今回もけいおんメインの話になっています。
それでは、第43話をどうぞ!
新学期を迎えておよそ2週間が経過していた。
そしてこの日も無事に過ぎ、放課後になっていた。
「さてと……」
「あ、統夜。今から部室行くのか?」
統夜が部室に行く準備をしていると、律が声をかけてきた。
「あぁ」
「だったらみんなで一緒に行こうぜ!」
「あぁ、構わないぜ」
統夜はみんなで音楽準備室に行くことにした。
「ムギ、行こうぜ!」
律は続いて黒板に書いてあるものを黒板消しで消していた紬に声をかけた。
「ごめんね。この後、日誌とか届けなきゃいけないから、先に行ってて」
「あれ?今日ムギ日直だっけ?」
「うぅん。本当は唯ちゃんなんだけど……」
紬が唯の方を指差すと、唯は机に突っ伏して爆睡していた。
「お昼休みからずっとあのままで……」
唯は日直の仕事もせずに寝てしまったので、紬が代わりに日直の仕事をしていた。
「おいおい……」
《昼休みからって寝過ぎだろ……》
唯が昼の授業もそっちのけで寝ていたと知り、統夜とイルバは呆れていた。
「何度も起こしてるんだけど、全然起きないのよ」
唯の前の席である和はこう言うとため息をついていた。
「ほら、唯。起きて」
和はどうにか唯を起こそうとしていたのだが、いっこうに起きる気配はなかった。
(…あれ?立花さんも見守ってる。そういえば唯の隣の席だもんな)
唯の隣の席である姫子は唯を起こそうとしているこのやり取りを見守っていた。
「唯、起きろ!」
続いて律が唯を起こそうとするのだが……。
「大丈夫だよ、憂……。今日は日曜なのら……」
唯は寝言でとんでもないことを言っていた。
「うぉ、なんてポジティブシンキング!おい、唯!練習だぞ、ライブだぞ、ギターだぞ!」
律は音楽絡みの言葉をぶつけてみたが、唯は何の反応もなかった。
「ほら、唯!ギー太が待ってるぞ!」
「う、うん……?むにゃあ……」
統夜の放ったギー太という言葉に唯は一瞬反応するが、すぐに眠ってしまった。
(くそ、ギー太でもダメか……。一体どうしたら……)
統夜はどうすれば唯が起きるか考えていた。
すると……。
「「「「「……あ!」」」」」
統夜たちは唯を起こすのに適している言葉を思いついた。
それは……。
「「「「「唯(ちゃん)。ケーキだぞ(よ)!」」」」」
「うぅん……」
ケーキという言葉に反応し、唯はのろのろと起き上がった。
すると、姫子を始めその様子を見守っていたクラスメイトたちから歓声があがっていた。
唯は寝ぼけ眼で周囲を見回すのだが……。
「……ない……嘘つき……」
唯はそれだけ言うと再び眠ってしまった。
「いい加減に起きろ!」
統夜はツッコミも兼ねてこう言い放った。
「ダメだ……。ムギ!こうなったら本物のケーキだ!」
律は本物のケーキで唯を起こそうと考えたのだが……。
「おいおい、ムギは今日直の仕事中だろ?」
統夜は律が無茶な注文をするからか呆れていた。
その時だった。
「田井中さん」
さわ子が律に声をかけてきた。
「先生、さよなら」
「はい、さよなら」
唯たちのやり取りを見守っていた姫子はさわ子に挨拶をすると、帰っていった。
「あなたたち、前に貸した着ぐるみ返してくれない?演劇部で使うつもりなの」
「着ぐるみ?律、まだ返してなかったのか?」
「あぁ?あれなら……。新入部員の勧誘に使った後に物置に入れといたんだよ」
「「返せよ」」
律の言葉を聞いて、統夜と澪は同時にツッコミを入れていた。
着ぐるみが部室にあるとわかったので、統夜たちとさわ子は音楽準備室へ向かった。
唯はいっこうに起きそうになかったので、そのままにしておくことにした。
音楽準備室に入り、物置の扉を開けたのだが……。
「な、何これ……」
まともに整頓をしていなかったからか、色んなものがあちこちに置かれており、散らかっていた。
