牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第74話になります。

今回はサバックの3回戦で、これに勝てば統夜はベスト8になります。

統夜は3回戦を勝ち抜くことは出来るのか?

それでは、第74話をどうぞ!




第74話 「恩師」

激闘が続くサバックも4日目に突入した。

 

この一戦に勝利すれば、ベスト8は確定し、それは魔戒騎士にとっては最大の名誉となる。

 

統夜は、3回戦の第1試合だったので、闘技場で試合が行われるのを待っていた。

 

「……えっと……。俺の次の相手は……?」

 

統夜は待っている間にトーナメント表を確認し、対戦相手が誰なのかをチェックしようとしたのだが……。

 

「……お前の相手はこの俺だ」

 

統夜の対戦相手が統夜に名乗り出てきたのである。

 

統夜はその対戦相手を見て絶句していた。

 

……その対戦相手とは……?

 

「……ワタルさん……」

 

雷鳴騎士破狼の称号を持ち、修練場時代の統夜の恩師であった四十万ワタルであった。

 

「……驚いたか?まぁ、俺もお前が相手と知った時は驚いたがな」

 

ワタルは元老院付きの魔戒騎士であり、1回戦は第1試合からだった。

 

統夜の恩師なだけはあってその力は圧倒的だった。

 

1回戦と2回戦を難なく勝ち進み、統夜との対戦となったのである。

 

「1回戦のお前の試合は見たぞ。あのエイジに勝つとは、お前も成長したじゃないか。あの生意気だった小僧がな」

 

ワタルは修練場時代の統夜のことを思い出すと、笑みを浮かべていた。

 

「ワタルさん、小僧はやめて下さいよ!」

 

「わかっているさ。ただ、懐かしくなっただけさ」

 

修練場での日々はホラー襲撃のせいで悲しい思い出になっているのだが、10日間の厳しい修行は、統夜だけではなく、ワタルにとっても良い思い出になっていた。

 

「……ワタルさん、俺はあなたに見せつけます!俺が魔戒騎士として、どれだけ成長したのかを!」

 

対戦相手がワタルとわかった瞬間、統夜は恩師であるワタルに自分の成長を見てもらいたいという気持ちでいっぱいになっていた。

 

「……ふっ、楽しみにしてるぞ!統夜!」

 

ワタルは統夜の頭をくしゃっと撫でると、円陣の前へと移動した。

 

「……」

 

統夜はワタルとの対決に向けて気持ちを高めていた。

 

『……統夜、大丈夫か?あの男は一筋縄ではいかない相手だぜ』

 

「そうだな。だけど、俺はワタルさんに勝って俺の成長を見てもらう。それがワタルさんへの恩返しだと思ってるし、あいつらにも俺の成長を見守ってもらいたいって思ってるから」

 

統夜の言うあいつらとは、修練場で共にワタルに鍛えられたアオ、シロ、ヤマブキのことであった。

 

統夜は自分の成長を、今は亡きアオ、シロ、ヤマブキにも見てもらいたいと思っていたのである。

 

これから来たる3回戦に向けて気合をいれた統夜は、円陣の前に移動し、試合開始を待っていた。

 

そして……。

 

「これより、3回戦、第1試合を行う!!」

 

審判役が、3回戦の開催を告げた。

 

「……元老院付き、四十万ワタル!!」

 

審判役に名前を呼ばれたワタルは、戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。

 

「……対するは、紅の番犬所付き、月影統夜!!」

 

統夜も名前を呼ばれたので、戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。

 

2人が戦いの舞台に足を踏み入れると、試合を見学している魔戒騎士たちはどちらが勝つかの予想に熱が入っていた。

 

「なぁ、この試合、どっちが勝つと思う?」

 

「そりゃ、四十万ワタルだろ!1回戦と2回戦のあの圧倒ぶりを見てないのか?」

 

「いや、待てよ!あの月影統夜だって元老院付きの毒島エイジに勝ったんだぜ!だから四十万ワタルが負ける可能性だって充分あるぞ!」

 

「そうかもしれないな。あー!もう!全然予想出来ねぇ!!」

 

魔戒騎士たちはどちらが勝つかの予想に苦戦していた。

 

「……随分と盛り上がってるな」

 

「まぁ、その気持ちもわからんでもないがな」

 

「……あの人ってかなりの手練れなんですか?」

 

「まぁな。あの人は修練場の教官をしていたんだが、鬼教官って言われてたんだぞ」

 

戒人は修練場の時のことを思い出し、しみじみと呟いていた。

 

「もしかして、戒人さんも修練場の修行に?」

 

