牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第75話になります。

今回は、3回戦の続きとなります。

今回は統夜のよく知るあの2人がぶつかり合います。

しかも、勝った方が準々決勝で統夜とぶつかります。

その2人とは一体誰なのか?

それでは、第75話をどうぞ!




第75話 「熱戦」

サバックも4日目に入っており、3回戦は第1試合から白熱した試合となった。

 

第1試合は統夜とワタルの対決であり、歴戦の勇士であるワタルとの戦いに統夜は大いに苦戦していた。

 

しかし、誰が相手でも諦めない姿勢と、勝ちたいという気持ちがワタルより上回っていたためか、統夜は誰もが予想出来なかった奮闘ぶりを見せていた。

 

その甲斐あってか、統夜は強敵であるワタルに勝つことが出来た。

 

その後も3回戦の試合は進んでいき、ここまで勝ち進んできた魔戒騎士たちが激戦を繰り広げていくことになる。

 

「……あっ、統夜さん!お疲れ様です!」

 

統夜は客席に移動すると、試合の見学をしていた奏夜が、統夜に労いの言葉をかけていた。

 

「おう、奏夜。ありがとな」

 

「統夜さん、凄いです!元老院付きの魔戒騎士を2人も倒すなんて!」

 

「アハハ……。運が良かっただけだよ……」

 

統夜はここまで勝ち進んでこられたのは、実力以上に運が良かったからと思っていた。

 

「……統夜さん、次は戒人さんと大輝さんの試合ですよ」

 

「!?あの2人が?」

 

次の試合の情報を聞いた統夜は驚きを隠せなかった。

 

「しかも、この試合の勝者が準々決勝で統夜さんと戦うことになります」

 

『なるほどな。どちらが勝っても激戦になるのは必至のようだな』

 

「そうだな。それに、戒人と大輝さん……。どっちが勝ってもおかしくはないが、戒人ならきっと……」

 

大輝は称号を持たない騎士ではあるが、その実力はかなりのものである。

 

現時点では戒人と大輝の実力は互角であると統夜は推測していたが、統夜は戒人が勝つと予想していた。

 

「……どっちにしても、凄い試合になりそうですよね……」

 

「あぁ……」

 

統夜と奏夜の2人はこれから行なわれる戒人と大輝の試合をジッと見守ることにした。

 

 

 

 

 

 

「……続いて、第2試合を行う!紅の番犬所付き、黒崎戒人!」

 

審判役に名前を呼ばれた戒人は、戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。

 

「対するは、翡翠の番犬所付き、桐島大輝!」

 

続いて大輝も名前を呼ばれたため、大輝は戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。

 

「……桐島大輝……。あいつって確か称号を持ってないんだよな?」

 

「あぁ。それなのにあの実力……。この大会でもトップクラスの実力じゃないのか?」

 

「あの黒崎戒人ってやつもかなりの手練れみたいだしな」

 

「なぁ、この試合、どっちが勝つと思う?」

 

「わからん!だが、凄い試合にはなりそうだぞ!」

 

試合を見学していた魔戒騎士たちは、大輝と戒人の実力をかなり評価しており、どちらが勝つか予想が出来なかった。

 

「……両者、武器を構えよ!」

 

審判役の一声で、戒人と大輝は剣を抜くと、それを構えた。

 

「……まさかこんなに早くお前と戦うことになるとはな」

 

「大輝さん!俺はあなたに勝ってみせます!勝って準々決勝で統夜と戦うんです!」

 

「……この試合に勝った方が統夜と戦うんだったな。だが、俺だってそう簡単にお前に負けてやる訳にはいかない!」

 

大輝は鋭い目付きで戒人を睨みつけていた。

 

「……っ!」

 

戒人は、大輝の放つオーラにたじろぎそうになるが、負けじと大輝を睨みつけていた。

 

そして……。

 

「……それでは、試合開始!!」

 

審判役の一声で試合は開始された。

 

試合開始早々に動きを見せたのは戒人だった。

 

「……はぁっ!!」

 

戒人は素早い動きで一気に大輝に接近すると、そのまま剣を一閃した。

 

「ふっ、さすがの速さだな。だが!」

 

大輝は戒人の動きを予想していたのか、戒人の攻撃を難なくかわしていた。

 

「……なっ!?」

 

