牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第58話になります。

今回は、今作3度目となるテスト回になります。

再び近付いてくる期末試験ですが、統夜は無事に試験を乗り越えることが出来るのか?

それでは、第58話をどうぞ!




第58話 「期末試験」

唯と律は進路希望調査表に悪戦苦闘していた。

 

特に唯は自分がどのような道に進みたいかわからずにいた。

 

それでも唯はさわ子にとにかく一生懸命頑張るという意思だけは伝えていたのである。

 

その翌日、統夜はいつものようにエレメントの浄化を行っていた。

 

「……はぁっ!」

 

統夜はオブジェから飛び出して来た邪気を魔戒剣で斬り裂いた。

 

「……ふぅ」

 

統夜は一息つくと、魔戒剣を鞘に納め、魔戒剣をしまった。

 

(……イルバ、時間的にあと一箇所くらいか?)

 

《あぁ。どうやらそうみたいだな》

 

(よし、行くか……)

 

統夜が次のオブジェまで移動しようとしたその時だった。

 

「……あれ?やーくん?」

 

たまたま近くを通っていた唯が統夜を見つけて統夜に声をかけた。

 

「おう、唯か」

 

統夜を見つけた唯は統夜に駆け寄った。

 

「やーくんはお仕事の途中?」

 

「あぁ。それで、唯はどうしたんだ?こんな朝早くに」

 

「うん?今ジョギングをしてるの!とにかく一生懸命頑張ろうと思ってね!」

 

唯は一生懸命頑張るためにジョギングを日課にしようとしていた。

 

「へぇ、それは殊勝な心がけだけど、そろそろ戻った方がいいんじゃないか?じゃないと遅刻するぞ」

 

「そうだね!私は戻ることにするよ!やーくんも遅刻しないようにね!」

 

唯はそう言うと、今来た道を戻ってそのまま自分の家へと向かっていった。

 

「……やれやれ……」

 

統夜は自宅に向かって走り去る唯をジッと見つめていた。

 

《……おい、統夜。俺たちもそろそろ行くぞ》

 

「……おっと、そうだった!」

 

統夜は急いで次のオブジェへと向かっていった。

 

歩くことおよそ10分で、次のオブジェに到着した統夜は、魔戒剣を取り出し、それを抜くと、飛び出してきた邪気を魔戒剣で斬り裂いた。

 

「……ふぅ、とりあえず今日はここまでかな?」

 

統夜は魔戒剣を鞘に納めると、魔戒剣をしまい、今日の仕事が終わったことを宣言した。

 

『あぁ、そうだな。だから急いで学校に向かわないとな』

 

「わかってるって」

 

統夜はエレメントの浄化を終えると、学校に向かって走り始めた。

 

歩いていたら遅刻は必至だったが、走れば時間内には到着できる距離だった。

 

統夜が駆け足で学校の入り口に入ると、それと同時に唯も入ってきた。

 

「あ、やーくん、おはよぉ!」

 

「おう!とりあえず唯、急ぐぞ!」

 

「そうだね!……あ!みんな!!」

 

唯は窓から澪、律、紬、和が見ているのを見つけた。

 

「ゆいー!!早く早く!」

 

和が大きな声で唯に呼びかけたのだが、唯はその場に留まり和たちに手を振っていた。

 

「おい!手を振ってる場合かよ!」

 

『やれやれ。遅刻ギリギリだというのに、余裕なもんだぜ!』

 

和たちに手を振る唯を見て、統夜はツッコミをいれて、イルバは呆れていた。

 

「ほら!唯、行くぞ!」

 

統夜は巻き添えで遅刻は嫌だったので、唯の首根っこをつかんでそのまま唯を引っ張りながら教室へ向かった。

 

「え!?ちょ!?やーくん!?」

 

唯は突然の出来事に動揺するが、統夜は気にする素振りはなかった。

 

しかし、統夜が強引に連れ出したおかげで唯と統夜は遅刻を免れたのである。

 

2人が教室に入るのとHRが始まるのは同時だったので、統夜と唯は教室に入るなりすぐ自分の席についた。

 

「ふわぁ……間に合ったぁ……」

 

唯はHRが終わるなり机に突っ伏していた。

 

「また寝坊か?」

 

