牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第71話になります。

いよいよ開幕したサバックですが、いきなり統夜が初戦を迎えます。

統夜の対戦相手は一体誰になるのでしょうか?

それでは、第71話をどうぞ!




第71話 「初戦」

サバックの開催日となり、魔戒騎士たちは、サバックの会場内にいる闘技場に集まっていた。

 

そして、魔戒騎士たちは実際に戦う舞台である円陣に並び、サバックの開催を待っていた。

 

そして、サバック開催の時間となり、円陣がよく見える特等席に、元老院の議長である朱雀が姿を現した。

 

「……これより、サバックを開催する!!」

 

元老院の議長である朱雀によって、サバックの開催が宣言された。

 

「……諸君らも知っての通り、アスハという魔戒法師の起こした魔戒騎士狩りのせいで、多くの魔戒騎士がその命を奪われた!」

 

朱雀が改めて魔戒騎士狩りの話をすると、魔戒騎士たちは息を飲んでいた。

 

「このサバックの開催さえ危ぶまれたのだが、私はあえてサバックの開催を決意したのだ!このような状況だからこそ、騎士個人の力をこのサバックによって高めたいと思っているからだ!」

 

(……まぁ、多くの魔戒騎士が犠牲になったんだ。サバック開催が危ぶまれるのも無理はないよな)

 

統夜は朱雀の説明に納得していた。

 

今回のサバックに出場予定だった魔戒騎士も魔戒騎士狩りで命を落としていた。

 

元老院はこの状況を重く受け止めていたのだが、朱雀は本来呼ぶ予定のない魔戒騎士を呼んででもサバックを行うことを決めたのである。

 

「何故自分がサバックに選ばれたのか、驚いてる者もいるだろう。私は、そのような者も今回のサバックを通して成長して欲しい。そう望んでいるのだ!」

 

「……」

 

朱雀の話を聞いていた奏夜は、この言葉は自分にあてた言葉と理解し、話を聞いていた。

 

今回のサバックでは、奏夜のように魔戒騎士になったばかりの若い魔戒騎士が他にも何名か参加しているが、奏夜も含め、本来は招待される予定はなかった。

 

しかし、魔戒騎士狩りのせいで魔戒騎士の数が減ったため、その穴埋めとして、奏夜や若い魔戒騎士たちはサバックに呼ばれたのである。

 

奏夜を含めた若い魔戒騎士たちは、自分が呼ばれた意味を理解し、ウンウンと頷いていた。

 

「今回のサバックは魔戒騎士狩りによって命を落とした魔戒騎士の鎮魂も兼ねておるため、そのつもりでいるように!」

 

魔戒騎士狩りの事実やそれでもサバックの開催にこぎつけた経緯を話した朱雀は、サバックのルール説明を開始した。

 

「……まず最初に、この大会では諸君らの使用している魔戒剣の使用を禁ずる。武器は、こちらで支給する鉄製の武器を使ってもらう」

 

魔戒騎士たちは朱雀の話を無言でウンウンと頷いていた。

 

「続いてこの大会は、1対1で試合を行うのだが、どちらかが一滴でも血を流した方の負けである」

 

(……うんうん。ここまでは聞いてた通りだな)

 

統夜もウンウンと頷きながら朱雀の話を聞いていた。

 

「続いて、諸君らは魔導輪や魔導具を用いてホラーの捜索を行ってるだろうが、魔導具の使用は禁止する。そのため、魔導輪などの助言も禁止なので、そのつもりでいるように!」

 

ここまでは今まで通りのサバックのルール説明であり、魔戒騎士たちもわかってるよと言いたげだったが、それでも黙って朱雀の話を聞いていた。

 

「……続いて、術の使用であるが、魔導筆を用いての術の使用は禁止する!」

 

この術の使用についても従来通りであるのだが、ここからが新たなルールとなった。

 

「そして、魔導筆を使わぬ術の使用であるが、名言を避けていたため、以前の大会でも使っていた者もいただろう」

 

朱雀のこの言葉を聞くと、魔戒騎士たちはざわつき始めていた。

 

