牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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魔戒烈伝第2話も最高でしたね!

まさかあのキャラメインの回とは……。

さて、今回はあのキャラが登場します!

それでは、第6話をお楽しみください!


第6話 「銀牙」

……ここは桜ヶ丘某所にある展望台。

 

ここからは桜ヶ丘の街を一望できるとのことで、地元のデートスポットだけでなく、他の地方からも観光客が来ているほどである。

 

そこで、1人の青年が桜ヶ丘の町並みを眺めていた。

 

青年は黒い服に黒いコートを羽織っており、年齢は20代後半くらいである。

 

「……ふーん……。ここが桜ヶ丘か……けっこうでかい街なんだな」

 

青年は今桜ヶ丘に来たばかりであり、予想以上に街が大きいことに驚いていた。

 

「さーてと、統夜に会いに行こうかな。統夜の入ってる軽音部ってのも興味あるしな」

 

青年は展望台を出ると、入り口に停めてあるバイクにまたがり、ヘルメットをかぶるとバイクを発進させた。

 

青年はそのまま桜ヶ丘高校へと向かった。

 

 

 

 

〜統夜 side 〜

 

俺がヤシャウルを討伐してから一週間が経った。

 

この一週間は指令らしい指令はなく、エレメント浄化や街の見回りを主に行っていた。

 

……ヤシャウルを討伐した時はみんなに情けないところを見せちまったな……。

 

男が誰かの……それも女の子の前で泣くなんてみっともないったらありゃしない。

 

あの時もイルバが言ってたけど、憎まれるのはよくあるんだ。

 

それに、俺たちは誰かに感謝されるために魔戒騎士をやってるわけじゃない。

 

俺はまだまだ未熟だよな……。

 

これから唯たちだけじゃない。多くの人を守るために俺はもっと強くならないと……。

 

この日も放課後になり、部室に行こうと思ったその時だった。

 

「……あっ、統夜君。良かった、まだ教室にいたのね」

 

黒の短髪に眼鏡をかけた少女が俺に話しかけてきた。

 

彼女は真鍋和(まなべのどか)。唯の幼馴染であり、生徒会に所属している。

 

俺たち軽音部は和に普段すごくお世話になってるんだけど……。

 

あれ?和は澪と同じ1組なのに何の用事だろう?

 

「おう、和。どうしたんだ?」

 

「えぇ。実はあなたのお兄さんが今来てるのよ」

 

「へ?お兄さん?」

 

おかしいな……。俺に兄貴はいないんだけどな……。

 

「今玄関で待ってるわよ」

 

誰かはわからないけど、とりあえず行ってみるか。

 

「わかった、とりあえず行ってみるよ。ありがとな、和」

 

俺は和に礼を言うと、学生鞄や魔法衣を持って玄関へ向かった。

 

そこで俺を待っていたのは……。

 

「よう、統夜。久しぶりだな」

 

「れ……零さん!?」

 

俺を待っていたのは銀牙騎士絶狼の称号を持つ涼邑零さんだった。

 

な、なんで零さんが桜高にいるんだ……?

 

「零さん、どうしてここに?」

 

「いやぁ、近くに来たもんだからさ、統夜の顔が見たくてな。それに、軽音部ってのも興味があるしな♪」

 

そういえば零さん、だいぶ前に軽音部の話をした時羨ましいって言ってたもんな……。

 

「あら、統夜君。そこにいるのは誰なのかしら?」

 

茶色の長い髪に眼鏡をかけた女の人が俺に声をかけてきた。

 

この人は山中さわ子先生。桜ヶ丘高校の音楽担当の先生で、一応軽音部の顧問でもある。

 

初めは優しくておしとやかな先生だなと思っていたけど、デスメタルをやってた過去があり、色々めちゃくちゃな人である。

 

さらに衣装作りが趣味らしく、俺たちは散々衣装を着せられてたんだよなぁ……。

 

「あぁ、どうも。涼邑零です。統夜の兄……みたいなもんです」

 

