牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第66話になります。

今回は統夜統夜魔導人機との戦いに決着がつきます。

前回は梓の活躍で反撃の糸口を掴んだ統夜ですが、統夜は強大な力を持つ魔導人機を打ち倒すことは出来るのか?

それでは、第66話をどうぞ!




第66話 「銀狼 後編」

魔導人機に対して反撃の体勢を整えた統夜は、魔導人機を睨みつけていた。

 

「次から次に余計な邪魔が……!こいつで死にやがれ!!」

 

アスハは魔導人機を操作し、両手を統夜目掛けて飛ばした。

 

「……!!」

 

統夜は魔戒剣で両手のロケットパンチを防ごうとしていた。

 

両手のロケットパンチが統夜に迫ろうとしたその時だった。

 

魔導人機の両手に銃弾のようなものが着弾すると、弾が爆発し、ロケットパンチの軌道が大きくそれてしまった。

 

「……お前!俺のことを忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

 

銃を発砲し、ロケットパンチの軌道をそらしたのは、魔導人機の攻撃を受けて気を失っていたアキトだった。

 

「……!アキト!無事だったか?」

 

「当たり前だろ?俺の体の丈夫さをなめんなよ!……それよりもお前が大丈夫か?ずいぶんと派手にやられたみたいだけど」

 

アキトは統夜が魔導人機によってボロボロにやられたのを知り、驚いていた。

 

「あぁ、あちこち痛いが、問題ない。……それよりも、負ける気がしない!」

 

様々な人の手助けのおかげで魔導人機への反撃を始めようとしていたのだが、統夜は自信に満ちた表情をしていた。

 

その時だった。

 

「……!先輩方!」

 

イルバと共に超音波の発生源を破壊というファインプレーを見せた梓が戻ってきた。

 

「……!あずにゃん!!」

 

「梓ちゃん、お手柄よ!あなたのおかげで統夜君は……」

 

「い、いえ……。私は統夜先輩の力になりたい一心でしたから……」

 

梓は統夜の力になりたい。その一心で吹き飛ばされたイルバを回収し、イルバと共に超音波の発生源を破壊した。

 

しかし、アスハはその兵器を破壊した梓を許すことは出来なかった。

 

「……不覚だ!そこのチビも一緒に捕らえておくべきだった!」

 

アスハは、梓を統夜の伝言係にしたことを後悔していた。

 

「貴様だけは殺してやる!!」

 

アスハは、余計な邪魔をした梓を始末するために、魔導人機を梓の方へと向けた。

 

「……やらせるかよ!!」

 

統夜は魔導人機目掛けて魔戒剣を一閃し、アキトは魔戒銃を発砲してアスハの視線を梓からそらした。

 

「おのれ……!邪魔するな!」

 

「そうはいかない!俺はみんなを守る!お前の好きにはさせない!」

 

統夜はこのように言い放ち、魔導人機を睨みつけた。

 

「……!統夜先輩!!」

 

統夜の言葉は恥ずかしかったが、梓はそれをスルーして、イルバを統夜目掛けて投げた。

 

梓のパスは絶妙な位置に来ており、統夜はイルバをキャッチすると、指に嵌めた。

 

「……イルバ!」

 

『……統夜、待たせたな!』

 

イルバも統夜のもとに戻り、反撃の準備は完全に整った。

 

その時だった。

 

「統夜!!無事か!?」

 

ヘラクスと号竜人の軍団を相手にしていた戒人と大輝が統夜の応援に駆けつけた。

 

「戒人!大輝さん!!」

 

「どうやら、無事のようだな」

 

「えぇ、大輝さんと戒人も!」

 

「こっちは問題ない。頼りになる助っ人が来てくれたからな」

 

「助っ人?」

 

統夜は戒人の言葉に首を傾げていると……。

 

「統夜君、久しぶりですね!」

 

「れ、レオさん!?」

 

戒人と大輝の助っ人がレオだったことに、統夜は驚いていた。

 