「今回は魔導筆や魔導具を用いなければ、術の使用は許可する!札やアクセサリーを用いての術は、それが魔導具でなれけば認めよう!!」

 

朱雀が魔導筆と魔導具さえ使わなければ、術の使用を許可した。

 

この決定に術を使える魔戒騎士たちは歓喜の声をあげ、使えない魔戒騎士たちは抗議しており、ざわつきが増していた。

 

「へぇ、術の使用を許可するとか、緩くなったもんだなぁ……」

 

「ふっ……。これで、思い切り術を使えるという訳か」

 

術の使用を許可する話を聞いていた零は、ルールが変わったことに少し驚き、翼は、笑みを浮かべていた。

 

翼は閑岱という魔戒法師の里で育ったため、法術の心得がある。

 

そのため、今回の大会では、翼も術を使えるということになる。

 

そんな中、会場のざわつきが収まる様子はなかったので……。

 

「……諸君!静粛にしたまえ!!」

 

朱雀の一喝で、魔戒騎士たちを黙らせていた。

 

「諸君らの言い分はわかる。しかし、魔戒騎士をとって重要なのはその剣技だ!最強の魔戒騎士を目指すのなら、術の1つや2つ、跳ね除けられるハズだ!」

 

朱雀の力説を聞いた魔戒騎士は、その話に納得せざるを得なかった。

 

(……なるほど、確かに今まではそこら辺が曖昧だったからな……。術の使用が公認されたなら、厳しい戦いになることは間違いなさそうだな……)

 

統夜もサバックでの戦いが激しいものになることを予想していた。

 

「さらに、このサバックは本来、番犬所付きの魔戒騎士の参加が原則だったが、今回は元老院付きの魔戒騎士も数名参加している。諸君、気を引き締めるように!」

 

元老院付きの魔戒騎士が参加しているという話を聞き、魔戒騎士たちは再びざわつき始めた。

 

(……なるほど、どうりで見知った顔がちらほらいるわけだ……)

 

統夜はこのサバックに参加する魔戒騎士を見て、何人か見知った魔戒騎士がいたため、朱雀の話に納得していた。

 

「……ルール説明は以上である!試合開始は30分後である。諸君、これから対戦表を配るので、それを確認し、準備をするように!」

 

このサバックには数十名の魔戒騎士が参加しているのだが、試合はトーナメント形式で行われる。

 

そのため、トーナメント表は元老院の議員が制作したものになっている。

 

「……それでは、解散!!」

 

こうして、サバックの開幕式は終わり、魔戒騎士たちは元老院の議員からトーナメント表をもらい、自分の試合がいつ行われるか確認していた。

 

そして統夜も、トーナメント表をもらい、自分の試合をチェックしていた。

 

「えっと……俺の試合は……」

 

統夜は自分の試合を確認するのだが、思ったより自分の出番が早く、すぐ見つけることが出来た。

 

「……第4試合か……。対戦相手は……。っ!!」

 

統夜は対戦相手を見て息を呑んでいた。

 

その対戦相手とは……。

 

『……毒島エイジ……。いきなり元老院付きの魔戒騎士が相手とは、お前さんもついてないな』

 

元老院付きの魔戒騎士である毒島エイジが統夜の初戦の相手だった。

 

エイジは元老院付きの魔戒騎士であるのと同時に、人知れずホラーを討伐する影の魔戒騎士と呼ばれている。

 

以前、同じ元老院付きの魔戒騎士である四十万ワタルと共に、ホラー、グォルブとの戦いに参戦したため、統夜とは面識があった。

 

「……いや、むしろ運が良い方だと思うよ。元老院付きの魔戒騎士相手に自分がどこまで通じるか、知る機会になったしな」

 

統夜は元老院付きの魔戒騎士が相手とわかっても、臆することはなく、むしろ前向きに立ち向かっていこうと思っていた。

 

すると……。

 

「……月影統夜、久しぶりだな」

 

対戦相手であるエイジが統夜に声をかけてきた。

 

「エイジさん、お久しぶりです!」

 

「初戦の相手がお前とはな……」

 