零さんは爽やかな感じでさわ子先生に挨拶をしていた。

 

「統夜君、ちょっといい?」

 

そう言うとさわ子先生は俺を引っ張って少し離れたところへ移動した。

 

「ちょっと統夜君、あのイケメンは一体誰なのよ?」

 

「あの人は俺にとって兄みたいなもんですよ」

 

そう零さんも言ってたけどな……。

 

「あの人……彼女はいるのかしら?」

 

「いや、多分いないと思いますけど……」

 

「まぁ♪まぁまぁまぁまぁまぁ♪」

 

さわ子先生……明らかに狙ってるな……。

 

だけどなぁ……。

 

「先生、悪いことは言わないからあの人はやめといた方がいいですよ」

 

「何でよ!」

 

うぐっ……。それは零さんが魔戒騎士だからとは言えないんだよなぁ……。

 

「あ、あのー……」

 

俺がさわ子さんの尋問を受けている間放ったらかしになっていた零さんが恐る恐るこちらに声をかけた。

 

「あぁ!何でしょう?」

 

「あの、あなたは?」

 

「私は山中さわ子と申します。軽音部の顧問もしております」

 

……さわ子先生……。完璧にキャラ作ってるじゃねぇか……。

 

「あぁ、そうだったんですか!……統夜、羨ましいなぁ。こんな美人な先生が顧問なんてさ♪」

 

「まぁ、美人だなんてそんな……」

 

零さんも零さんでさわ子先生の本性を知らずに口説こうとしてるんだろうな……。

 

《やれやれ……。あの女教師の猫被りには困ったもんだぜ……》

 

(あぁ……まったくだよ……)

 

イルバもさわ子先生の本性は知ってるからな……。

 

イルバはだいぶ前にその見た目がロックだからって理由でさわ子先生に奪われそうになったことがあったっけ。

 

それ以来、イルバは何となくさわ子先生に苦手意識を持ってるんだよなぁ……。

 

「軽音部を見たいんですよね?私が部室まで案内しますよ」

 

「それじゃあ、ぜひ♪」

 

「わかりました。それでは……」

 

さわ子先生が俺を差し置いて零さんを音楽準備室に案内しようとしたその時だった。

 

『山中先生、山中先生。至急、職員室までお願いします』

 

非情にもさわ子先生に呼び出しがかかってしまった(笑)

 

「あぁん、残念。涼邑さん、申し訳ないですけど、私はこれで……」

 

さわ子先生は残念そうに職員室へと向かっていった。

 

『……ゼロ。あの女、相当キャラ作ってるわよ』

 

零さんの腕からカチカチと音を鳴らしながら女の人の声が聞こえてきた。

 

零さんの腕についているのは魔導具「シルヴァ」。零さんの相棒である。

 

シルヴァはイルバ同様にホラーを探知することが出来て、様々な面で零さんのサポートをしている。

 

「えっ、そうなの?」

 

「残念ながらシルヴァの言う通りですよ、零さん」

 

『あぁ。しかもあいつの本性はとんでもないぞ』

 

アハハ……。俺が言っても説得力があるけど、イルバが言うとより説得力があるよな……。

 

「へぇ、それはそれで見てみたいけどね♪」

 

『やめておきなさい、ゼロ』

 

「はいはい。わかったよ」

 

零さんはとりあえずはさわ子先生のことを諦めたようだ。

 

「それにしてもシルヴァも久しぶりだな」

 

『あら、坊やも一丁前な台詞を言うようになったじゃない』

 

「……お前なぁ……」

 

シルヴァはまだ俺のことを一人前と認めてないのかたまに坊や扱いされるんだよな……。

 

それでも名前でたまに呼ばれるからまだマシだけどな……。

 

『やれやれ。お前さんは相変わらずだな、シルヴァ』

 

『あなたもね、イルバ。あなたって相変わらずザルバにそっくりよね』

 

