牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第42話です。

今回はけいおんメインの話になりますので、今回は戦闘シーンがありません。

統夜たち軽音部に新入部員は入るのか?

それでは、第42話をどうぞ!





第42話 「勧誘」

統夜の高校3年生の初日は、新入部員の勧誘を行ったり、ホラーを討伐したりと、忙しい1日となった。

 

そして翌日、この日は新入生歓迎会が行われ、統夜たち軽音部もライブを行う予定であった。

 

昨日、統夜がホラー討伐に行っている間、唯たちは新入部員勧誘のために色々な行動を行っていた。

 

まず最初に律が具合悪いフリをして倒れると、新入部員部員に音楽準備室まで運んでもらって1年生を音楽準備室に誘導するという「行き倒れ大作戦」を行った。

 

この結果は、言わずもがなではあるが、律を連れてきた2人の女の子は「間に合ってます!」と逃げ出してしまった。

 

当然ながらこの行き倒れ大作戦は失敗に終わってしまった。

 

次に行われたのは「なまり大作戦」という訳のわからない作戦だった。

 

それは唯がなぜか方言のようななまった言葉で音楽準備室の行き方を聞いていた。

 

しかし、道を聞いただけで終わってしまい、訳のわからないまま、なまり大作戦は失敗に終わった。

 

続けて行われたのは、他の部活に体験入部して、その部がどのような勧誘をしているのかを調べる「スパイ大作戦」という作戦を行った。

 

色々な部活に体験入部したことで、勉強にはなったものの、根本的に部員を集める方法を見つけることは出来なかった。

 

そして今日、新歓ライブで新入生に軽音部をアピールする予定である。

 

新歓ライブ開始時刻が迫り、統夜たちは音楽準備室でライブに備えて待機していた。

 

「……それじゃあ、曲順はこれでいいか?」

 

「どれどれ……」

 

澪が律に曲順が書いてある紙を渡すと、統夜と紬も共に曲順をチェックした。

 

 

 

1.わたしの恋はホッチキス

 

2.S#0

 

3.いちごパフェが止まらない

 

4.ふわふわ時間

 

 

 

という順番だった。

 

ちなみに2曲目の「S#0」は、2月の終わり頃に統夜が作詞し、紬の協力で作曲した曲である。

 

この曲は、統夜が尊敬している魔戒騎士の1人である涼邑零の生き様をイメージして作詞した曲である。

 

この曲が完成した後、零に会った時にこの曲を聴かせたのだが、零はこの曲をすごく気に入っていた。

 

統夜はグォルブの事件以降、暇がある時に作詞をするようになり、最初に出来たのがこの曲である。

 

現在も作詞は続けているのだが、今制作しているのは、統夜が尊敬している黄金騎士をイメージした曲であり、現在も制作中である。

 

「うん、いいんじゃないか」

 

「あら、さっそく統夜君の曲を演奏するのね!」

 

「まぁ、だいぶ練習もしたからな」

 

「統夜先輩の曲、良い曲ですもんね♪」

 

統夜が作詞した曲は唯たちにも好評であった。

 

こうして曲順は決まり、律と紬はこれから行われるライブについての話をしていた。

 

統夜、澪、梓はライブに備えてリラックスしていた。

 

すると……。

 

「ところで、統夜先輩。その頬の絆創膏はどうしたんですか?」

 

梓はずっと気になっていた統夜の頬の傷のことを聞いていた。

 

「あぁ、これは実はホラーにやられたんだよ……」

 

こう答える統夜はどこか面倒臭そうだった。

 

それも無理はない。

 

この日の朝にこの傷を見た唯たちやクラスメイトたちがこぞってこの質問をしたのである。

 

唯たちにはホラーとの戦いで出来た傷と話したが、クラスメイトたちには転んで出来た傷とベタな嘘をついていた。

 

「え!?統夜先輩、大丈夫なんですか!?」

 

「大丈夫だ。これくらいすぐ治るし」

 

統夜はこう答えると、梓はホッとしていた。

 

統夜と梓がこのようなやり取りをしていたその時だった。

 

『……おい、唯。お前さん、さっきからどうしたんだ?表情をコロコロ変えて』

 

イルバはこっちを見ながらコロコロと表情を変える唯が気になって、声をかけた。

 

「へ?デヘヘ……」

 

唯は笑って話を誤魔化そうとしていた。

 

統夜はさらに追求しようとするが……。

 

『おい、そろそろライブの時間だぞ』

 

イルバが統夜たちにライブの時間が迫っていることを伝えた。

 

「よっしゃあ!このライブにかけようぜ!」

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

律の号令に統夜たちが答えた。

 

こうして統夜たちは講堂へ向かい、新入生歓迎会での軽音部のライブが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

『あー……テステス……。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!軽音部です!』

 

唯がMCを務め、このような挨拶をすると、客席から拍手が起こっていた。

 

そんな中、さわ子は客席で統夜たちを見守っていたのだが、どこか不満そうだった。

 

