今回は前後編に分けての修学旅行回になります。
魔戒騎士である統夜は普通の修学旅行を過ごすことは出来るのか?
現在放送中の牙狼 HDリマスターですが、4話は放送されず5話から放送するみたいですね。
やはり、世間を騒がせたあの人を映すのは問題があるのかな?
それはともかくとして、第48話をどうぞ!
季節は流れ、ゴールデンウィークも終了した。
数日後にとある行事を控えた統夜は、部活終わりに番犬所に顔を出していた。
「今日も来ましたね、統夜」
統夜が魔戒剣の浄化を済ませて魔戒剣を鞘に納めると、イレスが声をかけてきた。
「はい、イレス様」
統夜はイレスに深々と頭を下げた。
この日は統夜だけではなく、大輝と戒人も番犬所に顔を出していた。
「……イレス様、実は相談がありまして……」
「……相談ですか?」
「えぇ、実は来週の頭に修学旅行という行事がありまして……」
統夜がイレスに修学旅行参加の許可をもらおうとしたその時だった。
「統夜、行ってこい!」
「えぇ!?まだ本題も言ってないのに良いんですか!?」
統夜が本題を切り出す前に大輝が賛成し、そのことに驚いていたのは戒人だった。
「……まぁ、戒人も入りましたし、統夜が抜けての人手不足は心配しなくても良さそうですしね……」
新しく戒人が紅の番犬所の魔戒騎士となったことで人手が増え、統夜が修学旅行に行っている間の穴埋めは可能とイレスは判断していた。
「え?え?しゅ、修学旅行って?それに、そんなに長くこの街を空けるって事ですか?」
戒人はこの現状についていけず、困惑していた。
「あぁ、そういえば戒人は初めてだもんな。……統夜は学校行事があると、時々このように泊まりがけで出掛けることがあってな。俺たちはなるべくそういうのには参加させたいと思っているんだよ。これから魔戒騎士としての人生が本格的に始まるんだ。今という時を楽しんでもらいたくてな」
「大輝さん……」
大輝の説明を聞いたところで、戒人はおおよその事情を理解した。
そして、その通りだと思っていた。
自分や大輝はこのような青春を捨てて魔戒騎士をやっているが、統夜は高校生としての青春を送りながら魔戒騎士の仕事をしている。
この経験が人を守るという強い思いに繋がっていく。
このことを理解しているからこそ、イレスも大輝も数日この街を空ける行事も出来るだけ参加させようと考えているのである。
「……事情はわかった。そういうことなら行ってこい!」
「戒人……いいのか?」
「あぁ、確かにそんな青春は大切だからな」
「……ありがとう、戒人」
事情を理解した戒人の賛成を得て、統夜は感謝の気持ちを伝えていた。
「……統夜、私も許可します。その修学旅行とやらに行ってきなさい」
「イレス様……ありがとうございます!」
統夜はイレスに深々と頭を下げていた。
「それで、修学旅行とやらで、どこに行くんですか?」
「……2泊3日で京都に行く事になっています」
「京都ですか……。確か、「都の番犬所」の管轄でしたね」
イレスの言う通り、京都一角は「都の番犬所」と呼ばれる管轄だった。
この番犬所がどうして「都の番犬所」なのかは、平安の世にも魔戒騎士は存在し、その時代、ホラー討伐は都と呼ばれた京都を中心に行われていたからである。
「都の番犬所の神官には私から話をしておきます。……統夜、どうにか時間を見つけて神官に挨拶へ行くのです。そして、もしそこで指令を受けたら、魔戒騎士としての務めも果たして下さい」
「……わかりました!京都に着いたら都の番犬所へ挨拶に行きます」
「頼みましたよ、統夜。あ、それと、余裕があれば私たちへのお土産もぜひ♪」
「……は、はい……」
ちゃっかりお土産まで要求してきたイレスに統夜は苦笑いをしていた。
「統夜、楽しんでこいよ」
「大輝さん、いつも本当にありがとうございます!」
統夜がこのような高校生活を送れるのも、大輝の協力があってこそなので、統夜は大輝には深く感謝をしていた。
この日は指令はなかったので、統夜は戒人と共に街の見回りを行い、家路についた。
※※※
数日後、修学旅行当日を迎えた。
この日は集合時間が早かったため、エレメントの浄化は出来ずに統夜は学校へと向かった。
学校に到着すると、バスに乗り込み駅へ向かい、現在統夜たちは京都行きの新幹線の中である。
「……イェーイ!旅行旅行♪何かテンション上がるよな!」
修学旅行という大きなイベントだからか、律が喜ぶあまりはしゃいでいた。
(やれやれ……律の奴はしゃいでるな……)
統夜はそんな律の声を聞いて呆れていた。
統夜は唯たち4人と一緒に、6人座れる席に座っており、同じ班になっていた。
統夜たちのクラスに男子は統夜しかおらず、4人1組の班分けで統夜だけ余ってしまったため、さわ子や和の粋な計らいで、唯たちの班に統夜が入る事になった。
ただ、部屋割りに関しては男子が少ないため、クラスは関係なく男子生徒だけ固まっている。
