今回はけいおんメインの話になりますので、戦闘シーンはありません。
前回登場した戒人ですが、今回出番はありません(笑)
あと、戒人と阿号編に登場したアキトのイメージCVはまだ考えてないので、思いついたらこの2人のキャラ紹介も作ろうかなって思っています。
それでは、第46話をどうぞ!
音楽準備室の物置を整頓していると、そこから古いギターが出てきた。
そのギターは60万円という破格の値段で売れたのだが、律たちがその金額を誤魔化そうとしたため、部費になったのはわずか1万円だった。
しかし、さわ子は残りの59万円で1つだけ好きなものを買ってあげると言ってくれた。
そんな中、唯に妙案があるとのことで、選ばれたのは機材ではなく、1匹の亀だった。
唯はホームセンターに売られていたこの亀が好きだと思ったのだが、それは唯の勘違いだった。
しかし、唯たちは後輩がいなくて寂しがっている梓のために新入りの部員という扱いでトンちゃんを迎えたいと考えていた。
そんな先輩たちの優しさを汲み取った梓はトンちゃんを新入部員として歓迎した。
トンちゃんが軽音部にやってきた翌日、唯たちは水槽を悠々と泳ぐトンちゃんに見入っていた。
「……か、可愛い……」
唯が1番トンちゃんにメロメロになっていた。
そんな中、澪は遠巻きにトンちゃんを眺めていた。
「……澪ちゃん、怖いの?」
「え?こ、怖くはないけど、可愛いと思う境地にはまだ……」
「なんかそれわかる気がするよ」
澪はトンちゃんのことをまだ可愛いと思えておらず、そのことに統夜は賛同していた。
「えぇ!?可愛いよぉ!ねぇ、トンちゃん♪」
「あっ!唯ちゃんの方を見た!」
トンちゃんは唯に呼びかけられて、唯の方を見ていた。
『ほぉ、あのカメ公。人の言葉がわかるみたいだな』
「なぁ、イルバ。カメ公ってトンちゃんのことか?」
『他に誰がいるんだ?』
「むぅぅ……!ちゃんとトンちゃんって呼ばないとダメだよぉ!イルイル!」
『唯!お前さんは毎度毎度俺様を変なあだ名で呼ぶな!』
イルバは唯に注意されるが、イルバは唯にいつものツッコミをいれていた。
「そうだよねぇ♪トンちゃん♪」
「トーンちゃん♪」
唯に続いて紬もトンちゃんに呼びかけていた。
「澪、お前もトンちゃんに呼びかけてみたらどうだ?」
「え?」
澪は統夜の言葉に困惑していた。
「と、トン……ちゃん……」
しかし、澪は勇気を出してトンちゃんに呼びかけた。
すると、トンちゃんは水面に顔をつけると、鼻をゴフゴフとさせていた。
「……可愛いな……」
今のトンちゃんの仕草を見て、澪はあっけなくトンちゃんに魅了されてしまった。
「唯先輩!飼うからにはちゃんと世話をしないとダメですからね!水温を一定にして、定期的に水を変えないと」
梓は亀の飼い方の本を見ながらこう言っていた。
「ギー太より手がかかるねぇ……」
『おいおい、ギターとカメ公を同列に語るなよ……』
イルバはギターと亀を同列に語る唯に呆れながらツッコミを入れていた。
「それに、餌も毎日……」
「あっ!餌足りなくなったら私持ってくる!家でもクサガメとか、南イシガメとか、ミシシッピニオイガメとか!」
((え、エキスパートだ!))