しかし、それは統夜だけではなく……。

 

「し……師匠!?どうしてここに?」

 

アキトも自分の師匠であるレオが現れたことに驚いていた。

 

「僕も一連の事件の黒幕がアスハ法師だと突き止めたんですよ。それで、イレス様に唯さんたちがさらわれたと聞きましてね、僕も応援に駆けつけたのです」

 

「そうだったのか……」

 

「アキト、使命を果たしながらよく統夜君たちのサポートをしてくれましたね。ありがとうございます」

 

「そんな、俺は当たり前のことをしたんだから師匠が例を言うほどじゃないよ……」

 

アキトはこのように答えていたが、内心はレオに褒められて嬉しかった。

 

「とりあえず、僕たちがすべきなのは……」

 

レオはこのように呟くと、魔導人機を睨みつけた。

 

「あいつを止めることですね!」

 

レオの言葉に呼応するかのように、魔導人機が統夜たちに立ちはだかった。

 

「フン、また魔戒騎士が増えたか!だが、どれだけ数を束ねようと、俺の魔導人機の力ではない!」

 

「それはどうでしょうね!」

 

レオは、魔戒剣を取り出すと、魔導人機の前に立った。

 

「!貴様は、布道レオか……。魔戒騎士としても魔戒法師としても中途半端な半端者みたいだな」

 

アスハは、レオのことをこのように評価していた。

 

「てめぇ!師匠を馬鹿にする奴は俺が許さんぞ!!」

 

レオが馬鹿にされたことに対して、真っ先に怒っていたのは、本人ではなくアキトだった。

 

「アキト、いいんです。アスハ法師の言ってることは間違ってないですから」

 

「!だけど、師匠……」

 

「僕は魔戒騎士としても魔戒法師としても半端者です。ですが、こんな僕だからこそ出来ることがあると思っています」

 

このように語るレオは、己の信念を揺るぎなく貫いていた。

 

「ですが、あなたは私怨で魔戒騎士を滅ぼそうとしているだけではなく、兄さんの魔導具を好き勝手に悪用している……。それは、許してはおけません!!」

 

普段は穏やかなレオであるが、今のレオはここにいる誰よりも怒りに震えていた。

 

そして、その怒りを闘志に変えていた。

 

「フン、だから俺を倒すか?いいだろう。この際貴様にも見せつけてやるよ!俺の作りし魔導具の方が貴様や布道シグマの作りし魔導具より優れているということをな!」

 

「そんなことはさせない!俺が……俺たちがここで、貴様の野望を止める!!」

 

統夜は魔戒剣を力強く握りしめると、魔導人機を睨みつけた。

 

「戒人!アキト!大輝さん!レオさん!行こう!俺たちで奴を止めるんだ!」

 

「あぁ!もちろんだ!」

 

「言われなくても、師匠を馬鹿にしたあいつは許せないからな!」

 

「これ以上、奴の好きにさせる訳にはいかないからな!」

 

「みんなで止めましょう!!あいつを!!」

 

統夜たちは、それぞれの武器を構えると、魔導人機を睨みつけた。

 

「……元魔戒法師のアスハ!!全ての魔戒騎士を滅ぼそうという傲慢に満ちた貴様の陰我……俺たちが断ち切る!」

 

統夜はアスハに向けてこのような宣言をすると、唯たちは統夜たちの迫力に圧倒されていた。

 

「やーくん……」

 

「それにしても、統夜君があの言葉を使うと、不思議と何とかなる気がするのよね……」

 

「そうだな、それはあたしも思ったよ」

 

「あぁ、あの言葉は本当に頼もしい言葉だよな!」

 

「そうね。だからこそ、私たちは信じましょう!統夜君たちの勝利を!」

 

「……統夜先輩……頑張って!」

 

唯たちは統夜の言葉に安心感を抱いており、統夜たちの勝利を信じていた。

 