律はニヤニヤしながら遅刻ギリギリの理由を聞いていた。

 

「いや、唯の奴ジョギングをしてたんだよ」

 

「それで遅れたのか。つか、何で統夜が知ってるんだ?」

 

澪がこう訪ねると、統夜は周囲を見回してみたが、人が多いため話を聞かれる可能性があった。

 

「朝の日課をこなしてたらたまたま唯を見かけたんだよ」

 

エレメントの浄化という言葉は使わず、日課という言葉を使っていた。

 

澪たちは日課と聞いただけで魔戒騎士の使命だということは察しがついていた。

 

「やーくんの言う通りだよ。進路調査表に頑張るって書いたからねぇ」

 

「うん、頑張って♪」

 

「無意味に励ますなよ、ムギ」

 

紬が無意味に励ましの言葉を使っていることに律が呆れていた。

 

「そういえば、もうすぐ期末だもんな」

 

「えぇ!?もう?」

 

期末テストが近付いていることを知り、唯は驚愕していた。

 

そして、驚愕していたのは唯だけではなかった。

 

「な……なん……だと……!?」

 

統夜は顔を真っ青にしながら絶句していた。

 

統夜もまた、テストが近付いてきたことを知り、驚愕していた。

 

「アハハ……統夜は相変わらずだな……」

 

今回もテストと知った統夜は驚いていたので、それを見た律は苦笑いをしていた。

 

そして、今日から部室も使えないということだったので、統夜たちは放課後、図書室で勉強をすることになった。

 

 

 

 

 

 

そして放課後……。

 

統夜たちは図書室でテスト勉強を行っていた、

 

「……」

 

テストも近いということもあり、統夜たちは勉強に集中していた。

 

しばらく問題を解いていると、唯が紬のノートを覗き込んでいた。

 

「ほわぁ、ムギちゃんのノートすごく綺麗……。欲しい……」

 

唯は紬のノートが綺麗にまとまっているのをみて、そのノートを欲しがっていた。

 

「後でコピーとる?」

 

「わぁい!ありがとう、ムギちゃん♪」

 

「ムギ、悪いんだけど、俺もいいか?理数系の教科だけでいいんだけど……」

 

統夜も自分が苦手な理数系の教科のノートのコピーを貰うために懇願していた。

 

「うん、いいわよ♪」

 

「悪いな、ムギ」

 

統夜はノートのコピーを得られることがわかると紬に礼を言いながら安堵していた。

 

唯は澪のノートを凝視すると、澪は恥ずかしそうにしていた。

 

「……みおちゃんのノート、可愛いね♪」

 

「うるさいよ////」

 

澪は使ってるノートが可愛いと言われて恥ずかしかったのか、澪は頬を赤らめていた。

 

続いて唯は律のノートを見てニヤニヤしていた。

 

「……りっちゃん」

 

「ん?」

 

「お主も授業中に居眠りを……。心の友よ……」

 

律のノートには不自然な線が所々あり、勉強しながら眠ってしまった跡が残っていた。

 

唯は最後に統夜のノートを見ていた。

 

「……ん?」

 

「……やーくんも所々で居眠りしているんだねぇ……」

 

唯は統夜のノートにも律のように居眠りの跡を発見してニヤニヤしていた。

 

「……う、うるさい///」

 

統夜はノートを見られて恥ずかしかったのか、頬を赤らめていた。

 

こんな感じで統夜たちは1時間程図書室で勉強してから学校を後にした。

 

その後、統夜たちはノートのコピーを取るために近くのコンビニに向かった。

 

統夜は理数系の教科のノートのコピーを紬にもらい、唯は全教科のノートのコピーを紬にもらっていた。

 

「ムギちゃん、ありがとうね!」

 

「本当にありがとうな。すごくありがたいよ」

 

「ウフフ♪どういたしまして♪」

 

唯と統夜は心から紬に礼を言うと、紬はニコニコしていた。

 

ノートのコピーが終了すると、統夜たちはコンビニを後にした。

 

コンビニを出た所で、統夜は番犬所に寄るために唯たちと別れ、番犬所に直行した。

 

この日は指令はなかったため、統夜は街の見回りを行っていた。

 

その途中、統夜は唯の家の近くを歩いていたのだが、そこで統夜は70代くらいの女性と話をしている唯を発見した。

 

