牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第55話になります!

今回は前回の続きで、今回はお茶会の話になります。

澪ファンクラブのために行なわれるお茶会は一体どのようなお茶会になるのか?

それでは、第55時をどうぞ!





第55話 「茶会 後編」

澪ファンクラブのためのお茶会が行われることになった。

 

それが決まると、ファンクラブ会長である和主導で統夜たちはその準備に追われていた。

 

和はお茶会の会場を押さえ、梓はお茶会のポスターを制作し、お茶会の宣伝もバッチリ行っていた。

 

この日も音楽準備室でお茶会の準備を行っていた。

 

「もうすぐお茶会だけど、だいぶ本格的になってきたわね」

 

「みおちゃんファンクラブのために大盤振る舞いだよ!」

 

唯は澪が1人で写っているプリントシールを大量に仕入れ、消しゴムやティッシュ、割り箸など様々な物に貼っていた。

 

「なぁ、唯。大盤振る舞いってこれのことか?」

 

「そうだよ?んとねぇ、「みおちゃん鉛筆」に、「みおちゃん消しゴム」、「みおちゃんティッシュ」、「みおちゃんチョコ」、「みおちゃん栓抜き」、「みおちゃんお箸」に、「みおちゃん孫の手」……っと」

 

唯は澪の写真シールを貼っただけの物をいくつも紹介していた。

 

「変なものまで作るな!」

 

澪はそれらが恥ずかしいのが、唯に猛抗議していた。

 

「みおちゃんシール貼っただけ!」

 

「お手軽だけど可愛いでしょ?」

 

「……つか、いくらファンでもこんなもんもらって嬉しいものなのか?」

 

『俺様もそう思う。むしろありがた迷惑な気がするがな』

 

「まったく、統夜もイルバも冷めたこと言うなよな」

 

「そうだよ!やーくん、イルイル!こういうのは気持ちが大切なんだから!」

 

唯がそんな統夜とイルバを力説していた。

 

「そ、そういうものか……」

 

『それより唯!毎度毎度俺様を変なあだ名で呼ぶな!』

 

統夜は唯の熱意にタジタジとなり、イルバはいつものツッコミをいれていた。

 

「憂がクッキーを焼いてくれたわ」

 

「みおちゃんクッキーだよ♪」

 

唯は新たな澪グッズ誕生に喜んでいた。

 

「それよりもやーくん。何かお茶会に出せそうな魔導具はないの?」

 

「そんなものはないけど、お前、まさか……!」

 

「そう!「みおちゃん魔導具」も出したいの!」

 

「却下だな。つか、魔導具なんてもらっても一般人は使えないだろうが。それに、使えても魔導具をそんなことに使うのは……」

 

本来魔導具はホラーを探したり、ホラーを倒すためにと主に魔戒法師の仕事道具なため、このようなお茶会専用の魔導具を作るというのを統夜は良しとしなかった。

 

「むぅぅ……。いいもん!アキトさんに聞いてみるから!」

 

「あいつだったら悪ノリしそうだからやめてくれ。っていうかいつの間にか連絡先交換したんだな」

 

「うん!この前アキトさんが来た時に!」

 

統夜は東京でアキトと共闘した時に連絡先を交換したのだが、唯たちはアキトが桜高に遊びに来た時に連絡先を交換したのである。

 

ちなみに戒人は携帯を持っていないので、戒人とは統夜も唯たちも連絡先の交換はしていない。

 

「それよりも、律先輩。会費はいくら取る?とか言わないで下さいよ」

 

「何おう!人を守銭奴のように!」

 

「よく言うぜ……。ギターのお金を丸々ネコババしようとしたくせに」

 

「そんな前の話を持ち込むなよ!そのお金のおかげでトンちゃんが来たんだからいいだろ!?」

 

律は前にあった話を誤魔化すために水槽の中を悠々と泳ぐトンちゃんを指差していた。

 

「まぁ、確かにな」

 

統夜はこれ以上追求してこなかったので、律は安堵していた。

 

すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえて来ると、以前部室を覗いていた2人が音楽準備室に入ってきた。

 

「失礼します。差し入れを持ってきました!」

 

「本当に!?」

 

「皆さんで食べて下さい!」

 

短髪の女の子が袋に入った差し入れを差し出してきたので、唯がそれを受け取った。

 

「ありがとぉ♪あ、焼きそばパンだよ!?」

 

「マジか!?俺、焼きそばパン大好物なんだよね♪」

 

統夜は大好物である焼きそばパンがあると聞いて興奮していた。

 

(やれやれ……。統夜、お前なぁ……)

 

イルバは焼きそばパンに興奮する統夜を見て呆れていた。

 

すると、ショートヘアの女の子がスタンドに立てられたイルバを見て首を傾げていた。

 

「?どうかしたか?」

 

「あっ、いえ……。あそこのスタンドに立てられた指輪の表情が変わった気がしまして……」

 

「き、気のせいじゃないのか?」

 

統夜はショートヘアの女の子にこう言って聞かせることにした。

 

まさか、イルバの微妙な表情の変化に気付くとは思っていなかったので、統夜は少しだけ慌てていた。

 

「そ、そうですか……」

 

「それよりも、差し入れ、ありがとな」

 

澪が2人に礼を言うと、嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべていた。

 

「あの!お茶会、楽しみにしてます!」

 

「失礼しました!」

 

2人はペコリと一礼すると、音楽準備室から出て行った。

 

「ありがとねぇ♪」

 

「可愛い♪」

 

あの2人は1年生なのだが、あまりに初々しい姿に紬はうっとりとしていた。

 

「みんな、楽しみにしてくれてるみたいね♪」

 

『……そんなことよりも、さっきは危なかったぜ……』

 

イルバは先ほどまでポーカーフェイスだったが、喋ることがバレそうだったので、焦っていた。

 

「確かに、さっきは俺も焦ったよ。まさかあの子……イルバの微妙な表情の変化に気づくとはおもってなかったからな……」

 

「え?そうだったんですか?」

 

「まぁ、多分バレてはいないと思うけど……」

 

「それよりもさ、肝心の曽我部先輩は来るのか?」

 

律は話題を変えて、1番肝心な話題を振った。

 

しかし……。

 

「えぇ!?来れない!?」

 

「手紙は書いたんだけど、その日はサークルの旅行で来られないって……」

 

恵は今通っている大学でとあるサークルに入っているのだが、お茶会の日はそのサークルの旅行と被ってしまったのである。

 

「それじゃあ、意味ないですね」

 

恵が参加出来ないとわかり、梓は残念そうにしていた。

 

「そうだよなぁ。こうなったら日程をずらすか?」

 

統夜はお茶会の日を変更することを提案したのだが……。

 

「もう告知したのなら、わざわざ日程を変える必要はないって言われたの」

 

「そんな……」

 

「曽我部先輩の望みは、ファンクラブを継続させて盛り上げることだからって。お茶会で、ファンクラブの現役会員の人たちが喜んでくれればそれで満足だからって」

 

「……何か大人な発言……」

 

「女子大生だもんね」

 

恵は高校にいる時から大人びてはいたが、大学に進学し、より大人になったのであった。

 

「卒業して大人になって、澪ファンも卒業したってことなのか?」

 

「そんなことないです!きっとたまたま予定が重なって仕方なかったんですよ!」

 

律の澪ファン卒業という発言に何故か梓が猛抗議をしていた。

 

「……私たちに気を遣わせないようにって思ってただけなのよね……」

 

澪は何か考え事をしていたのだが、律はそんな澪を見て澪の心中をナレーションしていた。

 

それに気付いた澪はすぐさまツッコミを入れていた。

 

「……それじゃあ、日程もプログラムも変更はなしってことで進めましょう!」

 

こうして、恵が当日欠席ということがわかったが、予定は変更せず行うことになった。

 