「おい、律。もうちょっと静かにしろよ……。それに、座席の上でのあぐらはやめておけ」
統夜はジト目で律に注意していた。
「……そうだよ、りっちゃん。はしたないよ」
「……唯、お菓子食べながら言っても説得力はないぞ」
唯はお菓子を食べながら律を注意していたんだが、あまりに説得力がなかったので、統夜は呆れていた。
唯はお菓子を食べるだけではなく、後ろの席の子たちにお菓子を分けたりしていた。
「おいおい、お前も大人しくしていろよ……」
統夜は呆れながらも唯を注意するが、唯は聞く耳を持っていなかった。
「……なぁなぁ!みんなで写真撮ろうぜ!」
「おぉ、いいね!可愛く撮ってもらおっと♪」
唯は小さな鏡を取り出すと、髪をいじるなど身だしなみを整えていた。
写真を撮ろうとして律と唯が席を立ったのだが……。
「ほら、そこ!用もないのに席を勝手に立たないの!」
当然といえば当然なのか、すかさずさわ子が注意をしていた。
「せんせー!秋山さんが写真を撮るって聞きませーん!」
「んな!?律、お前!」
「まったく、人に責任をなすりつけるなよ……」
律の素早い責任転嫁に統夜は呆れていた。
「何言ってるのよ!早く座りなさい!」
さわ子は再び注意をするのだが……。
「ねぇねぇ、さわちゃんも一緒に写真撮ろうよ!」
「あのねぇ……。私は先生なのよ?」
唯の突拍子のない提案にさわ子は呆れていた。
「えぇ?さわちゃん、お願い!」
「行くわけないでしょ!あのねぇ……。あなたたちはそうやって私を……」
さわ子は教師という立場から写真には反対だったのだが、結局は唯たちと写真を撮っていた。
その時カメラを担当した統夜はその状況に苦笑いをしていた。
写真撮影が終わり、ようやく律と唯が落ち着いたところで、統夜は大きな欠伸していた。
「……統夜君、眠いの?」
「まぁ、相変わらず忙しかったからな……。ちょっと眠いんだよ……」
統夜は魔戒騎士として毎日忙しい毎日を送っている。
そのためか、疲れが抜けておらず、統夜は眠そうにしていた。
「……統夜君、京都に着くまでまだ時間あるし、少し休んだらどうかしら?」
「……そうだな、少しだけ休ませてもらおうかな」
「えぇ!?」
紬の提案に統夜が乗ったとわかると、澪は何故か驚いていた。
「……?澪ちゃん、どうしたの?」
「あ、あぁ……。いや……」
澪は今統夜に寝られては困ると思っていたが、そうと言うことは出来なかった。
統夜が寝るということは、唯と律が暴走した時は1人で抑えなきゃいけないからだ。
しかし、澪も統夜が毎日忙しい毎日を送っていたことを知っていた。
「……そうだよな。統夜、こう言う時しかゆっくり休めないならさ……」
ゆっくり休めよ。こう言おうとしたのだが……。
「…………」
統夜は既に寝息を立てて眠っていた。
「……統夜君、寝ちゃったみたいね」
「……そうだな」
紬と澪はすやすやと眠る統夜の寝顔を見て笑みを浮かべていた。
それに律と唯も気付いたようで、この2人も笑みを浮かべていた。
『お前ら、あまり騒いで統夜の睡眠を妨害するなよ。統夜もこういう機会がなきゃゆっくり寝れないんだからな』
イルバもイルバで、統夜の体を気遣ってこのようなことを言っていた。
「……あぁ、わかってるよ」
澪が代表してこう答えると、残りの3人もウンウンと頷いていた。
その後、隣のブロックである4人が座れる席の窓から富士山が見えてはしゃぐ子も出てきたのだが、唯たちは統夜を起こさない程度に盛り上がっていた。
『京都〜京都〜』
京都駅到着数分前に起こされた統夜は、新幹線を降りて駅のホームに立っていた。
「んー!!ここが京都かぁ……」
先ほどまで眠っていた統夜は大きく伸びをしていた。
『……統夜、リラックスするのもいいが、イレスから言われた任務も忘れるなよ』
「わかってるって。抜け出せそうな時に抜け出して番犬所に挨拶に行くさ」
統夜は都の番犬所に顔を出すと言われたことを忘れてはいなかった。
「……なぁなぁ、統夜!」
統夜はホームから移動しようとすると、律に呼び止められた。
「……ん?どうした、律?」
「……金閣寺やで!」
「は?」
唐突な律の関西弁に統夜は訝しげな表情をしていた。
「統夜も関西弁で喋るゲームに参加するんやで!」
「はぁ……。アホくさ……」
統夜は呆れながらその場をから歩き始め、律たちは慌てて追いかけていた。
ホームを出たところで、統夜たちはクラス毎に並ばされていた。
クラスの点呼を行うためである。
点呼が終了すると、統夜たちは駅の外に出ていた。
そこからバスに乗って、次の目的地へ向かうためである。
しかし……。
「ねぇねぇ、りっちゃん!あれ何?大根みたい!」
唯は京都タワーを指差してはしゃいでいた。
「……ほぉ、あれが京都タワーか。実物見るのは初めてだな♪」
統夜も統夜で初めての京都に胸を躍らせていた。
《おいおい、統夜。お前もはしゃぎ過ぎじゃないのか?》
(だってこんな機会は滅多にないんだぜ!たまにはいいだろ?)
