牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第56話です!

それにしてもリオオリンピックが始まって盛り上がってますね!

日本代表の皆さんには本当に頑張って欲しいです。

さて、今回はタイトル通り進路の話になっていきます。

統夜の進路は決まっていますが、唯たちはどのような進路を考えているのか?

それでは、第56話をどうぞ!




第56話 「進路」

澪ファンクラブのためのお茶会が終わり、数日が経過した。

 

この日の放課後、統夜はそのまま音楽準備室に行こうとしたのだが、唯が何かのプリントと格闘していたのが気になっていた。

 

「……ったく、唯のやつ、何やってんだか……」

 

統夜が唯の席に移動すると、澪、律、紬の3人も唯の席に移動するところだった。

 

「……唯、一体どうしたんだ?」

 

「どうしたもこうしたもないのよ……」

 

統夜が唯に声をかけるが、和の反応を見て、由々しき事態だということは理解出来た。

 

澪は唯が向かっているプリントを見たのだが、そのプリントは「進路希望調査表」と書かれており、進路希望を書く欄は白紙だった。

 

「唯、まだ進路決めてなかったのか?」

 

進路希望調査表の提出期限はとうに過ぎていたのだが、唯はまだ進路を決めてなかったのである。

 

「……みおちゃんは何て書いたの?第一志望」

 

「私?私は推薦もらおうかなって」

 

澪は成績優秀で、授業態度も良く、教師からの評価も高いので、推薦は十分に狙えるレベルだった。

 

「……推薦っと」

 

唯はそんな澪の話を聞き、第一志望の欄に推薦と書こうとしていた。

 

「唯、お前は推薦って言葉の意味を知ってるか?」

 

「ほえ?何のこと?」

 

統夜は唯に推薦の意味を問うが、唯は言葉の意味を理解していなかった。

 

《やれやれ、推薦も知らん奴が推薦とか無理な話だな》

 

(あぁ、全くだよ)

 

推薦の意味も知らないのに推薦と書こうとしている唯に統夜とイルバは呆れていた。

 

それは統夜やイルバだけではなく、澪たちも呆れていた。

 

「ムギちゃんはどこにするの?」

 

唯は続いて紬に進路を聞いていた。

 

「私は、前話した女子大に」

 

紬は以前から某女子大に行くということを話していたのだが、そこは変わっていなかった。

 

「凄い!名門じゃないか!」

 

その女子大はレベルが高いので、澪は素直に紬に関心していた。

 

「私もそこにする!」

 

「いやいや、無理だろ!」

 

「そうよ、いい加減にしなさい!」

 

唯の適当さに統夜は呆れ、和はそんな唯を注意していた。

 

「ムギ、確かムギの行こうとしている女子大って難しいんだろ?」

 

「良かったら、赤本見てみる?」

 

「まぁ、女子大だから俺は入れないが、参考程度に見てみようかな」

 

統夜は紬から赤本を借りてペラペラとページをめくって様々な問題を見てみたのだが……。

 

「……うん。理数系は未知の領域だが、他は何とか……」

 

理数系の教科は統夜には絶望的だったが、他の教科は勉強さえちゃんとすれば、何とかなる感じだった。

 

しかし、紬が受けるのは女子大なので、統夜は受けることすら出来ないが……。

 

「まぁ、俺がこんなんだから唯には無理だと思うぞ」

 

統夜はこう唯に警告して赤本を渡すと、唯は赤本を読み始めた。

 

律も一緒に赤本を見ていたのだが……。

 

「ひぃ!?目がチカチカする!」

 

問題があまりに難しかったのか、2人揃って現実逃避をしていた。

 

「……現実を知ったな」

 

「ここは日本だ!英語なんて必要ない!」

 

「必要ない!」

 

赤本の問題を見たのがたまたま英語だったのか、唯と律は揃って英語を否定していた。

 

「我々は、日本語だけで生きていく!」

 

「生きていく!」

 

「「アッハッハッハッハ!!」」

 

唯と律は肩を組んで高笑いをしていた。

 

統夜はそんな2人を見てため息をついていた。

 

「……お前ら、学校の英語で赤点取ったら留年だって知らないだろ?」

 

統夜の指摘を聞いた唯と律は少しの間固まり、英語が必要と思い知らされてショックを受けていた。

 

「でも、入試だったら他の教科で良い点を取ればいいのよ」

 

「ほら、お前ら。ここなら何とかなるんじゃないか?」

 