そして、紬が制作した当日の進行表が全員に配られた。

 

「司会は唯ちゃんとりっちゃんでお願いね♪」

 

「「うぃーっす!」」

 

唯と律は司会進行を任され、なぜか敬礼をしていた。

 

統夜も進行表を見て自分の役割を確認した。

 

すると……。

 

(俺の仕事は主に雑用って感じだな)

 

統夜の主な仕事はケーキや紅茶の配膳が主な仕事であり、お茶会中の雑用全般も仕事だった。

 

「統夜君も大変だと思うけど、よろしくね!」

 

「あぁ、任せろ!」

 

統夜もお茶会に向けてやる気は満々であった。

 

こうしてお茶会の準備は着々と進んでいった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

そして、お茶会当日を迎えた。

 

この日はこのお茶会を歓迎するかのように快晴だった。

 

『えぇ、本日は第1回秋山澪のファンクラブお茶会にお集まりいただき、まことにありがとうございます!』

 

律が最初の挨拶を行い、お茶会はスタートした。

 

このお茶会は音楽準備室ではなく、その隣の音楽室で行われた。

 

今日のお茶会は大々的な告知の効果があったからか、会場の席は満席だった。

 

『僭越ながら次回を務めさせていただきます。私、田井中律と……』

 

『平沢唯です!』

 

『『よろしくお願いします!』』

 

律と唯の挨拶が終わると、会場から拍手が起こっていた。

 

「たくさん集まりましたね!」

 

梓は舞台袖から客席を見ると、お客さんの多さに喜んでいた。

 

「あぁ、そうだな」

 

統夜も舞台袖からお客さんの様子を眺めていた。

 

すると……。

 

「……何か見たことある顔がちらほらいるが……」

 

統夜は客席を見渡すと、見知った顔が何人か発見した。

 

「……まぁ、佐々木さんがいることはまだ良しとしよう」

 

統夜はクラスメイトである佐々木曜子の姿があったのだが、そこは気にする素振りはなかった。

 

「……イレス様がいるのもまぁ、いいだろう」

 

そして、お客さんの中に何故かイレスがいたのだが、そこも気にしないようにしていた。

 

しかし……。

 

「……何で戒人とアキトがいるんだよ……」

 

統夜が苦笑いしながら見ていたのは、澪グッズを手にはしゃぐアキトと、それを見て苦笑いをしている戒人だった。

 

統夜が客席にいるアキトや戒人に見ながら苦笑いをしていると、唯と律が漫才のような話をして場を盛り上げていた。

 

『さて、私たちの話はここまでにして、主役に登場してもらいましょう!』

 

『その前にとある人に登場してもらいます。やーくん、どうぞ!』

 

唯と律の話が落ち着いたところで、澪が登場する流れなのだが、その前に統夜が唯に呼ばれた。

 

これも段取りに入っており、統夜はとある役割を与えられていた。

 

「おっ、呼ばれたか。それじゃあ行ってくる」

 

「統夜先輩、頑張ってくださいね!」

 

梓に見送られ、統夜が舞台袖からステージに移動した。

 

すると、客席から拍手が起こっていた。

 

『やーくんは本日の主役のナイトとして登場してもらいました!』

 

『それでは、入り口で主役を待ってて下さい!』

 

統夜は律の言葉に無言で頷くと、入り口に移動し、澪の登場を待っていた。

 

唯が言っていた通り、登場は澪のナイト役として登場したため、魔法衣を羽織っている。

 

『お待たせしました!それでは主役に登場してもらいましょう!』

 

『本日の主役、秋山〜!みーおー!!』

 

唯が澪の名前を呼ぶと、扉が開き、澪が登場した。

 

澪が現れると、会場から大きな歓声が上がっていた。

 

澪が現れるのを確認した統夜は澪の前に立つと、その場で跪いていた。

 

「……お待たせいたしました。私、月影統夜は貴女様の騎士でございます」

 

統夜は跪いた状態でこう言うと、先程以上の歓声が上がっていた。

 

(……うわぁ、マジで恥ずかしいんですけど!)