「「すいません……」」
統夜と澪は代表してさわ子に謝っておいた。
「えっと……。着ぐるみでしたら……。ほら、ここに!」
律はダンボールとダンボールの間から着ぐるみを強引に取り出した。
その時だった。
ガタガタガタ……。
律が着ぐるみを取り出した衝撃で上の方に置いてあったダンボールまで動き始めてしまった。
そして、ダンボールがまるで雪崩のように飛び出していったのだ。
『おいおい、いくらなんでもこれは酷すぎるぜ』
「そうだな……」
イルバはあまりに汚い物置に呆れており、統夜はそれを認めることしか出来なかった。
さわ子は目的の着ぐるみを手に取り、とりあえず音楽準備室を後にした。
※※※
「……大掃除をします!」
しばらくすると、梓と寝ていた唯が音楽準備室にやって来たので、澪はこう提案していた。
「まぁ、物置があれじゃ仕方ないよな」
『むしろ今までやらなかったのが問題だぜ』
「イルバ、それは言うなよ……」
澪の大掃除という提案に統夜は賛同し、イルバは少し厳しいことを言っていた。
そんな中……。
「「えぇ!?」」
唯と律はわかりやすいくらい嫌そうな顔をしていた。
「そこ!あからさまに嫌そうな顔をしない!」
澪が嫌そうな顔をしている唯と律をビシッと指差していた。
そして何を思ったのか、律はドラムの椅子に座り、唯はギターを構えていた。
「よし!今日は練習頑張るか!」
「そうだね、りっちゃん!目指せ武道館だよ!」
唯と律のやる気は掃除ではなく、練習に向うとしていた。
『おい、お前ら。そこまでしてやりたくないのか?』
イルバがツッコミを入れながら唯と律に呆れていた。
「だって……」
唯はこう前置きをすると、律と肩を組み合っていた。
「「三度の飯より掃除が嫌いだ!!」」
「「『意味がわからん!』」」
律と唯の発言に澪、統夜、イルバはツッコミを入れていた。
「……っていうかさぁ。ここの掃除は音楽室の掃除当番がやってくれるんじゃなかったんですかぁ?」
「そうだあ!そうだぁ!」
律と唯は頬をぷぅっと膨らませながら抗議してきた。
「本来はそうだけど……」
「冷静に考えてこんな私物だらけの部屋を掃除させる訳にはいかないだろ」
統夜が律と唯をなだめていると、紬と梓が物置から私物を移動させていた。
「お、おっしゃる通りで……」
「あぁ!私のケロぉ!」
紬と梓が整理した荷物の中に唯が気に入っているカエルの置物があった。
「さぁ、片付けるか……」
「しまっといたのに……」
律と唯は何を思ったのか紬と梓が出した荷物を再び物置に戻そうとしていた。
「「だから戻すな!」」
すかさず統夜と澪がツッコミを入れていた。
「それにしても、すごい荷物ですね……」
「何かある度にとりあえずってことで倉庫代わりにしてたから……」
紬の言う通り、統夜たちは何かある度にとりあえずこれはしまっておこうと色々なものをしまっていくうちにこのような事態になったのである。
「っていうか、何でこんなにぬいぐるみがあるんだよ……」
統夜がぼやく通り、物置から引っ張り出した荷物の中には、ぬいぐるみが多数存在していた。
「あっ!その大きいのは200円で取れたんだよ!」
唯が指差した大きなぬいぐるみは、200円という低投資で取ることが出来たぬいぐるみである。
だがしかし……。
「聞いてないから……。ほら、ちゃんと持って帰れ」
統夜はその大きなぬいぐるみを唯に押し付けると、唯はぷぅっと頬を膨らませていた。
「……あれ?やーくん。これは私のぬいぐるみじゃないよ?」
唯はハゲオヤジっぽいキャラクターのぬいぐるみを統夜に押し付けてきた。
「?それじゃあこれは誰のだ?」
持ち主がわからず首を傾げていると、澪が統夜の持っているぬいぐるみをぶん取り、大事そうに抱えていた。
「……って!澪のかよ!」
まさかの意外な持ち主に統夜は思わずツッコミを入れてしまった。