「えぇ。ですが、相手があなただとしても、俺は負けるつもりはありません!全力で戦いましょう!!」

 

「……ふっ、たわけ」

 

統夜の言葉にエイジが笑みを浮かべると、エイジはその場を離れて、これから行われる試合の準備を始めていた。

 

「……おいおい、統夜!」

 

統夜とエイジの会話を聞いていた戒人が声をかけてきた。

 

「お、戒人」

 

「お前、今のは、確か元老院付きの毒島エイジだろ?ずいぶんと強気な発言をしてたな」

 

戒人も元老院付きの魔戒騎士であるエイジの顔は知っていたみたいであり、統夜がエイジに対して強気だったことに驚いていた。

 

「そうかもな。だけど、誰が相手だろうと弱気になったらその時点で負けだからな。だからこそ強気でいかないと」

 

統夜は強敵が相手なのは間違いないと思っており、強気な姿勢でいられるように気を引き締めていた。

 

「……なるほどねぇ……」

 

「ところで、戒人の対戦相手は誰なんだ?」

 

「あぁ、俺の対戦相手は奏夜だったよ。第13試合な」

 

なんと戒人の対戦相手は、統夜や戒人にとっては後輩にあたる奏夜だった。

 

「……戒人、奏夜を侮るなよ。あいつはなかなか出来るぞ!」

 

統夜はかつて奏夜を鍛えた時にその力を見極めており、楽して勝てる相手ではないことを戒人に告げていた。

 

「……そうだな。誰が相手だろうと、全力で戦うだけだ」

 

戒人は、奏夜が魔戒騎士になったばかりではあるものの、侮ることなく、全力で戦うつもりだった。

 

「……それよりも、そろそろ試合の準備をした方がいいんじゃないのか?お前の出番はすぐなんだろ?」

 

「そうだな、そうさせてもらうよ」

 

統夜はこの場を後にすると、サバック会場内にある控え室に移動し、これから来る試合に備えていた。

 

すると、サバックの第1試合が始まったのだが、統夜はその試合を見ることなく、精神を集中させていた。

 

そして、第1試合と第2試合が終了し、控え室にいた統夜とエイジがもうすぐ試合だと元老院の議員に呼び出されたため、闘技場に移動した。

 

2人が闘技場に移動すると、すでに第3試合は行われていた。

 

統夜は今行われている試合には目もくれず、精神を集中させていた。

 

『……おい、統夜。もうすぐ試合だが、大丈夫か?』

 

「……あぁ、大丈夫だ。結果はともかく、無様な報告は唯たちに出来ないからな」

 

統夜は精神を集中させていた甲斐があってか、落ち着いていた。

 

『確かにそうだな。それだけ落ち着いていれば大丈夫そうだな』

 

イルバは統夜が緊張していれば、喋れるうちにハッパをかけておこうとしたのだが、その心配は杞憂に終わっていた。

 

統夜とイルバがこのような会話をしていると……。

 

「……勝負あり!!」

 

第3試合がちょうど終わったところだった。

 

『統夜、いよいよ出番だな』

 

「あぁ。全力で頑張ってくるよ」

 

統夜は全力でこれから行われる試合に挑むつもりだった。

 

そして、先ほどまで試合を行っていた2人が闘技場を後にした。

 

「……続いて、第4試合!紅の番犬所付き、月影統夜!!」

 

審判をしている議員に呼び出されると、統夜は試合が行われる円陣に足を踏み入れた。

 

「対するは、元老院付き、毒島エイジ!!」

 

そして、エイジも呼び出されて、円陣に足を踏み入れた。

 

「……両者!武器を構え!!」

 

統夜とエイジは事前に渡された武器を抜くと、それを構えた。

 

そして、2人は鋭い目つきで互いを睨みつけていた。

 

「……いよいよだな」

「なぁ、この試合、どっちが勝つと思う?」

 

「そりゃあ、毒島エイジだろ。元老院付きの魔戒騎士はこの大会の優勝候補だしな」

 

「でもよぉ、あの統夜って魔戒騎士ってガキだけどかなり強いみたいだぞ」

 

