牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第52話です。

今回はオリジナルの話になります。

そして今回は新たに何かを企んでいる者が現れますが、その者の目的は何か?

そして、今回のタイトルとなった獄龍とは一体何なのか?

それでは、第52話をどうぞ!




第52話 「獄龍」

……ここは、とある場所に存在する地下洞窟。

 

その奥地には、かつて布道シグマが開発し、魔戒騎士を葬り去るために開発された巨大号竜、鉄騎が眠っていた。

 

この鉄騎は機能停止の状態で眠っていた、

 

そんな鉄騎に近付く影があった。

 

「……これがあの布道シグマが作った鉄騎か……」

 

鉄騎に近付いたのは、マントを羽織り、黒いフードを被っていた。

 

そのため、顔が確認出来ず性別も判断出来ないが、男で体格から男であると思われる。

 

「……俺が作っている最高の魔導具に比べりゃスクラップも同然か」

 

鉄騎は機能停止しているものの、外見の損傷はほとんどない。

 

そんな鉄騎を謎の男はスクラップ扱いしていた。

 

「まぁ、こんなんでも持って帰って直せばいいデータも取れるだろ。そして、作ってやるさ。ホラーを滅ぼし、目障りな魔戒騎士を滅ぼす最高の魔導具をな!」

 

謎の男の目的は、自分が開発した魔導具で全てのホラーを滅ぼし、さらに魔戒騎士に恨みがあるのか魔戒騎士を滅ぼそうとしていた。

 

目的自体はかつて魔戒騎士を滅ぼそうとした布道シグマと似ているが、根本的な目的は謎だった。

 

謎の男は鉄騎を回収すると、その場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

謎の男が鉄騎を回収してしばらくすると、布道レオとその1番弟子である魔戒法師、アキトがこの洞窟を訪れていた。

 

布道シグマが開発した鉄騎がこの洞窟に眠っていることが元老院の調査で明らかになったからである。

 

レオとアキトの目的は、この鉄騎が何者かに悪用されることがないよう、回収することだった。

 

しかし……。

 

「……!師匠!ここにあるはずの鉄騎が無くなっている!」

 

2人が駆けつけた時には時すでに遅く、鉄騎は姿を消していた。

 

「!本当ですね……」

 

レオも鉄騎が消えたことを確認し、驚愕していた。

 

「師匠、確かあの鉄騎は機能停止してたはずだよな?」

 

「えぇ、ここら辺にはゲートもないから勝手に動くことはあり得ないのですが……」

 

「!まさか、誰かが鉄騎を持ち去ったとか?」

 

「……その可能性はあり得ますね」

 

アキトの推理にレオは賛同していた。

 

「とりあえず1度元老院に戻りましょう。早くこの件を何とかしないと、とんでもないことが起きそうですからね」

 

「了解だ、師匠!」

 

こうしてレオとアキトは元老院に戻り、鉄騎が何者かに持ち去られた可能性があることを報告しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

統夜のバースデーパーティーが行われた翌日、統夜はこの日も日課であるエレメントの浄化を行っていたのだが、この日の統夜はとても上機嫌だった。

 

『……統夜、ずいぶんと機嫌が良さそうだな』

 

「まぁね♪唯たちのくれたネックレスが嬉しくてつい♪」

 

『やれやれ、浮れるのもその辺にしておけ。そんな浮ついた気持ちだと勝てる相手にも勝てないぞ』

 

「わかってるって♪」

 

イルバの小言をさらっと聞き流した統夜はそのままエレメントの浄化に向かった。

 

そんな統夜の姿を、何者かが遠くでジッと見物していた。

 

「……あの赤いコートのガキ……。確かあのグレゴルをぶっ倒した奴だったな……」

 

その人物は鉄騎を奪った謎の男であり、かつて統夜とグレゴルとの戦いを見ていた。

 

「……確かあのガキはグォルブをも倒したって周りが騒いでたな……」

 

謎の男の耳にも統夜がグォルブを倒したことは伝わっていた。

 

「白銀騎士奏狼……だっけか?あんな小僧にやられるとは、グォルブも案外たいしたことないのかもな」

 

謎の男は統夜が倒したグォルブのことをかなり過小評価していた。

 

「……あの小僧で試してみるか……。この私が作った最高の力を持った鉄騎の力を……!」

 