 

このような台詞を言うのは恥ずかしかったのだが、それを顔に出すことはせず、心の中で気持ちをぶちまけていた。

 

それで、気持ちを落ち着かせた統夜はゆっくりと立ち上がり、澪に手を差し伸べた。

 

「……さぁ、参りましょう。私がエスコートいたします」

 

「と、統夜!?」

 

ここまでするとは知らなかったのか、澪は恥ずかしさのため、顔が真っ赤になっていた。

 

しかし、澪は統夜の手を取り、統夜のエスコートでステージまで移動すると、客席からの歓声がより激しさを増していた。

 

そんな中……。

 

「統夜ぁ!羨ましいぞ!コンチクショウ!」

 

「アハハ……。お前なぁ……」

 

アキトが統夜に呼びかけ、戒人はそんなアキトを見て苦笑いをしていた。

 

一方イレスは歓声に驚きながらも、ワクワクしながらその様子を眺めていた。

 

こうして、統夜のエスコートにより、主役である澪がステージまで移動すると、統夜は舞台袖まで去っていった。

 

「……制服のままとかつまんなぁい!」

 

舞台袖にいるさわ子が制服姿の澪を見てぷぅっと頬を膨らませていた。

 

『大丈夫です!この後、お色直しがありますので!』

 

「いや!ないから!」

 

衣装チェンジを澪が全力で否定すると、さわ子、唯、律がブーイングをしながら頬を膨らませていた。

 

『……本日は、お忙しいなか、おあつ……あぐっ!』

 

澪はたくさんの人の前で喋っており、緊張しているからか思わず舌を噛んでしまった。

 

本来なら恥ずかしい場面であるのだが……。

 

「あ!噛んだ!」

 

「でもそこがまた!」

 

「可愛い!」

 

舌を噛んでしまっただけなのだが、すでに客席は大盛り上がりだった。

 

「アハハ……。この程度でも盛り上がるんだな……」

 

統夜は澪ファンの盛り上がりっぷりを見て苦笑いをしていた。

 

『お、おあつまりいたいたがっ!』

 

澪は再び舌を噛んでしまい、それだけでまた歓声が上がっていた。

 

『……いたがき……たいすけ……』

 

澪は何故か明治時代の偉人である板垣退助の名前を言っただけなのだが、客席は爆笑していた。

 

『……おいおい、唯と律のつまらんコントよりウケてるじゃないか』

 

「アハハ……確かにな」

 

唯と律の話より盛り上がっているのを見て、イルバも統夜も苦笑いをしていた。

 

『それでは、スピーチはこの辺にして、ケーキ入刀に移ります!』

 

唯が司会として次のプログラムを宣言すると、紬がケーキを運んでいた。

 

そのケーキはまるでウェディングケーキのように大きなケーキであった。

 

ケーキの大きさに澪は驚き、舞台袖で見ていた統夜は唖然としていた。

 

「おいおい、いくらなんでもケーキデカすぎだろ!」

 

驚き、ツッコミを入れる統夜を気にすることなく、話は進んでいった。

 

『さぁ、みおちゃん!初めての共同作業です!』

 

「誰と!?」

 

まるで結婚式のような展開に澪は思わずツッコミを入れていた。

 

「何でだろう、嫌な予感がする……」

 

統夜はこの後の展開を予想し、顔を真っ青にしていた。

 

すると……。

 

『やーくんがお手伝いします!』

 

「やっぱり俺かよ!」

 

統夜は自分の予想通り、自分が澪とケーキを切ることになり、ツッコミを入れるが、ケーキの前まで移動した。

 

そして、統夜と澪は2人で一つのナイフを持つと、まるで結婚式のようなケーキ入刀を行い、客席では歓声が上がったりカメラで撮影したりと大いに盛り上がっていた。

 

ケーキ入刀が終了すると、ここから統夜の大仕事の一つであるケーキ及び紅茶の配膳が始まった。

 