「あぁ。統夜とは違う班だったが、あの時から俺は統夜をライバルだと思っていたんだよ」

 

戒人は修練場時代から、統夜の才能を見抜き、ライバル視していた。

 

「へぇ、子供の頃から統夜さんは凄かったんですね!」

 

戒人の話を聞いていた奏夜は、その話にワクワクしていた。

 

「ところで、奏夜は修練場の修行は参加しなかったのか?」

 

「いえ。一応は修行に参加しましたよ。っと言っても俺はずっと落ちこぼれでしたけど」

 

奏夜も修練場時代のことを思い出したのか、こう話すと苦笑いをしていた。

 

「……そっか。ところで、奏夜は修練場時代にホラーに襲われたりしなかったか?」

 

「いえ。教官の魔戒騎士たちはかなり気を遣っていたのか、そういうのはなかったですけど……」

 

「……そっか……それは良かったな……」

 

奏夜は修練場時代、ホラーに襲われてはいないと知り、安堵の笑みを浮かべていた。

 

それと同時に、戒人の笑顔には悲壮感が出ていた。

 

「……戒人さん。あなたたちの時はもしかして……」

 

奏夜は戒人の哀しみの入った笑顔を見た瞬間、戒人や統夜の通ってた修練場の修行で何かあったのだと察し、それを聞こうとしたのだが……。

 

「そろそろ試合が始まるみたいだぞ」

 

大輝が統夜とワタルの試合が始まることを告げると、戒人と奏夜は試合を見ることに集中していた。

 

「……四十万ワタルは手強い相手だ。月影統夜はどんな戦いをするのか……」

 

サバックの初戦で統夜に敗れた毒島エイジは、ワタルの実力がかなりのものであることを認識しており、統夜がワタル相手にどのような戦いをするのか期待をしていた。

 

「……なぁ、翼。統夜はあいつに勝てると思うか?」

 

客席で試合を見学していた零は、一緒に見学していた翼にこの試合の勝敗について聞いていた。

 

「さぁな。だが、四十万ワタルはかなりの手練れだぞ。そう簡単に勝てる相手ではないと思うがな」

 

「だよなぁ。だけど統夜は成長したよな。1回戦と2回戦の試合を見てたらそう思ったぜ」

 

「そうかもな。だが、俺から言わせれば統夜はまだまだだ」

 

翼は統夜の力を認めてはいるものの、それを素直に言葉に出してはいなかった。

 

翼とは付き合いの長い零は翼が素直になれてないことを見通しており、苦笑いをしていた。

 

(……統夜、負けるなよ!お前の力を見せてみろ!)

 

零は心の中で、統夜にエールを送っていた。

 

「……両者、武器を構えよ!」

 

審判役の言葉を聞き、統夜とワタルはそれぞれの武器を抜き、構えた。

 

「……ワタルさん、俺はあなたに見せつけます!俺がどれだけ成長したのかを!」

 

「……それで良い!お前の本気を見せてみろ!!」

 

ワタルはこう言い放つと、統夜を睨みつけていた。

 

「……試合、開始!!」

 

審判役が試合開始を告げると、統夜は迷うことなく、ワタルに向かっていった。

 

統夜は剣を一閃すると、ワタルはそれを難なく受け止めていた。

 

「……今の攻撃のスピードはなかなかだな。だが、お前の力はこんなもんじゃないだろ?」

 

「えぇ、もちろんですよ!」

 

統夜はワタルを弾き飛ばそうとするのだが、その前にワタルが統夜を弾き飛ばした。

 

「……っ!」

 

ワタルに弾き飛ばされた統夜はそのまま後ろずさるのだが、すぐさま体勢を立て直した。

 

その時出来た隙を見逃さず、ワタルは統夜に接近し、剣を一閃した。

 

統夜はワタルの一閃を剣で防いだ。

 

「……このぉ!!」

 

統夜は先ほどの仕返しと言わんばかりにワタルを弾き飛ばすと、ワタルはすぐさま体勢を立て直した。

 

「どうした?もっと来い!!お前の力はそんなもんじゃないだろ?」

 

「はいっ!もちろんです!」

 

統夜はワタル目掛けて接近すると剣を一閃し、ワタルもそれと同時に剣を一閃した。

 

2人は激しく剣を打ち合うのだが、その激しさがこの戦いの熾烈さを物語っていた。

 

(……統夜、確かに成長したな。あのグォルブと戦った時よりも断然に強くなっている。あのアスハとかいう魔戒法師を討伐したのも納得だ)

 

ワタルは、統夜が魔戒騎士狩りを引き起こしたアスハを倒したことを知っており、それだけの力をつけたことを実感していた。

 

(……この試合、一瞬でも気を抜けば畳み掛けられるな……。俺だってあいつを鍛えたというプライドがある。そう簡単には負けてやれん!)