謎の男は鉄騎を奪った後、改造を施し、通常の鉄騎以上の力を植え付けていたのである。

 

その鉄騎のテスト相手に統夜が選ばれてしまったのである。

 

「まぁ、お手並み拝見といこうか……」

 

謎の男はこう呟くと、その場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

エレメントの浄化を終えた統夜はいつものように登校した。

 

そして統夜はいつものように教室に入ると、自分の席に座った。

 

「……あっ、統夜君、おはよう」

 

「あぁ、おはよう。姫子」

 

3年生になってまだ2ヶ月も経っていないが、去年も同じクラスで、席も隣だったこともあり、統夜と姫子は互いに名前で呼ぶようになっていた。

 

「……あれ?統夜君、ネックレスなんてしてたっけ?」

 

姫子は統夜の胸元でチラリと光るネックレスが偶然目に入ったので聞いてみた。

 

「あぁ、これ?昨日俺は誕生日でさ、このネックレスは唯たちからもらったんだよ」

 

「え!?統夜君、昨日誕生日だったんだ!おめでとう!」

 

姫子は統夜の誕生日を知って驚くと、統夜の誕生日を祝っていた。

 

統夜の誕生日が昨日だということを耳にしたクラスメイトたちが一斉に統夜の方へと押し寄せていった。

 

「え!?統夜君、昨日誕生日だったんだ!」

 

「おめでとう!」

 

「まぁ、プレゼントはないけど、勘弁してね♪」

 

「アハハ、その気持ちだけで嬉しいよ」

 

クラスメイトたちが一斉に押し寄せてきたので、統夜は苦笑いをしていた。

 

統夜は姫子と話をしたら唯たちと話をしようと思っていたのだが、クラスメイトたちが一斉に押し寄せてきたので、話をすることが出来なかった。

 

すると……。

 

《おい、統夜。唯たちが恨めしそうにこっちを見てるぞ》

 

(アハハ……。そうみたいだな)

 

クラスの女の子たちと楽しげに話をしているのが気に入らなかったのか、唯たちはドス黒いオーラを放って統夜を睨みつけていた。

 

統夜はイルバに言われる前からそんな気配を察しており、苦笑いをしていた。

 

結局クラスメイトたちと話しているうちに始業のチャイムが鳴ってしまい、みんなそれぞれ自分の席に帰っていった。

 

さわ子が教室に入ると、そのままHRが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

その後はいつものように授業が始まり、昼休みになった。

 

この日も統夜は軽音部のみんなや和と集まり、食事を取っていた。

 

「やーくん、そのネックレス気に入ったみたいだね!」

 

1日中ネックレスをつけていたことを知っていた唯はそのことが嬉しかった。

 

「まぁな。やっぱりこういうのは嬉しいからな」

 

統夜は奏狼の紋章がついているこのネックレスを心底気に入っていた。

 

「そこまで気に入ってくれたのならプレゼントした甲斐があったわ♪」

 

このネックレスをあげることを思いついた紬も統夜の喜ぶ顔を見て、満足そうにしていた。

 

「それにしても、良くそのネックレスを作ってもらえたわね。だって、その四角の部分って奏狼の紋章なんでしょう?」

 

「普通の人が見たらこの紋章はただの四角形にしか見えないからね。だからすんなりと作ってもらえたのよ」

 

四角形の模様というシンプルなものだったからこそ、1日でネックレスを作ってもらえたのである。

 

「なるほどね、それなら納得だわ」

 

紬の説明を聞いた和は納得したのかウンウンと頷いていた。

 

その後も統夜たちは食事をしながら世間話をしていた。

 

 

 

 

 

統夜が唯たちと昼食を楽しんでいた頃、レオとアキトは元老院を訪れていた。

 

元老院の神官であるグレスに回収予定だった鉄騎が何者かに奪われた可能性があることを伝えるためである。

 

レオとアキトの報告を聞いたグレスは驚きを隠せなかった。

 

「……レオ、アキト。話はわかりました。今回の状況は由々しき状況みたいですね……」

 

「はい。速やかに鉄騎を発見し、回収もしくは破壊しなければ犠牲者が出る可能性があります!」

 

「とはいえ、どうやって鉄騎を見つければいいのか……」

 

鉄騎を速やかに発見しなければ、鉄騎が目覚めてしまい、その鉄騎が人を襲う可能性は充分にあった。

 