そして、アキトを除く4人は、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、4人はそれぞれの鎧を身に纏った。

 

大輝は、銅の輝きを放つ「鋼」の鎧を身に纏った。

 

戒人は、紫の輝きを放つガイアの鎧を身に纏った。

 

レオは、ガイアとは異なる紫の輝きを放つ狼怒の鎧を身に纏った。

 

そして統夜は、白銀の輝きを放つ奏狼の鎧を身に纏った。

 

「……行くぞ!!」

 

「「「「おう(はい)!!」」」」

 

統夜たちは、魔導人機目掛けて一斉に攻撃を開始した。

 

「……こいつはとっておきだぜ!」

 

アキトは、魔戒銃にとある弾を装填した。

 

その後、魔導筆を取り出すと、魔戒銃の銃口に術を放ち、その後、その力を解き放つかのように発砲した。

 

魔戒銃から飛び出した銃弾は、魔導人機の体に着弾すると、爆発した。

 

しかし、その威力は格段に上がっており、魔導人機はその衝撃で後ろに下がってしまった。

 

アキトの放った一撃はあまりに強力で、その衝撃に耐えられなかった魔戒銃は壊れてしまった。

 

「くそっ、壊れたか!だが……」

 

魔戒銃が壊れたことは残念だったのだが、アキトはこの一撃こそ次の攻撃に繋がると確信していた。

 

アキトの作ってくれた隙を無駄にしないために大輝、レオは連続で剣による攻撃を叩き込んだ。

 

続けて統夜と戒人もそれぞれの剣を一閃し、魔導人機を吹き飛ばした。

 

「ぐぅぅ……!!馬鹿な!心滅獣身と互角の力を持つハズの魔導人機がパワー負けしているだと!?」

 

アスハは、予想を遥かに上回る統夜たちの猛攻に驚いていた。

 

「いくら心滅に似せたって、それは所詮偽物の力だ!」

 

「統夜君の言う通りです!僕たちは守りし者として、強い想いがあればいくらでも強くなれます!いくらデータを並べたって、人間の無限の可能性は越えられないのです!!」

 

「……っ!」

 

「レオのやつ、今日は随分と熱いな……」

 

「……ここまで熱い師匠は俺も初めて見た……」

 

レオは、かつての兄のように魔戒騎士を滅ぼそうとしているアスハに思うところがあったのか、珍しく熱くなっていた。

 

それは、1番弟子であるアキトも見たことがない一面で、アキトも驚いていた。

 

「……ククク……ハァーッハッハッハ!!」

 

アスハは統夜たちに追い詰められてるハズなのだが、高笑いをしていた。

 

「……もういい、わかった。これを使う気はなかったんだが……。この建物ごと、てめぇらまとめて吹き飛ばしてやるよ!!」

 

アスハはこのように宣言すると、魔導人機の胸が解放し、そこから銃身のようなものが飛び出してきた。

 

「こいつはイデアの主砲を解析して作ったんだ!その威力はイデアより劣るが、ここ一帯を吹き飛ばすには充分だ!!」

 

アスハは、魔導人機の主砲のエネルギーチャージを始めると、勝ち誇ったかのように高笑いをしていた。

 

「……何が強い想いだ!何が人間の可能性だ!そんなもん、強大な力の前には無意味なんだよ!てめぇらに、この主砲は破れないんだからな!!」

 

魔導人機の主砲は、イデアの主砲より威力が落ちるとはいえ、魔戒騎士がこの主砲を防ぎ、被害をゼロにすることは不可能に近かった。

 

アスハはこの主砲の力で、黄金騎士牙狼や、銀牙騎士絶狼など力のある魔戒騎士を葬るつもりだった。

 

「……俺は絶対に諦めない!絶対に主砲を防いでお前を倒す!!」

 

統夜たちは、魔導人機の切り札を使われて絶体絶命だったのだが、統夜は最後まで諦めていなかった。

 