《やれやれ……。お前もこんなんじゃ先が思いやられるぜ……》
統夜とイルバはこのような会話をテレパシーでかわし、イルバは初めての京都にはしゃぐ統夜に呆れていた。
唯たちはバスに乗り込む前に5人で写真を撮っていたのだが、当然さわ子に注意されてしまった。
こうしてバスに乗り込んだ統夜たちを乗せて、バスは走り始めた。
バスが最初に向かった場所は、修学旅行の定番、金閣寺だった。
「りっちゃーん!早く早く!こっちこっち!」
ここでも軽音部の5人で行動していた統夜たちだったが、唯がお寺めがけて走りだしたため、4人は必死に追いかけていた。
こうして統夜たちの目の前に金閣寺の建物が姿を現した。
「うわぁ!きれー!!」
「凄いな、ピカピカだ!」
「そうだな、あれ程の金色を見ると、何か牙狼を思い出すよ」
統夜は金色で壮大に佇む金閣寺を見て、鋼牙が身に纏う牙狼の鎧を思い浮かべていた。
《おいおい、あれと牙狼を同列に語るなよ……》
金閣寺と牙狼を同列に語る統夜にイルバは呆れていた。
「ねぇねぇ!あれって、本当に金で出来てるの?……じゃなくて、出来てるん?」
「そうだぜ!……じゃなくて、そうやで!せやけどなぁ、少しくらい持って帰ろう思わな……いやぁ、思うたら、あかんで!お巡りさんに捕まる……捕まってまうんがオチだぜ……いやぁ……えっと……。オチやで」
「まったく、まだそのヘンテコな関西弁続けてたのか?」
《しかも飽きてきたみたいだな》
ただでさえ適当な関西弁が飽きのせいか変になっており、統夜とイルバは呆れていた。
「金閣寺ってな、昭和25年に燃やされてもうて、今あるんは新しく建てられたもんなんやって。お釈迦様のお骨を祀った舎利殿の金閣は有名やさかい、金閣寺って呼ばれるようやったけど、ホンマは鹿苑寺って言うらしいわ♪」
何と紬が完璧なイントネーションの関西弁で、金閣寺の説明をしていた。
「へぇ、ムギ、凄いな!関西弁、完璧じゃないか!」
「エヘヘ……おおきに♪」
統夜に褒められて嬉しかったのか、紬は今日1番の笑顔を見せていた。
唯たちも紬の完璧な関西弁に関心していた。
金閣寺の見学を終えた統夜たちの目に映ったのは、抹茶が飲める店だった。
「ここ、抹茶が飲めるよ!確かこれって苦いやつだよねぇ」
唯が抹茶を知っているのは意外に思えるが、唯は律や梓と共に様々な部へ体験入部していた。
その時に茶道部にも体験入部しており、その時に飲んだ抹茶が苦いという印象を唯は持っていたため、知っていたのである。
「お菓子もついてるみたいだぞ!飲んでくか?」
「それじゃあいつもの放課後と変わらないだろ?」
「まぁ、軽音部じゃ抹茶は出なかったし、たまにはいいんじゃないのか?」
統夜は抹茶を飲むことに賛成のようだった。
「ほら、統夜もこう言ってるんだから
行こうぜ!」
こうして店の中に入ると、お茶とお菓子を人数分注文し、統夜たちの前に抹茶とお茶菓子が運ばれてきた。
「おぉ!じゃあ、飲んでみるかな」
律はお菓子を食べる前にお茶を飲もうとしていた。
「律、ちょっと待て」
統夜がいきなり飲むのを制止してきたので、律は首を傾げていた。
「?どうした、統夜?」
「お茶会とかで抹茶を飲む時はな、お菓子を先に食べるといいんだよ。その方が抹茶の苦みが引き立つって言われてるんだ」
統夜は何故か抹茶についての知識があり、律に抹茶の説明をしていた。
「まぁ、統夜君、詳しいのね♪」
「まぁね、こういうことも知識として知ってるって訳だよ」
「へぇ……」
「へぇ、じゃないだろ?律も少しは、そういう上品な作法を勉強したらどうだ?」
「そうだよ、りっちゃん。いじ汚いよ、りっちゃん。卑しいよ、お粗末だよ……」
「「お前が言うな」」
何故か唯がここまで言っていたので、統夜と律が同時にツッコミを入れていた。
抹茶とお菓子を堪能すると、ちょうどバスの移動時間となり、統夜たちは再びバスへ乗り込み、バスが走り始めた。
続いて統夜たちが訪れた場所は……。
「……北野……天満宮?」
ここもまた修学旅行でよく行く場所の1つである北野天満宮であった。
「ここって有名なところなのか?」
「さぁ、知らなーい」
「神社なんて学校の近くにもあるのになぁ」
「きっと、ここに大仏がいるんだよ!」
「「ねぇよ」」
唯の突拍子のない発想に統夜と律がツッコミを入れていた。
「ここの神様は学問のご利益で知られてるの。受験生には有名な神様なのよ」
和の説明通り、北野天満宮には、藤原道真という人物が祀られていて、学問の神様として崇められている。
