼がイヤリングに触れることで術を放つことを知っていたため、翼が術を放とうとしていることを瞬時に理解した。
「……今回のサバックで術を使うことはないと思っていたが、統夜相手に使うことになるとはな!」
「俺は、翼さんの術を凌いで、あなたに勝って見せます!」
「ふっ……。やってみろ!!」
翼は不敵な笑みを浮かべると、術を放った。
その効果でどこからか岩が飛んでくると、それを統夜目掛けて放った。
「……はぁっ!!」
統夜は翼の放った岩をギリギリまで引きつけると、剣を一閃し、次々と岩を斬り裂いた。
「……はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
統夜はすかさず翼に接近すると、剣を一閃するのだが、難なく翼に防がれてしまった。
「……隙だらけだぞ!統夜!!」
翼はまだ術を放っており、複数の岩が統夜の背後に迫っていた。
しかし……。
「……いえ、予想通りです!!」
「何?」
統夜は余裕の笑みを浮かべているのを翼が訝しげな表情で見ていると、統夜は攻撃を辞めて横っ飛びをした。
その結果、翼の術によって放たれた岩が、翼自身に向かっていった。
翼は慌てて術を解除すると、その岩は翼に当たることなく、地面に叩きつけられた。
「……今だ!!」
術を解除した時に出来た隙を、統夜は見逃さなかった。
「……やらせるか!!」
統夜は剣を一閃するのだが、翼は意地だけで攻撃を防ぐことが出来たのだが、槍の柄の一部が統夜の一閃によって切り裂かれてしまった。
しかし、翼は冷静だった。
統夜の一瞬の隙をついてイヤリングに触れると、切り裂かれた槍の柄の一部をコントロールした。
そして放たれた槍の柄の一部は、統夜の鳩尾に直撃した。
「がぁっ……!!」
統夜はまるで強大な力でボディーブローを受けた感覚を味わうと、そのまま吹き飛ばされてしまった。
一般人ならこの一撃を受けた時点で即気絶するほどなのだが、統夜は朦朧であるが、どうにか意識を保っていた。
「……まっ……だだ!!」
統夜は立ち上がろうとするが、意識が霞んでしまい、思うように立ち上がることが出来なかった。
これを見ていた魔戒騎士たちは、この時点で翼の勝ちを確信していた。
「……統夜にしてはよくやったが、ここまでか……」
「そうですね。あの一撃で気絶しないだけでもたいしたもんだと思いますよ」
「……統夜さん……」
大輝、戒人、奏夜の3人も、統夜の奮闘を評価していたが、翼の勝ちを確信していた。
「……月影統夜。ここで終わるか?それとも、この窮地を乗り切るか?」
闘技場内にいる魔戒騎士たちが翼の勝ちを確信する中、朱雀だけは統夜が窮地を乗り切る可能性を考えていた。
(……くそっ!体に力が入らねぇ……!ここまでか……!)
統夜は起き上がることが出来ず、諦めようとしていた。
「……統夜。お前はよくやったが、まだまだ俺の敵ではない。これで終わりにする!」
翼はゆっくりと倒れている統夜に近付くと、槍を構えた。
このまま槍を振るい、軽く切り傷をつけてやれば、自分の勝ちになる。
戦いの決着をつけるべく、翼は槍を振るった。
この瞬間、誰もがこの一撃で勝敗が決まると思っていた。
翼の槍が統夜に迫ろうとしたその時だった。
『やーくん!!』
『『統夜!!』』
『統夜君!!』
『統夜先輩!!』
統夜の脳裏に、自分を心配して声をあげる唯たちの姿が映っていた。
「……!」
その呼びかけで意識を完全に取り戻した統夜は、グルリと回転して、翼の攻撃をかわした。
「……何だと!?」
翼はこの一撃で勝敗が決まると思っていたので、驚きを隠せなかった。
その隙に、統夜は立ち上がり、剣を構えた。
「……ふっ、まさか、誰もがお前の負けを確信した状況を切り抜けるとはな……」
翼は、統夜が窮地を乗り切り、反撃に出ようとしている姿が嬉しかったのか、笑みを浮かべていた。