統夜と澪は紬が亀を多く飼っていることに驚いていた。
「た、助かります」
「トンちゃん♪これからは毎日お世話するからね♪」
「そりゃそうだな。もう飼うのやめた!なんてそんな無責任な事は言えないからな」
統夜が動物を飼うのに必要なことを語ったその時だった。
「もうヤダ!!」
1人だけパソコンで何かを見ていた律がこう叫んでいた。
そのため、全員の視線が律に集中していた。
そして……。
「ドラムやだぁ!!」
律はいきなり不穏な言葉を叫んでいた。
「おいおい、ドラムがやだとか、どうしたんだよ」
律のあまりに不穏な言葉に統夜は心配になって声をかけた。
「すまん!やだとは言い過ぎた!だが、これを見よ!」
そう言って律は統夜たちにとある映像を見せた。
「生徒会で撮った軽音部の活動記録。和がくれたんだけど……」
「へぇ、生徒会もちゃんと軽音部の映像を撮ってくれたんだな」
律が再生しようとしているDVDが生徒会が作ったものだと知り、統夜は感心していた。
そして再生されたのは、軽音部初ライブである統夜たちが1年生の時の学園祭でのライブ映像だった。
「あっ!これ、1年生の時の!」
「懐かしいねぇ!」
「私見ました!澪先輩の……」
「うわぁ!やめろぉ!!」
澪にとって、1年生の時の学園祭でのライブは黒歴史でしかなかった。
「違う!ドラムんところ見てみろ!」
今回はそこが問題ではなく、ドラムの部分に問題があるようだった。
すると……。
「りっちゃん、暗い!」
「へぇ、顔は暗いけどデコの部分はちゃんと……」
「ふんす!」
「ぐぇ!!」
統夜が最後まで言い切る前に律は統夜にボディーブローを放って統夜を黙らせた。
『これは、単純にライトが当たってないようだな』
イルバは何故律のデコだけが光っているのかをこのように推察していた。
「隅っこだから仕方ないですよね……」
「これだけじゃないんだよ!」
律は今まで行ってきたライブを順を追って再生したのだが、どれも最初のライブのようにおデコ以外が映っていなかった。
「あちゃあ……見事に映ってないな……」
「そうね……」
どうやら律はライブの映像に自分が全く映ってないのがショックのようである。
『おい、律。お前さんはそれで一体何をしたいんだ?』
イルバの問いかけに律が出した答えは……。
「……他の楽器やりたい」
ドラム以外の楽器がやりたいということだった。
「はぁ?」
「おい、律。ちょっと待て、律がドラムやらなかったら誰がドラムやるんだよ!」
澪の指摘はもっともだった。
律がドラムをやらないなら、誰か代役を立てなければいけないからだ。
そんな中、律は……。
「……ジー……」
統夜を凝視していた。
「はぁ!?俺か!?」
「いやぁ、統夜なら何となく出来そうな気がしてさぁ♪」
「あのなぁ……。俺はドラムは無理だぞ!」
「まぁ、そう言わないでちょっとやってみてよ♪」
律は無理矢理統夜をドラムの椅子に座らせた。
「……ったく……。どうなっても知らないぞ」
統夜はぶつぶつと文句を言いながら律からドラムのスティックを受け取った。
それから統夜はどうドラムを叩こうかしばらく考えていた。
「……梓、ふわふわのイントロを弾いてくれないか?それに合わせて叩いてみるから」
梓の協力でドラムを叩いてみることにしたのである。
「は、はい!」
梓はそれを了承すると、慌ててギターケースからギターを取り出して、チューニングを済ませた。
「……統夜先輩!準備出来ました!」
梓のチューニングが終わり、いつでも演奏出来る状態になった。
「……やーくんのドラム、一体どうなるんだろうね?」
「えぇ♪凄く楽しみだわ♪」
「……大丈夫かなぁ……」
唯と紬は統夜のドラムにワクワクしていたが、澪は心配そうに統夜を見ていた。
梓の準備が整ったところで、梓はふわふわ時間のイントロを弾き始めた。
(よし!やってやるぜ!!)
統夜はやる気満々になり、ドラムを叩き始めたのだが……。
ベコッ!ベコッ!ベコッ!
ボヨーン!
「……?」
あまりに酷い統夜のドラムに梓は困惑していた。
そして、唯たちは……。
「「「「……」」」」
統夜のドラムに呆然としていた。
(まぁ、初めてのドラムならこんなに下手くそでも仕方ないよな……)
イルバは統夜のドラムに呆れながらもこのような無茶振りをされた統夜に同情もしていた。
最初から梓のギターと合っておらず、あまりにずれていたので、演奏はすぐにストップしてしまった。
「……だ、だから言っただろ!俺には無理だって!」
統夜は自分の下手くそな演奏に言い訳をしていた。
「まぁ、やっぱりそうだよなぁ……」