統夜はいの一番にイレスの元へ向かってケーキや紅茶の準備を行った。

 

「……統夜、ありがとうございます♪」

 

「イレスさ……お嬢も来たんですね」

 

みんながいる中、様付けはどうかと思った統夜はかつてイレスがこの学校に留学した時に呼んでいたお嬢という言葉を使っていた。

 

「えぇ♪話を聞いたら面白そうだったので面白そう」

 

イレスはイギリスの留学生という設定は相変わらずだが、たまたま日本に遊びに来たらこのようなことをやると統夜から聞いて参加したという設定でこのお茶会に参加した。

 

イレスの配膳が終わり、同じテーブルに座っている子達の配膳も終えると、続いてアキトや戒人の元へ向かった。

 

「……何でお前らがこんなところにいるんだよ」

 

統夜はジト目でお茶会に参加した訳をアキトや戒人に聞いていた。

 

「いやぁ、こういうイベントって面白そうだからな!だから参加したんだよ!」

 

「俺はアキトのやつに無理矢理連れ出されてな……」

 

アキトは澪のファンという訳ではなく、何となく面白そうという理由でお茶会に参加し、戒人はそんなアキトに半ば強引に連れ出されてこのお茶会に参加したのである。

 

「……まぁ、わかったよ」

 

とりあえず理由がわかったところで、統夜は配膳の仕事を再開した。

 

ケーキや紅茶の配膳が終了すると、各テーブルに置かれているローソクに澪本人が火を付け始めた。

 

全てのローソクに火をつけるまで時間はかかったが、それが終了すると、律が話を進めていった。

 

『それでは、次の企画に移りたいと思います!題して、秋山澪への100の質問コーナー!』

 

律が次の企画を宣言すると、音楽室の電気が消され、ローソクの灯りだけが灯されていた。

 

『さて、ここからは質問1つにつき、テーブルに置かれたキャンドルの火を1つずつ消していきます』

 

律がこの質問コーナーの趣旨を説明したのだが……。

 

「……1つずつ火を消すとか、どっかで聞いたことがあるんだが……」

 

『統夜、それは百物語じゃないのか?』

 

「そうそう、それそれ」

 

統夜はイルバのおかげでローソクを1つずつ消していくのが百物語に似ていると思い出したのであった。

 

『それでは、まず最初の質問です!これまで聞いた中で1番怖かった話は?』

 

『え!?な、何てこと聞くんだ!?』

 

最初の質問でいきなり澪の顔が真っ青になっていた。

 

『次の質問!2番目に怖かった話は?』

 

『やめろぉ!』

 

ここで唯と律の悪ノリが始まり、澪は恐怖のあまり怯えていた。

 

「アハハ……。あいつら、悪ノリを始めやがったな……」

 

『そうだな。だが……』

 

澪が唯と律の悪ノリのせいで怯える中、客席からはキラキラとした視線が飛んできていた。

 

可哀想とかそのような発想はなく、澪の怯える姿に澪ファンは瞳をキラキラとさせていたのである。

 

『……客は盛り上がっているようだな』

 

「そうみたいだな」

 

唯と律の悪ノリのおかげで会場が盛り上がっていることも統夜とイルバは理解していた。

 

唯と律の悪ノリが終了すると、澪ファンたちからの質問が殺到したのだが、全ての質問が終わった頃には澪はまるで某ボクサーのように真っ白になって燃え尽きていた。

 

『それでは、質問コーナーはここまでにして次のプログラムに行きたいと思います!』

 

『こうして立派に育ったみおちゃんの半生をスライドショーで振り返りたいと思います!』

 

次に行われるのは澪の子供時代から今に至るまでの軌跡を追いかけるスライドショーのコーナーだった。

 

「おいおい、高3で半分とか魔戒騎士より寿命が短いじゃねぇか……」

 

『まあ、それは言葉のアヤというやつだろう』

 