「……ん?あれは唯か?話をしているのは……知り合いか?」

 

統夜は唯と話をしていり女性が唯とどういう関係かわからず、首を傾げていた。

 

すると……。

 

「……あっ!やーくん!!」

 

唯が統夜の存在に気付き、ブンブンと手を振っていた。

 

それを見た統夜はゆっくりと唯と女性の方へ歩み寄った。

 

「やーくん!もしかしてお仕事の途中?」

 

「まぁ、そんなところかな」

 

統夜と唯が親しげに話すのを見ていた女性は首を傾げていた。

 

「あら、唯ちゃん。その人は唯ちゃんのお友達?」

 

「うん!そうだよ!」

 

「初めまして。月影統夜といいます」

 

統夜は女性に自己紹介をしたのだが……。

 

「月影?……その名前……どこかで……」

 

女性は何故か統夜の名前に聞き覚えがあるらしく、どこでその名前を聞いたのかを思い出していた。

 

「……あぁ、思い出したわ!あなた、もしかして月影明日菜さんの息子さんかしら?」

 

「!!?か、母さんを知っているんですか!?」

 

こんなところで母親の名前が出てくるとは思っていなかったので、統夜は驚きを隠せなかった。

 

「えぇ。10年くらい前だったかしら?明日菜さんにはすごく親切にしてもらったのよ」

 

この女性はかつて統夜の母親である明日菜と親交があったみたいだった。

 

「最近は全然商店街でも見かけないから心配してたのよ。明日菜さんはお元気かしら?」

 

「……か、母さんは……」

 

この女性は明日菜がもうこの世にいないことを知らないようだった。

 

「……!やーくん……」

 

唯は統夜の母親が暗黒騎士ゼクスことディオスに殺されたという話を思い出し、悲痛な面持ちをしていた。

 

「母さんは……。交通事故に遭って……」

 

暗黒騎士に殺されたとは言えなかったので、このように説明した。

 

「!あら、そうだったの?ごめんなさいね、知らずに辛いことを聞いちゃったわよね」

 

「あっ、いえ。気にしないでください」

 

統夜は暗い顔をしないで女性に気を遣っていた。

 

「……それにしても残念ねぇ。明日菜さん、まだまだ若いのにねぇ」

 

「えぇ、そうですね」

 

統夜は母親のことを思い出して少しだけ悲しい表情をしてしまったが、苦笑いをしておどけてみせた。

 

「……あぁ、自己紹介がまだだったわね。私は一文字とみ。唯ちゃんのお隣に住んでいるのよ」

 

この女性……とみは、唯のお隣さんだった。

 

それを知った瞬間、統夜は唯ととみが親しげに話をするのも当然だなと感じていた。

 

「お婆ちゃんには小さい頃からお世話になっているんだよ!」

 

唯は明日菜の話で暗くなった空気を吹き飛ばすために話題を変えた。

 

「あらまぁ、そんなこと言っちゃって♪……ところで、統夜君……だったかしら?あなたってもしかして唯ちゃんとお付き合いをしているのかしら?」

 

「ちょ!?お婆ちゃん!?////」

 

とみが統夜にど直球な質問をしていたので、唯は頬を赤らめていた。

 

そんな中、統夜は頬を赤らめることはなく、平然としていた。

 

「いえ、唯は同じクラスで同じ部活の友達ですよ」

 

統夜は照れることもなく思ったことをはっきりと言っていた。

 

それを聞いた唯は……。

 

「……むぅぅ……!」

 

当然納得がいかず不満だったからか、ぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「あら、そうなの?それは残念ねぇ。貴方みたいにしっかりとした人が唯ちゃんの彼氏なら安心なんだけど」

 

「アハハ……。そう言ってもらえるのは光栄ですけどね。唯とはそんな関係じゃないですけど、俺にとっては大切な人の1人ですよ」

 

「……!////」

 

統夜は心の底からそう思っており、それを話すと、唯は恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしていた。

 

とみはその言葉で統夜と唯の関係を理解し、ウンウンと頷いていた。

 

「……そう。統夜君、これからも唯ちゃんと仲良くしてやってちょうだいね」

 

「……えぇ、もちろんです」

 