『何度も言うようだが、俺様と奴を一緒にするな!』

 

シルヴァの言っていたザルバというのは牙狼の称号を持つ鋼牙さんが持つ魔導輪である。

 

ザルバとイルバは見た目は本当にそっくりなのだが、お互いそれを認めたくないようで、お互い嫌っている。

 

初めて鋼牙さんと会った時もイルバとザルバは喧嘩してたもんなぁ……。

 

「イルバ、そこまでにしておけ。……それじゃあ零さん、軽音部の部室まで案内しますね」

 

「あぁ、よろしく頼むよ♪」

 

統夜は零と共に軽音部の部室である音楽準備室へと向かった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

「……統夜、ここなのか?」

 

「はい。それじゃあ入りましょうか」

 

俺と零さんは一緒に音楽準備室の中に入った。

 

中に入ると既に全員揃っているようだった。

 

「よう、みんな」

 

「あっ、やーくん来た!」

 

「ねぇ、統夜君。そちらの方は?」

 

「あぁ。この人は」

 

「俺の名前は涼邑零。……気をつけっ!礼っ!の涼邑零♪」

 

「ププッ!お兄さん、面白い人だね!」

 

「おぉ、このネタ女子高生相手でも通じるな」

 

アハハ……。零さんってば何やってるんだか……。

 

「零さん、彼女たちがこの前話した軽音部のみんなです」

 

俺は席に座っているみんなを零さんに紹介した。

 

「平沢唯です!」

 

「あたしは田井中律。よろしく!」

 

「あっ、秋山……澪です……」

 

「琴吹紬です。ムギと呼んでください♪」

 

「中野梓です!」

 

「唯ちゃんにりっちゃん。澪ちゃんにムギちゃんに梓ちゃんね。みんな、よろしくな♪」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

唯たちと零さんは互いに自己紹介を終えていた。

 

「さ、零さん。立ち話もなんなんで座って下さい」

 

俺は零さんを普段自分が座っている席に座らせると、学生鞄と魔法衣を長椅子に置いてギターケースを壁に立てかけた。

 

そして、学生鞄からイルバ専用のスタンドを取り出すと、テーブルの上にそれを置いた。

 

さらに俺は左手にはめているイルバを外すと、イルバを専用のスタンドにセットして、普段さわ子先生が座っている席に腰を下ろした。

 

「……零さん。彼女たちは俺が魔戒騎士であることを知っています。なので気兼ねしなくても大丈夫です」

 

「知っている……ってことは話したんだな」

 

「えぇ。以前彼女たちもホラーに襲われましてね。そのホラーは俺が斬りましたけど」

 

「そういう事か……。だからイルバをわざわざスタンドにセットしたんだな」

 

「あれ?零さんはイルイルのことを知ってるんですか?」

 

『だから変なあだ名で呼ぶな!』

 

まったく……。まだ言ってるよ、イルバのやつ……。

 

唯に変なあだ名をつけられてから何度このやり取りをしただろうか……。もう面倒だから数えてないな……。

 

「みんなに改めて紹介しておくけど、零さんも魔戒騎士なんだよ」

 

「え?そうなんですか?」

 

「あぁ。零さんは銀牙騎士絶狼の称号を持つ魔戒騎士で、その実力は黄金騎士牙狼に匹敵する程なんだよ」

 

「ちょっと待て。統夜、この前その牙狼っていう騎士が最強って言ってたよな。ということはこの人はそれだけ強いって事なのか?」

 

「あぁ。零さんは俺に魔戒騎士の先輩として色々教えてくれたからな……」

 

「「「「「そうなんだ……」」」」」

 

俺以外の魔戒騎士を見るのは初めてかもしれないけど、5人まとめて同じリアクションしなくてもいいのに……。

 

『ねぇ。という事は私も喋っても問題はないかしら?』

 

零さんの腕についているシルヴァが突然口を開いた。

 

「あれ?今のはどこから声が?」

 

「あぁ、ここだよ」

 