「戒人、今の動きは悪くなかったが、それで俺に勝てると思うな!」

 

大輝は反撃と言わんばかりに蹴りを放つと、戒人はそのまま吹き飛ばされてしまった。

 

「……ぐっ!!」

 

戒人はすぐさま体勢を立て直すのだが、先制攻撃は空振りに終わってしまった。

 

「……次はこちらから行くぞ!!」

 

戒人が体勢を立て直すのと同時に大輝は戒人めがけて駆け出した。

 

「はぁっ!!」

 

大輝は剣を一閃するが、戒人はそれを何とか剣で受け止めていた。

 

「……っ!!」

 

大輝の剣の一撃は予想以上に重く、戒人の表情は歪んでいた。

 

(……さすがは大輝さんだ……!剣撃に重みがある……!だが、俺だって負ける訳にはいかない!!)

 

戒人は気合だけで大輝を弾き飛ばすと、大輝はそのまま後ろずさってしまった。

 

「……はぁっ!」

 

すかさず戒人は剣を一閃し、大輝はその一撃を剣で防いだ。

 

その後、2人は激しい剣の打ち合いを行っていた。

 

(……!さすがだな、戒人。初めて会った時よりも強くなってるな。剣を振るえば振るうほど剣撃が重くなってる……!)

 

大輝は戒人と剣を交えることで、その成長ぶりを実感していた。

 

(……あいつがここまで強くなれたのは、統夜の存在が大きいのかもな)

 

大輝は、戒人が魔戒騎士として大きく成長出来たのは、ライバルである統夜の存在が大きいことを実感していた。

 

(……だが、あいつがどれだけ成長しようと、俺は簡単に負ける訳にはいかない!一応先輩騎士としての意地があるからな!)

 

大輝は、戒人が相手だろうと、先輩騎士としての意地を見せようとしていた。

 

(……本当に大輝さんは強いな。この人と共に戦っていたからこそ、統夜はあれだけ強くなれたんだろうな)

 

戒人もまた、剣を交えている大輝の強さを実感しており、大輝と一緒にいたことが統夜を強くしているのではないかと予想していた。

 

(……だからこそ、俺は大輝さんに勝たなきゃいけない。統夜のライバルとして、このサバックの試合で統夜に勝つために!)

 

戒人は、統夜と戦って勝つことをこのサバックの目標としていた。

 

統夜にとっても大事な先輩騎士である大輝に勝たなければその目標は叶わない。

 

だからこそ、戒人は大輝に絶対勝ってやると心に誓っていた。

 

「……2人とも、凄い気迫だな……」

 

2人の試合をジッと見つめていた統夜はボソッと呟いた。

 

「……?統夜さん?」

 

「この試合、どっちが勝ってもおかしくないと思ってな」

 

「そうですね……。大輝さんも戒人さんも凄いです……」

 

統夜だけではなく、奏夜も2人の壮絶は試合に驚きながら試合を見守っていた。

 

他の魔戒騎士たちも、戒人と大輝の放つオーラに圧倒されていた。

 

「……はぁっ!!」

 

「何のぉ!!」

 

試合を見学した魔戒騎士たちが戒人と大輝のオーラに圧倒されるなか、2人の壮絶な剣の打ち合いは続いていた。

 

戒人は何度目かの剣の一閃を行い、大輝はそれを剣で防いでいた。

 

「……っ!!」

 

戒人の凄まじい剣撃に大輝の表情は歪むが、気合を込めて剣を振るい、戒人を弾き飛ばした。

 

「……っ!」

 

戒人は大輝の一撃で後ろずさり、体勢を立て直すが、大輝は一気に決着をつけるため、戒人に接近した。

 

「これで終わりだ!!」

 

大輝は戒人を殺す勢いで剣を突いた。

 

戒人であればかわすことは出来ると踏んでの攻撃だったのだが、この攻撃をかすめることができれば、その時点で大輝の勝ちが確定する。

 

「させるかよぉ!!」

 

戒人は剣を振るって突きを放った大輝の剣の軌道を狂わせると、アクロバティックな動きで大輝の突きによる攻撃を無傷で回避した。

 

「……!?何だと!?」

 

渾身の一撃がかわされたことに大輝は驚いていたが、それは大輝だけではなかった。

 

「!?」

 

「嘘だろ!?」

 