統夜はこれからも唯と仲良くしたいという気持ちに変わりはないので、笑みを浮かべながら答えた。

 

それを聞いたとみも笑みを浮かべていた。

 

「……それじゃあ、俺はそろそろ行かなきゃいけないので……」

 

統夜は街の見回りを行わなければいけないので、こう話を切り出した。

 

「あら、そうなの?……あっ、そうだ。今度家に遊びにいらっしゃい。あなたの話や明日菜さんの話を聞きたいから」

 

「えぇ、時間がある時にぜひお邪魔します。……それじゃあ、唯。お互い勉強頑張ろうな」

 

統夜はそう言い残すと、ペコリと一礼し、唯やとみと別れた。

 

その後、統夜は街の見回りを再開し、それが終了すると、自宅に向かった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

翌日、統夜はこの日も日課であるエレメントの浄化を行うが、昨日のように唯を見かけることはなかった。

 

そのため、統夜とイルバは唯がジョギングを1日で挫折したんだなと察していた。

 

エレメントの浄化が終わり、学校へ向かった統夜は教室で唯にジョギングのことを聞いたらやはりジョギングは1日で挫折してしまったようだった。

 

今はテストが近いので、統夜たちは唯がジョギングを挫折したことは何も言わなかった。

 

そしてこの日の放課後、今日も音楽準備室はテスト期間であるため使用出来なかった。

 

そのため、統夜は喫茶店でコーヒーやスイーツを堪能しながらテスト勉強をすることにした。

 

統夜は普段からよく行くお店ではなく、初めて行く店に入ってみることにした。

 

統夜はその喫茶店に入ってみるのだが、その店はどうやら最近出来たばかりの店のようで、内装はとても綺麗で、さらにお洒落な内装だった。

 

しばらくすると、店員がやって来た。

 

「いらっしゃいま……。あーっ!!あんたは!!」

 

店員は統夜を見るなり大声を出して統夜を指差していた。

 

「あんたは!私の個展を台無しにした奴!!」

 

統夜を見るなり大声を出したこの女性は、かつてホラーとの戦いに巻き込まれた東ヒカリだった。

 

ヒカリはホラーとの戦いの後、ホラーに関する記憶は消されたのだが、統夜やアキトのせいで個展がダメになってしまったという記憶は残っていたのである。

 

「あそこのオーナーも何でかわからないけど行方不明になっちゃったし……。あんたは何で個展を台無しにしたのよ!?」

 

ヒカリはホラーに関する記憶を失ってから、統夜に会った時に個展を台無しにしたことを問い詰めるつもりでいたのである。

 

「そ、それは……」

 

ヒカリがホラーに関する記憶を失っているため、統夜はヒカリにどう弁解すべきか悩んでいた。

 

その時だった。

 

「……東くん、どうしたんだい?」

 

ヒカリがなかなか統夜を席まで案内しないのを見かねた店長がこちらにやって来た。

 

「あっ……えっと……その……」

 

「事情はわからないけど、彼はお客様なんだから、早く席に案内してあげて!」

 

「……わかりました。……お席にご案内します」

 

ヒカリはムスッとしながら統夜を席に案内し、お冷を統夜の前に置いた。

 

「……ご注文はお決まりでしょうか」

 

「あっ、ショートケーキ1つと、コーヒー1つ。コーヒーはケーキと一緒でいいです」

 

「……少々お待ちください」

 

ヒカリは不機嫌な表情のまま厨房に向かっていった。

 

それを見届けた統夜はふぅっと一息ついていた。

 

《……統夜。どうやら面倒な相手に絡まれたみたいだな》

 

(そうだな……。あの人はホラーに関する記憶が消えてるから凄く絡みにくいよ……)

 

ヒカリはホラーに関する記憶を失っているため、下手なことを言えないのである。

 

そのため、統夜はホラーに関する話題を避けなければならないので、ヒカリはかなり絡みにくい相手なのである。

 

とりあえず本来の目的である勉強を行うために、統夜は勉強道具を用意し、勉強を始めようとしたその時だった。

 

「……お待たせしました」

 

ヒカリは統夜の注文したコーヒーとケーキを統夜の前に置くと、すぐ統夜から離れていった。

 

統夜はコーヒーとケーキを楽しみながら勉強を行っていた。

 

ヒカリはそんな統夜の様子をジッと観察していた。

 

(……何であいつが私の個展を台無しにしたかはわからないけど、オーナーが行方不明になったことに絶対関わってるわ……!絶対に突き止めてやるんだから!)