律はこの展開を予想していてこのようなことを言っていた。
すると……。
「…………」
統夜は部屋の隅っこで体育座りをして、激しく落ち込んでいた。
「あぁ!統夜先輩!気を確かに!」
梓は必死に統夜をフォローしていた。
結局、ドラムを統夜にやらせようというのは統夜に精神的ダメージを与えるだけだった。
「律……。そもそもお前、ドラム以外の楽器はチマチマしてて嫌だって言ってなかったか?」
律がドラムを選んだ理由の1つは、ギターやベースなどの弦楽器はチマチマしていて自分の性には合わないという理由だった。
「……それもそうなんだけどさぁ……。たまにはちょっと替えっこしてみようぜ!楽器」
「何か楽しそうだね!」
「えぇ!たまにはいいかも!」
「えぇ!?」
律の気まぐれに唯と紬が賛同しており、澪は驚いていた。
「まぁ、替えっこのせいで1人は心に傷を負ってますけどね……」
梓は統夜の方を見ると、統夜は未だに落ち込んでいた。
「アハハ……笑えよ……どうせ俺なんて……」
『統夜!お前はもっとしっかりしろ!』
イルバはそんな統夜を叱責するが、統夜は落ち込み続けていた。
「りっちゃん!ギターやってみる?」
「おぉ、いいのかい?」
「えぇ!?」
落ち込む統夜は放ったらかしにされて、律は唯のギターを受け取って構えてみた。
「ジャーン!!」
「おぉ!」
「結構似合うわね!」
「意外と様になってますね」
「何か見慣れないな……」
実際にギターを持ってみたら、意外とその姿が様になっていた。
「ねぇ、りっちゃん。ちょっと弾いてみて!」
紬がこう提案したその時だった。
「うわぁぁぁぁん!!」
唯がいきなり泣き出してしまったのだ。
「どうしたんですか、唯先輩?」
「……ギー太が浮気したぁ!」
『おいおい、喜んでギターを渡したのはどこのどいつだよ……』
イルバは唯が泣き出した理由を聞いて呆れていた。
「……ありがとう!今まで楽しかったわ!」
「……面倒くさい人ですね……」
『まったくだ』
唯のリアクションに梓とイルバが呆れていた。
「で、唯先生!どうすれば?」
「え?先生?」
律に先生と呼ばれ、唯はあっさりと泣き止んでいた。
澪はふと統夜を見ると、やはり統夜は落ち込んでいた。
「……ふふふ……。もう、パーフェクトもハーモニーもないんだよ……」
統夜は訳のわからないことをぶつぶつと呟いていた。
澪はそんな統夜にゆっくりと近付くと……。
「いい加減しっかりしろ!」
澪の容赦ない拳骨が統夜に襲いかかった。
その痛みは相当なもので、統夜は痛みのあまり手で頭を抑えていた。
そして……。
「……ハッ!俺ってば一体何を……」
統夜は澪の一撃で、現実逃避から抜け出せたようだった。
『やれやれ、やっと戻ったか……』
「ほら、統夜!私たちはお茶してるぞ!」
澪は正気に戻った統夜の首根っこを掴むと、そのまま連行し、そのままお茶を飲むことにした。
(まぁ、律のことだ。きっとすぐに飽きるだろうな)
イルバは律の性格を理解していたので、ギターを教えてもらっても長くはもたないと予想していた。
唯と梓が律にギターを教えている間、統夜、澪、紬はお茶を飲みながらその様子を見守っていた。
そして数分後……。
「ギター無理かも」
「「早っ!!?」」
律が予想以上に早くギターを諦めたので、統夜と澪は驚愕していた。
『おいおい……。いくら何でも早過ぎるだろう……』
イルバは諦めの早い律に呆れていた。
「何か色々やることあって大変だなぁ。……お見それいたしました」
「いやいや……」
律は唯にギターを返したのだが、仰々しい動きをしていた。
「ギー太♪おかえり♪」
ギターが自分の手元に帰ってきて、唯は満面の笑みを浮かべていた。
律はそんな唯を見て、笑みを浮かべていた。
ギターが駄目だったので、律はティータイムに参加し、唯と梓もティータイムに参加していた。
この日は練習らしい練習は行われず、解散となった。
統夜は解散後、番犬所に直行した。
この日も指令はなかったので、街の見回りを行ってから帰路についた。
※※※
翌日、統夜はエレメントの浄化を行ってから登校した。
玄関に入り、教室に向かっていたその時だった。
「……あっ、統夜君、おはよう」
「先生、おはようござ……」
さわ子とすれ違ったので、挨拶をしようとしたのだが、さわ子の変化を感じて統夜は唖然としていた。
『……?統夜、どうした?』
「なぁ、イルバ。何かさわ子先生輝いてなかったか?」
『……言われてみれば、いつもと雰囲気が違うかもな……』
「何かプライベートでいいことあったのかな?……まぁ、いっか」
統夜はさわ子の異変を感じて驚いたのだが、すぐにきにするのをやめて教室へと向かった。
