今回からこの章もクライマックスに入っていきます!
今回ついに動き始めるアスハですが、統夜はアスハの野望を止めることは出来るのか?
それでは、第64話をどうぞ!
統夜とアキトが、一連の事件の首謀者である魔戒法師アスハのことを調べていた頃、唯たちはさわ子にとあることを説得しようとしていた。
軽音部でさわ子と同期だったメンバーが結婚することになり、結婚式の二次会で「DEATH DEVIL」として演奏して欲しいとの要請があった。
他のメンバーが了承する中、さわ子だけが首を縦に振らなかった。
そのため、さわ子と同期である河口紀美が、現在軽音部である唯たちに、さわ子の説得をお願いした。
統夜がアスハについての調査を行っているため統夜は説得をすることは出来ないが、その分唯たちが頑張ろうとした。
しかし、自習時間を用いて考えたりしても、さわ子を説得出来る妙案は思いつかなかった。
放課後、職員室に行って直接説得しようとしたものの、さわ子との写真撮影を求める1年生を見かけると、さわ子の人気ぶりを垣間見て、説得することは出来なかった。
唯たちはその後、紀美に会ってそのことを報告すると、紀美は残念そうにしていた。
さわ子の説得に失敗したら特訓が待っていると言っていたのは冗談で、その代わり、唯たちはさわ子の代わりに演奏に参加することになってしまった。
さわ子の説得に失敗したため、唯たちは渋々その頼みを聞くしかなかった。
こうして唯たちも「DEATH DEVIL」に混じって演奏することになり、紀美と別れた。
唐突な展開に唖然とする唯たちだったが、とりあえずこの日は解散することにした。
……その時だった。
「……貴様らが月影統夜と同じ桜ヶ丘高校軽音部だな?」
唯たちの目の前に現れたのは、魔導人機を使って統夜を葬ろうとしているアスハと、アスハに協力しているヘラクスだった。
「あ、あなたは!?そ、それに……」
「ほ、ホラー!!?」
梓は突然現れたアスハとヘラクスに困惑し、澪はヘラクスの姿を見て怯えていた。
「……何か、1年前もこんな状況があったよな?」
律は、1年前に暗黒騎士ゼクスの称号を持つディオスと、そのディオスに従っているホラー、ダンテが現れた時のことを思い出していた。
それ故、2人が何故自分たちの前に現れたのかを理解していた。
「お、お前ら!私たちを捕まえるつもりか!?」
「ほぉ、鋭いじゃないか。その通りだ」
アスハとヘラクスの目的こそ、唯たちを捕まえることだった。
「大人しく俺たちと来てくれれば手荒な真似はしない」
「まさか、貴方は統夜君を狙ってるの!?」
「お前たちが知る必要はない。大人しく来てもらおうか」
「……っ!!」
律は周囲を見回して状況を見極めるが、とても逃げ切れそうな状況ではなかった。
「やれやれ……。仕方ない……」
アスハはため息をつくと、魔導筆を取り出し、法術を放つと、梓以外の4人を拘束した。
その術の衝撃で、4人は気を失ってしまった。
「……!!皆さん!!」
「お前は月影統夜に伝えろ。この4人を助けたければ、今から3時間以内にこの場所に来いとな」
アスハは、一枚のメモを梓に持たせた。
「1人で来いとは言わんが、もし来なかった時は……。わかっているな?」
「!!?」
梓はもし間に合わなかったら唯たちがどうなるかを察したのか、顔を真っ青にしていた。
「モタモタしてると時間が無くなるぞ。さっさと月影統夜に伝えるんだな」
こう言い残すと、アスハは瞬間移動の術を放ち、ヘラクスや唯たちと共に姿を消した。
「……」
唯たちがさらわれてしまい、唖然とする梓であったが、急いで携帯を取り出すと、統夜に電話をかけた。
(お願い、統夜先輩!早く出て!)