私物整理を始めてしばらく経過したのだが、紬は食器棚に置いてあるティーセットの整理を始めていた。
「コーヒーセットも持って来たけど、全然使ってないねぇ」
軽音部でのティータイムの時はほぼ紅茶だったので、コーヒーが出たことはなかった。
「お、ムギ。食器棚も整理するんだな」
「うん!せっかくだからついでにね!」
紬はティータイムの時に使うポットやカップなどを机に並べていた。
「おぉ、こう見るとなんか壮観だな……」
「まったくだよ。どれも高そうだし」
「ねぇねぇ、この食器っていくらくらいするの?」
「正確な値段はわからないけど……。ベルギー王室で使ってたものだって聞いたわ」
「お、王室!?」
統夜はスケールの大きな話に驚いていた。
『統夜。こいつは 1つだけでも数万はくだらないみたいだぜ』
「王室……数万……」
唯もスケールの大きな話に呆然としており、手にしていた食器の入った箱を落としてしまった。
「あ、危ねぇ!」
律が咄嗟にキャッチしたので、大事には至らなかった。
※※※
私物整理を始めておよそ1時間が経過した。
一通り整理が終わったので、統夜たちは休憩を兼ねてティータイムを始めていた。
「……それにしても私たちのじゃない私物も結構あるな」
澪の言う通り、持ち主不明の私物が結構あり、ダンボール3つ分くらいはあった。
「昔の軽音部の私物じゃないかなぁ。前は結構人数がいたみたいだし」
紬が持ち主不明の私物が誰のなのかこう推理をしていた。
「そうかもしれないですね……」
「……それにしても……」
統夜が持っていたのはとある魔導具であった。
「統夜先輩、それは?」
「あぁ、これも魔導具なんだけどさ……。何でこんな所に魔導具があるんだろう?」
『恐らくはレオが置いていったものじゃないのか?あいつも1月くらいここにいたからな』
イルバは魔導具を置いていったのはレオではないかと予想していた。
レオはグォルブの事件の前に1月だけ桜ヶ丘高校に教育実習生として潜り込んだことがあった。
統夜の持っている魔導具はその時にレオが置いていったものだとイルバは予想した。
そんな中……。
「ねぇ!見て見て!ババーン!!」
唯が物置から大きなケースを見つけてきた。
「何か出てきた……」
「おぉ!高そうなケース♪金目の物が入ってないかなぁ♪」
律がワクワクしながらケースを開けた。
その中に入っていたのは……。
「ん?ギターだ!」
ケースに入っていたのは古くはあるものの、ギターであった。
「古いけど、良さそうなギターですね」
梓はギターを取り出し、このように分析していた。
「もっと面白いもんが入ってるって思ってたんだけどなぁ」
「つまんなぁい」
律と唯は中身がギターだとわかるとあっさりと興味をなくしてしまった。
『おいおい、お前らも軽音部ならもうちょっと興味を示せよ……』
ギターに興味を示さない律と唯にイルバは呆れていた。
「……あら、懐かしいわね」
音楽準備室に入ってきたさわ子がギターを見つけるなりこう切り出した。
「もしかして、これは先生のですか?」
「えぇ。これはあまり使ってなかったんだけどね」
さわ子の答えを聞いた梓の表情がぱぁっと明るくなった。
「先生ってひょっとして軽音部だったんですか!?」
「そうよ。言ってなかったっけ?」
「そうだったんですか!学祭の時に格好いいギターを持ってたんでそうなのかなって思ってました!」
学園祭の時、唯がギターを忘れた時にさわ子は自分のギターを唯に貸そうとしていた。
その頃から梓はさわ子は軽音部なのではないか?と思っていた。
気になっていた疑問が解決し、梓の表情は清々しいものになっていた。
「ブランクはあるけど……。今でも今の統夜君よりはギターは上手いかな」
さわ子は高校時代、軽音部で「DEATH DEVIL」というバンドを組んでおり、仲間たちと毎日ギターテクを競い合っていた。