零さんは唯たちにわかりやすくシルヴァを見せていた。

 

「あれ?イルバとは違うんですね」

 

『えぇ、そうよ。私は魔導輪じゃないもの。私は魔導具のシルヴァよ。よろしくね、お嬢ちゃんたち♪』

 

「こちらこそ、よろしく♪」

 

「何かシルヴァの声ってお姉さんみたいで色っぽいわね♪」

 

『ウフフ♪ありがとう、お嬢ちゃん♪ 』

 

「せっかく零さんが来てくれた訳ですし、お茶にしましょうか♪私準備するね♪」

 

ムギは席を立つと、ティータイムの準備を始めた。

 

「おっ、待ってました!」

 

アハハ……。零さん、軽音部のティータイムが羨ましいって言ってたもんな……。

 

「ねぇ、ムギちゃん。今日のおやつは何?」

 

「今日はケーキよ♪色々持ってきたからみんなで食べましょう♪」

 

「ケーキだぁ♪」

 

「おっ、ケーキか。楽しみだな♪」

 

唯と零さんがすごく嬉しそうにしてる……。

 

唯はともかく零さんはかなりの甘党だからな。

 

ムギは紅茶を淹れる前に様々な種類のケーキをテーブルに置いた。

 

「うわぁ♪どれも美味しそう♪」

 

「ムギ、随分と多いな。食べきれるかな?」

 

しかもいつもより箱がでかいしな……。

 

「昨日も知り合いからケーキを頂いたのだけれど、1人じゃ食べきれないから全部持ってきちゃった♪」

 

あのなぁ……。

 

いくらなんでも30個のケーキは多すぎるだろ……。

 

「大丈夫大丈夫。みんなが食べきれなくても残りは俺が全部食べるから♪」

 

まぁ、零さんなら20個でもケーキ食える人だからな……。

 

「え?もしかして零さんって甘党なんですか?」

 

「あぁ♪俺、甘いもの大好きなんだよね♪ケーキとかならいくらでも食べられるかな♪」

 

いつだったか零さんと一緒にケーキ屋に行った時に全種類下さいって聞いた時はさすがに耳を疑ったけどな……。

 

「そうなんですか?そうしたら遠慮なくたくさん食べて下さいね♪」

 

「それじゃあ遠慮なく♪」

 

ムギが紅茶を淹れている間に零さんは箱の中の三分の一のケーキを自分の近くに置いていた。

 

「凄い……」

 

「本当にすごく食べるんですね……」

 

「普段はこれの倍は食べるけどな♪」

 

「「「「「どれだけ!!?」」」」」

 

アハハ……。甘党の片鱗を見せた零さんにみんな驚いてるよ……。

 

驚きながらも紅茶が出てきたところでティータイムが始まった。

 

……今日は零さんがいるから何か変な感じだな。

 

零さんはまずショートケーキを一口食べた。

 

「……お、美味い!今まで色んなケーキを食べてきたけど、このケーキは今までの中でもかなり美味いよ!」

 

「ウフフ、ありがとうございます♪まだありますからいっぱい食べて下さいね♪」

 

「あぁ、遠慮なく♪」

 

こうして零さんはケーキを次々と食べ始め、俺たちはそれを眺めながら紅茶を飲んでいた。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

俺たちがティータイムを始めてから1時間が経過した。

 

その時にはあれだけあったケーキは全て無くなっていた。

 

俺、律、澪、ムギ、梓の5人は2個しか食べてないけど、残りを唯と零さんが食べたからな……。

 

まぁ、ほとんどは零さんが食べたんだけどな……。

 

「まさかあれだけあったケーキが全て無くなるなんて……」

 

「零さんがいなかったら私たちだけじゃ食べ切れませんでしたね……」

 

まぁ、いくら唯でも食べられる量は限られてくるだろうからな……。

 

「いやぁ、ご馳走さん♪すごく美味かったぜ♪」

 