「だが、それでいい!統夜、もっと俺を楽しませてくれ!!」
この時、翼は勝ち負けのことなど考えてはおらず、統夜との本気の戦いを楽しみたいと思っていた。
「えぇ!もちろんですよ、翼さん!!」
統夜も自分を鍛えてくれた翼との本気の戦いを楽しみたいと考えていた。
「……統夜!!俺の全力、受け止めてみろ!」
翼はイヤリングに触れて術を放つと、そのまま統夜目掛けて突撃した。
「……っ!!」
統夜は翼の攻撃を防ぐのだが、すかさず翼の術によってコントロールされた槍の柄の一部や岩が統夜に向かっていった。
「……くっ!」
統夜は翼を弾き飛ばすと、自分に向かってきた槍の柄の一部や岩をかわした。
「……まだだ!!」
すかさず翼は槍を一閃し、統夜は剣でそれを防いだ。
「くっ……!」
翼の攻撃は一撃一撃がかなり重いものであり、それを防ぐ統夜の表情は歪んでいた。
そして、再び術によってコントロールされた槍の柄の一部や岩が統夜に迫ってきた。
(……このままじゃジリ貧だな……。まずはあれを何とかしないと……)
翼が術によって放っている槍の柄の一部や岩をどうにかしない限り、統夜の負けは決定的だった。
なので、それを何とかするために、統夜は行動を開始した。
「……今だ!」
翼が再び槍を一閃したのと同時に、統夜は翼目掛けて蹴りを放った。
「……ぐっ!」
その蹴りを受けて表情が歪む翼であったが、統夜は蹴りによって翼を吹き飛ばすのではなく、翼を踏み台にして、大きくジャンプをした。
そして、槍の柄の一部や岩が統夜に迫ってくるのだが、統夜はそれを剣の一閃によって斬り裂いたり、地面に叩きつけたりしていた。
(……こうなったら、一か八かだ。また術を使われる前に決着をつける!)
統夜は地面に着地すると、そのまま翼目掛けて突撃した。
「……一気に決着をつけるつもりか!良いだろう!!」
そんな統夜の目論見を察した翼は、それを迎え撃つために統夜目掛けて突撃した。
そして2人は同時にそれぞれの武器を振り下ろすのだが、そのスピードは翼の方が速かった。
「……!予想通りだ!」
統夜は同時に武器を振るったら、翼の方が速いことを予想していた。
そのことを予想していた統夜は攻撃を中心すると、勢いよく前転すると、翼の一閃を回避した。
「……!?馬鹿な!!」
翼は、奇抜な動きで攻撃をかわす統夜に驚きを隠せずにいた。
「……これで終わりだぁ!!」
統夜は起き上がるのと同時に剣を連続で振るった。
その攻撃により、翼の槍はバラバラに切り裂かれ、さらには翼の手に切り傷をつけることにも成功した。
「……!?」
翼は、ここで統夜にトドメを刺されるとは思っていなかったのか、驚きを隠せずにいた。
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
統夜は最後の攻撃で体力を使い果たしたのか、息が上がり、その場に跪いていた。
そして……。
「……しょ、勝負あり!勝者、月影統夜!!」
闘技場内にいる誰もが統夜の勝ちを予想していたかったので、しばらくの間、ポカーンとしていた。
だが、それが終わると、大きな歓声をあげていた。
「ま、マジかよ!?月影統夜が勝ったぞ!!」
「俺、あそこで山刀翼が勝ちを決めると思ってたのに、凄いじゃねぇか!」
「あぁ!俺たちは今、とんでもない光景を見てるんじゃないのか?」
「2人とも!良い試合だったぜ!」
「月影統夜!決勝も頑張れよ!!」
魔戒騎士たちは、統夜の勝利に驚きを困惑を見せながらも、その勝利に賞賛の声をあげていた。
「……やった!!統夜さんの勝ちです!!」
「さすがだな、統夜。まさか、あの山刀翼さんに勝つなんて……」
「そうだな、正直勝てるとは思ってなかったから驚きだよ」
奏夜、戒人、大輝の3人もまた、統夜の勝ちに驚きながらも、その勝利に喜び、賞賛の声をあげていた。