「いやいや……。いくらなんでも元老院付きの魔戒騎士には勝てないだろう」

 

サバックの試合を見学していた魔戒騎士たちは総じてエイジの勝ちを確信していた。

 

そんな中、特等席で試合を見学していた朱雀は、統夜をジッと見つめていた。

 

「……月影統夜……。あいつは、あのディオスの事件とアスハの事件を解決させたと聞いている。ならば、毒島エイジが相手でも引けは取らないだろう」

 

朱雀は、統夜とエイジが互角の戦いをすると予想していた。

 

そして、大輝、戒人、奏夜の3人も、統夜の試合をジッと見守っていた。

 

「いよいよだな……」

 

「統夜のやつ、あの毒島エイジを相手にどこまで戦えるか……」

 

「……統夜さん……!」

 

この3人は、勝ち負けはともかくとして、統夜の応援をしていた。

 

そして、サバックの試合を記録しているレオも試合の記録に力を入れていた。

 

(統夜君、いよいよですね。エイジさんは手強いですよ……。頑張って下さい!)

 

レオは心の中で統夜にエールを送っていたのだが……。

 

「統夜ぁ!!頑張れ!初戦で負けんじゃねぇぞぉ!!」

 

アキトは仕事そっちのけで統夜を応援しようとしていた。

 

なので……。

 

「……アキト、仕事中ですよ。そっちに集中してくださいね」

 

「……はぁい……」

 

師匠であるレオに注意され、レオは素直に言う事を聞いていた。

 

そして、試合開始が目前となり、この試合を見学している魔戒騎士たちは固唾を呑んで統夜とエイジのいる円陣を見つめていた。

 

「……試合、開始!!」

 

審判役の元老院の議員が試合開始を宣言したことで、統夜とエイジの試合は始まった。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

統夜は試合が始まるなり、エイジに突撃し、剣を一閃した。

 

しかし、その攻撃はエイジにあっさりと防がれてしまった。

 

「フン……。攻撃が単調だな」

 

「なんの!これはただの挨拶……ですよ!!」

 

統夜は続けて仕掛けてきたエイジの攻撃を剣で防ぎ、その攻撃を弾くと、1度後方に下がり、距離をとった。

 

すかさずエイジは統夜目掛けて突撃し、剣を振るった。

 

統夜も負けじと剣を振るい、しばらくの間、激しい剣の打ち合いが行われていた。

 

その様子を見ていた魔戒騎士たちは、統夜の善戦ぶりに驚いていた。

 

「……!これは……!」

 

「あの小僧、やるじゃないか!」

 

「もっと一方的な展開になるとおもっていたのだがな」

 

試合を見学していた魔戒騎士たちは統夜が一方的にエイジにやられると予想していたため、ここまで互角に剣を打ち合うとは思っていなかった。

 

それはエイジも同じことを思っており、統夜がここまで善戦するとは思っていなかった。

 

「……ほぉ、やるではないか。正直、ここまでやるとは思っていなかったぞ!」

 

「当然です!俺は簡単にやられるつもりはありませんから!」

 

統夜とエイジは剣を打ち合いながら会話をしていた。

 

「お前もだいぶ成長したのだろうが、お前に俺は倒せない」

 

「それは……どうですかね?俺はあなたに勝ちます!勝ってみせます!!」

 

統夜はエイジに対して勝利宣言をしていた。

 

「……たわけ!」

 

統夜の言葉が面白くなかったのか、エイジはこう言い放つと、剣を力強く一閃し、統夜を吹き飛ばした。

 

「くっ……!」

 

統夜はすぐさま体勢を整えて、エイジを睨みつけていた。

 

すると……。

 

「はぁぁ……!」

 

エイジは1枚の札を手に精神を集中させると、その札は増殖していった。

 

(……っ!来るか!!)