「あれで無傷とか、凄いじゃないか!」

 

この試合を見学していた魔戒騎士たちも、戒人の動きに驚きながらも感嘆していた。

 

渾身の突きをかわされたことにより、大輝に大きな隙が出来てしまった。

 

「これで……決める!!」

 

戒人はそんな大輝の隙を見逃さずに剣を一閃した。

 

大輝はそんな戒人の攻撃をかわすことが出来ず、戒人の剣は、大輝の腕に切り傷をつけたのだった。

 

「……勝負あり!勝者、黒崎戒人!」

 

審判役が試合終了を宣言し、戒人の勝ちを告げると、試合を見学していた魔戒騎士たちは歓声をあげていた。

 

「……戒人さんが勝ちましたよ!統夜さん!」

 

「あぁ。やっぱり戒人は強いな……!準々決勝ではあいつと戦うことになるんだな」

 

戒人が大輝を破ったことにより、統夜の準々決勝の対戦相手が戒人で確定した。

 

統夜は、次の試合で戦うライバルの顔をジッと見つめていた。

 

「……おぉ!黒崎戒人が勝ったぞ!」

 

「凄いな!今年は若い魔戒騎士がかなり活躍してるじゃないか!」

 

「くっそぉ!俺も負けてられないぜ!」

 

統夜や戒人の快進撃は、魔戒騎士たちに大きな刺激を与えていた。

 

そのため、若い魔戒騎士に負けてられないという気持ちを持つようになり、それが実力の向上につながっていく。

 

これこそが、サバックを主催した朱雀の狙いだった。

 

今回のサバックは魔戒騎士狩りのせいで魔戒騎士の数が大幅に減ってしまった。

 

そのため、朱雀は魔戒騎士個々の能力を向上させたいと考えていた。

 

統夜や戒人といった若い魔戒騎士の活躍は、魔戒騎士たちの刺激となり、それこそが朱雀の望んでいた魔戒騎士たちの能力の向上に繋がると朱雀は信じていた。

 

最後まで戒人と大輝の試合を見届けた朱雀は、笑みを浮かべていた。

 

「……やるな、戒人。俺の負けだ」

 

大輝はフッと笑みを浮かべながらも自分の負けを認めていた。

 

「ありがとうございます、大輝さん。最高の試合だったと思います」

 

「そうだな。俺もお前と戦えて楽しかったよ」

 

試合を終えた戒人と大輝は、固い握手をかわしていた。

 

2人の固い握手をかわす様子を見ていた魔戒騎士たちは、騎士として礼節を重んじた2人の行動に拍手を送っていた。

 

「戒人。統夜はかなり手強い相手だぞ。心してかかれよ」

 

「大輝さん……ありがとうございます!」

 

大輝はフッと笑みを浮かべて握手をした手を離すと、そのまま闘技場を後にした。

 

戒人はそれを見届けてから、闘技場を後にした。

 

こうして、戒人と大輝の試合は、戒人の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

サバック3回戦も第2試合まで終了したが、それ以降も熱戦は続いていた。

 

3回戦と準々決勝を勝ち進めれば統夜か戒人と戦うことになる翼も、難なく準々決勝へと駒を進めたのであった。

 

そして、前回のサバックで優勝した零も、危なげなく3回戦を勝ち進み、3回戦全ての試合が終了した。

 

魔戒騎士たちは夕食を済ませると、そのまま鍛錬に励む者や指令のためホラー討伐に向かう者。さらにはのんびり過ごす者などそれぞれの時間を過ごしていた。

 

そんな中、統夜はこの日も夏休みの宿題をこなしていた。

 

(……明日の相手は戒人か……。このサバックで本当に戦えるとは思わなかったな……。しかも俺か戒人。勝った方がサバックのベスト4。こんなに戦い甲斐のあるタイミングで戒人と戦かえるなんて……)

 

統夜は準々決勝でまさか戒人と戦えるとは思っておらず、驚きを隠せなかった。

 

しかも、勝った方がベスト4のため、自然と気合も入っていた。

 

(……だけど、俺も戒人もここまで勝ち進めるとは思わなかったな……。2人とも3回戦が限界かと思ってたからな……)

そして統夜は、ここまで勝ち進めたことに驚いていた。

 

3回戦でワタルを破ったことにも驚きだったからである。

 

(だけど、ここまで来たら行けるところまで行きたい。唯たちに最高の結果を報告するために!)