 

ワタルは統夜と激しくぶつかり合いながら、このようなことを考えていた。

 

(……!やっぱり強いな、ワタルさんは。さすがは俺たちの教官なだけはあるよ)

 

統夜は実際に戦ったことにより、ワタルの実力を改めて実感していた。

 

(……そう簡単に勝てる相手ではない。だけど、俺はワタルさんに勝ってみせる!それこそが成長したことを見せるってことだと思うから!)

 

統夜はワタルに自分の成長を見てもらうために、ワタルに勝つと息巻いていた。

 

そんな中、統夜はワタルと激しい剣の打ち合いをしながら修練場でのワタルとの日々を思い出していた。

 

“……俺の名は四十万ワタル。俺がお前たちを指導する”

 

(……そう、初めてワタルさんを見た時は、怖そうな人だなと思ったんだよな)

 

“お前のように負けん気の強い小僧は大勢いるが、修行に耐えられない奴も多い。小僧、修行はきついぞ。帰るなら今だ”

 

(……俺はワタルさんから負けん気の強い生意気な小僧って思われてたんだよな……)

 

統夜はその時のことを思い出しながら笑みを浮かべていた。

 

ワタルは、統夜が笑みを浮かべていることに気付き、その様子を訝しげに見ていた。

 

(……?あいつ、笑ってる……?あいつは俺との戦いを楽しんでるのか?それとも……)

 

ワタルは、何故統夜が笑みを浮かべながら戦っているのかがわからなかった。

 

ワタルは首を傾げながらも、攻撃の手を緩めることはなかった。

 

(……っ!そ、そうだ、これだ!ワタルさんは最初から厳しかったよな)

 

統夜は再び修練場での修行を思い出していた。

 

“……おい、どうした?お前らそんなもんか!?”

 

“息を止めるな!吐け!!”

 

修練場での修行は熾烈を極めたものであり、当時の統夜は必死になってその修行についていっていた。

 

(……今思えば、あの時の修行があったからこそ、俺は魔戒騎士として成長することが出来たんだよな。だから、ワタルさんには本当に感謝してる)

 

修練場での厳しい修行が今の統夜を作ったといっても過言ではなかったため、統夜は心の底からワタルに感謝していた。

 

(だからこそ、俺はワタルさんに成長を見てもらわなきゃいけないんだ!それが、ワタルさんへの恩返しだけじゃない!あいつらの鎮魂にもなるハズだ!)

 

統夜はワタルだけではなく、今は亡きシロたちにも統夜の戦いを見てもらい、その成長を見てもらいたいと思っていた。

 

そのような気持ちを込めて、統夜は剣を振るっていた。

 

(……!?急に統夜の剣撃が重くなった。急にどうしたと言うのだ!?)

 

ワタルは、統夜の剣撃が急に重くなったことに戸惑っていた。

 

先ほどまで意味がわからぬまま笑みを浮かべる統夜を見ていたのだが、それから統夜の攻撃が変わっていたのである。

 

(だが……!俺だってそう簡単に負ける訳にはいかない!)

 

統夜の攻撃が変わったことに触発されたワタルは、一撃一撃に力を込めていた。

 

「……くっ!」

 

ワタルの剣撃も重くなっており、統夜は表情を歪ませていた。

 

「おら、統夜どうしたぁ!!気合が足りてないんじゃないのかぁ!?」

 

ワタルはまるで修練場時代を再現するかのように統夜に厳しい言葉をかけていた。

 

ワタルは統夜が自身の成長を見て欲しいことを理解しているため、このように厳しい言葉をかけたのである。

 

「もっと気合を入れろ!じゃないと俺は倒せんぞ!」

 

「はい!!」

 

ワタルの厳しい言葉に統夜は歯を食いしばりながら気合をいれていた。

 

そして、2人の剣の打ち合いはさらに激しさを増していた。

 

「……凄え……」

 

「あぁ。今回のサバックで1番激しい試合になってるんじゃないのか?」

 

「俺じゃとてもあの2人に敵わないぞ!」

 

試合を見学していた魔戒騎士たちは、2人の壮絶な剣の打ち合いに唖然としていた。

 

「……凄いな、統夜のやつ……」

 

「あぁ。あの四十万ワタル相手にここまでやれるとはな……」

 