零さんも上機嫌だな……。

 

「さて、食後に体を動かしたいが、統夜。どこかいいところはないか?」

 

「あまり人目につかないなら屋上がありますけど……」

 

「お前がどれだけ鍛えてるかも知りたいしな。ちょっと付き合え」

 

「はい」

 

そう言うと零さんは立ち上がり、俺も立ち上がった。

 

俺は長椅子から魔法衣を取り出すと、それを羽織り、音楽準備室を出た。

 

そして近くにある屋上に向かうと、零さんだけじゃなく唯たちもついてきた。

 

屋上に到着すると、俺と零さんは屋上の中央まで移動すると、お互い対峙していた。

 

「統夜。ルールはサバックと一緒でいいな?」

 

「えぇ。一滴でも血を流した方の負け……ですね」

 

俺と零さんはそれぞれ魔法衣から魔戒剣を取り出すと、構えた。

 

零さんの魔戒剣は俺のような一本の剣ではなく、少し刃の短い二刀流になっている。

 

『何考えてるのよ、ゼロ。やめなさい!』

 

『統夜。騎士同士の私闘は禁止されてることは知っているだろう!?』

 

「イルバ。これは騎士同士の私闘じゃないよ」

 

「シルヴァ。これはただのトレーニングさ。だから安心しな」

 

俺と零さんはそれぞれ相棒を説得したところでそれぞれの魔戒剣を構えながらそれぞれの相手を睨んでいた。

 

「……行きます!」

 

俺は零さんめがけて突撃すると、零さんめがけて魔戒剣を振るった。

 

 

 

 

 

〜三人称 side 〜

 

統夜と零がトレーニングと称してぶつかり合っている時、唯たちはハラハラしながらその様子を眺めていた。

 

「なぁ、2人とも本物の剣で戦ってるよな?」

 

「あぁ。あたしはそう思うけど」

 

「えぇ!?それって危なくないですか?」

 

「トレーニングって言ってるから大丈夫だとは思うけど……」

 

「それでもやーくんが心配だよぉ!」

 

唯たちは目の前で戦っている統夜を心配していた。

 

統夜が相対している零は、統夜以上の実力者であると聞いていたので余計心配になったのだ。

 

統夜は魔戒剣を一閃するが、零は魔戒剣一本のみで統夜の一撃を受け止めた。

 

「くっ……!」

 

零はすかさず2本目を一閃するが、統夜は零の1本目を弾いて2本目の一閃を防いだ。

 

「……どうした?そんなもんで終わりじゃないだろ?」

 

統夜は再び魔戒剣を一閃するが、零にかわされると、零は蹴りを放ち統夜を吹き飛ばした。

 

「ぐぁっ!くっ……!」

 

『統夜!実力は圧倒的にあっちが上なんだ!正面からぶつかるだけじゃ無様な結果になるだけだぜ!』

 

「あぁ!わかってる!」

 

統夜は体勢を整えると再び魔戒剣を構えた。

 

「統夜、今度はこっちから行くぜ!」

 

零は2本の魔戒剣をグルグルと回転させながら構えると、統夜めがけて切りかかった。

 

統夜は魔戒剣で零の一閃を防ぐが、零にはもう1本魔戒剣がある。

 

もう1本の魔戒剣が迫るが、統夜は咄嗟に青い鞘を取り出すと、鞘で魔戒剣の一閃を防いだ、

 

「!……へぇ……」

 

零も鞘まで武器とするとは思ってもいなかった。

 

「はぁっ!!」

 

統夜は魔戒剣と青い鞘を用いて零の2本の魔戒剣を弾くと、蹴りを放って零にを吹き飛ばした。

 

「統夜!やるじゃないか!」

 

「まだまだです!だけど、次でケリをつけます!」

 

統夜は魔戒剣を構えると、零を睨みつけた。

 

「そうだな……。次で最後決めさせてもらうぜ!」

 

零も魔戒剣を構えると統夜を睨みつけた。

 