魔戒剣を構えてエネルギーチャージを行っている魔導人機を睨みつけていた。

 

……その時、不思議なことが起こった。

 

__そうだ、魔戒騎士よ。お前はホラーのいない世界を作るのだろう?こんな所で諦めるな!

 

「……!?まさか、この声……阿号か!?」

 

統夜の脳内に突如古の時代に誕生した人型魔導具である阿号の声が聞こえ、統夜は驚いていた。

 

__俺も力を貸してやろう。だから、あの愚か者を倒すんだ!

 

阿号が力を貸すと宣言したその時、上空から巨大な剣が統夜の前に降ってきた。

 

「!?な、何だ!?」

 

「巨大な……剣だと!?」

 

突然の出来事に、戒人と大輝は驚いていた。

 

「あの剣……まさか……!」

 

アキトは、降ってきた剣に見覚えがあった。

 

統夜の前に降ってきたこの巨大な剣は、かつて阿号が使っていた大剣である号殺剣と呼ばれる剣だった。

 

統夜は以前、復活したグレゴルとの戦いの時も、阿号から号殺剣を託され、グレゴルを討滅した。

 

「阿号……。お前も一緒に戦おう!力を貸してくれ!」

統夜はこう告げながら、号殺剣を手に取った。

 

そして、号殺剣の切っ先に赤い魔導火を纏わせ、烈火炎装の状態となった。

 

「……統夜!俺の力も使ってくれ!」

 

戒人は、堅陣剣の切っ先に黄緑の魔導火を纏わせて、烈火炎装の状態になると、その黄緑の魔導火を号殺剣の切っ先目掛けて放った。

 

このことで戒人の烈火炎装は解除されたのだが、号殺剣の切っ先には、赤と黄緑という2つの魔導火が纏われていた。

 

「統夜!こいつも持っていけ!」

 

アキトは、雷の法術を号殺剣の切っ先目掛けて放った。

 

すると、号殺剣の切っ先には2つの魔導火だけではなく、青い稲妻も纏われた。

 

この状態は「双炎電装(そうえんでんそう)」。2つの魔導火と青い稲妻が合わさったことにより出来た攻撃形態で、アキトと戒人の協力のおかげで、統夜はこの状態になることが出来た。

 

統夜が双炎電装の状態になったのと同時に魔導人機の主砲のエネルギーチャージが完了した。

 

「さらばだ、魔戒騎士ども!この一撃で地獄に落ちるがいい!」

 

「そんなこと……させるかよ!!」

 

アスハが魔導人機の主砲を発射させたのと同時に統夜が魔導人機目掛けて駆け出し、魔導人機の放った主砲を、双炎電装の状態の号殺剣で受け止めた。

 

これだけ攻撃面を強化しても、魔導人機の主砲を受け止めるのが精一杯で、統夜はパワー負けしないように踏ん張っていた。

 

「ぐぅ……ぐぅぅ……」

 

「ほぉ、主砲を受け止めたか。しかし、いつまで保つかな?」

 

アスハは、魔導人機の主砲を受け止められたことには驚いたが、それを長いこと維持することは出来ないと予想していた。

 

「「統夜……!!」」

 

「「統夜君!!」」

 

「統夜先輩!負けないで!!」

 

「やーくん、頑張って!!」

 

唯たちの声援が統夜の力になっていたのだが、統夜は魔導人機の主砲の威力に耐えられず、少しずつ後ろに下がるのだが、統夜は必死に堪えていた。

 

『統夜!気合を入れろ!!そうでなければ、みんなやられるぞ!!』

 

「わかっ……てるよ!!」

 

統夜はイルバに言われるまでもなく、気合を入れていた。

 

その甲斐があってか、少しではあったが、前に進むことが出来た。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

統夜はまるで獣のような咆哮をあげながら魔導人機の主砲に耐えていた。

 

すると……。

 

__パリィィィン!!

 

「ぐっ!!」

 