そのため、受験生が良くここを訪れるということで有名になった場所である。
「ここの宮のあちこちに牛がいるだろ?この牛の頭をこうやって撫でるとな、頭が良くなると言われているみたいだぜ」
統夜が和に代わって補足説明をして、実際に牛の像の頭を撫でてみた。
「へぇ、統夜君って意外とこういう雑学は詳しいのね」
「意外って……。まぁ、理数系はダメダメだけど、こういうのを調べるのって好きなんだよね」
統夜は理数系の成績は壊滅的ではあるが、その分この手の雑学には詳しいのである。
牛の頭を撫でると頭が良くなると知った唯と律はこれでもかというくらい頭を撫でまくっていた。
「おいおい……いくらなんでも撫で過ぎだろ……」
《これはご利益どころか天罰がくだりそうだな》
統夜とイルバはこれでもかと牛の頭を撫でる唯と律に呆れていた。
すると……。
「こら!!」
こうさわ子に注意されると、統夜たち5人はまとめてさわ子の説教を受けてしまった。
(つか、マジで天罰がくだったな……。しかも、何で俺まで怒られてるんだよ)
《まぁ、連帯責任って奴だ。諦めるんだな》
(それはわかってるけど、さすがに解せんぞ、これは……)
統夜とイルバがこのようにテレパシーで会話をしていると……。
「ちょっと月影君!聞いてるの!?」
「はっ、はいぃ!」
統夜はこう反応されると、さらにさわ子から説教を受けていた。
さわ子のありがたい説教が終わり、統夜たちは境内を歩いていると……。
「あっ、りっちゃん!絵馬だよ!絵馬!」
「絵馬かぁ。よし、唯。これも何かの記念だ!書いてこうぜ!」
「そうだね!神様に私たちの願いを届けておこうよ!」
「おぉ!絵馬絵馬〜♪」
「牛っ、牛〜♪」
唯と律は上機嫌な状態で絵馬の書所へと向かっていった。
「おいおい……」
「まったく、あいつらは……」
澪と統夜ははしゃぐ唯と律に呆れていた。
「……方向も同じだし、俺はお守りでも買っていこうかな」
統夜はそう言うと唯と律が向かった方角と同じ方角に向かって歩き出した。
澪と紬はそれと同時に走り出し、唯と律を追いかけていた。
ちょうど唯と律が絵馬の書所へ向かった頃、さわ子は……。
「あの、この縁結びのお守りを1つ……」
統夜が向かっているお守り売り場で縁結びのお守りを買っていた。
「はい、600円です」
代金を支払い、お守りを受け取ると、さわ子は縁結びのお守りを大事そうに抱えていた。
すると……。
「神様〜!天神様〜!」
「叶えてくださーい!」
大きな声をあげながら唯、律、澪、紬の4人が走り去っていった。
「……」
さわ子がそんな4人をスルーしたその時だった。
「……先生、こんな所で何してるんすか?」
お守りを買いに来た統夜がさわ子を見つけたので、声をかけた。
「へっ!?と、統夜君!?あなた、唯ちゃんたちと一緒じゃなかったの!?」
さわ子はいきなり統夜が登場したことに驚き、先ほど買ったお守りを咄嗟に隠していた。
「どうせ方向は一緒だったんで、記念にお守りを買おうかと思って」
「そ、そう……」
「ちなみに先生は何のお守りを……」
買ったんですか?こう核心を突いた話をしようとしたその時だった。
「叶うかなぁ!」
「叶うといいねぇ!」
「叶えてくださーい!」
絵馬を書きに行ったと思われた4人が何故か先ほど来た道を戻るかのように走り去っていった。
「「……」」
統夜とさわ子はそんな4人をスルーしながら黙っていた。
「と、ところで統夜君は何のお守りを買うの?」
統夜に縁結びのお守りを買ったと知られたくないのか、さわ子はこのように話を振って誤魔化そうとしていた。
「俺ですか?俺は……」
何のお守りを買うか答えようとしたその時だった。
「あっ、お賽銭忘れた〜!」
「何ぃ!?じゃあもう1度だ!」
先ほど絵馬を書かずにお参りをしていた4人が再び戻ってきた。
さすがのさわ子もこれ以上は耐えられなかったようで……。
「ちょっと何よあなたたち!それはわざとなの!?」
さわ子は4人を捕まえると、泣きながらこのように訴えかけていた。
「さ、さわちゃん、誤解だってば!」
「そうです!私たち、絵馬に書いたお願いを……」
唯たちはお参りの前に既に絵馬を書いており、それからお参りを行ったのであった。
「そうだよ!大切な絵馬に書いたお願いを念押しに……」
「適当なこと言ってもダメ!こっち来なさい!」
さわ子は統夜たちを連れていくと、再び説教を始めた。
(ちょっと待て!つか今回は俺関係なくね!?)