「そうですね……。何か手がかりがあれば良いのですが……」

 

グレスも鉄騎が何処にいるかの手がかりがわからず、途方に暮れていた。

 

「……とりあえず全ての番犬所に警戒するよう伝えておきます。レオ、アキト。あなたたちは速やかに鉄騎を発見し、回収もしくは破壊するのです」

 

「「はい、わかりました!」」

 

こうしてレオとアキトは鉄騎の捜索を開始した。

 

「……師匠!俺は桜ヶ丘に向かってみるよ」

 

「桜ヶ丘……ですか?」

 

「統夜にもこの事を伝えておきたいって思って。鉄騎を奪った奴が桜ヶ丘に潜伏してる可能性だってある訳だし」

 

「わかりました。そっちはアキトに任せます。僕はこの周辺から探ってみます」

 

「師匠、もし鉄騎を見つけたら連絡よろしく!」

 

「アキトも頼みましたよ。それに、無理は禁物ですよ。魔戒銃はまだまだ未完成なんですから」

 

「わかってるって♪」

 

こうしてアキトは鉄騎を探すために桜ヶ丘に向かい、レオは現在地周辺から捜索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

レオとアキトがそれぞれ行動を開始しているうちに放課後になっていた。

 

統夜は部活に参加する予定だったのだが、番犬所から呼び出しが来てしまったため、部活を休んで番犬所へと向かった。

 

番犬所に到着すると、既に戒人と大輝も来ていたのだが、2人揃って神妙な面持ちをしていた。

 

「……統夜、来ましたね」

 

2人だけではなく、イレスも神妙な面持ちをしていた。

 

「はい、イレス様。もしかして、指令ですか?」

 

「いえ、指令ではないのですが、少々面倒なことが起きまして……」

 

「面倒なこと?」

 

「……鉄騎が何者かに持ち去られた可能性がある」

 

イレスに代わり、大輝が今回の事件を簡潔に説明していた。

 

「て、鉄騎って……!あの布道シグマが作ったって言われてる、あの?」

 

「そうです。最近になって、最後の1体である鉄騎が見つかったと元老院が調べまして、レオがそれを回収するため、現地に向かったそうです。ですが……」

 

「……レオさんが駆けつけた時には鉄騎の姿はなかったってことですね?」

 

統夜の推測にイレスは無言で頷いていた。

 

『とりあえず、速やかに鉄騎を見つけぬと、とんでもないことが起こりそうじゃの』

 

「あぁ、そうだな。犠牲者が出る可能性だってあり得るからな」

 

こう語る戒人の表情は険しいものになっていた。

 

「……!鉄騎が無差別に人を襲う可能性があるってことか?」

 

『鉄騎を奪ったのが誰かは知らんが、その可能性は大いにあり得るぜ』

 

「イルバの言う通りです。速やかにこの問題を解決する必要があるため、元老院が全ての番犬所に警戒するよう通達がありました」

 

元老院の神官であるグレスが全ての番犬所に警戒するよう通達したのは、レオとアキトが鉄騎の捜索を開始してすぐだった。

 

「イレス様、俺たちもその鉄騎を探しに行ってきます!」

 

鉄騎が人を襲うことだけは避けたいと考えていた統夜はすぐに行動することをイレスに伝えた。

 

「そうですね。この桜ヶ丘に鉄騎を奪った者が潜伏してる可能性もありますからね」

 

「戒人、俺たちも一緒に行くぞ」

 

「えぇ、もちろんです」

 

大輝と戒人も鉄騎捜索に動くことを決めていた。

 

「統夜、戒人。もし鉄騎を見つけたら無理に1人で倒そうと思うなよ。鉄騎はなかなか手強いからな。並の魔戒騎士なら倒すことは出来ないだろう」

 

「あれ?大輝さん、鉄騎のことを知っているのですか?」

 

「あぁ。俺もイデアとの戦いに参戦していたからな」

 

布道シグマはイデアを建造し、ギャノンと呼ばれるホラーが復活した。

 

大輝もギャノンが復活する前にシグマに破滅の刻印を埋め込まれ、危うく命を落としそうになった1人であった。

 

牙狼の称号を持つ冴島鋼牙の活躍で大輝を含めた魔戒騎士たちの破滅の刻印は消え去り、九死に一生を得たのであった。

 