統夜の身に纏っている奏狼の鎧にもダメージが蓄積され、狼の形をした顔の鎧の一部が壊れてしまった。

 

「あぁ!?」

 

「う、嘘だろ!?」

 

「と、統夜君の……」

 

「鎧が砕けるなんて……」

 

「統夜先輩……!!」

 

「やーくん!!」

 

唯たちは、統夜の鎧の一部が壊れたことに驚いていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

統夜はそれでも諦めることなく、魔導人機の主砲を受け止めていた。

 

「こいつ……。しぶといじゃないか……。いい加減くたばれ!!」

 

アスハは主砲の出力を徐々に上げていたのだが、統夜はそれに耐えていたので、業を煮やしたアスハは出力を最大にした。

 

「!?ぐぅぅ……」

 

魔導人機の主砲を受け止めているその衝撃はかなりのもので、奏狼の鎧は限界に近かった。

 

しかし……。

 

「負けて……たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

統夜は再び獣のような咆哮をあげていた。

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__パリィィィン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔導人機の主砲が最大出力に耐えられずに壊れるのと、号殺剣が粉々に砕け散るのは同時だった。

 

「!!?やったか!?」

 

「だけど、統夜の剣が!」

 

「大丈夫です!問題ありません……」

 

「だって、統夜の手にはまだ……」

 

「「「「「皇輝剣があるから!!」」」」」

 

統夜は、号殺剣が砕け散るのと同時に皇輝剣を手に取り、烈火炎装の状態となった。

 

「行けぇ!!統夜!!」

 

「ぶちかませ!」

 

「これが最後の一撃です!」

 

「確実に決めろ!!」

 

「「統夜!!」」

 

「「統夜君!!」」

 

「統夜先輩!!」

 

「やーくん!!」

 

この場にいる全員の声援が、統夜の耳に響き渡った。

 

「これで……終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

統夜は獣のような咆哮をあげながら魔導人機に接近すると、魔導火を纏った皇輝剣を一閃した。

 

その一撃を受けた魔導人機は、中にいるアスハごと真っ二つに斬り裂かれた。

 

「がはっ!!……ば、馬鹿な……!俺の……魔導……人機が……!こんな……小僧に……!」

 

「俺はただの小僧じゃない!!」

 

「!!?」

 

「我が名は月影統夜!白銀騎士奏狼の称号を受け継いだ、魔戒騎士だ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

統夜が高々と自らの名前を宣言すると、魔導人機は、爆発を起こして消滅した。

 

魔導人機と共に体を斬り裂かれたアスハの体も魔導人機の爆発で共に消滅し、アスハは自身の最高傑作である魔導人機と運命を共にした。

 

「……っ!」

 

統夜は鎧を解除すると、ダメージが相当なものだったのか、その場で膝をついていた。

 

「「統夜!!」」

 

「統夜君!」

 

戒人、大輝、レオの3人は、鎧を解除すると、思わず声をあげた。

 

「統夜!」

 

アキトも、統夜の体を案じて声をあげた。

 

そして……。

 

「「統夜!!」」

 

「統夜君!」

 

「統夜先輩!」

 

「やーくん!!」

 

唯、律、澪、紬、梓の5人が統夜に駆け寄り、膝をついた統夜を支えていた。

 

「統夜、やったな!」

 

「まぁ、相変わらず無茶はしてくれたけどな……」

 

「アハハ……返す言葉もないよ……」

 

澪に痛いところを突かれた統夜は苦笑いをしていた。

 

「本当なら無茶しすぎだって怒るところですけど、今回は特別に許してあげます」

 

「アハハ……そうしてくれると助かるよ……」

 

「やーくん!無事で良かったよぉ!本当に心配したんだからね!」

 

「ごめんな、心配かけて……」

 

「だけど、統夜君が無事で本当に良かったわぁ!」

 

「心配かけたな。俺は、みんなが無事で本当に良かった……」

 