梓はこのような祈りを込めて統夜に電話をかけた。
すると……。
『もしもし、どうした、梓?』
梓の祈りが通じたのか、統夜が早々に電話に出てくれた。
「統夜先輩!大変なんです!!」
『?どうした?まさか、先生の説得に失敗して、きつい特訓が待ってるとか?』
「違います!!そんなんじゃありません!!」
『?どうしたんだ?そんなに声を荒げて……』
梓は声を荒げて統夜の言葉を否定したことに、統夜は面食らっていた。
「実は、唯先輩たちが、魔戒法師とホラーにさらわれたんです」
『何だと!?唯たちが!?』
「今から3時間以内にとある場所に来いって……」
『……梓、今どこにいる?』
「学校の近くですけど……」
『梓、今から学校の校門前で待ち合わせだ!急いで行く!』
統夜は、梓の返事を待たずに電話を切った。
梓の話を聞いて、事の重大さに慌てているようだった。
梓は、携帯をしまうと、そのまま学校の入り口に向かって走り出した。
5分後、学校の入り口に着いた梓だったが、それと同時に統夜とアキトも到着した。
統夜とアキトは、魔導図書館から帰る途中に梓から電話が来て、慌てて飛び出してきたのである。
「梓、唯たちが捕まったってのは本当なのか?」
「は、はい……。魔戒法師とホラーが現れて、先輩たちを……」
「!魔戒法師とホラーって、まさか……!」
『アスハって奴とこの前取り逃がしたホラーで間違いなさそうだ』
統夜たちは、唯たちをさらったのがアスハとヘラクスであることを確信していた。
「とりあえず、番犬所へ行こう。今回は緊急事態なんだ。梓が番犬所に入るのも許可してくれるだろう」
『……』
統夜が冷静だったことにイルバは驚いていた。
「?どうした、イルバ?」
『いや、お前さんも成長したなと思っただけだ』
1年前、唯たちがさらわれた時は、統夜は心滅になるほど怒り狂っていたのだが、今回は怒り狂うこともなく、冷静だった。
「もちろん唯たちをさらった奴は許せない。だけど、今は1秒でも早く唯たちを助けることだけを考えないと……」
統夜の心の成長ぶりに、イルバだけではなくて梓も驚いていた。
こうして統夜たちは番犬所に向かおうとしたのだが……。
「あら、あなたたち、どうしたの?」
偶然これから帰るところだったさわ子が、統夜たちを見かけて声をかけた。
「!さわ子先生……」
「特に梓ちゃんはどうしたの?深刻そうな顔をして……」
「じ、実は……」
梓は、さわ子にも唯がさらわれたことを話した。
「!ねぇ、それって本当なの!?」
「そうみたいです。……梓、どこに行けばいいかは聞いているか?」
「は、はい。メモを預かりました……」
梓はアスハから渡されたメモを統夜に渡した。
そこには、桜ヶ丘某所にある今は使われていない研究施設の名前が書かれていた。
「……アスハのやつめ、ずいぶんと遠いところを指定しやがったな……」
「え?そうなんですか?」
「この場所、確か桜ヶ丘の本当に奥地にあるんだ。車を使えば1時間ちょっとくらいで着けるんだけど……」
統夜は、指令でこの場所を訪れたことがあったため、その場所がどれだけ距離があるかを理解していた。
「そういうことなら待ってなさい。車を出してあげるわ」
「え?でも……」
「唯ちゃんたちは私の教え子よ。だからこそ、私だって出来ることをしたいのよ!」
さわ子は、教師として唯たちを救いたいという気持ちでいっぱいだった。
「統夜先輩!私も連れてって下さい!!」
「!だけど、梓……」
「危険なことは覚悟してます!私だって、大切な先輩たちを助けるお手伝いがしたいんです!!」
梓もまた、唯たちを助けたい統夜いう気持ちでいっぱいだった。
「……わかった。だけど、俺の言うことは聞くんだぞ」
統夜はそんなさわ子と梓の気持ちを汲み取り、同行することを許した。