その後、ギャノンが復活し、ギャノンはシグマを取り込んでしまった。

 

ギャノンはイデアを乗っ取り、鋼牙、零、翼、ワタル、レオはギャノンを止めるために戦った。

 

その時、多くの魔戒騎士が鋼牙たちの手助けをしたのだが、大輝もそんな魔戒騎士の1人だった。

 

大輝は2体の鉄騎を斬り裂く零の戦いを見ており、その時鉄騎の力がかなりのものであると感じていたのである。

 

「大輝さんもギャノンとの戦いに参戦してたんですね」

 

「まぁ、俺は魔戒騎士になってからだいぶ経つからな」

 

大輝は称号を持たないものの、様々な死地を乗り越えてきたベテラン魔戒騎士だったので、ギャノンとの戦いに参戦していてもおかしくはないと思っていた。

 

「……とりあえず行くぞ!鉄騎を探し出さなきゃいけないからな」

 

「「はい!」」

 

こうして統夜、戒人、大輝の3人は番犬所を後にして、鉄騎の捜索を始めた。

 

統夜は1人で鉄騎を探すことなり、戒人は大輝と共に鉄騎の捜索を行った。

 

称号を持たぬ故に大輝は魔導具を持っていないので、もし鉄騎を見つけたらすぐに連絡が取れるように戒人と行動することにしたのである。

 

こうしてそれぞれ行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

統夜が番犬所で鉄騎の話を聞いている頃、唯たちはいつものように部室でティータイムを行っていた。

 

この日もティータイムがメインであまり練習をすることなく、部活が終了した。

 

「……やーくん、今日は来なかったね……」

 

今は5人揃って帰り道を歩いていたのだが、統夜が部活に現れず唯は少し寂しそうな表情をしていた。

 

「番犬所から呼び出しがあるって言ってたわね」

 

「またホラーの討伐でしょうか……」

 

「そうかもしれないな……」

 

統夜が番犬所から呼び出しを受けたということは聞いていたので、ホラー討伐の指令が来たのだろうと予想していた。

 

「まぁ、統夜のことだから大丈夫だとは思うけどな」

 

「そうね。りっちゃんの言う通りだと思うわ♪」

 

律も紬も統夜のことを信じているため、そこまで心配はしていなかった。

 

それは唯、澪、梓も同様でウンウンと頷いていた。

 

その時である。

 

「……あれ?やーくんだ!」

 

唯が偶然歩いている統夜を発見した。

 

「あっ、本当だ!」

 

「何か探してるようですね……」

 

「もしかしてお仕事かしら?」

 

「とりあえず声をかけてみようぜ!」

 

「うん!おーい!やーくん!」

 

唯は迷うことなく、大声で統夜を呼んでいた。

 

統夜はすぐに反応したのだが、こんな所で唯たちと会うとは思っていなかったのか驚いていた。

 

統夜は驚きながらもすぐさま唯たちのもとへ駆け寄った。

 

「お前ら、こんな所で会うとは奇遇だな」

 

「ウフフ♪そうかもね♪」

 

「統夜先輩は指令ですか?」

 

「まぁ、そんなところかな」

 

厳密に言えば指令ではないのだが、指令のようなものなので、こう答えていた。

 

「もしかして、ホラーですか?」

 

「ホラーとは少し違うんだが……。……!」

 

統夜は梓の問いかけに答えると、何かの異変を感じ取っていた。

 

「?やーくん、どしたの?」

 

「……何か嫌な気配を感じてな……」

 

統夜は険しい表情を浮かべながら周囲を見回していた。

 

『あぁ、俺様もそんな気配を感じるぜ。統夜、油断するなよ』

 

イルバも謎の気配を察知しており、統夜に警戒するよう告げた。

 

「みんな、俺から離れるなよ」

 

統夜は下手にみんなを逃せば逆に危険かもしれないと推測し、唯たちを統夜の近くに集めていた。

 

そして……。

 

『統夜!上から来るぞ!』

 

イルバが何かが近付いてくることを察知し、上空から何かが飛び出してきた。

 

「ひっ!?」

 

「な、何だよ、あれ!?」

 

「もしかして、ホラー!?」

 

上空から現れた怪物のようなものに澪、律、紬は怯えていた。

 

「みんな!とりあえず隠れてろ!」

 

統夜はこう唯たちに告げると、魔戒剣を抜いた。

 