戒人と大輝も、統夜の善戦ぶりに驚いていた。

 

さすがの2人もワタル相手にここまで壮絶な戦いを繰り広げるとは思っていなかったのである。

 

「……統夜さん……」

 

奏夜も、統夜の戦いぶりに唖然としながら2人の戦いを見守っていた。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

統夜は気合を込めて剣を一閃するが、その攻撃はワタルに防がれてしまった。

 

「おら、どうした!!お前の力はそんなもんなのか!?」

 

「まだまだぁ!!」

 

統夜は勢いよく剣を振るっているのだが、統夜は冷静だった。

 

剣を振るいながらワタルの隙を突こうと試みていたのだが……。

 

(……さすがワタルさんだ。付け入る隙がない!)

 

ワタルは魔戒騎士としては実力を兼ね備えたベテラン騎士であり、そんなワタルの隙を突こうというのは至難の技であった。

 

ワタルは、統夜に自分の隙をじっくり探させる時間は与えてくれなかった。

 

「どうしたぁ!隙だらけだぞ!」

 

ワタルの隙を探るのに夢中になっていたからか、自分の方に隙が出来てしまい、そこをワタルに付け込まれてしまった。

 

ワタルは統夜の足をめがけて剣を放つが、統夜は咄嗟にワタルの一閃を回避した。

 

しかし……。

 

「!っとっと!」

 

ワタルの攻撃をかわしたのは良いものの、統夜はバランスを崩してしまい、今にも転びそうになっていた。

 

「……これで終わりだ!」

 

ワタルはこのまま決着をつけるべく剣を一閃した。

 

すると、統夜は……。

 

「……まだだぁ!!」

 

統夜はワタルの一閃をバック転で回避した。

 

「何!?」

 

ワタルは統夜の回避方法に驚愕していた。

 

統夜はバック転でワタルの攻撃をかわすと、すぐに体勢を立て直した。

 

すかさず統夜は反撃と言わんばかりに剣を一閃した。

 

ワタルは統夜の予想外の回避方法に動揺していたものの、どうにか統夜の攻撃を防ぐことが出来た。

 

「ワタルさん……!次の一撃で決着をつけましょう!」

 

「いいだろう!受けて立つ!!」

 

統夜は戦いの決着を提案し、ワタルはそれを了承した。

 

そのため、統夜は一度後方へ下がると、ワタルの様子を見ながらワタルを睨みつけていた。

 

ワタルも統夜を睨みつけており、闘技場内は重苦しい空気に包まれていた。

 

そして……。

 

統夜とワタルは同時に駆け出した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

2人はまるで獣のような雄叫びをあげながら互いに接近し、それぞれの剣を一閃した。

 

(……!取った!)

 

剣を一閃した瞬間、ワタルは手応えを感じており、この時点で自分の勝利を確信していた。

 

しかし……。

 

統夜は何を思ったのか一度剣を振るうのをやめていた。

 

「……なっ!?」

 

統夜の予想外な行動にワタルが戸惑う中、統夜はワタルの剣の軌道を読んでいたのか、ワタルの剣をかわし、そのままワタルの剣を叩き落とすかのように剣を思い切り振り下ろした。

 

「……!?なんだと!?」

 

ワタルの剣はそのまま統夜に叩き落とされてしまい、すかさず統夜はワタルの手に切り傷を与えるように剣を一閃した。

 

その一閃によってワタルの手には微かではあるが、切り傷が出来てしまい、少量ながら出血をしていた。

 

「……勝負あり!勝者、月影統夜!!」

 

審判役が試合終了と統夜の勝利を告げると、試合を見学していた魔戒騎士たちは壮絶な試合の決着に歓声をあげていた。

 

「おぉ!月影統夜が勝ったぞ!!」

 

「凄え!元老院付きの魔戒騎士にまた勝つなんて!」

 

「凄く良い試合だったぞ!」

 

客席からは統夜の奮闘ぶりに対しての驚きこ声や、壮絶な戦いへの賞賛の声が上がっていた。

 

「……統夜、よく勝てたな……」

 

「そうだな、俺も本当に勝てるとは思ってなかったぞ」

 

「……凄いな、統夜さん……」

 

戒人、大輝、奏夜の3人も、統夜の奮闘ぶりに驚いていた。

 

「……俺も負けてられないな……」

 

統夜の奮闘ぶりを見た戒人は、これから来る自分の試合に向けて闘志を燃やしていた。

 

「……ふっ、やるではないか。本当に勝つとはな」

 

1回戦で統夜に敗れた毒島エイジは、統夜の勝利に賞賛の声をあげていた。

 