そのため、さわ子は今の統夜より今でもギターテクはあると自負していた。
「今度ギターを教えて下さい!」
「えぇ、いいわよ」
統夜よりギターが上手いとわかった梓はさわ子にギターを教わろうと考え、胸は高ぶっていた。
しかし……。
「ちなみにこれが、学生時代のさわちゃんです」
唯は梓に高校時代のさわ子の写真を見せた。
さわ子は「DEATH DEVIL」時代には「キャサリン」と呼ばれており、いかにもデスメタルバンドをやっていると一目でわかるすごい格好をしていた。
「……やっぱりいいです」
「何でよ!」
まさかの手のひら返しにさわ子はぷぅっと頬を膨らませていた。
「私物は全部持って帰ることになったので、さわちゃんもはい!」
「えぇ!?」
梓からギターを受け取った唯はさわ子にギターを押し付けたが、ギターを手にしたさわ子の表情が変わった。
長いことしまわれていたためか、このギターはとてもカビ臭かったのである。
「うーん……。もう弾く時間もないしなぁ」
「え?じゃあそのギターはどうするの?」
さわ子は手にしていたギターをケースにしまった。
「お店で売って、部費の足しにでもしてちょうだい」
さわ子はもうこのギターが必要ないのか、このような提案した。
「うわぁ♪さわちゃん太っ腹♪」
「……っていうか……」
「押し付けられてるし!」
「それよりも、本当にいいんですか?パッと見、いいギターに見えますけど」
統夜はこのギターがいいギターではないかと予想してさわ子に改めて確認を取った。
「お父さんの友達からもらったものなんだけど……。これだけ保存状態が悪いと、もうダメなんじゃないかしら?」
「そんなもんですかねぇ……」
「それに、もし売れるのなら他の誰かに使ってもらった方が、このギターは幸せよ」
「確かに……。そうかもしれないですね」
こうして統夜たちはさわ子のギターを店で買い取ってもらうことにした。
そのために帰り支度を整えて、統夜たちはいつもの楽器店へと向かった。
「……なかなか重いな、これ」
現在統夜たちは行きつけの楽器店である「10GIA」に向かっているのだが、さわ子のギターは統夜が持っている。
本来ならジャンケンで決める予定だったが、統夜が率先して持つと言ってくれたので、統夜がさわ子のギターを運んでいる。
「すいません、統夜先輩。重いのに率先して持ってもらって」
「気にすんな。これくらいはお安いごようさ」
統夜は笑顔を見せながらギターを運んでいた。
「……ところで統夜。お前のギターと鞄はどうしたんだ?」
澪はずっと気になっていた疑問を統夜にぶつけていた。
統夜はさわ子のギターは運んでいるのだが、自分のギターと鞄の姿がどこにもなかった。
「あぁ、それな。それならこの魔法衣の中だよ」
統夜はさも当たり前かのように自分の着ている魔法衣を指差すが……。
「「「「「え!?」」」」」
初めて知る意外な事実に唯たちは驚愕していた。
「ま、魔法衣っていったいどうなってるんだよ!?」
今まで触れなかった魔法衣についての疑問をここでぶつけてみた。
『魔法衣の裏地は魔界に通じていてな。魔戒剣とかもここから出し入れしてるんだぜ』
「へぇ、まるでドラ○もんの四○元ポケットみたいだね!」
「……その例えはちょっと解せないけど、まぁそう考えてもらえればわかりやすいか」
統夜は唯の例えに少々不満気だったのだが、わかりやすい例えだったので、渋々納得していた。
「……ということは、統夜君のギターと鞄は……」
「あぁ、この魔法衣の中だ。指令がある時はだいたいギターと鞄は魔法衣の中に入れてるな。みんなと帰る時はギターも鞄も背負ってるけど」
「なるほど……。今までずっと気になってましたけど、すっきりしました」
「むぅ……。だけど何かずるいなぁ……」