 

統夜はこれから来るであろうエイジの術に備えていた。

 

そして、試合を見学していた魔戒騎士たちも、エイジの放とうとしている術に注目していた。

 

「……!来るぞ!!」

 

「あぁ、あの札を使って術を放つんだろうな……」

 

「あれは魔導具じゃないから、いいんだよな?」

 

エイジがこの大会初めて術を使うようであり、試合を見学していた魔戒騎士たちはざわついていた。

 

「……!これはやばそうだな」

 

「あぁ。統夜が勝つためにはあれをかいくぐらないとな」

 

「……統夜さん……」

 

戒人、大輝、奏夜も、固唾を呑んで統夜の試合を見守っていた。

 

「……」

 

一方、特等席で試合を見学していた朱雀は、鋭い目付きで2人の試合の動向を見守っていた。

 

「……術が来るか……。月影統夜がどうこれを切り抜けるかが、見ものだな……」

 

朱雀は、統夜をジッと見つめて、統夜がいかにしてエイジの術を破るのか、それを期待していた。

 

試合を見学している魔戒騎士たちが見守るなか、エイジは術を放つ準備を整えた。

 

増殖した札は集合し、1つ1つに炎が纏われていた。

 

そして、エイジはその札を統夜目掛けて放った。

 

「……っ!!」

 

統夜は横に大きくジャンプすることで札による攻撃をどうにかかわすことが出来た。

 

ここから反撃をしようと思っていたのだが……。

 

「……!?マジかよ!?」

 

エイジの放った札は追尾式のようであり、再び統夜の方へと向かっていった。

 

統夜はどうにか剣を使って炎を纏った札を防ぐことが出来た。

 

しかし……。

 

「熱ちちち!!」

 

札1つ1つに炎が纏われているため、統夜は炎の高温に襲われていた。

 

「……くそっ!!負けるかよぉ!!」

 

統夜は気合と根性で剣を一閃すると、エイジの放った札を切り裂き、どうにかエイジの術を凌ぐことが出来た。

 

しかし、エイジは術が破られたにも関わらず、笑みを浮かべていた。

 

「……かかったな!」

 

エイジはこう宣言すると、炎を纏っていない札が統夜に迫っていた。

 

「……くそっ!あれが囮で、こっちが本命か!」

 

統夜はエイジの作戦を理解したのだが、その時には既に手遅れだった。

 

エイジの攻撃が決まってしまえば、そのまま自分の負けになってしまう可能性が高い。

 

なので、統夜は今すぐにでも対抗策を考えなければいけなかった。

 

統夜は短い時間で対抗策を考えていた。

 

すると……。

 

(……!待てよ。これなら……)

 

統夜は1つ妙案を思いついていた。

 

(一か八かになるけど、やるしかない!!)

 

この大ピンチの中、他の作戦を考える時間はなく、統夜は今思いついた作戦を実行することにした。

 

すると、統夜は何を思ったのか、剣を迫り来る札目掛けて投げつけた。

 

「な、何だと!?」

 

この統夜の発想に、エイジだけではなく、試合を見学している魔戒騎士たちも驚きのあまりざわついていた。

 

「な!?」

 

「何考えてるんだ!あいつ、自棄になったのか?」

 

「……」

 

戒人、大輝、奏夜の3人も、統夜の予想外の行動に唖然としていた。

 

統夜の放った剣は、札を真っ二つに斬り裂くと、そのままエイジに迫った。

 

エイジは迫り来る剣をかわすと、剣は地面に突き刺さった。

 

剣はエイジの背後にあるため、接近しなければ、取ることは出来ない。

 

しかも、丸腰で突っ込むなど、無謀としか言えなかった。

 

だが、統夜は迷うことなくエイジに突っ込んでいった。

 

「フン!丸腰になって自棄になったか。これで終わりにしてやる!」

 

エイジは剣を一閃して、そのままこの試合を終わらせようとした。

 

誰もがその一撃でエイジが勝つと確信していた。

 

そんな中、統夜は……。

 

「……ば、馬鹿な!?嘘だろ!?」

 

統夜の予想外な行動にエイジは驚愕していた。

 

エイジは剣を横一閃に振っていたのだが、統夜はスライディングしてエイジの攻撃をかわしたのである。

 

「なっ!?」

 

「そんなのありかよ!?」

 

これには試合を見学していた魔戒騎士たちも驚きであり、ざわつきが大きくなっていた。

 