 

ヒカリはオーナーが行方不明になった事件を突き止めるつもりでいた。

 

ヒカリは統夜の観察を続けていたのだが……。

 

「すいませーん!!」

 

「あっ、はい!!」

 

他の客に呼ばれ、統夜の観察は中止せざるを得なかった。

 

(……やれやれ、やっと行ってくれたか)

 

統夜は勉強しながらもずっとヒカリの視線を感じていた。

 

(こっちはテスト勉強中だっつうのに、本当に迷惑だよな……)

 

統夜はヒカリに勉強の邪魔をされてると思い、ため息をついていた。

 

《まったくだぜ。あのお嬢ちゃん、妙な真似をしなければいいが……》

 

イルバもイルバで、ヒカリの行動を不審がり、統夜の行動を探ろうとしないかが心配だった。

 

統夜はとりあえず勉強に集中しようとするのだが……。

 

《……統夜。勉強は一時中断だ。どうやら番犬所から指令があるみたいだぜ》

 

イルバは番犬所から呼び出しがあることを統夜に伝えた。

 

(マジか……。もうちょっと勉強したかったんだけどな……)

 

統夜はガックリと項垂れながらもまだ残ってるコーヒーを飲み干し、ケーキを完食して、会計を済ませた。

 

そのレジもヒカリが務めたのだが、その時もヒカリは統夜を睨みつけていた。

 

統夜はそんなヒカリに苦笑いをしながら会計を済ませ、店を出た。

 

統夜が出て行ってからも、ヒカリは店の扉を睨みつけていた。

 

(……あいつ、勉強してたのに、急に出て行ったわね……。また何か企んでるのかしら?絶対にあいつの尻尾を掴んでやるんだから!)

 

ヒカリは統夜に対して抱いている疑惑を明らかにしようとしていた。

 

しばらく扉を睨みつけていると、再び客に呼ばれ、ヒカリは忙しく働いていた。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

どうにか番犬所にたどり着いた統夜は、指令書を受け取ると、魔法衣から魔導ライターを取り出して、指令書を燃やした。

 

すると、魔戒語で書かれた文章が浮かび上がってきたので、統夜はそれを音読した。

 

音読が終わると、魔戒語で書かれた文章は消滅した。

 

「……わかりました。直ちにホラーを見つけて討滅します」

 

「……頼みましたよ、統夜」

 

統夜はイレスにペコリと一礼すると、番犬所を後にした。

 

それから統夜はイルバのナビゲーションを頼りにホラー捜索を開始した。

 

しばらく歩いていると、陽は落ちて、夜になっていた。

 

「……イルバ、ここか?」

 

イルバのナビゲーションで統夜がたどり着いたのは、桜ヶ丘某所にある今は使われていない農場だった。

 

『あぁ。ここから邪気を感じるぜ。統夜、油断するなよ』

 

イルバがこのように警告をすると、統夜は魔戒剣を取り出し、いつでも抜刀出来るようにしておいた。

 

すると……。

 

『……統夜!来るぞ!』

 

イルバがこう宣言すると、ティラノサウルスのような姿をしているホラーが現れた。

 

『統夜!こいつはレクス。本能のまま人間を喰らうたちの悪いやつだぜ!』

 

ティラノサウルスのような姿をしたホラー、レクスは、本物のティラノサウルスのような迫力であり、本能のままに人間を喰らう。

 

レクスが街中に現れれば大惨事は免れない状態になるのである。

 

「なるほど……。こいつが街に出る前に始末しないとな」

 

統夜は不敵な笑みを浮かべると、魔戒剣を抜いて、レクスを睨みつけながら魔戒剣を構えた。

 

すると、いきなりレクスが体当たりを仕掛けてきたので、統夜は横っ飛びをして攻撃をかわした。

 

「っと、危ねぇ危ねぇ!」

 

『統夜!油断するな!次が来るぞ!!』

 

イルバがすぐさま警告をすると、レクスは尻尾による攻撃を繰り出してきた。

 