統夜は机に置かれた赤本を手に取ると、古文の問題を唯に見せたのだが、唯には難しかったらしく、律に赤本を投げ渡した。

 

律は唯から赤本を受け取ると、統夜の言っていた古文の問題を確認した。

 

「……えっと、「次の助動詞が同じ使われ方のものを選びなさい」。か……」

 

律は問題を読んで少し考えるのだが……。

 

「こんなの習ってない!」

 

「おい、律。これは高1の問題だぞ。流石にその問題は俺でもわかるぞ」

 

統夜が唯や律に勧めた問題は、高1の範囲の問題だった。

 

「な……!なん……だと?そんな馬鹿な!!」

 

律はこの問題が高1の問題とわかり、唖然としていた。

 

「……あのなぁ、そんなに驚くことか?」

 

今解こうとしている問題が高1の範囲とわかって唖然とする律を、統夜はジト目で見ていた。

 

「助動詞はね、歌で覚えるといいって習わなかった?」

 

「ほえ?」

 

紬はとある曲に乗せて助動詞の歌を歌うのだが、それは唯も知っているようで、唯は途中から助動詞の歌を最後まで歌っていた。

 

「……それで、これをどうすればいいの?」

 

唯は助動詞の歌は知っていたが、肝心の意味は理解してないようで、統夜、澪、和の3人は思わずコケそうになっていた。

 

「おい!それじゃ意味ないだろ!」

 

すかさず統夜がツッコミを入れ、唯は苦笑いをしていた。

 

「……ところで、やーくんは卒業したらどうするの?」

 

「あぁ、俺か?俺は……」

 

統夜の進路はすでに決まっていたのだが、教室では公言することは出来ず、返答に困っていた。

 

「?やーくん?」

 

「唯、少しは察してあげなさい」

 

「察する?……あっ、そうか!」

 

唯も統夜が魔戒騎士であることは知っているので、卒業後は魔戒騎士として本格的に活動するとはこの場で公言は出来ないことを察した。

 

「……ま、そういうことだ」

 

「そうだったね。……それで、りっちゃんはどうするの?」

 

「ん?あたし?あたしは未定って書いておいた」

 

律は一応進路希望調査表を提出したものの、未定と書いて提出していた。

 

「おいおい、良いのか?それで」

 

あまりに適当な回答に統夜は呆れていた。

 

「いいんだよ!進路なんてまだ全然わからないし」

 

「そうだよね!私も未定にしよう!」

 

唯は進路がわからないという律の言葉に賛同し、進路希望調査表に「未定」と記入してしまった。

 

「紙切れなんかにあたしたちの未来は決められないぜ!」

 

「ないぜ!」

 

律と唯はこう公言して堂々としていたのだが……。

 

『……3年2組の田井中さん、平沢さん、月影君。至急職員室まで来なさい』

 

校内放送で呼び出しがかかってしまったのてあった。

 

「「ガーン!!?」」

 

「つか、何で俺まで!?」

 

唯と律は呼び出しを受けたことにショックを受けて、統夜は自分も呼び出しを受けたことに驚いていた。

 

「まぁ、呼び出しを受けたんだから仕方ないか。唯、律、行くぞ」

 

統夜は唯と律を連れて職員室に向かうことにした。

 

「……多分遅くなるから澪とムギは先に行っててくれ」

 

澪と紬にこう言い残すと、統夜はぶつぶつと文句を言っている唯と律を連れて職員室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

統夜、唯、律の3人が職員室の中に入ると、すでにさわ子が3人を待っていた。

 

「あっ、やっと来たわね」

 

統夜たちの顔を見るなり、 さわ子はため息をついていた。

 

「先生、唯や律はわかりますが、何で俺も呼び出しを?」

 

統夜は自分が呼び出された理由がわからなかったので、その理由をさわ子に聞いていた。

 

「あぁ。統夜君の進路は知っているけど、それをハッキリと進路希望に書く訳にはいかないでしょう?とりあえず何か別の希望を書いて欲しいのよ。他の先生に見られても良いようにね?」

 

さわ子はそういうと、白紙の進路希望調査表を統夜に手渡した。

 

「……わかりました。それを考えてみます」

 

「統夜君はあといいわよ。問題はこの2人なんだから」

 

統夜は進路希望に魔戒騎士と書くのはまずいので、適当でもいいからそれに代わる何か希望を書いて欲しいと言われただけで、用事は終わった。

 

本当に問題なのは未だに進路を決めていない唯と律なのである。

 

「いえ、俺もここで話を聞いています。俺もこいつらが心配なので」

 