説教に巻き込まれるという理不尽に、統夜は納得していなかった。
《まぁ、今日はそれだけ不幸ってことで諦めるんだな》
イルバにとっては完全に他人事なので、カタカタと音を鳴らしながら笑っていた。
(お前なぁ……!)
統夜はそんなイルバに呆れるが、話を聞いていないとさらに話がひどくなると思い、大人しく話を聞いていた。
こうして説教が終わったところで、統夜はどうにかお守りを購入し、自由時間が終了した。
この日見て回るスポットは全て見て回ったので、統夜たちを乗せたバスが向かったのは、この修学旅行で泊まるホテルだった。
※※※
「……はぁ、やっと解放された……」
統夜はホテルに到着し、自分の部屋に入るとすぐに寝転がっていた。
《おいおい、呑気に寝てる場合じゃないだろう?確かこの後少し時間があるんだからその隙に番犬所へ挨拶に行ったらどうだ?》
部屋には一緒に寝泊まりする3人もいたので、イルバはテレパシーで統夜と話をしていた。
(わかってるって。その前に少しだけ休ませてくれよ……)
統夜もすぐにでも番犬所に向かいたいと思っていたが、唯たちに散々振り回されてしまったため、疲労がたまっていたのである。
「……なぁ、月影。ずいぶんと疲れてるな」
この学年の男子の1人で、眼鏡をかけた細い男が統夜に話しかけてきた。
「まぁな。今日は軽音部のみんなと回ったんだけど、散々振り回されてな」
「ふーん、何か羨ましいけどな」
こう言ってきたのは、少しぽっちゃり気味の男だった。
「そんなことはないと思うけどな。お前らだってクラスの男子は自分だけだろ?」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ」
「あんまり女子と絡みがないからさ」
ぽっちゃり気味の男の言葉に眼鏡の男がウンウンと頷いていた。
「まぁ、俺は別に月影が羨ましいとは思わなかったけどな。俺は彼女いるし」
統夜を含む4人の中で、1番容姿が整っている男がこう語っていた。
「くー!羨ましい!!」
「アハハ……」
統夜は同い年の男子と少し話をすることで、少しだけ気持ちをリラックスさせることが出来た。
「さてと……」
少しだけ疲れが取れたところで、統夜はゆっくりと起き上がり、近くに置いてあった魔法衣を羽織った。
「……あれ?月影、どっか行くの?」
「あぁ、ちょっとな」
「どこに行くんだ?」
「悪い、ちょっとそれは……」
統夜は外に出るとははっきりと言わなかった。
「悪いけど、俺が出ることは黙っててくれないか?後で何か奢るからさ!」
「まぁ、よくわからないけど、そしたら後で何か奢ってくれよ!」
容姿端麗の男が統夜の外出を了承していた。
「……ありがとな!とりあえず夕食前には1度戻るから!」
統夜はホテルの部屋を後にすると、誰にも見つからないようにホテルを出て行った。
ホテルを出ると、イルバのナビゲーションを頼りに、都の番犬所へと向かった。
番犬所の入口はホテルから15分とかからずに到着した。
そこはとある道の行き止まりだったのだが、統夜が明けるイルバをかざすと、番犬所への扉が開かれ、統夜は番犬所の中に入った。
しばらく道なき道を歩いていると、神官の間に到着した。
この都の番犬所は統夜の所属の紅の番犬所とは神官の間の雰囲気はだいぶ違っていた。
「……お主があの小娘の言っておったソロか……」
統夜を見つけてこう言っていたのは、神官の間の中央にある高い椅子に座っている白塗りのおかっぱ頭の少女だった。
身に纏っている装束はまるで平安時代を感じさせるものであり、後頭部には狐らしきお面をつけていた。
「……はい。俺が紅の番犬所から来ました白銀騎士奏狼……月影統夜です」
統夜は深々と頭を下げて、自らの素性を名乗った。
「まぁ、お主のことは小娘から聞いておるが、本当に小僧なのじゃな。このような小僧がよくあのグォルブを討滅出来たものじゃ」
穏やかな性格であるイレスとは異なり、この神官の言葉には少し棘があり、統夜は少しムッとしていた。
「……紹介が遅れたの。私は稲荷(いなり)。この都の番犬所の神官じゃよ」
「稲荷様……ですか?」
『ほぉ、お前さんがあの稲荷か。噂では同じ容姿の奴が3人いたと聞いたことがあるが』
「フン、それは私のご先祖じゃ」
稲荷が答えた通り、平安時代からこの番犬所は存在しているみたいなのだが、当時は目の前の稲荷と同じ容姿の神官が3人いて、その3人がこの番犬所を治めていたようである。
「私のことは良いのじゃ。お主、学校とかいうくだらぬ所へ行っておるようじゃの。そんなんでよく魔戒騎士と名乗れるものじゃ」
稲荷は統夜が学校へ行きながら魔戒騎士の仕事をしていることを良しと思っていなかった。
そのためにこのような棘がある言葉になっていたのだが、統夜はその言葉に苛立ちを覚えていた。
「稲荷様!お言葉ですが、俺が学校へ行きながら使命を果たせるのはイレス様のおかげなのです」