統夜はジャンプして尻尾による攻撃をかわすと、そのまま魔戒剣を一閃した。

 

しかし、その一撃でレクスに大きなダメージを与えることはなく、レクスは反撃といわんばかりに尻尾による攻撃を統夜に叩き込んだ。

 

レクスの尻尾をモロに受けた統夜はそのまま吹き飛ばされ、近くに建てられた柱に叩きつけられた。

 

「ぐぅ……!」

 

その衝撃はかなりのものだったが、統夜はどうにか起き上がった。

 

「野郎……!やってくれるじゃねぇか!」

 

今の一撃で統夜の闘志に火がついたのか、統夜は鋭い目付きでレクスを睨みつけた。

 

その迫力はかなりのものだったからか、レクスは思わずだじろいでしまった。

 

「こうなったら一気に決着をつける!……貴様の陰我、俺が断ち切る!」

 

統夜はレクスに向かってこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、統夜は白銀の輝きを放つ奏狼の鎧を身に纏った。

 

統夜の睨みで怯んだレクスだったが、統夜にトドメを刺すために再び体当たりを仕掛けてきた。

 

統夜はジャンプして体当たりをかわすと、皇輝剣を一閃し、尻尾を切り離した。

 

その痛みはかなりのものだったのか、レクスは断末魔をあげていた。

 

「これで……どうだ!!」

 

統夜はすかさず皇輝剣を一閃すると、今度はレクスの体を真っ二つに斬り裂いた。

 

自分の体を斬り裂かれたレクスは、再び断末魔をあげると、その体は爆散し、消滅した。

 

レクスが消滅したことを確認した統夜は、鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を青い鞘に納めた。

 

「ふぅ、どうにか倒したか。……いてて……」

 

レクスの攻撃で壁に叩きつけられた時、骨折はしなかったものの、ダメージは大きく、まだ痛みは残っていた。

 

『やれやれ……。統夜、あれくらいの攻撃をかわせないようじゃ、お前さんもまだまだだな』

 

イルバは戦いが終わるなり、統夜に先の戦いのダメ出しをしていた。

 

「うぐっ……!あ、あれは!ただ油断しただけだっての!」

 

統夜は素直にイルバの言葉を認めるのが癪だったのか、苦し紛れに言い訳をしていた。

 

『……まったく、そんな油断をするからまだまだだって言ってるんだぜ』

 

イルバは必死に言い訳をする統夜に呆れていた。

 

『まぁ、それから速やかに奴を倒したのは評価するぜ。並の騎士ならあそこで戦闘不能になってただろうしな』

 

しかし、イルバは受けたダメージを物ともせず、速やかにレクスを討滅したことは評価していた。

 

『……本来ならもっともっと精進すべきだが、まずはテストをどうにかしないとな』

 

「……わ、わかってるよ!」

 

『だからさっさと帰るぞ、統夜。帰って勉強しないとな』

 

ホラー、レクスを討滅した統夜は、テスト勉強を行うためにまっすぐ帰宅した。

 

家に到着し、シャワーを浴びた後に1時間ほどテスト勉強を行ってから就寝した。

 

……そして、期末試験が刻一刻と迫ってきていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ。唯のやつ、テスト期間だというのにこんなことをするとはな。テストの方は大丈夫なんだろうな?次回、「演芸」。まぁ、本気でやるなら頑張るんだな』

 

 




テスト回(テスト当日まで行くとは言っていない)といった感じになってしまいました(笑)

そして今回は、唯のお隣さんも登場しました。本編見た時も思いましたが、凄く優しそうな人ですよね。

さらに、以前ホラーとの戦いに巻き込まれ、ホラーに関する記憶を失った東ヒカリが再登場しました。

ホラーに関する記憶だけ失ってるため、ヒカリはオーナーが行方不明になったことに統夜が関わってるのではないかと疑っています。

ヒカリも画家を目指してるという設定ですが、カオルももしホラーの返り血を浴びなかったら今回のヒカリのように鋼牙に絡んでいたのではないかと思います。

ヒカリはこれからもちょこちょこ登場させていく予定です。

さて、次回は期末試験と演芸大会の話になります。

統夜は無事に試験を乗り越えることは出来るのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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