『おい、統夜。本気か!?』
「今回は場所が場所だからな。俺たちだけの力じゃどうにもならないと思ってな」
統夜もバイクを持っているのでバイクで向かうことは可能だったが、バイクは2人乗りのため、大輝や戒人の協力を得られないと考えていた。
それだったらさわ子に車を出してもらい、大輝と戒人に協力を要請して共にアスハのもとへ乗り込むべきと判断していた。
『……そういうことならわかったよ』
イルバもさわ子や梓の同行を渋々許可した。
「……それじゃあ先生は車を出して下さい」
「えぇ、わかったわ!」
さわ子は自分の車を取りに駐車場へと向かった。
「アキト、お前は番犬所に行って戒人と大輝さんに応援を要請してくれ。事情を話せばイレス様も許可してくれるハズだ」
「わかった!」
「俺はバイクを取りに行くから、梓はそこで待機しててくれ」
「は、はい!わかりました!」
こうして統夜たちは、それぞれ散り散りになって行動を開始した。
アキトは、番犬所に急行し、大輝と戒人に応援を要請しに行った。
その間に統夜は1度自宅へ戻り、バイクを用意すると、そのバイクに乗り込み、学校の入り口に戻ってきた。
統夜が戻ってきた時には既にさわ子が車に乗ってスタンバイしていた。
しかし、アキトはまだ戻ってきていなかった。
待つ事10分……。
「統夜!戻ったぞ!」
アキトが戒人と大輝を連れて戻ってきた。
「統夜、例の事件の黒幕はやはりアスハとかいう奴だったんだな」
「はい。アスハたちに唯たちがさらわれたみたいなんです。あと2時間くらいで唯たちを助けに行かないと……」
アスハが唯たちを誘拐してから、早くも1時間が経とうとしていた。
「……統夜、大丈夫か?」
「あぁ。唯たちをさらったアスハは許せないけど、まずは唯たちを助ける事を考えないと」
「……」
大輝は統夜の成長に驚いていた。
大輝も1年前に唯たちがさらわれたことで怒り狂う統夜の姿を見ているからである。
「……?大輝さん?」
「いや、何でもない。とりあえず、先を急ぐのだろう?」
「そうですね。さわ子先生、お願いします」
「わかったわ。みんな、私の車に乗り込んでちょうだい」
さわ子の言葉を聞いた戒人、大輝、アキトの3人は、さわ子の車に乗り込んだ。
「統夜先輩。私は統夜先輩のバイクに乗ってもいいですか?」
「あ、あぁ。別に構わないけど」
統夜はバイクに跨り、梓はその後ろに乗り込み、予備のヘルメットを被った。
こうして統夜はバイクを走らせ、アスハが指定した場所へ向かい、アキトたちを乗せたさわ子はそれに続いて車を走らせた。
※※※
統夜たちがアスハの指定した場所へ移動を始めた頃、アスハの指定した桜ヶ丘某所にある研究施設の中では、アスハが統夜のことを待っていた。
「……あと1時間半か……」
アスハは時計を眺めると、約束の時間まであと1時間半となっていた。
「ククク……。月影統夜は間に合うかな?」
約束の時間まであと1時間半もあるのだが、アスハは時計を眺めながら笑みを浮かべていた。
「おい、お前!あたしたちをどうするつもりだ!!」
アスハに捕らえられ、拘束されている唯たちであったが、律がアスハを睨みつけながらこう言い放っていた。
「別に、貴様らをどうこうするつもりはないさ。ただ、貴様らは月影統夜をおびき寄せる餌に過ぎないのさ」
「統夜君をおびき寄せてどうするつもりなの!?」
紬は、アスハを睨みつけてながらこう言っていた。
「俺は全ての魔戒騎士を滅ぼす。その最初のターゲットが月影統夜という訳さ」
「何で統夜や魔戒騎士を滅ぼそうとするんだ!」
澪はこの状況は怖かったものの、臆することなくアスハを睨みつけていた。
「魔戒騎士など己の力を示したいだけのただの無能。だから滅ぼすんだ」