梓は今まで気になっていた疑問が解決してすっきりしており、唯はぷぅっと頬を膨らませていた。
しばらく歩いていると、澪は1枚のチラシを受け取っていた。
それは近くにあるホームセンターのチラシだった。
「……なぁ、みんな!」
澪はチラシを見て何かを思いついたのか、みんなを引き止めていた。
「……ん?どうした、澪?」
「こんな棚……部室に置けないかな?こういうのが1つあると色々整理出来ると思うんだ」
澪がみんなに見せたのは、ホームセンターのチラシに載っているとある棚だった。
この棚は色々な物を収納出来るので、部室に置いたら便利ではないかと澪は考えていた。
「……そうだな。これくらいなら部費で何とかなるんじゃないか?」
チラシに載っていた棚は良心的な値段だったので、軽音部の少ない部費でどうにか賄えそうな値段だった。
「そうですね。それじゃあ、ホームセンターに行ってみましょうか」
こうして統夜たちは楽器店に行く前にホームセンターに向かった。
※※※
「……こ、ここがホームセンター!?」
ホームセンターの中に入るなり、紬のテンションが上がっていた。
「……ムギちゃん?」
「便利グッズがいっぱいあるのよね?大小様々な電球とか、七色のビニールテープとか♪」
「そ、そうだな……」
テンションが上がる紬に統夜はタジタジになっていた。
「ムギ、ホームセンターに来るの初めてなのか?」
「うん!1度来たいと思っていたの♪……ふんす!行きましょう♪」
紬は目をキラキラと輝かせながら店内を進んでいった。
「あっ!私も行く!」
そんな紬に唯はついていった。
「やれやれ……」
統夜は子供のようにはしゃぐ紬に呆れながらも笑みを浮かべていた。
「とりあえず私たちも行きましょうか」
「そうだな」
統夜たちも紬と唯の後を追いかける形で店内を進んでいった。
紬はさっそく気になる商品を見つけていた。
「あっ!統夜君、梓ちゃん、見て見て!これ、壁に開いた穴を綺麗に補修出来るペンだって!」
「はい!」
紬は続いて気になった商品を手に取った。
「こっちは古雑誌を簡単にまとめることが出来るテープ♪」
「ムギ先輩、そんなに珍しいですか?」
「えぇ♪」
紬はニコニコしながらこう答えると、再び商品を物色していた。
「磨いただけで蛇口がピカピカに……本当に綺麗になるのかしら……」
紬はとある商品を手に取ると、その性能に関心していた。
「……ムギ、楽しそうだな……」
統夜は笑みを浮かべながら様々な商品に感動する紬を見守っていた。
そんな中……。
「ねぇねぇ!見て見て!」
唯が気になるものを発見したので、統夜たちを呼んでいた。
しかし、紬だけは商品を物色していたので、ついていったのは統夜と梓だった。
唯に連れられて来た場所は……。
「ねぇねぇ、これ全部ネジだよ!?凄いよね!?」
何故かネジ売り場だった。
「……おいおい……」
しょうもない所に連れられたので、統夜は呆れていた。
「ねぇねぇ!これ、格好良くない?」
唯は電動ネジ回しをまるで銃のように構えていた。
「唯!商品で遊ぶなって!」
統夜はすかさず唯を注意するが、唯は全く気にしていなかった。
「……それ、何ですか?」
「電動ネジ回し!バン!バン!バン!」
唯はまるで銃を発砲する真似をしていた。
「こら!うるさい!」
たまたま近くにいた澪も唯を注意していた。
「はい!3人は死にました!」
「「い、いやいやいや……」」
統夜と澪は唯の幼稚な行動に呆れていた。
そんな中……。
「まったく……唯は子供だな」
こういう律の頭にはライトヘルメットが装着されていた。
「……律、お前は人のこと言えないぞ」
「………」
統夜はすかさずツッコミを入れるが、律は無言のままヘルメットのライトを点け出した。
「うぉ、眩しい!やめろって!」
統夜は無理矢理ヘルメットを外そうとするが、律は抵抗していた。