「そうらしいな。あの小娘もグレスの娘のくせにくだらぬ事に興味を持ちおって……」
「……」
統夜は自分だけではなく、イレスにまで暴言を吐いていたので、これ以上苛立ちを抑えられなかった。
「挨拶は済ませました。俺はこれで失礼します」
統夜はこれ以上目の前の神官と話をしたくないと思い、番犬所を後にしようとした。
「またぬか!ソロよ」
稲荷は番犬所を後にしようとする統夜を引き止めていた。
「お主、あの小娘に言われておるのだろう?指令があれば受けるようにと」
「……ということはもしかして……」
「うむ、私が許可する。お主の力を見せてもらうために1つ指令を受けてもらうぞ」
そう稲荷が答えると、統夜の手に赤の指令書が置かれていた。
統夜はいきなり自分の手元に指令書が来たので驚いていた。
だが、統夜はすぐ魔導ライターを取り出すと、魔導火を放って指令書を燃やした。
すると、魔戒語で書かれた文章が浮かび上がり、統夜がそれを音読すると、消滅した。
「……わかりました。ホラーを早急に見つけ、討滅します」
「うむ、お主の実力、しかと見せてもらうぞ」
統夜は稲荷に一礼すると、番犬所を後にした。
「……」
番犬所を出て、来た道を戻っていたのだが、統夜は少し不機嫌そうだった。
『統夜、ずいぶんと不機嫌そうだな』
「まぁ、そりゃあな。俺のことを馬鹿にするならともかく、イレス様まで馬鹿にするなんて……。しかもイレス様のことを小娘って……」
統夜は自分よりもイレスに向けて吐いた言葉が許せなかったのである。
『番犬所の神官などあんなもんだ。むしろ、イレスや翡翠の番犬所のロデルが優しすぎるくらいだぜ。それに、あの稲荷って奴はイレスより長い時を生きてるらしいからな。小娘とも呼びたくなるのもわかるぜ』
イルバの言う通り、番犬所の神官は厳しい人が多いというのも事実であり、イレスやロデルのような神官は希少なのである。
「イルバ、とりあえず1度ホテルに戻る。夕食が終わったらホラー捜索に行く予定だから、その間、ホラーの気配を探ってくれないか?」
『わかった。どうやらそれがいいみたいだしな』
あまり長いこといないとなると、口止めを頼んでいてもホテルを抜け出したことがバレそうだったので、統夜は1度ホテルへ戻ることにした。
イルバは夕食後にスムーズにホラーを探せるよう、ホラーの気配を探っていた。
統夜が部屋に戻ると、ちょうど夕食の時間になるところだったので、統夜は急いでジャージに着替え、食事を行う部屋へ向かった。
統夜は唯たちの隣になり、豪華な食事が統夜たちの前に並べられた。
こうして夕食の時間が始まったのだが……。
「……あれ?あんたたち、もう食べないの?もったいない」
統夜の向かいに座っていたクラスメイトが唯と律の2人が食事にあまり手をつけていないことに気付いてこう聞いていた。
「いや……ちょっと休憩……うぷっ」
「のこ……残さないで食べるって……うぷっ」
唯と律は何故か満腹で、苦しそうにしていた。
「ムギ、2人はもう腹いっぱいみたいだけど、何かあったのか?」
「あのね、実は……」
「唯と律の奴、もうすぐご飯だって言うのにおやつ食べてたんだよ」
「そうなの。ゲームで遊んでたんだけど……」
「なるほどな……」
澪と紬が事情を説明したことで事情を理解した統夜は苦笑いをしていた。
《やれやれ……。本当に子供だな、あの2人は……》
イルバも話を聞いていたので、おやつを食べて夕食を食べられない唯と律に呆れていた。
「……ったく、しょうがねぇな……。唯、律。少しだけなら食ってやるからちゃんと残りは全部食えよ」
統夜は唯と律のところからおかずなどを持っていった。
「やーくん、ありがとー!!」
「統夜!助かったよ!」
それだけ満腹だったのか、統夜の助け舟に唯と律は感謝していた。
「おいおい、さすがに甘やかし過ぎじゃないのか?」
「まぁ、今日は修学旅行だし、たまにはいいんじゃないのか?」
統夜はそう答えると、唯と律のところから持ってきたおかずなどを頬張っていた。
唯と律の2人は、統夜のおかげでどうにか夕食を残さず食べることが出来た。
夕食が終わると、交代でのお風呂の時間となった。
まず最初は女子の入浴時間であるのだが、人数が多いので、3回に分けて女子の入浴となり、男子は女子が全員入浴した後に入浴となっている。
統夜は再び同室の男子生徒に外へ抜け出すことへの口止めを頼み、ホテルを出た。
「……イルバ、ホラーはどうだ?」
『あぁ、ホラーの気配を感じるぜ。統夜、運がいいな。ホラーはここから近いぞ』
イルバは自分たちが泊まっているホテルの近くにホラーがいることを突き止めた。
「よし、そしたらさっさとホラーを倒すぞ。風呂の時間までには戻りたいからな」
統夜は風呂の時間に間に合わせてのんびりと風呂に入るために、イルバの示す場所へ急行した。