そして……。

 

「「はぁっ!!」」

 

2人はお互いめがけて駆け出すと、それぞれの魔戒剣を一閃した。

 

……その結果……。

 

「くっ……!」

 

統夜は魔戒剣を落としてしまい、その場にしゃがみ込んだ。

 

「「「統夜(君)!!」」」

 

「統夜先輩!」

 

「やーくん!」

 

その場にしゃがみ込んだ統夜を見て唯たちは思わず声をあげた。

 

このトレーニングは零の圧勝に見えた。

 

しかし……。

 

「!……へぇ……」

 

零も統夜の一撃を受けて1本だけではあるが、魔戒剣を落としてしまった。

 

「……統夜。どうやらちゃんと鍛えてるようだな」

 

零は笑いながらこう言うと、落ちた魔戒剣を拾い、2本の魔戒剣を鞘に納めた。

 

「まだまだです。……流石は零さんだ。俺は手も足も出なかったですよ」

 

統夜も魔戒剣を拾うとそれを青い鞘に納めた。

 

それと同時に唯たちが統夜に駆け寄ってきた。

 

「統夜君、大丈夫?」

 

「あぁ、問題ないよ」

 

「だけど、統夜先輩。血が……」

 

梓の指摘通り、統夜の右手に少量ではあるが血が出ていた。

 

「あぁ……あぁ……!」

 

統夜の右手から僅かではあるが溢れ出る鮮血を見た澪の顔は真っ青になっていた。

 

「おっと。澪はこういうの苦手だったな。悪かったよ」

 

澪がこうなったのも自分のせいであるとわかっていた統夜は澪に詫びをいれていた。

 

「統夜先輩。保健室に行きましょう!」

 

「大丈夫、これくらいすぐ治るし」

 

「ダメです!ばい菌が入ったら大変じゃないですか!先輩はもっと自分の体を大事にして下さい!」

 

「……すいやせん……」

 

梓にすごい勢いで怒られていた統夜は素直に謝ることしか出来なかった。

 

「零さん、俺は保健室に行ってくるのでみんなと部室で休んでて下さい」

 

「あぁ、わかった」

 

統夜は梓に付き添われて保健室に向かうと、残された他のメンバーは部室に戻り、紅茶を飲みながら統夜を待っていた。

 

待つこと20分……。

 

「すいません、戻りました」

 

統夜と梓が戻ってきた。

 

「零さん、すいません。待たせてしまって」

 

「全然気にしてないぜ。美味しい紅茶を飲みながら待ってたからな♪」

 

「そうでしたか……」

 

「それよりも、さっきのトレーニングで統夜は咄嗟に鞘を武器として使っただろ?俺との修行の成果も出たみたいだな」

 

「たまたまですよ……。零さんは二刀流ですから、対抗するためには鞘も武器にしなきゃと思ったらたまたま出来ただけで……」

 

統夜は普段の戦いでは魔戒剣の鞘を武器に使う発想は無かったが、今回のトレーニングでは偶然その発想が出てきたのである。

 

「だけど、ホラーと戦う時はそういう発想は大事だぜ。機転の良さが危機を救うことだってあるからな」

 

「……はい、肝に銘じます」

 

統夜は先輩騎士からのアドバイスを真摯に受け止めていた。

 

「統夜。俺が桜ヶ丘に来たのはただお前に会いに来たわけじゃなく、ホラーを狩るために来たんだよ」

 

「やっぱり……指令を受けて来たんですね」

 

「まぁ、そういうことだ。それで統夜。お前も俺のホラー狩りを手伝わないか?」

 

零からの唐突な提案に統夜は戸惑っていた。

 

「でも、俺が行っても零さんの足を引っ張るだけじゃ……」

 

「それを決めるのは俺だ。それに、さっきの戦いを見てたら足手まといにはならないって思ったけどな」

 

統夜は少しは零に認めてもらった。そのことが嬉しくて仕方なかった。

 