梓はジト目で統夜と律のやり取りを見ていた。
こんな感じでグダグダなやり取りはあったものの、統夜たちは目当ての棚を発見した。
棚を購入する前に、澪はさわ子に電話して、棚を部室に置いていいか確認を取っていた。
その結果……。
「さわ子先生。棚を部室に置いてもいいって」
「そしたら明日の放課後、学校に届けてもらおうぜ」
律は店員にもらった商品発送の届を記入していた。
「……あれ?唯たちは?」
「そこら辺にいるんじゃないのか?」
統夜、律、澪の3人が棚を購入する準備をしており、唯、梓、紬は別行動していた。
「……あっ、ムギが来た」
「お待たせぇ♪」
「って!流石に買い過ぎだろ!」
買い物袋4つ分の商品を購入した紬が戻って来て、統夜たちは驚愕していた。
《やれやれ……。紬のやつ、そんなに買っても使わないものもあるだろうに》
(まぁまぁ、それは言ってやるなって)
イルバはテレパシーで思ったことを統夜に伝え、統夜はイルバをなだめていた。
紬が合流して少し経ってから、何処かを見ていた唯と梓が合流した。
こうして棚を購入し、翌日の放課後、学校に届けてもらうよう申し込みを済ませた。
ホームセンターの用事も済んだところで、本来の目的を果たすために楽器店に向かった。
※※※
「……ふぅ、意外と重かったな。カビ臭かったし」
行きつけの楽器店に到着し、楽器買取の申し込みをするためにギターを置いた統夜は一息ついて、こう呟いていた。
「それでは、査定させてもらいます」
「お願いします」
こうしてギターの査定が始まり、統夜たちは査定が終わるまで待つことにした。
「……統夜先輩、お疲れ様です♪」
「あぁ」
統夜は梓の労いの言葉を簡単な言葉で返していた。
「本当にありがとうございます。あんなに重そうなものを率先して運んでもらって」
「なぁに、力仕事は男の仕事だからな。気にするなよ」
統夜は重いギターを持ったにも関わらず、あまり文句を言わないので、梓たちはそれがありがたく、嬉しくもあった。
「本当にありがとね、統夜君♪」
「あ、あぁ……」
統夜は少し恥ずかしくなったのか、照れ隠しに頭をポリポリとかいていた。
すると……。
「査定お待ちのお客様、お待たせ致しました」
査定が終わったことがわかり、統夜たちはカウンターに集合した。
「こちらのギターですが……。60万円で買い取らせていただきます」
店員の提示した値段を聞いて、統夜たちの周りの空気が一気に凍りついていた。
「「「「「ろ……60万円!!?」」」」」
予想を遥かに越える金額に、紬意外の全員が驚愕していた。
《ほぉ、思ったより高く売れたじゃないか》
(予想外過ぎるだろ!)
統夜もまさかの値段に少しだけ気が動転していた。
このとんでもない値段で買い取ったギターがちょっとした波乱と、とある出会いをもたらすことを統夜たちはまだ知る由もなかった……。
……続く。
__次回予告__
『ほぉ、あのギターはかなりの値段で売れたな。だけど、面倒なことが起きそうな予感がするぜ!次回、「邂逅」。あいつ……一体何者なんだ?』
ギターの値段が半端ない(笑)
アニメでは50万円でしたが、軽音部は6人なので、今作では60万円になりました。
このギターは何故こんな破格の値段で売れたのかは次回明らかになります。
今回は魔法衣の秘密も明らかになりました。
統夜は指令がある時はいつもギターと学生鞄を魔法衣の中にしまっています。
説明を聞くと、唯が四次◯ポケットと例えるのもわかる気がします(笑)
初めてのホームセンターにはしゃぐムギは可愛かったですが、買い物の量が半端ない(笑)
そこはさすがムギって感じですね(笑)
次回はギターの値段が高い理由も明らかになりますが、新キャラも登場します。
新たに登場する新キャラとは一体何者なのか?
それでは、次回をお楽しみに!