牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第73話です!

今回はサバックの2回戦となります。

1回戦でエイジという強敵を倒した統夜ですが、次の相手は誰になるのか?

それでは第73話をどうぞ!




第73話 「妙技」

サバックも3日目に突入し、今日からは2回戦に突入する。

 

魔戒騎士たちは朝食を済ませると、サバックの会場へと向かった。

 

統夜も同様に朝食を済ませてサバックの会場へと向かった。

 

会場に到着すると、統夜は初日にもらったトーナメント表を確認した。

 

「えっと……。俺の2回戦の相手は……」

 

統夜が対戦相手を確認すると、その相手は、タクトという某番犬所所属のベテラン騎士だった。

 

「……このタクトって人って、確かサバック常連のベテラン魔戒騎士だよな」

 

『あぁ。こいつは1回戦の試合を難なく制したみたいだからな。統夜、こいつも油断出来ない相手だぜ!』

 

「そうだな。それはわかって……。ん?」

 

統夜がイルバと話をしていると、統夜は視線を感じたので、その方を向いた。

 

統夜のことを見ていたのは、ちょうど話をしていた統夜の対戦相手であるタクトであった。

 

タクトは統夜をしばらくジッと見ていたが、フッと鼻で笑うと、その場を離れていった。

 

『……どうやら、あいつはお前さんをただの小僧と侮ってるようだな』

 

「そうみたいだな。俺がエイジさんに勝てたのもマグレだと思ってるんだろうな」

 

統夜もタクトの態度を見て、タクトは統夜がエイジに勝ったのはマグレだと思っていると予想していた。

 

『ま、お前さんは気に入らんだろうが、試合でお前さんの力を見せつけてやると良い』

 

「あぁ。あいつに見せつけるさ。俺の力を……」

 

統夜はタクトに侮られた憤りを闘志に変えていた。

 

統夜の試合はすぐなので、闘技場で自分の試合を待っていた。

 

そして、現在は2回戦の第1試合が行われていた。

 

統夜は試合を見ながら、これから行われる試合に向けて精神を集中させていた。

 

この試合は序盤から白熱した試合が続き、激しい剣の打ち合いが行われていた。

 

そして10分後、試合は大きく動き、決着がついた。

 

「……勝負あり!」

 

審判役が試合終了を宣言すると、試合を見学していた魔戒騎士たちが歓声をあげていた。

 

『……統夜、いよいよだな』

 

「あぁ。とりあえず、あのタクトって人に見せてやるさ。俺の力を!」

 

統夜は自分を侮っているタクトに自分の力を見せつけよう。

 

そう考えていた。

 

「続いて、第2試合!」

 

最初に呼ばれたのはタクトであり、タクトは戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。

 

「対するは紅の番犬所付き、月影統夜!」

 

統夜は自分の名前を呼ばれたので、戦いの舞台である円陣に足を踏み入れた。

 

「……両者、武器を構え!」

 

統夜とタクトは、それぞれ支給された鉄製の武器を構えた。

 

統夜は1回戦同様に魔戒剣に似た剣であるが、タクトの武器は、ハルバードのような武器だった。

 

「……フン、1回戦で元老院付きの魔戒騎士を倒したらしいが、所詮は小僧。マグレは2度も続かないことを教えてやる!」

 

「……あなたに見せてあげますよ!俺の力を!」

 

統夜は鋭い目付きでタクトを睨みつけていたが、タクトはそんな統夜の言葉を、子供の戯言と考え、鼻で笑っていた。

 

「……何かあのタクトってやつ、感じ悪いな」

 

客席で試合を見学していた戒人は、タクトの不遜な態度に嫌悪感を表していた。

 

「まぁ、あの男も魔戒騎士としてはかなりのベテランだからな。それだけプライドが高いんだろう」

 

大輝の言う通り、タクトは魔戒騎士の中ではベテランであり、サバックの出場回数も多い。

 

その分プライドが高く、自分より歳の下の者や実力の劣る者を見下す傾向がある。

 

「……あれ?大輝さんはあのタクトって人を知ってるんですか?」

 

「まぁな。俺が紅の番犬所に配属される前に一度共に戦ったことがある。まぁ、俺もあの男には見下されていたがな」

 

大輝も魔戒騎士としては多くの経験を積んだベテラン騎士であり、1度だけタクトと共闘したことがあった。

 

その時からタクトのプライドの高さは健在であり、タクトは大輝のことを見下していたのである。

 