※※※
「……イルバ、ここか?」
イルバのナビゲーションを頼りに統夜がたどり着いた場所は、現在は使われていない神社だった。
使われなくなってけっこう経っているのか、社はボロボロになっており、古い社だということがわかる。
『……どうやら、目の前にいるのがそうみたいだぜ』
統夜はふと前を見ると、挙動不審な動きをしている男を発見した。
「よし、さっさと片付けるか」
統夜はそう言いながら魔導ライターを取り出すと、男に近付いていった。
「……おい」
「?」
統夜の呼びかけに反応した男が統夜の方を向いたのと同時に統夜は魔導火を放ち、男の目を照らしていた。
すると、男の瞳から不気味な文字のようなものが浮かび上がり、この男がホラーだという証だった。
「貴様……魔戒騎士か」
男は統夜と距離をとると、統夜を睨みつけていた。
「あぁ、さっそくで悪いが、お前を斬る」
統夜は魔戒剣を抜くと、ホラーを睨みつけながら構えていた。
男は統夜と違って丸腰の状態だったが、臆することなく統夜に向かっていった。
「……」
統夜はそんな男の動きをじっくりと見極めていた。
その効果があってか、統夜は男の攻撃を軽々とかわし、蹴りによる一撃を放って男を吹き飛ばした。
「くっ……!おのれ……!魔戒騎士!」
統夜の蹴りを受けて本気になったのか、男の体が変化し、醜悪な仁王像のような姿になっていた。
『……統夜!そいつは閻剛(エンゴウ)。そのデカい図体から繰り出される攻撃に注意しろ!』
イルバの言う通り、このホラー、エンゴウは、醜悪な仁王像のような姿をしており、そのパワーも強力なホラーであった。
「……あぁ、わかった!」
ホラーの特徴がわかったところで、統夜はホラーを睨みつけた。
エンゴウは統夜めがけて突撃し、強靭な腕を活かした強烈なパンチを放つが、統夜は軽々とエンゴウのパンチをかわしていた。
すかさず統夜は魔戒剣を一閃するが、その体にダメージを与えることが出来なかった。
「くっ……!図体がデカいからか硬いな……!」
エンゴウが仁王像のような姿をしているからか、その体も強固なものだった。
統夜は1度エンゴウと距離をとるが、エンゴウは頭頂部にある布のような物を統夜めがけて放った。
「……!」
統夜は魔戒剣を3度、4度と一閃し、布のような物を切り裂くことで、攻撃を防いでいた。
「ここは一気に決着をつけるか……。……貴様の陰我、俺が断ち切る!」
エンゴウに向かってこう宣言した統夜は、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
そこから放たれる光に包まれた統夜だったが、エンゴウはそのタイミングで布のような物を放って、統夜の体を縛り付けようとした。
しかし、統夜が奏狼の鎧を身に纏った瞬間、統夜の体に巻き付かれた布のような物は一気に消滅し、白銀の鎧がエンゴウの眼前に姿を現していた。
「きっ……!貴様は!まさか噂のソロとかいうやつか!こんな所に現れるとは!」
「へぇ、京都のホラーにも俺の名前が広まってるんだな」
統夜は京都のホラーまでが自分のことを知っていることに驚いていた。
「え、えぇい!相手が誰だろうと関係ない!貴様もこの俺が喰らってやる!」
エンゴウは両手から炎のようなものを集め、それを統夜目掛けて放った。
「……ふっ」
統夜はエンゴウが放った炎の攻撃をかわすことはなく、受け止めていた。
「……なっ!?効いていないだと!?」
『おいおい、そんな炎で奏狼の鎧を焼き尽くせると思っているのかよ』
奏狼の鎧を身に纏っている統夜は炎の攻撃を受けても平然としていた。
「……はぁっ!」
統夜はそんな炎を自らの力で消し去ると、エンゴウ目掛けて突撃し、皇輝剣を一閃した。
その一撃でエンゴウの体は真っ二つに斬り裂かれた。
斬り裂かれたエンゴウは断末魔をあげながら消滅した。
エンゴウを討滅したことを確認した統夜は、鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を青い鞘に納めた。
「さて、これでお仕事は完了だな」
『あぁ、さっさと戻るとしよう。バレたら面倒なことになるからな』
「そうだな」
エンゴウを討滅した統夜は急ぎホテルへと戻った。
ホテルへ戻ってきた統夜は誰にも見つからないように自分の部屋へ戻り、魔法衣を脱ぐと、制服からジャージへと着替えた。
統夜は出かけたことを黙ってくれた3人にお礼としてホテルの売店に売っている高いお菓子を奢ることになり、売店へと向かった。
すると……。
「あっ、やーくんだ!」
売店を目指すためロビーを歩いていると、唯が統夜を発見し、統夜に声をかけていた。
「……お、唯。1人か?」
「うん!お風呂上がりにジュースでも買おうかなって思って」
「そっか」
統夜はふと唯を見たのだが、風呂上がりだったのか、顔が火照っており、頬が朱色に染まっていた。