「そんなことない!だってやーくんはどんなに辛くても人を守る守りし者なんだよ!?そんな理由でやーくんや魔戒騎士を殺そうなんて間違ってるよ!!」
唯は自信に満ち溢れた表情でこう語るのだが、その言葉はアスハは気に入らなかった。
「……黙れ、小娘ども!月影統夜が来る前に貴様らを消すことも出来ることを忘れるな!!」
怒気の混じったアスハの脅迫に、唯たちは息を飲んでいた。
これ以上何かを言ったらアスハに殺されかねないと感じた唯たちは、これ以上アスハに対して攻撃的なことを言う事が出来なかった。
「貴様らに見せつけてやるよ。貴様らが信頼している男が無残に殺される姿をな!」
「!?そんな……!」
「奴がこの施設に乗り込んで来た時点で俺の勝ちは確定する。後は俺の最高傑作の力でじっくり痛ぶりながら殺すだけだ!」
このように語るアスハは、高笑いをしていた。
「さて、俺はこれから準備をする。生きてここから出たかったら妙な真似はやめるんだな」
このように言い残すと、アスハはどこかへと姿を消した。
「……やーくん……!」
唯はこれから起こる出来事に胸騒ぎを感じており、不安そうな表情をしていた。
※※※
アスハが指定した研究施設に向かって車とバイクを走らせてから、1時間が経過した。
ここから先は一本道であり、この道を突き進めば、後10分もかからずに研究施設に到着する予定だった。
《……統夜!アスハの指定した時間まであと30分しかないぞ!?》
(30分か……。だけど、ここから先は一本道だ。何もなければあと10分もかからずに到着するハズだ)
1度この場所に来たことのある統夜は、目的地が近いことを知っていた。
それと同時に、誰かが統夜たちの行く手を阻むのではないかという心配もしていた。
(……みんな、待ってろよ!俺たちが絶対に助けるからな!)
このように決意を固め、アクセルを吹かせようとしたその時だった。
「……!?くそっ……!」
統夜たちの目の前に何者かが立ちはだかっており、統夜はバイクを止め、さわ子も車を止めた。
統夜たちはそれぞれの乗り物から降りると、統夜たちの前に立ちはだかっていたヘラクスと対峙した。
「貴様は、あの時のホラーか!!」
「悪いが、ここから先は行かせないぜ!ここでお前らの邪魔をしろとクライアントに頼まれたんでな」
ヘラクスは待ち伏せをして、統夜の邪魔をするようアスハに依頼されていた。
「……そこをどけ!お前の相手をしている暇はない!」
「お前らにはなくても俺にはあるんだよ。それに、お前らの相手は俺1人ではないぜ!」
「!?どういうことだ!」
統夜はヘラクスの言葉に困惑していると、ヘラクスは笑みを浮かべていた。
そして、パチン!と指を鳴らしたその時だった。
「……!!こいつら……!」
「……イデアとの戦いで見たぞ。確か、号竜人だったか……?」
統夜たちの前に現れたのは、人のような姿をした魔導具である、号竜人であった。
それも1体だけではなく大量に現れ、号竜人だけではなく、2体の鉄騎と、1体のリグルと呼ばれる大型の号竜も現れた。
「!鉄騎が2体?それに……」
「くそっ!敵の数が多すぎるぞ!」
「アスハの奴、どうやら俺たちを行かせたくないようだな」
何故アスハがこれだけの軍団を従えてるのかは不明だが、アスハも本気だということは伝わってきた。
「こいつらは全ての魔戒騎士を滅ぼすための尖兵だってよ。こいつらは全てあいつが用意したみたいだぜ!入手経路は俺もわからんがな」
号竜人などの軍団は、アスハが全ての魔戒騎士を滅ぼすために用意したものだった。
しかし、その入手経路はヘラクスにも知らされていなかった。
「時間がない。こうなったら……!」
統夜は魔戒剣を取り出すと、号竜人の軍団を睨みつけながら魔戒剣を抜いた。
「統夜先輩。一体どうするんですか?」
「強行突破する」