そして昼休み……。
「「「「「いただきまーす!!」」」」」
統夜、澪、唯、紬、和の5人でテーブルを囲み、昼食を取っていた。
「和ちゃんのお弁当、毎日美味しそうね♪」
紬は和の弁当を見ると、カラフルで凝っている和の弁当に関心していた。
「和ちゃん、お料理上手なんだぁ♪」
唯は和の弁当からおかずをかっさらうと、それを頬張っていた。
「憂ちゃんもだよな」
「私って幸せ者だよねぇ♪」
妹も幼なじみも料理上手であるため、それを食べる機会のある唯は幸せだということを噛み締めていた。
「ムギのは……いつも量が多いわね」
和の指摘通り、紬の弁当は量が多く、食べ盛りな男子高校生が食べられるかどうかという程の量だった。
「うん!たくさん力使うから♪」
「「何に?」」
統夜と和がすかさずツッコミを入れていた。
「澪ちゃんのお弁当は、なんかいつも可愛い♪」
澪の弁当はタコさんウインナーや花型のおかずなど、女の子らしいお弁当で、紬も関心していた。
「お母さんにとっては、みおちゃんはいつまでも子供なんだねぇ♪」
澪の弁当は澪の手作りではなく、澪の母親が作ったものだった。
唯は母親の愛情を感じ取っていたのだが、澪はその言葉が恥ずかしく、顔を赤らめながらタコさんウインナーを頬張っていた。
「やーくんは、今日もパンなんだね」
「まぁな」
今日の統夜の昼食は、購買のパンではなく、コンビニのパンだった。
「統夜君って毎日パンなのよね?パンばかりだと栄養が偏るわよ」
コンビニのパンを頬張る統夜を見た和はまるで母親のように注意をしていた。
「まぁ、そうなんだけどさ、弁当作る暇がないんだよ」
統夜は毎朝エレメントの浄化を行っているので、弁当を作る暇はないのである。
統夜の事情を知っている和は統夜の言い訳を聞いて納得していた。
「そういえば統夜君って料理は出来るの?」
「人並みにはな。まぁ、夜も外食が多いからほとんど作らないけどな」
統夜の言っていることは嘘ではなかった。
統夜は誰もが呆れるほどの味覚オンチであるのだが、料理は人並み以上にこなせるのである。
しかし、夜は外食がメインなので、料理する機会はほとんどなく、人にもあまり振るまわないのである。
「へぇ、今度ぜひやーくんのご飯食べてみたいなぁ♪」
「ま、気が向いたらな」
「……大丈夫かなぁ……」
統夜が味覚オンチだと知っている澪は少し不安げな表情を浮かべていた。
「……あれ?そういえばりっちゃんは?」
「あそこだな」
統夜がとある方向に指を指すと、そこには律がいて、クラスメイトの子と談笑していた。
「……放浪中だね」
律はその持ち前の明るさのおかげで友達が多く、このクラスにも仲良しな子はたくさんいた。
しばらく色んな子達と交流した律は統夜たちのところに戻り、食事をしながら統夜たちと談笑していた。
そして昼休みは終わって放課後……。
「……という訳で今日はキーボードをやるぞ」
部室に入るなり律はいきなりこんなことを言っていた。
「……何がという訳なんだよ……」
律の突拍子のない発言に澪は呆れていた。
「あれ?「Cagayake Rittyan!!」シリーズまだ続いてるの?」
『おいおい、なんだよ、「Cagayake Rittyan!!」シリーズって……』
唯考案の奇妙なネーミングにイルバは呆れていた。
「やっぱ輝いてないと駄目かもしんない!」
「はい?」
「注目されるとキラキラってなるんだよ!見ろ!」
律はケーキを食べようしていたさわ子を指差していた。
「……ん?何よ」
「ここ最近!担任になってからと言うもの、さわちゃんは肌はピカピカ!髪はツヤツヤ!やたらと充実してると思わないか?」
「……あぁ、確かに」
『統夜。今朝お前の感じた違和感はどうやら本物のようだったな』
統夜が何故さわ子の見た目に違和感を感じていたのか、イルバは納得していた。
「ウフフ……♪担任ともなると、教壇というステージに立つ回数が増えるからかしら♪」
統夜や律が感じている通り、さわ子は見た目もキラキラしており、普段の2割増は美人に見えていた。
「あたしもキラキラしたい!」
「で、今日はキーボードなんだ」
楽器を変えたいという理由がはっきりとわかり、澪は呆れていた。
「……へへっ!」
律はキーボードに近付くと、キーボードの音を鳴らした。
その音は何となく「ピンポーン!」と言っているように聞こえた。
「あ、ピンポーン!だって!」
「律先輩、楽譜読めるんですか?」
梓の問いかけに律は答えず、何故かキーボードを鳴らしていた。
「あっ!大丈夫〜♪だって!」
「って!わかるのかよ!?」