「……あーあ……。ミニスカフリルメイドと執事服……。絶対似合うのになぁ……」

 

さわ子はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

さわ子が不満そうにしているのは、統夜たちが自分の作った衣装ではなく、制服でライブを行っているからである。

 

『私たちは放課後ティータイムというバンドをやってて、毎日お茶とかしてるんですけど、みんなで音楽やるのってとっても楽しいです!』

 

唯の話を聞いた梓はウンウンと頷いていた。

 

『良かったらぜひ軽音部へ!』

 

唯のMCが終わると客席から大きな拍手が行われた。

 

こうして1曲目である「私の恋はホッチキス」の演奏が始まった。

 

統夜たち放課後ティータイムは全員が本番に強いのか、何の問題もなく、演奏は進んでいった。

 

こうして1曲目は終了し、少しのMCの後、2曲目が行われた。

 

統夜が作詞した曲である「S#0」である。

 

零から様々な話を聞いて、そこで思ったことをこの曲の詩に乗せたのだが、統夜の心にも響くものがあった。

 

この曲は統夜がボーカルを務め、心を込めて最後まで演奏した。

 

統夜のボーカルは予想以上に好評のようで、客席からは今までで一番大きな拍手が送られた。

 

統夜は大きな拍手が嬉しかったが、それと同時に恥ずかしくもあり、苦笑いをしていた。

 

続いて3曲目に行われた曲が「いちごパフェが止まらない」という曲である。

 

この曲は、3学期の始め頃に作られた曲であり、澪が作詞で、紬が作曲している。

 

曲の感じは程よいロックなのだが、歌詞が女の子らしい可愛らしさがある曲である。

 

この曲も何の問題もなく、最後まで演奏した。

 

そして、最後の曲である「ふわふわ時間」を現在演奏していた。

 

曲の終わり頃、唯はいつもとは違う演奏アクションを起こしていた。

 

ピックを持った手をグルグルと回転させながらジャラーン!とギターを奏でていたのである。

 

この弾き方は「ウィンドミル奏法」と呼ばれる弾き方であり、実際にプロのギタリストも用いている演奏技術の1つである。

 

統夜は唯がいつの間にそんな弾き方を覚えたのかと驚いていた。

 

唯の意外な技も見られたことでライブも最後の最後で盛り上がり、新入生歓迎会でのライブは大成功に終わった。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

新歓ライブが終わって数日が経過したのだが、一向に入部希望者が現れる気配がなかった。

 

「……誰も来ませんね……」

 

入部希望者が誰も現れないことに梓は不安そうにしていた。

 

「まぁ、まだ時間あるし」

 

「あぁ、これから頑張ればいいんだよ」

 

不安そうにしているのを見た澪と統夜がこう梓をフォローしていた。

 

「そうですね」

 

こう言うと梓は席を立った。

 

「ビラ配ってくるの?」

 

「いえ、トイレです」

 

梓はこう言うと音楽準備室を後にしてトイレへ向かった。

 

「みんなでもう一回ビラ配るか?」

 

「そうだな。諦めずにやっていこうぜ」

 

「おかしいなぁ……。誰も来ないなんて……。部室入りやすくしといたのに……」

 

「入りやすく?」

 

『おいおい、変なことはしてないだろうな?』

 

唯の言葉にイルバは疑いの目でこう言ったのだが……。

 

バタン!

 

音楽準備室の扉が開くと、トイレに行ったはずの梓が何かを抱えていた。

 

「はぁ……はぁ……。ゆ、唯先輩!これ片付けて!」

 

梓が抱えていたのは、少し大きめなカエルの置物だった。

 

このカエルの置物は唯のお気に入りらしく、唯が持ち込んだものであった。

 

「えぇ!?いいと思ったのにぃ!ケチケチぃ!」

 

自分お気に入りの置物が撤去されてしまい、唯はふくれっ面になっていた。

 

「アハハ……。それってあのカエルか……」

 

『まったく……そんなことだろうと思ったぜ』

 

イルバは唯がこのようなことをやらかすと予想していたらそれが当たったので、呆れていた。

 

結局この日は誰も入部希望者は現れず、部活は終了した。

 

 

 

 

 

 

統夜はこの日も番犬所を訪れていたのだが、統夜はどこか浮かない表情をしていた。

 

「……統夜、どうしました?」

 

イレスは統夜が浮かない表情をしているのが気になって、声をかけた。

 

「あっ、いえ……」

 

統夜はこのような悩みをイレスに打ち明けるべきではないと思い、答えようとはしなかった。

 

「統夜、私で良ければ相談に乗りますよ?何かあったのですか?」

 

「は、はい……」

 

統夜は少し考えてからイレスに今抱えている悩みを打ち明けることにした。

 

「実は軽音部で新入部員の勧誘を行っているのですが、誰も集まらないのです。それで、軽音部は人気がないのかと不安になりまして……」

 

『統夜。お前さんがそこまで気にすることはないと思うがな』

 