統夜は満身創痍になりながら唯たちを救えたことに安堵して、優しい表情で微笑んでいた。

 

すると……。

 

「「「「「……!!////」」」」」

 

優しく微笑む統夜の表情にドキッとしたのか、唯たちの顔が一斉に真っ赤になっていた。

 

「……?みんな、どうして顔が赤いんだ?」

 

唯たちが何故顔を真っ赤にしているのかがわからず、統夜は首を傾げていた。

 

「やれやれ……」

 

「統夜君は相変わらずみたいですね」

 

統夜たちのやり取りを見ていたレオは苦笑いをしていた。

 

「とりあえず、これで一件落着だな」

 

「そうですね。まずはこのことをイレス様に報告しないと……」

 

大輝たちは、統夜の応援をアキトに頼まれた時に、イレスからアスハの討伐もしくは捕獲の指令を受けていた。

 

そのため、戒人はすぐにでも番犬所に戻って、イレスに指令を成し遂げたことを報告しようと思っていた。

 

「統夜!番犬所へは俺たちが報告しておくから、お前はゆっくりと体を休めてくれ!」

 

「あ、ありがとな、戒人……。そうさせてもらうよ……」

 

魔導人機との戦いでかなり消耗していた統夜は、戒人の申し出をありがたく受けることにした。

 

「統夜先輩、立てますか?」

 

「すまん、思うように動けなくてな……」

 

「それじゃあ私たちが支えますから、ゆっくりでもいいので立ちましょう」

 

統夜は唯たちに支えられながらゆっくりと立ち上がった。

 

「統夜、その傷じゃバイクは使えないよな?お前のバイク借りるから、お前の家の前にバイクは置いとくよ」

 

「すまない。頼めるか?」

 

「あぁ、任せとけって!」

 

「アキト!僕も行きます!」

 

アキトがヘルメットを被ったタイミングで、レオがバイクに駆け寄り、予備のヘルメットを被った。

 

そしてアキトとレオが統夜のバイクに乗り込むと、バイクを走らせて、その場を後にした。

 

「さわ子先生。大輝さんと戒人さんを 番犬所の近くまで送ってあげて下さい」

 

「それは構わないけど、あなたたちはどうするの?」

 

「大丈夫です。問題ありません」

 

紬の言葉にさわ子が首を傾げていると、紬は携帯を取り出し、誰かに電話をかけた。

 

「……あっ、もしもし斎藤?大至急車を出してちょうだい。私たちは○△研究所の中にいるから。……えぇ。お願いね」

 

紬が電話をかけたのは、琴吹家の執事である斎藤だった。

 

「……これで今から迎えが来るので、問題ありません♪」

 

「そ……そう?それじゃあ私は桐島さんと戒人君を送っていくわね」

 

とりあえず迎えが来ることがわかると、さわ子は大輝と戒人を乗せて、番犬所の近くまで送ることになった。

 

「ほら、桐島さん、戒人君!行くわよ!」

 

「わ、わかった」

 

「すいません、お願いします」

 

大輝と戒人がさわ子の車に乗り込むと、さわ子は車を発進させて番犬所の近くへと向かっていった。

 

統夜たちは、走り去るさわ子の車を見送っていた。

 

アキト、レオ、大輝、戒人、さわ子がいなくなったことで、この場には統夜たちしかいない状態となった。

 

「統夜先輩、痛みますか?」

 

「あぁ……。今になって痛みがひどくなってきたよ……」

 

統夜は魔導人機と戦った時にかなりのダメージを負ってしまったが、統夜はどうにかそれを堪えて魔導人機を討伐した。

 

そのダメージが今になって統夜を襲い、自力で立つことも出来ない状態になっていた。

 

「悪い、どこか座れるところで休ませてくれないか?さすがに疲れたからさ……」

 

「そうね。斎藤が来るまでまだ時間があるし、ゆっくり休んでちょうだい」

 