統夜は先に部室に戻らず、唯と律の話を聞くことにした。

 

「……自分の進路なんだから、2人とももうちょっと真面目に考えなさい?」

 

「へーい」

 

律は面倒臭そうに返事をしていた。

 

しかし、唯は釈然としないと言いたげな感じだった。

 

「……唯ちゃんはまだ決められないの?」

 

「なんだか、ずっと先のことだから、想像出来なくて」

 

「……まぁ、それはわからなくはないがな……」

 

統夜は魔戒騎士として生きることを決めてはいるが、魔戒騎士ではなく、一般人として生きてたらきっと同じことを思うだろうと考えていた。

 

「ずっと先でもないでしょう?あっと言う間よ」

 

「なるほど、さわちゃんも歳をとる訳だ」

 

「……何か言ったかしら?」

 

律の言葉が気に食わなかったのか、さわ子は律の頬をつねっていた。

 

「……!そういえば、さわちゃんは昔はあんなだったのに、どうして先生になろうと思ったの?」

 

律は普段から思っていた疑問を思い出すと、それをさわ子に聞いていた。

 

その質問に驚いたさわ子は思わず頬をつねるのをやめた。

 

「え?い、いや……それは……」

 

さわ子は頬を赤らめると、律の質問に答えようとはしなかった。

 

「え?何々?」

 

「……恥ずかしいから……」

 

「参考にしたいので、ぜひ聞かせてください!」

 

律は上手いことを言ってどうにかさわ子に教師になった動機を聞こうとしていた。

 

「俺も気になるなぁ!」

 

統夜も気になっていたことなので、律の話に乗っかっていた。

 

すると、観念したさわ子がようやく語り始めた。

 

「……実はね、その時好きだった人が先生になりたいって言っていて、それじゃあ私も!って……」

 

「……不純だな」

 

「つか、その選び方はまるで唯みたいだな」

 

唯も先ほどまで誰かの進路を真似て書こうとしていたので、やり方が唯に似ていると感じていた。

 

「それで、その人とはどうなったの?」

 

唯は聞いてはいけないであろうことをあっさりと聞いていた。

 

「フラれたわよ!」

 

さわ子はその時のことを思い出して泣き出してしまった。

 

「あーあ、唯のやつ、地雷踏んだな」

 

何も臆することなくさわ子のタブーを聞いた唯に統夜は呆れていた。

 

「でもさ、その人のおかげで大学に行けて先生にもなれたんでしょ?」

 

「そうだよ、大切なのは過去じゃなくて今だよ、さわちゃん」

 

「でも、その今も彼氏はいないんだよね?」

 

「あーあ、また言ってはいけないことをさらっと……」

 

「ほえ?」

 

統夜はさわ子のタブーをズバズバ言っている唯に呆れていた。

 

とりあえずさわ子になるべく早く進路を決めるよう釘を刺されると、さわ子の話が終わったので、統夜たちは職員室を出て、そのまま部室へと向かった。

 

統夜たちが音楽準備室に入ると、澪、紬、梓、和の4人でティータイムを行っていた。

 

「あ、おかえり!どうだったんだ?」

 

「まぁ、俺はたいしたことはなかったが……」

 

「またさわちゃんの過去が1つ明らかになった!」

 

「えぇ!?怒られたんじゃないのか?」

 

さわ子から説教を受けたはずなのにケロッとしている唯と律を見て、澪は驚いていた。

 

「いやぁ、人生色々ってやつだねぇ」

 

「……また何かしでかしたんじゃないだろうな?」

 

「違うって、色々なことがあって、人は強くなっていくってことだよ」

 

『おい、律。たださわ子に話を聞いただけでそこまで哲学的ではないだろう』

 

さわ子の話を黙って聞いていたイルバは哲学的な話でまとめようとする律に呆れていた。

 

ずっとティータイムを行っていた4人はいまいち話がわからなかったので、首を傾げていた。

 

そうしているうちに唯と律は自分の椅子に座り、統夜も椅子に座ってイルバ専用のスタンドを用意し、そこにイルバをセットした。

 

「それで、進路調査表はあれで良かったの?」

 

「まぁ、当然駄目だよな」

 

統夜は苦笑いをしながら結果だけを話していた。

 

「あれ?それじゃあ統夜先輩も駄目だったってことですか?」

 

「あぁ。さすがに進路調査表に魔戒騎士と書く訳にはいかないからな。先生も何か代わるものを書いてくれって言われたよ」

 

「まぁ、確かに魔戒騎士なんて書いたら周りに統夜君が魔戒騎士だってことがバレるわよね?」

 