「そんな……!大輝さんほどの人を見下すなんて!」

 

「そうだな、俺もそう思うよ」

 

大輝の言葉に奏夜は怒りを露わにしており、戒人はそんな奏夜に賛同していた。

 

「まぁ、今の統夜であれば問題なく勝てるだろう。何たってあいつはあの毒島エイジに勝ったんだからな」

 

大輝は統夜の勝ちを確信していた。

 

「そうですよね!」

 

「あぁ!あの統夜がそう簡単に負ける訳がないさ!」

 

奏夜と戒人も、統夜の勝ちを確信していた。

 

統夜の勝ちを確信していたのは大輝たちだけではなく、他の魔戒騎士たちも統夜が勝つと思っていた。

 

魔戒騎士たちは統夜がエイジに勝ったのを見ていたのもあるが、タクトが気に入らないため、統夜のことを応援していたのである。

 

「……フン、どいつもこいつもあの小僧を応援するか……。無駄なことを……」

 

タクトは、自分が統夜なんかに負けるはずがないと確信していた。

 

「……」

 

統夜は何も語らず、ジッとタクトを睨みつけていた。

 

「……それでは!試合、始め!!」

 

審判役の一声で、統夜とタクトの試合が始まった。

 

「……フン、これでもくらえ!」

 

タクトは試合が始まるなり、ハルバードを一閃した。

 

しかし、統夜はそんなタクトの攻撃を軽々とかわしていた。

 

「何だと!?」

 

「ふふん♪どうしました?そんなんじゃ、俺は倒せないですよ!」

 

統夜は先ほどまで馬鹿にされたことを根に持っていたのか、タクトのことを挑発していた。

 

「ガキが……!調子に乗るな!!」

 

統夜の調子に乗ったタクトは激昂し、怒りのままにハルバードを振るっていた。

 

そんな攻撃に統夜が当たるはずもなく、統夜は攻撃をかわしながらため息をついていた。

 

(……やれやれ、こんな挑発に引っかかるなんて……。たいしたことはないな……)

 

統夜はタクトが思ってた以上に実力がないと思い知り、ガッカリしていた。

 

(だけど、誰が相手だろうと全力で戦う。それが、戦う相手への礼儀ってもんだからな)

 

統夜はタクトの力量を知ったのだが、全力で戦うことを誓っていた。

 

「どうした、小僧!避けてばかりじゃ俺には勝てんぞ!」

 

「まぁまぁ、慌てないで下さいよ。まだ試合は始まったばかりなんですから」

 

統夜はタクトの攻撃をかわしながら、反撃の機会をうかがっていた。

 

「お前が来ないなら、ここで潰してやる!」

 

タクトはハルバードを大きく振りかぶった。

 

「……!そこだ!」

 

統夜はハルバードを大きく振るったタクトの攻撃の隙を見逃さなかった。

 

統夜は大きくジャンプし、ハルバードによる攻撃をかわした。

 

さらに、攻撃をかわすだけではなく、統夜はそのハルバードの上に器用に乗っていたのである。

 

「……なっ!?」

 

これにはタクトも驚きを隠せず、試合を見学していた魔戒騎士たちも驚いていた。

 

「えぇい!小癪な!」

 

タクトはハルバードを振りかざし、統夜を振り落とそうとしたが、その前に再びジャンプして、ハルバードから降りていった。

 

そのまま統夜は降下し、勢いのあるまま、統夜は剣を一閃した。

 

タクトは慌ててその一撃を防ぐのだが、すかさず統夜は剣を一閃した。

 

その一閃はハルバードの柄を狙い打ちしており、狙い通りハルバードの柄は統夜の一閃で斬り裂かれ、斧の部分はそのまま地面に落下していった。

 

「おぉ!!すげぇ!」

 

「ハルバードを切りやがったぞ!あいつ!」

 

「こりゃ、勝敗は決まったんじゃないのか?」

 

タクトは武器を失ってしまったため、この時点で誰もが統夜の勝ちを確信していた。

 

(おのれ……!俺は負けるのか?あんな小僧に!)

 

このままでは負けることをさすがのタクトも認識しており、悔しさをにじませていた。

 

(……あんな小僧に負けるくらいだったら……!)