さらに少し暑いのかジャージから少しTシャツが見えており、それが少し色っぽく見えた。
「……!////」
それに反応した統夜は顔を真っ赤にして、唯から視線を背けていた。
「……?やーくん?」
「な、何でもない!それよりも俺は今から売店に行くんだけど、お前も一緒に行くか?」
「うん!」
統夜は唯と一緒に売店へ向かい、一緒に買い物することになった。
統夜は売店に入るなり、奢ることになっていた高いお菓子を手に取った。
「あー!やーくん!それ買うの?美味しそー」
唯は統夜の取ったお菓子に即座に反応していた。
「あぁ、ちょっと一緒の部屋の奴らにお礼に奢ることになってな」
「お礼?」
「あぁ、それは明日の自由行動の時に話すよ」
「ふーん……。わかった」
とりあえず改めて話す約束をしたら唯はこれ以上は聞かなかった。
「……唯、お前らもこれ食べるか?」
「えぇ!?これ高いのに悪いよ!」
「いいよ、別にどうせ買うんだから1つも2つも変わらんし」
統夜は修学旅行ということもあって、普段より多めのお金を財布に入れていた。
そのため、この買い物は苦ではないようである。
「やーくん、ありがとう!」
「お、おう……////」
唯の満面の笑みが風呂上がり効果で色っぽかったのか、統夜は再び頬を赤らめていた。
(ほぉ、統夜の奴、照れてやがるな。これはなかなか、いい傾向になって来たな……。最近はみんなも少しは意識しているみたいだしな)
バレンタイン以降、統夜は相変わらずの鈍感であったが、唯たちを女性として意識するようになり、このように照れることも度々あったのである。
イルバはこれを良い傾向と喜んでいた。
統夜は買う予定だった高いお菓子を2つ購入し、ついでに唯たちの飲むジュースと自分たちの飲むジュースも購入していた。
売店で買い物を済ませた統夜はロビーで唯と別れると、自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると、買ってきたお菓子とジュースを堪能し、しばらくすると入浴時間になったので、統夜たちは大浴場へと向かった。
風呂に入るのは、統夜たち4人だけだったので、ほとんど貸し切り状態だった。
今回付き添いの教師は全員女性だったので、今回風呂に入るのは統夜たちだけなのである。
統夜はほぼ貸し切りの大浴場を心ゆくまで堪能していた。
風呂からあがると、統夜は売店へ向かい、今度は人数分のアイスを購入した。
統夜は部屋に戻ると、3人にアイスを配り、アイスを食べながら普段あまり行っていない男同士の会話を楽しんでいた。
(……今思えば女子とばかり話してたからな……。たまにはこう男子とじっくり話をするのも悪くはないかな)
統夜は魔戒騎士でも魔戒法師でもない普通の同世代の男と話すのは久しぶりだったので、貴重な機会として会話を楽しんでいた。
しばらく話していると、あっと言う間に就寝時間となった。
統夜たちは大人しく布団にもぐって眠りにつこうとしたのだが……。
__アハハハ!!!
誰かが騒いでいる声が聞こえてきた。
そのせいで、統夜たちはなかなか眠りにつくことが出来なかった。
「何か騒がしいな……」
「この声……あいつら……!」
統夜は騒いでいるのが唯たちであるとすぐにわかり、呆れていた。
しばらくすると、「早く寝なさい!」とさわ子の怒鳴り声が聞こえて来たら大人しくなった。
しかし、数分も経たないうちに再び唯たちが騒ぎ始めていた。
統夜は携帯を取り出すと、律に電話をかけた。
『……ん?どうした、統夜?』
「お前らうるさ過ぎ!おかげで寝れないだろうが!さっさと寝ろ!!」
統夜はそれだけ言って電話を切った。
「やれやれ……」
これでようやく落ち着ける。そう思って再び眠りにつこうとするのだが、唯たちはまだ騒いでいた。
統夜は我慢してどうにか眠りについたのであった。
……続く。
__次回予告__
『ほお、京都の街はなかなか風情のある街じゃないか。見てるだけでも楽しいものだぜ!次回、「修学旅行 後編」何事も問題なく終わればいいがな』
こうして統夜の修学旅行初日は無事に終わりました。
今回出てきた都の番犬所の神官である稲荷は、容姿は「紅蓮ノ月」に登場する稲荷と全く同じ容姿ですが、その稲荷はご先祖ということで、別人になっています。
修学旅行が京都ということで「紅蓮ノ月」を意識してみたので、神官を稲荷にしました。
出てきたホラー、エンゴウも、「紅蓮ノ月」の1話に登場したホラーで、原作では雷吼が倒したホラーです。
今回出てきた稲荷の態度を見ていると、イレスが上司としては優しく理想の上司だということがわかりますね(笑)
次回は修学旅行の後編になります。
次回は自由行動なので、統夜は軽音部のみんなと京都の街を回りますが、何事もなくホテルに戻る事は出来るのか?
それでは、次回をお楽しみに!