「!!?まさか、あの数を突っ切るつもりですか!?」
「それしか方法はない。……先生!俺が道を開くから、梓を乗せてついてきて下さい!」
「!?わ、わかったわ!梓ちゃん!早く!」
さわ子に急かされながら、梓は予備のヘルメットをその場に置いて、さわ子の車に乗り込んだ。
「統夜、俺もついていく。バイクは借りるぜ」
「あぁ。構わない」
アキトは統夜からバイクのヘルメットを受け取ると、それを被ってバイクに乗り込んだ。
「……したらこいつらは……」
「俺たちが蹴ちらす!」
戒人と大輝は、魔戒剣を取り出すと、号竜人の軍団に立ちはだかった。
「……戒人!大輝さん!すいませんが、頼みます!」
「俺たちのことは気にせず、あいつらを助けてこい!」
「こんな奴らなど、俺と戒人だけで充分だ!とっとと行け!」
「……感謝します!!」
統夜は戒人と大輝に礼を言うと、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
そこから放たれる光に包まれると、統夜は奏狼の鎧を身に纏い、それと同時に自身の魔導馬である白皇を召還し、白皇に跨った。
「……ほぉ、強行突破する気か?無論、それはさせんがな!」
ヘラクスはどこからか剣を取り出すと、統夜の邪魔をする準備は整った。
「そこを通してもらうぞ!!」
統夜は白皇の力で皇輝剣を皇輝斬魔剣に変化させると、さらに皇輝斬魔剣の切っ先に赤い魔導火を纏わせた。
そして……。
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
烈火炎装の状態となった統夜は、道を塞いでいる号竜人の軍団に突っ込んだ。
白皇が体当たりをするだけで号竜人が次々と消滅していった。
そして、統夜の行く手を阻むかのようにリグルが立ちはだかった。
「邪魔をするなぁ!!」
統夜は赤い魔導火を纏った皇輝斬魔剣を一閃すると、リグルの体は真っ二つとなり、リグルは何の攻撃もしないまま、爆散した。
そのまま統夜は白皇を走らせると、号竜人の軍団を突っ切り、そのまま研究施設へと向かっていった。
「……!それじゃあ梓ちゃん。しっかり捕まってなさい!」
「は、はい。……って、えぇぇ!?」
さわ子は車を発進させると、ものすごいスピードで、統夜の作ってくれた道を突き進んだ。
途中、号竜人の妨害が入るが、さわ子は自慢のドライブテクニックで、号竜人をかわして、号竜人の軍団を突っ切った。
「さわ子先生、運転上手いですね……」
少しだけ運転は乱暴であったが、梓はさわ子の運転が上手なことに驚いていた。
「当然じゃない!それに、この展開……燃えてくるわ!」
号竜人という障害物をかわしながら突っ切っていったことが、さわ子の血を滾らせることになり、さわ子はスタイリッシュと言っても言い過ぎではないドライブテクニックで、完全に号竜人の軍団を通過していった。
そして、統夜のバイクを借りたアキトも、さわ子の後を追いかけるようにバイクを走らせた。
途中、2体の鉄騎がアキトに立ちはだかるが、アキトはバイクで大きくジャンプをすると、2体の鉄騎を飛び越え、そのままさわ子と共に研究施設へと向かった。
「……随分と行かせちまったが、まぁ、いいだろう。時間稼ぎにはなったからな。俺は、あの2人の魔戒騎士と遊ぶとするか」
ヘラクスは、号竜人の軍団と共に戒人と大輝の相手をすることになった。
「……行くぞ、戒人」
「はい、大輝さん!」
戒人と大輝は、魔戒剣を手に、ヘラクスや号竜人の軍団へと向かっていった。
※※※
統夜は、白皇を走らせて研究施設に到着すると、白皇と共に鎧を解除した。
統夜が鎧を解除してすぐに、梓を乗せたさわ子と統夜のバイクに乗っているアキトも研究施設に到着した。