統夜はスライディングしてエイジの攻撃をかわすと、そのまま剣を回収し、すぐさま立ち上がって体勢を整えた。

 

すぐさま統夜は動揺するエイジに接近し、剣を一閃した。

 

エイジも負けじと剣を一閃するが、少しだけタイミングが遅れてしまった。

 

統夜とエイジ。2人の剣が交差し、その場は静寂に包まれていた。

 

そして……。

 

「……くっ!」

 

2人の剣の打ち合いは統夜に軍配が上がり、エイジは手にしていた剣を落としてしまった。

 

そして、エイジの手からは微量ではあるが、血が滲み出ていた。

 

「……それまで!!月影統夜の勝ち!!」

 

審判役は、試合終了を宣言し、勝者は統夜であると伝えた。

 

統夜の勝利を知った魔戒騎士たちはこの結果にざわつきながらも歓声を上げていた。

 

「ま、マジかよ!?」

 

「あの小僧、優勝候補を倒しやがったよ!」

 

「あいつ……ただ者じゃないな!」

 

試合結果をうけて、魔戒騎士たちは、統夜の力を見誤っていたことに後悔していた。

 

「おぉ!やったぞ!!」

 

「まさか、本当に勝つとはな……」

 

「統夜さん!凄いです!!」

 

戒人、大輝、奏夜も、統夜の勝利を驚きながらも喜んでいた。

 

「ほぉ、あのエイジに勝ったか……。これは、今後の試合も荒れそうだな……」

 

朱雀でさえも統夜の勝ちは予想外だったようであり、この統夜の勝利が今後の試合にも影響を与えると確信していた。

 

「……まさかこの俺が負けるとはな。やるじゃないか」

 

「ありがとうございます。まさか俺も勝てるとは思わなかったですよ」

 

統夜が勝てたのも、一か八かの作戦が功を奏したためであり、あのままエイジに負けてもおかしくはない状態だった。

「良い戦いだったが、今度このような機会があれば今度は俺が勝つぞ」

 

エイジは統夜に敗れたのだが、不思議と悔しさはなく、清々しい表情をしていた。

 

「いえ、その時だって俺は負けませんよ!」

 

「ふっ……たわけ!」

 

エイジはこう言うものの、笑みを浮かべていた。

 

そしてエイジはそのまま闘技場を後にした。

 

『……統夜、やったな!』

 

今まで口を閉ざしていたイルバが統夜の勝利を祝っていた。

 

「あぁ。どうにか勝つことが出来たよ」

 

『ハッキリ言ってお前さんの戦いにはヒヤヒヤさせられたぜ……。やっぱりお前さんには俺が必要みたいだな』

 

「……そうかもな」

 

イルバはこのように皮肉を言っていたが、統夜はそれを流して笑みを浮かべていた。

 

『とりあえず今日の試合は終わりなんだ。休養も兼ねて今後の試合を見たらどうだ?』

 

「そうだな、そうさせてもらうよ」

 

統夜は一度闘技場を後にすると、別の階段から闘技場の客席に向かった。

 

こうして、統夜はサバックの初戦を制することが出来た。

 

だが、サバックの激闘はこれで終わりではなく、始まったばかりなのであった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『どうにか統夜が勝てて安心したぜ。だが、今度はあの2人がぶつかるとはな。次回、「勇情」。勝つのは後輩か、ライバルか?』

 




たわけそう。かかりそう。

と言う訳で、統夜の初戦の相手は毒島エイジでした。

何故初戦の相手をエイジにしたかと言うと、「たわけ」とかを言ってもらいたかったからです(笑)

このエイジは「魔戒ノ花」の頃のエイジよりかなり若く、実力は劣りますが、それでも元老院付きの魔戒騎士に相応しい実力は持っています。

そんなエイジ相手に統夜はどうにか勝つことが出来ました。

さて、次回はサバックの1回戦の続きで、戒人と奏夜の試合になります。

魔戒騎士になったばかりの奏夜は、統夜のライバルである戒人に勝つことは出来るのか?

それでは、次回をお楽しみに!




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