唯が律のキーボードの音を翻訳したことに驚いた統夜はツッコミを入れていた。
『やれやれ……。これじゃ暗号だな』
「だよなぁ。さすがにムギも迷惑だろ?」
そう思った統夜は紬を見たのだが、紬は目をキラキラと輝かせていた。
「って!いいのかよ!」
迷惑どころかキラキラと目を輝かせている紬に統夜はツッコミを入れていた。
「あぁ……♪私のキーボードが喋ってる!」
今まで聞いたことのない音に紬は胸躍らせると、律はさらにキーボードを鳴らしていた。
「あ!今、ムーギーちゃーん♪って!」
「言った言った♪」
「「やれやれ……」」
よくわからないキーボードの音の翻訳に統夜と澪は呆れていた。
しばらく律はキーボードの様々な音を楽しんでいた。
「キーボードは色んな音があって楽しいな♪」
「あぁ……♪新しい曲のイメージがどんどん湧いてくる♪」
『おいおい、それは一体どんな曲だよ……』
律が適当に音を鳴らしただけで曲のイメージが湧いてきたとのことだったので、イルバがその曲にツッコミを入れていた。
「……楽しそうだな……。ムギ、私にもちょっと弾かせて!」
澪もキーボードに興味がわいてきたのか、そう言ってキーボードに近付くと、律はニヤリと笑みを浮かべていた。
そして、律は大きく怖い雰囲気の音を出して澪を怖がらせていた。
「やめろ!律、やめような!そういうのは!」
澪は両手で律のほっぺをつかみ、キーボードの演奏を阻止した。
そんな澪に律も抵抗して両手で澪のほっぺをつかみ、2人は互いのほっぺをつかんで引くに引けない状態になっていた。
「……りっちゃん、ベースはやらないの?」
唯の言葉にハッとした澪はとっさに両手を離した。
「ベースはだめ!」
「何で?」
「そうだよな。ベースなら弦の数も少ないし、ギターよりは少しはやりやすいと思うけど」
「……」
統夜の指摘はもっともであり、澪はしばらく考え込んでいた。
「……ベースは私……。ベース以外はやりたくないし、ベースじゃないと嫌だし……」
澪はベースに強い思い入れを持っていた。
「……低くて深い音色とか、目立たずにみんなを支えている感じとか……。みんなに合わせてベースのラインを作るのは楽しいし……。飛び出し過ぎないように……。だけどみんなの音に埋もれないような、そんなベーシストでいたいっていつも……」
澪のベースに対する熱い思いに全員が聞き入っていた。
「知ってるよ!だから澪のベースには手を出さないのさ」
「……なるほどね、そういうことなら納得だわ」
統夜は澪がベースに対して熱い思いを持っているから律はベースに手を出さないと知り、統夜は納得していた。
「……うぅ、語りすぎた……」
熱弁したのが恥ずかしくなったのか、澪の顔は真っ赤になり、頭から煙を出していた。
「あれ?みおちゃん?みおちゃーん!!」
唯は澪に呼びかけるが、反応はなかった。
「いいなぁ……。ベースって、澪ちゃんそのものって感じよね♪」
「私、澪先輩のベース大好きです!」
「そうだな。あの力強い音は俺たちにはなくてはならない音だよな!」
統夜たちは澪のベースの力強さはかけがえのないものであると感じていた。
「ちょいとー、まだ固まってるのかい?この子は」
唯は再び澪に語りかけるが、澪は相変わらず反応がなかった。
「あ、りっちゃん!私に任せといて!大丈夫だからね、りっちゃん」
「おいおい、何を企んでるんだよ」
『まぁ、ロクでもないことは間違いなさそうだ』
唯が何かを企んでいることはわかったのだが、ロクでもないことを企んでいると統夜とイルバは予想して呆れていた。
こうして、この日の部活は終了した。
この日も部活終わりに番犬所に顔を出したのだが、今日も指令はなかった。
統夜はこの日も街の見回りを行ってから家路についた。
そんな中、唯はドラムとして普段から目立たない律を目立たせようと色々模索していた。
唯提案の「Cagayake Rittyan!!」作戦はまだ始まったばかりである。
……続く。
__次回予告__
『唯のやつ、また変なことを企んでやがるな。一体何をするつもりなんだ?次回、「光輝」。まぁ、たまにはこういうのも悪くはないのか?』
今回は律の楽器体験回となりました。
そして統夜がドラムで大恥をかいてある人のように少しやさぐれていました(笑)
やさぐれ統夜の元ネタは誰なのか、わかる人は多いと思います。
次回は、唯が律のために色々考えたものを実行します。
果たしてそれは上手くいくのか?(笑)
次回予告でタイトルを光輝とずいぶん大袈裟にしていますが、それほどの意味はありません(笑)
その意味も次回明らかになります。
それでは、次回をお楽しみに!