唯たちは統夜の言うことを聞いて、安全な場所まで移動していた。

 

「イルバ、もしかしてこいつが鉄騎か!?」

 

『どうやらそうらしいな』

 

統夜の目の前に現れたのは鉄騎だったのだが、シグマが作った鉄騎とは容姿が異なっていた。

 

この鉄騎はまるでケルベロスのように三つ首なのが特徴的だった。

 

これこそ、この鉄騎を奪った謎の男が改良した鉄騎・獄龍だった。

 

「……戒人!聞こえるか、戒人!」

 

統夜は襲いかかってきた鉄騎・獄龍からの攻撃をかわしながら、イルバを通して戒人に連絡を入れていた。

 

魔導輪や魔導具を持つものは、それを通じて連絡を取り合うことが可能性なのである。

 

『統夜!どうした!?』

 

「例の鉄騎を発見した!大至急来てくれ!」

 

統夜は1人で倒そうとはせず、戒人と大輝に応援を要請した。

 

『わかった!急いで向かうからそれまで持ち堪えろよ!』

 

「あぁ、もちろんだ!」

 

統夜は鉄騎・獄龍の攻撃をかわしながら戒人と連絡を取り合っていた。

 

連絡が終わったところで、統夜は反撃と言わんばかりに魔戒剣を振るうが、鉄騎・獄龍の身体は硬く、傷をつけることは出来なかった。

 

「くっ……!やっぱりこいつは身体が硬いか!」

 

統夜は後方にジャンプをして、鉄騎・獄龍と距離を取った。

 

その時、鉄騎・獄龍は三つの口からそれぞれ炎を吐き出した。

 

「!マジかよ!」

 

さすがに3方向からの炎をかわすのは困難だったが、統夜はどうにか炎による攻撃をかわしていた。

 

『統夜!攻撃をかわしていたら街に被害が出るぞ!』

 

「んなことはわかってるよ!だけど避けないと俺が黒コゲだろうが!」

 

攻撃をかわし続けたら炎によって街に被害が出ることは統夜も承知していた。

 

しかし、炎をまともに受ければいくら統夜でも助からないというのは統夜自身が理解していた。

 

「くそっ!このままじゃ唯たちも危険か!」

 

統夜はこのまま戦いが長引くと、唯たちにも危険か及ぶと考えて、焦りを見せていた。

 

「……こうなったら……!鎧を召還して……!」

 

戒人と大輝が来るのを待っていたら今いるこの一帯に大きな被害が出ると考えた統夜は鎧を召還して一気に決着をつけようとした。

 

その時だった。

 

どこからか弾丸のようなものが飛び出してきて、それは鉄騎・獄龍の身体を貫いた。

 

「!?今の攻撃、まさか……!」

 

統夜は銃のような攻撃を繰り出す者に心当たりがあった。

 

そして……。

 

「よう、統夜!まさかお前がそいつを見つけるとはな!」

 

統夜の目の前に現れたのは、統夜のように一般人とは異なる格好をしており、手には銃のようなものが握られていた。

 

「……アキト!久しぶりだな!」

 

その男は、かつて阿号と呼ばれた人型魔導具と戦った時に共に戦った魔戒法師のアキトであった。

 

「統夜、挨拶は後だ。それよりも……」

 

アキトは目の前にいる鉄騎・獄龍を睨みつけていた。

 

「……なぁ、アキト。あいつが鉄騎で間違いないんだよな?」

 

「そうだな、だけど……」

 

「だけど?」

 

アキトは深刻そうな表情で鉄騎・獄龍のことを見ていた。

 

そして……。

 

「……何か、格好良くなってるな!!」

 

アキトは鉄騎・獄龍を見て目をキラキラと輝かせていた。

 

アキトのあまりにずれた発言に統夜は思わずズッコケそうになっていた。

 

「おいおい、そこかよ!?厄介だなとかじゃないのか!?」

 

こんな緊迫した状況でもマイペースなアキトに統夜は思わずツッコミを入れていた。

 

「いやぁ、誰がこいつを改造したのかは知らないけど、改造した奴はセンスあるなぁって思って」

 

「お前なぁ……」

 

統夜はジト目でアキトのことを見ていた。

 

すると、鉄騎・獄龍がアキトに襲いかかった。

 