「へぇ、まさか翼を倒すとは、統夜も成長したな」
零もまた、統夜が翼に勝つとは思っていなかったのか、驚きながらも感心していた。
『……ゼロ、決勝は油断しない方が良さそうね』
「そうだな、あの翼に勝ったんだ。俺も本気でいかなきゃな」
零の試合はこれからなのだが、決勝に進むことを予想しており、統夜との戦いのことを考えていた。
「……まさか、前回のサバック準優勝者を敗るとは、月影統夜……。彼奴はあの黄金騎士並の力を持っているのかもしれんな」
朱雀は、統夜の大金星を最後まで見届けると、統夜の実力は鋼牙に匹敵するのでは?と考えていた。
「……サバックの決勝戦は大きく荒れるかもしれぬな……」
朱雀は、明日行われる決勝戦を大いに期待していた。
「……統夜、まさかこの俺を倒すとはな……」
「えぇ。正直、翼さんの術を受けた時は半ば諦めてましたよ」
「だが、お前はあの窮地を切り抜けたな?」
「はい。諦めた時に大切な人達の声が聞こえたんです。それで、俺は再び奮起することが出来たのです」
統夜があの窮地を切り抜けられたのは、唯たちの声が聞こえたからであると翼に説明していた。
あの時、何も聞こえてこなかったら、あのまま翼の勝ちで幕を閉じていただろうとも思っていた。
「……そうか。お前にとって守るべき者がお前に力を与えたのだな……」
統夜が窮地を切り抜けた理由を知り、翼は笑みを浮かべていた。
「……統夜、お前は守りし者とは何なのか。よく理解しているみたいだな」
「えぇ。自分でもそう思っています」
統夜がはっきりと答えたことに驚きながらも、翼は笑みを浮かべた。
「……今回は俺の負けだ。だが、次はそうはいかないからな」
翼は、自分の負けを認めるものの、このままでは終わらないことを統夜に告げていた。
「えぇ。翼さん、また稽古をつけてくださいね」
今回は翼に勝てたが、統夜にとって翼は頼れる先輩であり、自分を育ててくれた師匠の1人であった。
なので、これからも翼に稽古をつけてもらいたいとは考えていた。
「もちろんだ。お前はまだまだの部分があるからな。これからもビシバシお前を鍛えてやるさ」
「アハハ……。お手柔らかにお願いします……」
再び稽古でボコボコにされそうと思った統夜は苦笑いをしていた。
翼は統夜の肩にポンと手を置くと、そのまま闘技場を後にした。
『……統夜、よく勝てたな』
「あぁ、今でも信じられないよ。本気の翼さんに勝てたなんて……」
イルバは統夜に労いの言葉をかけるが、統夜はこの勝利をまだ信じられなかった。
『まぁ、とりあえずは少し体を休めたらどうだ?』
「そうだな、そうするよ」
統夜は闘技場を後にすると、そのまま医務室へ向かい、しばらくの間そこで体を休めることにした。
統夜が休んでいる間に準決勝のもうひと試合が行われていた。
前回優勝した零と、新進気鋭の若手騎士である鷹山宗牙の対決である。
宗牙の実力はかなりのものであるが、牙狼と対等の力を持っている零が1枚も2枚も上手であり、宗牙は一矢報いることも出来ないまま、零に敗れてしまった。
こうして、準決勝は終了し、明日行われる決勝戦は統夜と零の対決となった。
……続く。
__次回予告__
『明日はいよいよ決勝戦か。だが、その前にこのようなことを行うとはな。次回、「鎮魂」。安らかに眠れ。騎士の魂よ!』
いやぁ、やはり本気の翼はめちゃくちゃ強いですね。
統夜が翼に勝てたのも統夜が翼を越えた訳ではなく単純に運が良かったからだと僕も思っています。
本来なら統夜を準決勝で負かそうかなとも考えたのですが、大番狂わせが見たいと思い、統夜を勝たせました。
次回は決勝戦前夜にとあることを行います。
タイトルを見れば何となくこんなことをするのかな?とはわかると思います。
決勝戦前夜。統夜はどのように過ごすのか?
それでは、次回をお楽しみに!