統夜は半生という言葉を使った唯にツッコミを入れるが、イルバがそれをなだめていた。

 

スライドショーの準備が整ったところで、梓がBGMを再生すると、スライドショーが始まった。

 

まず最初に映ったのは澪がまだ小学生くらいの運動会の写真だった。

 

まだ幼い澪をみたファンたちは……。

 

「めちゃくちゃ可愛い……」

 

「大きく育ったのね……」

 

何故か親戚のようなリアクションをしながらうっとりとしていた。

 

次々と澪の写真が映っていたのだが、梓があることに気が付いた。

 

「……これ、澪先輩より律先輩の方が目立ってませんか?」

 

澪が目立つべきなのだが、澪よりも律の方が目立っている写真がほとんどだった。

 

その訳は……。

 

「ウチのアルバムから持ってきた写真だからな!」

 

自分の家の写真を持参したことを律は誇らしげに語っていた。

 

統夜もそのことに気付いたようで……。

 

「……これ、澪より律の方が目立ってるな」

 

『やれやれ。恐らく律が選んだんだろう。写真のチョイスがまともじゃないぜ』

 

主役以上に目立つ律の写真を見て、統夜とイルバは呆れていた。

 

そんな中、真っ白になって燃え尽きた澪は復活して、写真を見始めたのだがそれは高校の入学式の写真だった。

 

その後は、軽音部で撮られた写真が続いていった。

 

部室で撮ったごく普通の日常を撮った写真や、初めての合宿の写真。2度目の学祭終了直後の写真や初日の出を見た時の写真などが次々と映し出されていった。

 

澪は写真を見ながら今までの思い出をまるで走馬灯のように思い出していた。

 

懐かしい思い出を思い出しながら、澪は笑みを浮かべていた。

 

そんな中、統夜も澪と同じように軽音部での思い出を思い出していた。

 

(……俺が軽音部に入ってからは、本当にたくさんの思い出が出来たよな。だけど、この思い出は魔戒騎士として多くの人を守るって思いに繋がっていく……。そんな気がするよ)

 

統夜は軽音部での思い出がこれから魔戒騎士としての今後に繋がっていくことを確信していた。

 

そして、これからも多くの人を。さらには大切な仲間たちを守っていきたい。

 

そんな風に決意させるようなスライドショーであった。

 

『……いよいよ、このお茶会も終わりに近づいて来ました!』

 

スライドショーが終了し、残すは最後のプログラムを残すのみとなった。

 

『それでは、フィナーレは私たち放課後ティータイムによる演奏を……』

 

「ちょっと待って!」

 

最後は統夜たち放課後ティータイムによる演奏なのだが、主役である澪がそれを制止していた。

 

「……あの、皆さんに聞いてほしいものがあります。私、口じゃ上手くこの気持ちを伝えられそうにないから、詩を作って来ました!」

 

澪からのまさかの発表に会場がざわついていた。

 

その事を知らなかった統夜たちも驚きながらもまさかのサプライズに喜んでいた。

 

澪はポケットから一枚の紙を取り出し、そこに書かれた詩を読み始めた。

 

「……「ときめきシュガー」……」

 

まず最初にこの詩のタイトルを語り、続けて詩に入った。

 

「……大切なあなたにカラメルソース。グラニュー糖にブラウンシュガー。……メープル蜂蜜和三盆……」

 

最初は目をキラキラさせながら話を聞いていた澪ファンたちだったが、あまりに独創的な詩に徐々に困惑し、会場がざわつき始めていた。

 

「……あなたのためにカラメルソース。私のハートもカラメルソース。ちょっぴり焦げ付いちゃっても、あなたの火加減で美味しくなるの!」

 

澪は自信に満ちた表情で最後まで言い切ったのだが……。

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

客席からざわつきが止むと、静寂がその場の空間を支配していた。

 

急に静かになった会場に澪は困惑すると、徐々に涙目になっていった。

 

《……どうやらファンと言えども澪のセンスについて行ける奴はいないらしいな》

 

(どうやらそのようだ。だから、律!さっさと次に行け!)