鉄騎・獄龍が迫り来る中、アキトは笑みを浮かべていた。

 

そして、アキトは魔導筆を取り出すと、魔戒銃の銃口に術をかけると、そのまま魔戒銃を発砲した。

 

魔戒銃の弾丸が鉄騎・獄龍の身体に着弾すると、その直後に爆発が起こり、鉄騎・獄龍は爆風で吹き飛ばされた。

 

「おぉ、すげぇ……」

 

改良された魔戒銃の威力を目の当たりにして、統夜は呆然としていた。

 

「ヘヘっ、どうよ!改良に改良を重ねた魔戒銃の力は!」

 

アキトは統夜に魔戒銃の威力を見せつけると、ドヤ顔をしていた。

 

『ほぉ、魔導筆で術を放って力を蓄え、それを放ったか。お前さんは相変わらず面白いことを考えるな』

 

イルバもアキトの魔戒銃がここまでの威力をどう出したのかを分析すると、その威力に感心していた。

 

「あぁ、何たって俺はレオさんの1番弟子だからな。これくらいは当然さ!」

 

アキトは誇らしげに語っていたのだが、そのことを聞いていた唯たちは驚いていた。

 

「え!?あの人はレオ先生の?」

 

「ということはあの人も魔戒法師ってことよね?」

 

「凄いな、あの銃のようなもので戦うんだろ?」

 

「何か格好いいよな!」

 

「はい!さすがはレオ先生のお弟子さんです!」

 

梓の言葉が聞こえてカチンと来たのか、アキトは唯たちの方を見ていた。

 

「おい、お前ら!俺は師匠の“1番”弟子だ!1番をつけるのを忘れるなよな!」

 

アキトは1番ということを強調したかったのか、こう唯たちに注意していた。

 

「「「「「は、はい……!」」」」」

 

唯たちは唖然としながらもこのように返事をしていた。

 

「アキト!戦いに集中しろ!」

 

「わかってるって!」

 

アキトが統夜にたしなめられたところで、鉄騎・獄龍はゆっくりと起き上がった。

 

統夜はアキトに援護してもらいながら一気に目の前の鉄騎・獄龍を倒そう。

 

そんなことを考えていたその時だった。

 

「統夜!無事か!?」

 

統夜から連絡を受けてこの場に急行していた戒人と大輝が駆けつけた。

 

「あぁ、何とかな」

 

「ん?2人はもしかして、この番犬所の魔戒騎士か?」

 

「そうだが、お前は魔戒法師か?」

 

「あぁ、俺の名前はアキト。レオさんの1番弟子だ!」

 

アキトは戒人と大輝にもこのような自己紹介をしていた。

 

「そうか、お前がレオの……。だが、話は後だ!一気に奴を叩くぞ!」

 

「わかってるって!」

 

戒人と大輝も視界に入れた鉄騎・獄龍は大きな咆哮を上げていた。

 

「……行こう!大輝さん、戒人!」

 

「おう!」

 

「承知!」

 

統夜の呼びかけに応じた大輝と戒人はそれぞれ魔戒剣を抜き、構えた。

 

そして……。

 

統夜、大輝、戒人の3人は同時に魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、3人はそれぞれの鎧を身に纏った。

 

統夜は白銀の輝きを放つ、奏狼の鎧を身に纏った。

 

戒人は紫の輝きを放つ、ガイアの鎧を身に纏った。

 

大輝は銅の輝きを放つ、鋼の鎧を身に纏った。

 

「統夜、大輝!俺が奴を引き付ける!その間に烈火炎装で一気に奴を倒すんだ!」

 

「はい!わかりました!」

 

「承知!」

 

大輝の策を了承した統夜と戒人は左右に展開し、それぞれの魔導火を用意して、烈火炎装の準備にはいった。

 

鉄騎・獄龍は戒人に攻撃を仕掛けようとしたのだが、大輝が鉄騎・獄龍の攻撃を抑えていた。

 

しかし、鉄騎・獄龍の首は三つあるため、完全に動きを封じることは出来ず、三つの首のうち一つの首が統夜に迫ろうとしていた。

 

「……!しまった!」

 

大輝は三つ首がそれぞれ動くことを計算に入れていなかったのか、焦りを見せていた。

 

しかし……。

 

「俺も援護するぜ!」

 

アキトは統夜に迫ろうとしている鉄騎・獄龍の一つの首目掛けて魔戒銃を放った、

 