 

何かを思いついたタクトは、統夜が決着をつけるための攻撃をかわし、蹴りを放って統夜を吹き飛ばした。

 

統夜は何が起こっても良いように、体勢を立て直した後も、警戒を怠らなかった。

 

タクトは今手に持っている棒になってしまったものを統夜に投げつけ、続けて斧の部分も拾って統夜に投げつけた。

 

統夜は剣を振るって棒と斧を弾き飛ばしたその時だった。

 

タクトは密かに隠していた魔導筆を手に取ると、誰にも見られないように術を放った。

 

その術を受けた統夜はその場で転んでしまった。

 

「……!?な、何だ!?」

 

さすがの統夜もこれには予想外であり、タクトの方を見ると、タクトの手には魔導筆が握られていた。

 

(……!?馬鹿な!?魔導筆を使った術は放った時点で失格だろ?わかってて何で?)

 

統夜は反則を犯したタクトに戸惑っていた。

 

タクトが魔導筆を持った瞬間を他の魔戒騎士たちも見逃していなかったようで……。

 

「反則だ!!」

 

「お前!何を考えてるんだ!」

 

魔戒騎士たちはタクトの反則に非難の声をあげていた。

 

「……!?何であの人はわかってて反則を……?」

 

「統夜に負けるくらいだったら、反則負けを選ぶ。そんな所だろう」

 

「何て奴だ!」

 

大輝の推測通り、タクトはこのまま統夜に負けるくらいだったら、反則で失格になった方がマシと考え、魔導筆で術を放ったのである。

 

戒人は、そんなタクトに対して怒りをあらわしていた。

 

そして審判役は目の前で行われている反則行為を見逃すはずがなかった。

 

「……ただいま、反則行為があったため!試合はここまで!勝者……」

 

「そんな!いくら反則といえど納得出来ないです!」

 

統夜は相手の反則で勝っても嬉しくないので、審判役に抗議をしていた。

 

「しかし、これはサバックのルールに則ったものだ。逆らうなら君を反則負けにしても良いのだぞ!」

 

「……っ!?」

 

審判役にこのように言われてしまうと、統夜は何も言うことが出来なかった。

 

「……それでは、勝者……」

 

審判役が統夜の勝ちを告げようとしたその時だった。

 

「……その判断、しかと待たれよ!!」

 

このサバックの主催者である朱雀が、統夜の勝利に待ったをかけた。

 

「……!?朱雀様、ですが!」

 

「もちろん反則行為を許す訳にはいかぬ。くだらぬプライドで行われた反則行為は尚更な!」

 

朱雀は反則行為を犯したタクトを睨みつけていた。

 

「……月影統夜よ!お主が試合の継続を望むのなら、特別にそれを認めよう!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「!?し、しかし……」

 

「タクトよ、もしお主がこの現状で月影統夜に勝つことが出来たのなら、主催者権限によってお主の反則は不問にしよう!」

 

朱雀はあまりにも大胆なことをタクトに提案した。

 

魔導筆を使ってでも統夜に逆転勝ち出来れば、この反則は許されるとのことだからである。

 

「……ただし、お主が負けた時は……。わかっておろうな!」

 

朱雀は、もしタクトが勝てば反則は不問にするつもりだが、タクトが負けた場合は重いペナルティを課すつもりだった。

 

「……へへ、いいぜ!あの小僧をぶっ倒せばこの反則は許してくれるんだろ?やってやるさ!」

 

タクトは朱雀の申し出を受けることにした。

 

この判断に納得がいかない魔戒騎士たちはブーイングをしていた。

 

「……これは、ずいぶんと凄いことになったな……」

 

「そうですね。まぁ、統夜ならあんな反則野郎に負けないと思うが……」

 

「はい!統夜さんは絶対に勝ちますよ!」

 

大輝はこの朱雀の判断に驚き、戒人と奏夜は、統夜の勝ちを確信していた。

 

「……これ、記録しても良いのでしょうか……?」

 

その頃、試合を記録していたレオは、目の前の反則を記録すべきか悩んでいた。

 

「師匠、これは記録するべきだろ。サバックは魔戒騎士にとって神聖なものなんだろ?こんなことは許されないって意味も込めてさ!」

 

レオが戸惑う中、アキトはこの試合をこのまま記録すべきだと熱弁していた。

 

「……!そう、ですね……。そこはアキトの言う通りですね」

 

アキトの言葉に後押しされたレオは、このまま試合の記録を続けるのだった。

 

「……そ、それでは、試合、再開!」

 

審判役は戸惑いながらも試合の再開を宣言した。

 

「……喰らえ!!」

 

試合が再会されるなり、タクトは堂々と魔導筆を手に取り、統夜めがけて術を放った。

 

統夜はタクトの放った法術をどうにかかわし続けていた。

 

「ほら、どうしたどうしたぁ!お前の力はその程度かぁ?」

 

反則行為をしているにも関わらず、タクトは強気だった。

 

タクトが法術を放てば放つほど、ブーイングは強くなり、この会場にいる全員が統夜を応援していた。

 

(……確かになかなかの法術だけど、あんなもん。アキトの足元にも及ばない!)