『……統夜!約束の時間まで後10分だぜ!』
ヘラクスや号竜人の軍団の妨害のせいで無駄な時間を食ってしまったが、まだ約束の時間まで後10分も残っていた。
「……みんな、急ぐぞ」
統夜の号令で、統夜たちは研究施設に乗り込んだ。
中に見張りがいる訳でもなく、順調に進んでいった統夜たちは、研究施設の大広間に到着した。
「……!!見つけた!唯たちだ!」
統夜は、大広間の1番奥で拘束されている唯たちを発見した。
「!?先輩方!!無事ですか!?」
「統夜!?それに、梓まで……」
「さわちゃんとアキトも一緒だったのか!」
澪と律は、統夜1人ではなく、梓、さわ子、アキトも一緒だったことに驚いていた。
しかし……。
「やーくん!来ちゃダメ!!早く逃げて!!」
「唯先輩!何言ってるんですか!?私たちは先輩たちを助けに来たんですよ!?」
「それは罠なのよ!あの人の狙いは統夜君なの!!」
唯が何故逃げるよう言ったのかを紬が説明していた。
しかし……。
「ククク……。もう遅い!」
『!?統夜!上から何か来るぞ!!』
イルバが何かを探知すると、上空から3メートルくらいの巨大な人のようなものが降ってきた。
統夜はその大きさではなく、その姿を見て驚愕していた。
「!?ま、まさか……心滅獣身……!?」
それは、まるで魔戒騎士が鎧の制限時間を過ぎた時になってしまう心滅獣身そのものだった。
「ククク……。よく来たな、月影統夜……。時間通りじゃないか」
「その声……。貴様、アスハか!!」
「それに、この心滅獣身みたいな姿のこれは一体……!?」
統夜は鎧の声の主がアスハであることに驚き、アキトは、心滅獣身のような姿をした鎧に驚いていた。
「驚いたか……?この鎧こそ、俺の技術の全てが込められた最高傑作の魔導具……魔導人機だ!!」
「魔導……人機?」
『こいつは……一筋縄ではいかないようだな……』
統夜やアキトだけでなく、イルバも、魔導人機の放つオーラに圧倒されていた。
「……誰が相手だろうと……こんなところで負ける訳にはいかない!!」
統夜は手に持っている魔戒剣を構えると、アスハの乗る魔導人機を睨みつけていた。
「……統夜……」
「……大丈夫だろうか……」
「そうね。この戦い、何かが起こりそうな気がするのよね……」
紬は、アスハが統夜をここまでおびき寄せるのは何か理由があると思い、そこを心配していた。
「……やーくん……。お願い、死なないで……」
唯はただひたすら統夜の無事を祈っていた。
こうして、アスハの作った魔導人機と対峙した統夜とアキトであったが、こうして統夜たちとアスハとの激闘の幕が開けた。
守りし者として人を守るため戦う統夜たちと、魔戒騎士を滅ぼすために戦うアスハ。
果たして、勝利するのは一体どちらになるのか?
……続く。
__次回予告__
『いよいよ幕を開けた激闘。統夜、全ての魔戒騎士を滅ぼす奴の野望は絶対に阻止するぞ!次回、「銀狼 前編」。絶望を斬り裂け!勇気の刃で!!』
ついにアスハの作りし魔導具、魔導人機が統夜の前に現れました。
今回の話は、統夜の成長ぶりが垣間見える回でした。
唯たちがアスハにさらわれてしまいましたが、統夜は怒り狂うことなく、最後まで冷静でした。
ディオスの事件から1年が経ちましたが、その間に行われた様々な経験が統夜を成長させたのだと思います。
そして、最終決戦に相応しく、アスハが号竜人、鉄騎、リグルとシグマが開発した魔導具を大量投入していました。
どうやってこの魔導具たちを集めたのかは気になるところではありますが、その入手経路はあえて伏せさせてもらいます。
さて、次回は魔導人機との直接対決ですが、前後編にさせてもらいました。
本当は1話でまとめる予定でしたが、そうなると2万字を越えそうだったので……。
それでは、次回をお楽しみに!