「そうですね……。それで、何て書くつもりなんですか?」

 

「んー、そうだなぁ……。大学ってのも興味はあるんだけどな」

 

統夜は高校生活を通して、大学生活というものに興味を持っていた。

 

しかし、卒業後は魔戒騎士として生きる事を決めているため、進学は全く考えていなかった。

 

「とりあえず進学って書いておいたらいいんじゃない?大学は後で自分のレベルに合うものを選んでおくといいわ」

 

「なるほどな。それじゃあ、そうさせてもらおうかな」

 

統夜は和の的確なアドバイスのおかげで、進路希望調査表にどうかくべきかはっきりとわかった。

 

とりあえず大学は後で調べてみようということで、統夜の話は落ち着いた。

 

しかし……。

 

「唯の進路希望調査表はあれで良かったの?」

 

統夜は良くても、唯と律は進路希望調査表に問題があったので、和が唯に確認を取っていた。

 

「駄目だった」

 

唯はあっさりと却下されたことを伝えた。

 

「将来なりたいものとかないの?」

 

「そうだよな。子供の頃の夢がそのまま仕事に繋がる可能性だってあるもんな」

 

「……統夜先輩が言うとなんか説得力がありますね……」

 

統夜は子供の頃から魔戒騎士になりたいと願い、修行に打ち込んで魔戒騎士になれたため、過去の夢が未来の仕事に繋がるという言葉に説得力があった。

 

「……うーん、なりたいものかぁ……。みおちゃん、何がいいと思う?」

 

「自分で決めろ」

 

『まぁ、そこは誰かに決めてもらうことではないよな』

 

イルバは澪の態度を見て、それが当たり前の反応だと感じていた。

 

唯は子供の頃の夢も思い出せず考え込んでいたのだが……。

 

「唯、小学生の頃は幼稚園の先生になりたいって言ってなかった?」

 

「あっ!そうだった!」

 

唯とは幼なじみである和は唯が小学生の頃になりたいと言っていた職業を覚えており、和の言葉を聞いて、唯も思い出していた。

 

唯は小学生の頃の作文で「将来の夢」というテーマで発表をしたのだが、唯は「幼稚園の先生になって子供達と一緒に遊んでいたい」と発表していた。

 

その作文を聞いた子供達は一斉に笑い出し、それを見た唯も笑っていた。

 

和が統夜たちにその話をすると、統夜たちも同様に笑っていた。

 

「アハハ!唯らしいな!」

 

「確かにな!それにしても、幼稚園の先生か。意外と向いてるかもしれないぞ」

 

「そうかもしれないですね。ただ、幼稚園の先生も大変みたいですけどね」

 

統夜は唯が幼稚園の先生に向いてるかもしれないと思っていた。

 

梓もそれに同意するものの、幼稚園の先生は大変だということを語っていた。

 

「……あっ、そうそう!作文といえばさ、澪が作文で優秀賞を取ったって話があってさ!」

 

律が作文と聞くととある話を思い出し、それを聞いた澪は慌てていた。

 

「え?その話、聞きたい!」

 

「私も聞きたい!」

 

紬と唯は律の話そうとしている話に興味津々だった。

 

「あ、梓!練習しよう!練習!」

 

澪はどうにか話を誤魔化すために梓に練習しようと提案するのだが……。

 

「……」

 

梓は何も言わずに澪のことをジッと見つめていた。

 

言葉は発していないものの、自分もその話を聞きたいということは伝わった。

 

「……澪、諦めて話した方がいいんじゃないか?俺もその話に興味あるしな」

 

『あぁ、俺様も興味があるな』

 

「統夜とイルバまで!?」

 

統夜とイルバも話を聞きたいと言っているため、澪の逃げ道は完全に無くなってしまった。

 

それで観念した澪は、話をすることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『澪と律のやつ、仲が良いとは思っていたが、こんなきっかけで仲良くなったとはな。次回、「親友」。律と澪、2人の友情のきっかけが明らかになる!』

 

 




今回は少し短めになってしまいました。

唯と律以外はしっかりと進路を決めているようです。

まだ進路を決めていない唯と律はしっかりとした進路を決めることが出来るのか?

最近はけいおんメインの話が多かったからか日常回が多いような……。

近いうちに戦闘シーンもいれたいな……。

もう何話かで話を進めていこうとは考えていますが……。

次回は澪と律がどのようにして仲良くなったのかが明らかになります!

それでは、次回をお楽しみに!


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