 

統夜はタクトの放った法術は、アキトのものよりも劣っていると確信していた。

 

(それに、相手は魔戒法師じゃないんだ。こんなに術を多用してたらきっと……)

 

統夜は反撃しようと思えば出来たのだが、ある可能性を考慮してあえて攻撃をかわし続けていたのである。

 

すると……。

 

「これでもくらえ!……って、え!?」

 

タクトは術を放とうとするのだが、その術は不発に終わってしまった。

 

「……今だ!」

 

これこそ、統夜の狙いだった。

 

魔戒法師でもない者が連続で術を放っても、それは長続きしないと確信していたため、統夜は相手が法術を使えなくなるタイミングを待っていたのである。

 

「……これで、終わりだ!」

 

統夜は隙だらけのタクトに接近すると、トドメの攻撃を打ち込もうとしていた。

 

「……させるかぁ!!」

 

タクトは統夜めがけて蹴りを放つが、統夜はそれを軽々とかわし、剣を一閃した。

 

その一撃は、魔導筆を手にしているタクトの右手を掠め、タクトは手にしていた魔導筆を落としてしまった。

 

そして、タクトの右手から、微量ではあるが、血が滲み出ていた。

 

「……そこまで!勝者、月影統夜!」

 

審判役が、今度こそ試合終了を宣言し、統夜の勝利を告げた。

 

すると、試合を見学していた魔戒騎士たちが、今までで1番大きな歓声をあげていた。

 

「……そんな……馬鹿な……!俺が……こんな小僧に……!」

 

タクトは、見下していた統夜に負けるとは思っておらず、ガクッと肩を落としていた。

 

統夜は剣を鞘に納めると、ゆっくりとタクトに近付いていった。

 

そして……。

 

「!?」

 

統夜は鋭い目付きでタクトを睨みつけると、タクトを殴り飛ばした。

 

この統夜の行動は誰もが予想していなかったのか、驚きを隠せなかった。

 

「……!?あ、あいつ!」

 

「と、統夜さん……」

 

「……まぁ、統夜の気持ちもわからんでもないがな」

 

大輝と奏夜は、統夜の行動に驚くが、戒人だけは、統夜の行動にウンウンと頷いていた。

 

もし自分が統夜と同じ立場だったら、自分も同じことをするだろうと思っていたからである。

 

「……な、何するんだ!」

 

「あんたは神聖なサバックの舞台を反則という卑劣な手で汚したんだ!これでも足りないくらいだぜ!」

 

統夜は勝ち負けがどうのこうのよりも、つまらないプライドで反則行為を行い、サバックの舞台を汚したタクトが許せなかった。

 

「は……反則だ!敗者を殴り飛ばすなんて、魔戒騎士のすることじゃない!!」

 

タクトは統夜に殴られたことにつまらない言いがかりをかけてきた。

 

『やれやれ……。見苦しいにも程があるぜ』

 

イルバはずっとこの試合を見守っていたのだが、終始タクトの言動に呆れていた。

 

「あんたは……!まだくだらないことを言うならもう1発くれてやってもいいんだぞ!」

 

統夜の怒りはかなりのものであり、誰も止めなければこのままタクトを半殺しにしかねない状態だった。

 

「……月影統夜!よさぬか!!」

 

それを見かねた朱雀がすかさず統夜を止め、統夜は素直に言うことを聞いていた。

 

「確かにお主のやっていることは魔戒騎士として良い行為とは言えぬな」

 

「そ、そうだろう!?だったら!」

 

「だが、自らの反則を棚に上げて言えたことではない!」

 

朱雀は、統夜以上にタクトのことを厳しく叱責していた。

 

「……そなたには厳しい罰を与える。覚悟しておくのだな!」

 

朱雀の言葉を聞いたタクトは、ガクッとその場に崩れ落ちていた。

 

「……連れて行け!」

 

朱雀の命により、元老院の議員が数名現れ、タクトをどこかへ連行していった。

 

その去り際、タクトは統夜に「これで終わると思うなよ!」と言い残し、その場を去っていった。

 