「ありがとうございます!俺で良ければお手伝いをさせて下さい!」

 

「よしっ、決まりだな!」

 

そういうと零は立ち上がった。

 

「……零さん、帰るんですか?」

 

「あぁ。これからホラーを狩ってくる。みんなには悪いが、統夜を借りて行くぜ」

 

「わかりました……。零さんも統夜先輩も気を付けて……」

 

「大丈夫だ。俺たちは必ず生きて帰る。信じていてくれ」

 

統夜は唯たちを安心させるためにこう告げると、零と共に音楽準備室を後にして、学校を出た。

 

零は乗ってきたバイクに跨ると、統夜にスペアのヘルメットを渡した。

 

統夜はギターケースや学生鞄といった物すべてを魔法衣の懐にしまうと、ヘルメットを被り零の後ろに座った。

 

統夜が座ったことを確認した零はバイクを発進させると、とある場所へと向かった。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

すっかりと夜になり、とある場所に到着すると、零はバイクを停めた。

 

零がバイクを降りたので統夜も降りると、2人ともヘルメットを外した。

 

「……零さん、ホラーはここですか?」

 

「あぁ。俺のターゲットは恐らくここに現れるハズだ」

 

『確かに、不穏な気配を感じるぜ』

 

『えぇ。だからゼロも統夜も油断しないで!』

 

統夜も零も周囲を警戒しながらいつでも魔戒剣が抜ける体制になっていた。

 

その時である……!

 

『統夜!上から来るぞ!!』

 

顔が2つある鬼のような姿をしたホラーが上空から襲いかかっていた。

 

統夜と零はホラーの奇襲を無駄のない動きでかわした。

 

『統夜。やつはネロ。飛翔能力を持つ厄介なホラーだぞ』

 

「そう、俺のターゲットはあいつだ!統夜、油断するなよ!」

 

「はい!」

 

統夜と零はそれぞれの魔戒剣を抜くと、ネロを睨みつけながら構えていた。

 

ネロは真っ直ぐ統夜めがけて攻撃を仕掛けて来た。

 

「へぇ……。弱いやつから潰す。これは確かに戦いの定石ではある。だけど……!」

 

統夜はネロのまるで鎌のような腕の攻撃を弾いた。

 

「俺だって魔戒騎士なんだ!あんまりなめてると怪我じゃすまないぜ!!」

 

統夜は力強く魔戒剣を一閃し、ネロに一撃を与えた。

 

しかし……。

 

「……やっぱりダメージは少ないか……」

 

ネロにダメージは与えたものの、そのダメージは多いとは言えなかった。

 

「……へっ、こっちのことを忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

 

零は2本の魔戒剣を振るってネロに迫るが、ネロは飛翔して零の攻撃をかわした。

 

「やっぱり飛べるくらいまだ元気みたいだな……」

 

ネロの飛翔能力は未だ健在であり、ネロは続いて零めがけて攻撃をしかけた。

 

「……おっ、来た来た♪」

 

零はネロの一撃を二本の魔戒剣で防ぐが、ネロはもう片方の腕で零に攻撃をしかけた。

 

「!零さん!」

 

統夜はネロめがけて斬りかかると、零に攻撃をしかけようとした腕で統夜の一撃を防いだ。

 

ネロは軽々と統夜を弾き飛ばすと、統夜はその勢いで少しだけ後ろに下がってしまった。

 

零はその隙をついてネロを弾き飛ばすと、二本の魔戒剣による斬撃を与えた。

 

ネロは慌てて飛翔するが、先程より飛行高度は下がっていた。

 

「よし……統夜!一気に決めるぜ!」

 

「はい!!」

 

統夜と零はそれぞれの魔戒剣を高く突き上げた。

 

統夜は一本の魔戒剣で円を描き、零は二本の魔戒剣でそれぞれ円を描いていた。

 

統夜の描いた円はそのまま光を放ち、零が描いた円は1つになったところで光を放った。

 