 

統夜は、ここまで勝ち進んだのならば、精一杯の結果を残そうと決めていた。

 

そんなことを考えながら統夜は夏休みの宿題に向かっていた。

 

初日に苦手な理数系の宿題を終わらせたのが良かったのか、その後は時間の許す限りサクサクと宿題を進めていき、明日には夏休みの宿題は全部終わりそうだった。

 

キリの良いところで宿題を中断した統夜は、明日の試合に備えて休むことにした。

 

その前に携帯電話のメールチェックをしていたのだが……。

 

「……おっ、唯たちからメールが来てる」

 

メールの受信履歴を見ると、5件もメールが来ており、それは唯たちからだった。

 

統夜は唯たちから来たメールをチェックし始めた。

 

最初に見たのは唯からのメールだった。

 

【やーくん、元気??怪我とかしてないよねぇ?やーくんに会えないのは寂しいけど、やーくんが試合で良い結果を残せるように祈ってるよ!頑張ってね!】

 

「アハハ……唯のやつ……」

 

統夜は唯からのストレートなメッセージがとても嬉しかった。

 

「今度は律か……」

 

次にチェックしたのは律からのメールだった。

 

【統夜、元気にしてるか?あたしらに会えなくて寂しくしてるんじゃないのか?まぁ、サバックだっけ?その試合の調子はどうなんだ?とりあえず、頑張れよな!】

 

「……フッ、寂しいのはどっちだよ。まぁ、寂しいのは事実だが……」

 

統夜は唯たちに会えなくて寂しいという気持ちを素直に出していた。

 

「……次は澪だな……」

 

次にチェックしたのは澪からのメールだった。

 

【統夜、元気か?ここまで統夜に会えないとは思わなかったから私たちは寂しいよ。だけど、統夜だって同じ気持ちでも頑張ってるんだもんな。だからこそ、そのサバックだったか?無理しない程度に頑張れよな】

 

「……あぁ、もちろん俺もその気持ちだよ」

 

統夜は澪からのエールを素直に受け止めて、笑みを浮かべていた。

 

「……次はムギだな」

 

続いてチェックしたのは紬からのメールだった。

 

【統夜君、元気かしら?そして、サバックとかいう大会は順調かしら?私は凄く心配です。無理だけはしないでね。統夜君が帰ってきたらまたティータイムでもしましょうね】

 

「……俺もムギの紅茶が恋しいよ」

 

サバックの会場に行く前に紬から紅茶とケーキの差し入れをもらったが、それは初日でなくなってしまった。

 

そのため、統夜は紬の用意したケーキや紅茶が恋しくなっていたのである。

 

「……最後は梓だな」

 

統夜は最後に梓からのメールを確認した。

 

【統夜先輩、元気ですか?サバックという大会は順調ですか?私は統夜先輩に会えなくて寂しいです。帰ってきたら大会の話を聞きたいです。大会でベストを尽くすのは良いですけど、無茶だけはしないでくださいね!】

 

「……あぁ、わかってるさ。サバックが終わったらその話はするつもりだからな」

 

メールを見た統夜は優しい表情をしていた。

 

こうして統夜は唯からのメールを全てチェックしたのだが、そのおかげでだいぶリラックスすることが出来た。

 

それと同時に、明日の戒人との試合を前にして、己を奮い立たせていた。

 

明日行われる試合に向けて気合十分となった統夜は明日に備えて就寝し、ゆっくりと体を休めていた。

 

こうして、サバックの4日目は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『いよいよ戒人との対決の時が来たな。統夜、今回も激戦になりそうだぞ!次回、「好敵手」。ライバル対決が今、幕を開ける!』

 




今回は少し短かったですが、前書きで言っていた2人は戒人と大輝で、この熱戦を制したのは戒人でした。

そして、準々決勝で、統夜と戒人のライバル対決が繰り広げられます。

本来であれば統夜vs戒人は準決勝あたりに持って行きたいと思ってましたが、このような感じになりました。

そういう訳で、次回は統夜と戒人の対決になります。

修練場時代からライバルだったこの2人が、サバックという神聖な舞台でぶつかり合います。

勝つのは統夜と戒人どちらになるのか?

それでは、次回をお楽しみに!



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