「……俺やワタル以上の強敵がいるんだ。あいつはそいつらに勝てるかな?」

 

エイジは、準々決勝以降で戦う相手は強敵が続くことを予想していたため、統夜が勝てるかと疑問視していたが、それと同時に期待もしていた。

 

「へぇ!!統夜のやつ、やるじゃん!」

 

「そうだな。まさか統夜が四十万ワタルに勝てるとは思ってなかったぞ」

 

零と翼も、統夜の勝利は予想していなかったので、驚きを隠せなかった。

 

「だけど、翼はこのまま勝ち進めれば統夜と戦う可能性があるってことだよな?」

 

「あぁ、どうやらそうみたいだな」

 

翼は、トーナメント表では統夜と同じブロックにいたため、このまま勝ち進めれば、準決勝の相手が統夜になる可能性があった。

 

「……あいつ、かなり強くなったな」

 

「そうだな。だが、俺はまだまだあいつには負けてないからな。あいつが相手なら全力で叩き潰す!」

 

「アハハ……。翼、お手柔らかにしてやれよ」

 

翼はもし統夜と試合になったら本気で叩き潰しかねなかったので、零は苦笑いをしていた。

 

「……月影統夜。まさか、この俺を倒すとはな……」

 

ワタルは自分の敗北は予想外だってたので、驚きを隠せずにいた。

 

「……正直、勝てるとは思わなかったので自分でも驚きです」

 

統夜は自分でも今回の勝利に驚いていた。

 

「ふっ……。だが、確かにお前は成長しているようだな。グォルブを倒した時よりもずっとな」

 

「ワタルさん……」

 

「お前の成長に、きっとあいつらも喜んでいるよ」

 

ワタルの言うあいつらとは、修練場の修行の時にホラーに殺されたシロ、アオ、ヤマブキのことであった。

 

「……そうですね……」

 

統夜も自身の成長を実感しており、しみじみと呟いていた。

 

「……この調子で励めよ。守りし者として……」

 

ワタルは統夜に近付くと、ポンっと統夜の頭に手を置き、クシャッとその頭を撫でていた。

 

統夜を少し撫でると、ワタルは闘技場を後にした。

 

ワタルの去り際を見ていた統夜はワタルの姿が見えなくなるまで、深々と頭を下げていた。

 

統夜も闘技場を出ようとしたその時だった。

 

『『『アカ!!』』』

 

「……!?」

 

統夜の目の前にいたのは、ホラーに喰われたシロ、アオ、ヤマブキだった。

 

目の前にいるのは幻だ。

 

統夜はそれがわかっていても、かつての仲間に会えたことが嬉しかった。

 

『おい、アカ!お前、教官に勝ったんだって?』

 

『すげぇすげぇ!!』

 

『お前……本当に強い魔戒騎士になったんだな』

 

シロ、アオ、ヤマブキの3人は統夜の成長に喜びの声をあげていた。

 

『お前は、俺たちの分まで強くなったんだな!』

 

『これからも俺たちの分まで頑張ってくれよ!任せたからな!』

 

『任せたぞ!』

 

シロ、アオ、ヤマブキの3人は、そう言うとワタルからもらったピックのようなものを統夜に見せた。

 

そして統夜もピックのようなものを3人に見せていた。

 

友情の証を見て満面の笑みを浮かべた3人は、そのまま消滅して、姿を消した。

 

「……アオ……シロ……ヤマブキ……」

 

統夜は形見となったピックのようなものを握りしめると、感傷に浸っていた。

 

(俺、約束する。お前たちの分までもっともっと強くなることを。そして、多くの人を守っていくことを……。だから、見守っていてくれよな)

 

統夜は3人に魔戒騎士としての誓いを宣言すると、闘技場を後にした。

 

こうして、サバック3回戦は第1試合から白熱した試合となり、統夜の勝利で幕を閉じた。

 

だが、白熱の3回戦はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『今度はあの2人がぶつかるのか。勝った方が統夜と戦うんだよな。次回、「熱戦」。果たして、勝つのはどちらになるのか?』

 

 




3回戦の統夜の対戦相手は、なんとワタルでした。

エイジ、ワタルとトーナメントで元老院付きの魔戒騎士2人を相手にするなんて、対戦表に少し悪意を感じるような……(笑)

でも、ここまで勝ち進めた統夜はかなり凄いと思います。

さて、次回はあの2人が直接対決をします。

さらに、その2人の勝った方が準々決勝で統夜とぶつかることになります。

直接対決する2人とは一体誰になるのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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