その銃弾は鉄騎・獄龍にダメージを与えることは出来なかったが、アキトに視線を向けさせるには十分だった。

 

「……!すまない、助かった!」

 

「へへっ、これくらいはお安い御用だぜ!」

 

アキトの援護に大輝が感謝の言葉を述べると、アキトはドヤ顔をしていた。

 

「それよりも……」

 

「統夜!戒人!今だ!」

 

大輝の合図で統夜と戒人は烈火炎装の状態となり、左右から同時にそれぞれの剣を振るった。

 

魔導火を纏った皇輝剣と堅陣剣の一閃は、鉄騎・獄龍の三つ首のうち2人を切り落とした。

 

すかさず2人はそれぞれの剣を一閃し、それぞれの剣は鉄騎・獄龍の身体をバラバラに斬り裂いた。

 

バラバラに斬り裂かれた鉄騎・獄龍は、断末魔をあげながら、その身体が爆散し、消滅した。

 

鉄騎・獄龍か消滅したことを確認した統夜、戒人、大輝の3人は鎧を解除し、それぞれ元に戻った魔戒剣をそれぞれの鞘に納めた。

 

「ふぅ……。どうにか倒したか……」

 

「ずいぶんと手強い相手だったな……」

 

「あぁ、この中の1人でも欠けてたら勝てたかどうか……」

 

どうにか鉄騎・獄龍を倒すことは出来たが、実力のあるこの4人が揃ったからこそ得られた勝利であった。

 

もし、この中の誰か1人でも欠けていたら、倒せたとしても街に大きな被害を出す可能性があった。

 

「こっちとしても助かったよ。鉄騎を破壊したのは残念だけど、この状況じゃ仕方ないしな。後で師匠に報告しなきゃ」

 

アキトは統夜たちの協力に素直に感謝していた。

 

「……お前、なかなかやるじゃないか」

 

初めてアキトの戦いを見た戒人は、アキトの実力を認めていた。

 

「へへっ、そうだろそうだろ?もっと俺を褒めてくれよ!」

 

『やれやれ、相変わらずお調子者だな、お前さんは』

 

初めて出会った時からアキトは変わっておらず、そんなアキトにイルバは呆れていた。

 

「……自己紹介かまだだったな。俺は黒崎戒人。堅陣騎士ガイアの称号を持つ魔戒騎士だ」

 

「俺は桐島大輝だ。この2人のように称号は持っていないが、実力は2人に負けてないと思っている。よろしくな」

 

「こちらこそ、よろしく!」

 

戒人、大輝、アキトの3人は無事に自己紹介を終えた。

 

ちょうどその時、唯たちがゆっくりと歩み寄ってきた。

 

「あの、統夜先輩。この人は……」

 

アキトのことを初めて見た唯たちだったが、梓が代表して統夜に聞いていた。

 

統夜はアキトのことを紹介しようとするが、アキトはジッと唯たちのことを見ていた。

 

「……?何ですか?」

 

「もしかして、5人は統夜の彼女なのか?」

 

「「「「「へ!!?」」」」」

 

アキトの唐突な言葉に唯たちは顔を真っ赤にしていた。

 

「な、何言ってるんだよ!唯たちは同じ部活の仲間だよ!」

 

統夜も恥ずかしかったのか、このような弁解をしていた。

 

すると……。

 

「「「「「へぇ……」」」」」

 

統夜の弁解が納得いかなかったのか、唯たちは統夜をドス黒いオーラで睨みつけていた。

 

「……何か今のやり取りでお前らの関係がわかった気がするよ」

 

アキトは統夜と唯たちのやり取りを見て、とりあえずこの5人と付き合ってはいないことは理解していた。

 

「そういえばお前らには自己紹介がまだだったな。俺は魔戒法師のアキト。さっきも言ったけど、俺はレオさんの1番弟子だ!」

 

アキトは相変わらず自己紹介で“1番弟子”という言葉を強調していた。

 

「私は、平沢唯です!」

 

「あたしは田井中律。よろしく!」

 

「あっ、秋山……澪です」

 

「琴吹紬です♪ムギって呼んで下さい♪」

 

「中野梓です!」

 

唯たちも簡潔に自己紹介を行っていた。

 

「……へぇ……なるほどな」

 