「……月影統夜。よくやってくれたな。私は相手が反則行為をしようと正々堂々でいようとするそなたを賞賛するぞ」

 

「朱雀様……」

 

「次の戦いも同じように励むが良い」

 

「……はいっ!!」

 

統夜は朱雀に一礼すると、円陣から離れ、闘技場を後にした。

 

闘技場を出た統夜は、違う階段から客席へと向かった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

「……あっ、統夜さん!お疲れ様です!」

 

統夜が大輝たちのいる場所へ到着するなり、奏夜が統夜に労いの言葉をかけていた。

 

「あぁ、ありがとな」

 

「それにしても、色々大変だったな、統夜」

「そうですね。まさか相手が反則行為をしてくるなんて思ったなかったですよ」

 

「だけど、とんでもない奴だったよな。そこまで実力がある訳でもないのにプライドだけが高くてさ」

 

戒人は、やはりタクトの行動が許せなかったのかこのように悪態をついていた。

 

「まぁな。俺も反則が許せなくて思わず殴っちゃったんだけどな」

 

「お前の気持ちはわかるが、あれはどうかと思うぞ?朱雀様だってあぁ言うさ」

 

「アハハ……。そうですよねぇ……」

 

大輝が統夜の行動をなだめると、統夜は苦笑いをしていた。

 

「統夜も3回戦に駒を進めたんだ。俺も負けていられないな!」

 

戒人も、次の試合に向けて気合は十分だった。

 

「お、戒人!その意気だぜ!」

 

統夜はそんな戒人にエールを送っていた。

 

「俺も試合が近いし、そろそろ控え室に行くよ」

 

「戒人さん、頑張ってくださいね!」

 

「あぁ。俺はお前に勝って2回戦に来たんだ。無様な負けは絶対にしないさ!」

 

このように決意を固め、戒人は控え室へと移動した。

 

その場に残った統夜たちは試合の観戦を続けていた。

 

 

 

 

 

2回戦も順調に進んでいき、戒人の出番が訪れた。

 

戒人の対戦相手はエイジと同じ元老院付きの魔戒騎士であったが、激闘の末、戒人が勝利し、3回戦に駒を進めた。

 

エイジに続いて元老院付きの魔戒騎士が破れたことに、魔戒騎士は驚きを隠せなかった。

 

(……戒人も元老院付きの魔戒騎士に勝ったか……。さすがだな、戒人。これで、準々決勝あたりで戒人と戦う可能性が出てきたな……)

 

統夜は戒人の激闘を最後まで見届けたのだが、このまま勝ち進んでいけば、戒人と戦う可能性があったからである。

 

「……?統夜さん?どうしました?」

 

険しい表情で考え事をしている統夜を見た奏夜は首を傾げていた。

 

「……いや、何でもないよ」

 

統夜は奏夜に呼びかけられて我にかえると、笑いながらこう答えていた。

 

(……今の戒人はかなり力をつけているからな。それに、戒人とサバックで戦えるなんて最高じゃないか!)

 

統夜は自分がライバルと認めた戒人とサバックの舞台で戦えるなんてこんなに光栄なことはないと考えていた。

 

そして、今からそんなことは考えず、実際戒人とぶつかった時に考えようとも考えていた。

 

そして、戒人が客席に戻ってくると、統夜たちは戒人と共に試合を見学していた。

 

そして、大輝、零、翼の3人は、危なげなく2回戦も勝ち進んでいき、2回戦全ての試合が終了した。

 

翌日は3回戦。ここまで勝ち進んできた魔戒騎士たちは名実共に実力のある魔戒騎士ばかりであり、さらなる激闘は必至だった。

 

統夜はサバックの試合で戒人と戦うことを考えていたのだが、3回戦でかなりの強敵と戦うことになるとは、この時の統夜はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『3回戦の相手はあの男か。こいつはかなりの強敵だぜ、統夜!次回、「恩師」。お前がどれだけ成長したのか、見せつけてやれ!』

 




統夜はどうにか3回戦に駒を進めることが出来ました。

それにしても、くだらないプライドで反則負けをしようとしたタクトはとんでもないやつですよね。

経験の長さから自分の力を過信して、不遜な態度を取る魔戒騎士はいそうだなと思い、統夜の対戦相手にさせてもらいました。

そして、戒人、大輝、翼、零は危なげなく勝ち進みました。

次回は3回戦になるのですが、統夜にとってはゆかりのある相手が対戦相手となります。

激闘が予想される3回戦ですが、統夜の対戦相手は一体誰になるのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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