唯たちは統夜を近くの椅子に座らせると、統夜はダメージと疲労でぐったりとしていた。

 

唯たちも統夜のそばに腰を下ろすと、斎藤が来るまで待っていた。

 

そして1時間後……。

 

一台のリムジンがこちらにやって来た。

 

「……統夜君、来たわよ!」

 

「あぁ……」

 

統夜は唯たちに支えられながらゆっくりと立ち上がり、斎藤が運転席から出てきた。

 

「……紬お嬢様、お待たせしました」

 

「ありがとう、斎藤。彼はだいぶ消耗してるの。速やかに車に乗せるわ」

 

「かしこまりました」

 

斎藤は急いでリムジンのドアを開けると、統夜は唯たちに支えられながらリムジンに乗り込み、唯たちもリムジンに乗り込んだ。

 

「……斎藤!琴吹総合病院に向かってちょうだい」

 

「かしこまりました」

 

紬は斎藤に行き先を告げると、斎藤はリムジンを琴吹総合病院に向けて発進させた。

 

「……病院って、こんなの1日寝れば治るぜ?」

 

「ダメです!統夜先輩ひどいケガなんですから、大人しくゆっくりして下さい!!」

 

「……そうだな。イレス様への報告は戒人たちに任せて病院で休ませてもらうよ……」

 

統夜は梓の剣幕にたじろいでしまい、病院で休むことを素直に了承するしかなかった。

 

「……統夜、完全に梓の尻に敷かれてるな……」

 

「むぅぅ……。やーくんはあずにゃんがいいのかなぁ……」

 

澪は梓が統夜を叱っているのを見て唖然とし、唯はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「あらあら、統夜君ってば、いつの間に梓ちゃんと仲良くなったのかしら♪」

 

「……」

 

紬と律は、どす黒いオーラを纏った状態で統夜を睨みつけたいた。

 

《……統夜、紬と律がおっかない顔でお前さんを睨んでいるぞ》

 

(?何でだろう?)

 

《やれやれ……。こんな状態でもお前さんは相変わらずだな……》

 

相変わらず鈍感な統夜に、イルバは呆れていた。

 

こんなやり取りがありながらも、統夜たちを乗せたリムジンは、琴吹総合病院に到着した。

 

統夜たちが病院に到着すると、医者や看護師たちが既にスタンバイしており、統夜は医者や看護師たちにより、ストレッチャーに寝かされ、そのまま治療室へと連れていかれた。

 

唯たちは、その様子を見守るためにストレッチャーについていき、治療室の前で統夜の治療が終わるのを待っていた。

 

統夜の治療で手術が行われるようなことはなかったが、検査の結果、肋骨が折れていたり、内蔵にダメージがあるなど、一般人なら命の危険があっても可笑しくないレベルだった。

 

医師は安静が必要と判断し、統夜に入院するよう強要した。

 

統夜はそれを断ろうとしたのだが、どす黒いオーラを放った紬に睨まれて、渋々入院を了承した。

 

こうして、アスハが引き起こした事件は解決し、統夜は琴吹総合病院に入院することになった。

 

統夜たちと魔導人機との激闘は、統夜たちの勝利で幕を降ろしたのであった。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『どうにかアスハの事件を解決したのはいいが、俺たちは、もう1つの問題を抱えていたとはな。次回、「再来」。DEATH DEVILがここに覚醒する!!』

 

 




それにしても、イデアの主砲を再現するアスハの技術力は相当なものですよね。

阿号の力も借りて、統夜はどうにか魔導人機の主砲を受け止めることが出来ました。

こうして、統夜は多くの人の協力で魔導人機を倒し、アスハの野望を阻止することが出来ました。

さて、次回はこの章のエピローグ的な話になっています。

さわ子の友人の結婚式の二次会で演奏を手伝うことになった統夜たちは無事に演奏を終わらせることは出来るのか?

そして、次回は意外なキャラが登場するかも?

それでは、次回をお楽しみに!


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