2人は光に包まれると、それぞれ鎧を身に纏った。

 

零の身にまとう鎧は統夜同様に銀色の輝きを放っていた。

 

統夜の魔戒剣は皇輝剣という専用の剣に変化したが、零の二本の魔戒剣は切っ先に角度がついた専用の剣である銀狼剣に変化した。

 

零の召還した鎧は銀牙騎士絶狼(ゼロ)。その名の通り銀の鎧を身に纏った零の魔戒騎士としての名前である。

 

統夜と零は同時にネロめがけて飛び出すと、まずは統夜が皇輝剣による一撃を与えた。

 

その一撃にネロが怯んだところで、零の銀狼剣による鮮やかな攻撃が続いた。

 

銀狼剣の一撃を受けたネロのダメージは相当だったのか、地面に叩きつけられ、統夜と零も着地をした。

 

「統夜!お前はもうすぐ試練なんだろ?とどめはお前に譲るぜ!」

 

「ありがとうございます!」

 

統夜は皇輝剣を構えると、ゆっくりと立ち上がるネロに狙いを定めた。

 

そして、ネロめがけて駆け出すと、皇輝剣を一閃し、ネロを真っ二つにした。

 

真っ二つにされたネロの体が爆発すると、その体は陰我とともに消滅した。

 

ネロの討滅を確認した統夜と零は鎧を解除した。

 

2人は元の姿に戻り、統夜の皇輝剣と零の銀狼剣も魔戒剣に戻っていた。

 

2人はそれぞれの魔戒剣を鞘に納めた。

 

「……ふぅ、これでお仕事は完了ですね」

 

「あぁ。統夜、ありがとな。おかげで少し楽をすることが出来たよ」

 

「そんな……。俺はただとどめを刺しただけですよ……。零さんが弱らせてくれたおかげです」

 

「まぁまぁ、そんな謙遜するなって」

 

あまりにも謙遜な統夜を見て、零は思わず笑みを浮かべていた。

 

「……それよりも統夜。お前はもう少しで試練を受けるんだろう?」

 

「えぇ。あと何体ホラーを討伐すればいいかはわからないですけど」

 

「……先輩として1つアドバイスをするとすれば……」

 

統夜は目を見据えてじっくりと零の話を聞いていた。

 

「……自分の弱さを受け入れる勇気を持つことかな?」

 

「自分の弱さ……ですか?」

 

「まぁ、それは実際に試練を受ければわかると思うぜ!」

 

統夜は零の言葉を理解出来ずにいたが、先輩騎士のアドバイスにとても感謝をしていた。

 

「……さて、俺はそろそろ行くよ」

 

「え?もしかしてもう桜ヶ丘を後にするんですか?」

 

「まぁな。統夜にも会えたし、軽音部でだいぶ楽しませてもらったしな♪」

 

(まぁ、肝心の演奏は聞かせてないんだけどね……)

 

統夜は零に軽音部の演奏を聴かせていないことを思い出し、苦笑いをしていた。

 

「……それじゃあ、統夜。またな」

 

「はい。今度会う時にはもっともっと強くなってますから!」

 

「あぁ。楽しみにしてるぜ♪」

 

こう言葉を残し、零は去っていった。

 

『……さて、統夜。俺たちも帰るぞ』

 

「あぁ、そうだな」

 

零の姿が見えなくなったところを確認し、統夜はそのまま家路についたのであった。

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

__次回予告__

 

『魔戒騎士にも乗り越えなきゃいけない試練というものがある。統夜、気を引き締めていけよ!次回、「試練」。乗り越えるか、それとも落ちるか』

 




零登場です!零と軽音部のやり取りはこの小説執筆当初から考えていました。

そして今回出てきたホラーネロは、CR牙狼FINALに出てきたホラーです。

ここから牙狼の原作キャラがけっこう出てくると思うので楽しみにして下さい。

次回、統夜は課せられた試練を乗り越えられるのか?次回をお楽しみに!

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