戒人は律、澪、紬とは自己紹介をしていなかったので、ここで初めて3人の名前を聞いたのであった。

 

「えっと、唯ちゃんにりっちゃん。澪ちゃんにムギちゃんに梓ちゃんね。よろしくな!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

こうしてアキトと唯たちは互いに自己紹介を終えた。

 

「ところで、さっきアキトさんが使ってた銃みたいなものは何だったんですか?」

 

「あぁ、これか?」

 

アキトは唯たちに魔戒銃を見せた。

 

「これは魔戒銃っていう武器で、俺が対ホラー用に開発した武器なんだよ」

 

「え!?これ、アキトさんが作ったんですか!?」

 

「へぇ、凄いですね!」

 

「ふふん♪まぁね♪」

 

梓と紬が驚きながら感心しており、それを見たアキトはドヤ顔をしていた。

 

「……まぁ、魔戒銃自体はまだ未完成らしいけどな」

 

「あっ!バラすなよぉ!」

 

ドヤ顔するアキトが気に入らなかったのか、統夜は魔戒銃の真実をあっさりとバラしていた。

 

「え?充分凄かったのにまだ未完成なんですか?」

 

「ま、まぁな。銃の耐久性とか威力とか、改善すべき点はまだまだあるからな」

 

バレた以上仕方ないと思ったアキトは魔戒銃の改善点を説明していた。

 

「へぇ、これが実用化されたら凄いことになりそうだな」

 

戒人もアキトが開発した魔戒銃に興味津々だった。

 

「まぁな。こいつが実用化すれば、低級ホラーなら今よりも楽に倒すことが出来るようになる。そうなれば魔戒法師の負担は減るし、それは魔戒騎士の負担だって減らすことになると俺は信じている」

 

アキトが実用性のある武器や魔導具を作るのは、魔戒騎士や魔戒法師の負担を大きく減らすためである。

 

「……ほぉ、そいつは楽しみだ」

 

大輝もアキトの話を聞いて魔戒銃が実用化することを楽しみにしていた。

 

「……とりあえずもう夜も遅いし、帰ろうぜ。みんなは送るからさ」

 

「そうですね、帰りましょうか」

 

こうして統夜と唯たちはアキト、大輝、戒人と別れ、それぞれの家に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

統夜たちは見事に鉄騎・獄龍を撃破したのだが、鉄騎を鉄騎・獄龍に改良した謎の男は統夜たちの戦いをずっと見ていた。

 

「……ちっ、てんでダメじゃねぇか。あのスクラップが」

 

謎の男はシグマが作った鉄騎に悪態をついていた。

 

「まぁ、いい。鉄騎を改良したおかげでデータはだいぶ取れたしな」

 

謎の男はシグマが作った鉄騎を改良しているうちにそのデータを手に入れることに成功した。

 

「私の理想とする最強の魔導具も着々と出来上がってるしな。それに、目障りな魔戒騎士を叩き潰すための“あれ”も間もなく出来上がる」

 

謎の男は何故か魔戒騎士を憎んでおり、その魔戒騎士を倒す兵器を開発していた。

 

「クククク……!ハァッハッハッハ!!間もなく尽きるその命、せいぜい大切に使うんだな、魔戒騎士どもめ……!」

 

魔戒騎士の命が間もなく尽きると宣言した謎の男は高笑いをすると、その場から姿を消した。

 

今回の鉄騎・獄龍との戦いこそ、これから起こる激闘の始まりであることを統夜たちは知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ……。アキトの奴、魔戒法師としては優秀な奴だが、まさかこのようなことになるとはな。次回、「法師」。この展開は俺様も予想外だぜ!』

 




今回はアキト再登場回となりました。

今回のタイトルともなった獄龍とは、謎の男に奪われて改良された鉄騎・獄龍のことでした。

この鉄騎・獄龍は首が三つあるということ以外は原作にも出てきた鉄騎と同じになっています。

当初は謎の男に奪われるのはリグルになる予定でしたが、奪われて改良を施すことを考えて鉄騎にしました。

原作でも鉄騎は強かったですが、改良されて鉄騎・獄龍となり、その強さは3倍ではありませんが、かなり強くなっています。

今回のチームプレイがなければ相当苦戦していたと思います。

さて、次回もオリジナルですが、ちょこっとだけけいおんの話もあります。

それでは、次回をお楽しみに!


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