 

ファンでも澪のセンスについて行ける者はいないとわかった統夜とイルバだったのだが、このままでは澪が泣き出してしまうと思い、統夜は次のプログラムへ行くように律に目で訴えかけていた。

 

それを見た律は察したのか、唯と共にステージに現れた。

 

『それではここで演奏でーす!放課後ティータイムの新曲!』

 

『「ぴゅあぴゅあハート」です!』

 

唯が曲名を宣言すると、紬は澪を椅子ごと運び、そのまま演奏の準備に入った。

 

会場の静寂に困惑していた澪も何とか復活し、統夜たちはそれぞれの演奏準備を行っていた。

 

少しだけ時間はかかったが、演奏準備が終わると、統夜たち放課後ティータイムは、新曲である「ぴゅあぴゅあハート」の演奏を始めた。

 

この曲は澪がかなり力を入れている歌詞であり、澪のセンスがフルで入った曲となった。

 

この曲のボーカルは澪が勤めており、澪の綺麗な歌声を聴きながら、澪のファンたちは手拍子などで盛り上がっていた。

 

統夜たちもこの日のために練習に打ち込んできたからか、最初から最後まで演奏は順調に行われた。

 

「……へぇ、これが統夜たちの演奏か……」

 

「初めて演奏を聴くが、悪くないな」

 

統夜たちの演奏を初めて聴いたアキトと戒人はその演奏技術を素直に評価し、演奏に聴き入っていた。

 

放課後ティータイムの演奏が終了すると、最後はお茶会に参加した客全員と澪の集合写真の撮影を行った。

 

「はい、チーズ!」

 

最初は唯の携帯で写真を撮り、続けて律の携帯で写真を撮っていた。

 

続けて統夜はこの日のために購入したデジカメで写真撮影を行っていた。

 

「……この盛り上がり、曽我部先輩にも見せたかったな……」

 

写真撮影の様子を見ながら、和はしみじみと呟いていた。

 

「……あ、そうだ!」

 

隣で和の呟きを聞いた和は携帯を取り出すと、集合写真を撮影していた。

 

「写真を撮ってどうするの?」

 

「送ってあげるんです。曽我部先輩に」

 

「え?でも、携帯のアドレスは?」

 

梓の出した提案に和は困惑していた。

 

「アドレスは生徒会で調べて下さい!」

 

こうして梓が写真を撮影し、和が恵のアドレスを調べるのだが、思いの外すぐにわかったため、お茶会終了後、和は恵にお茶会の写真を送った。

 

メールにとある言葉を残して……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、恵はサークルの旅行で北海道を訪れていた。

 

「……ちょっと飲み物買ってくるね」

 

「うん」

 

サークル仲間が自販機に向かったその時、恵の携帯が鳴ったので、恵は携帯を確認した。

 

それは和からのメールだったのだが、写真が添付されており、その写真を見た恵は頬を赤らめて、笑みを浮かべていた。

 

「……クスッ、また素敵な贈り物、もらっちゃった♪」

 

和が送ってくれた写真が嬉しかったのか、恵は微笑みながら空を見上げていた。

 

和の送ったメールにはこのような文章が書かれていた。

 

 

 

 

__拝見 曽我部先輩。

 

今度は先輩もぜひいらして下さい。

 

きっと、楽しいお茶会になりますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『統夜は高校を卒業した後の道は決まっているが、他の奴らはこれからのことを考えなきゃいけないのか。次回、「進路」。大変ではあるが、必要なことだよな』

 




こうして、お茶会は無事に終了しました!

イレスだけではなく、アキトや戒人もお茶会に参加していました。

本来アキトはお茶会以降に登場させる予定でしたが、アキトがお茶会に参加したら面白いかなと思い、お茶会前に登場させました。

次回もけいおんメインの話ですが、次回はタイトル通り進路の話になります。

統夜の進路は決まっているが、唯たちはどのような進路を考えているのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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