統夜が悩みを打ち明けて、真っ先にイルバが答えたことに統夜は驚いていた。

 

『それに、軽音部のライブは新入生にはかなり好評価だったと聞いているぜ』

 

「そうなのですね……。これは私の推察ですが、あなたたち軽音部は6人が結束して見えて外から入りづらいのではないですか?」

 

イレスの指摘を聞いた統夜はハッとしていた。

 

『なるほどな……。確かにそれはあるかもしれないぜ』

 

「そうだな……。イレス様、ありがとうございます」

 

相談に乗ってもらったお礼と言わんばかりに統夜はイレスに深々と頭を下げていた。

 

「いいのです。魔戒騎士の心のケアをすることもこの番犬所を預かる私の使命と考えていますから」

 

イレスは時にはこのような悩みを聞いてあげることも番犬所の神官としての務めと考えていた。

 

だが、このように魔戒騎士や魔戒法師が番犬所の神官に悩みを打ち明けるなど、本来であればあり得ないことである。

 

しかし、イレスはそのようなことはまったく気にしていなかった。

 

統夜は改めてお礼を言っていた。

 

この日は指令がなかったため、統夜はイレスに一礼した後に番犬所を出ると、夜遅くまで街の見回りを行ってから家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

それから2日ほど経過したのだが、今日も入部希望者は現れる気配がなかった。

 

「今日も来ないな……」

 

この日も入部希望者は現れないので、澪は少しだけ暗い表情でこう言っていた。

 

現在は梓意外の全員とさわ子が紅茶を飲みながらのんびりしていた。

 

「何でだろう……」

 

「何か悪いことでもしたのかなぁ……」

 

「まぁ、どうだかな……」

 

統夜はそんなことはまったく気にする素振りはなく、紅茶を飲んでリラックスしていた。

 

「そ、そんなことは……」

 

「まぁまぁ、焦らなくても何とかなるでしょ♪ね?」

 

紬はマイペースな意見を言ってみんなを安心させようとしていた。

 

ムギの笑顔を見た澪は、安心したのか安堵の笑みを浮かべていた。

 

「それじゃあ、次の作戦考えようぜ!虫取りアミ大作戦とか!」

 

「おいおい、虫取りアミで1年生を捕まえるつもりか?そんなんじゃ余計誰も入ってこなくなるぞ」

 

統夜は律の考案しためちゃくちゃな作戦を否定していた。

 

「えぇ!?それじゃあ統夜は何かいいアイディアがあるのかよぉ!」

 

「そ、それは……」

 

統夜はいざ他の案がないかとツッコまれると、何も答えることは出来なかった。

 

そんな中、唯は統夜たちのやり取りを穏やかな表情で眺めていた。

 

『……唯、どうしたんだ?』

 

その様子が気になっていたイルバが唯に声をかけた。

 

すると……。

 

「……私、しばらくこのままでいいな」

 

「「「「「え?」」」」」

 

『ほう……』

 

「……♪」

 

唯の唐突な発言に統夜たちは驚き、イルバとさわ子は笑みを浮かべていた。

 

「今はこのままでいいよ!こうやって、みんなと一緒に集まって……。今はあずにゃんはいないけど……。お茶飲んで、練習して、演奏して。ずっと6人で!」

 

「「「「「……」」」」」

 

唯の気持ちを知った統夜たちは言葉を失い、少し考え込んでいた。

 

「……そうだな」

 

「あぁ、後1年で何とかしようぜ!」

 

統夜と律が唯の言葉に賛同していた。

 

『おいおい、俺様だって一応は軽音部の一員だろうが。忘れるなよ』

 

「アハハ、ごめんごめん、イルバ」

 

「そうね、イルバも軽音部の一員だものね♪」

 

「それよりもあなたたち、1年って短いわよ」

 

「え?365日もあるのに?あ、もう何日かは過ぎてるけど……」

 

(1年は短いねぇ……。年長者なだけあって言葉に重みが……)

 

「統夜君?余計なことは考えない方がいいわよ?」

 

統夜は心の中でとあることを考えてると、さわ子がこう言ってきた。

 

さわ子はドス黒いオーラを放っており、統夜はその空気に触れるとたじろいでいた。

 

「さ、サーセンっした……」

 

統夜は苦笑いしながらとりあえず謝罪しておいた。

 

「ねぇねぇ、ムギちゃん。今日のおやつは何?」

 

「はい、どうぞ?」

 

紬はケーキの入った箱を開けると、食べごろサイズのケーキが7個入っていた。

 

「おぉ!みんな何味がいい?」

 

「うーん、迷うなぁ!」

 

統夜たちは7個のケーキを見比べてどれがいいかじっくりと考えていた。

 

「あっ、あずにゃんはバナナケーキだと思うんだ。だから残しといてあげて」

 

唯は梓の好みを理解し、このように気の利いた発言をしていた。

 

「じゃあ、あたしはオレンジな!」

 

「マロンマロン♪」

 

「私はチョコで♪」

 

「私バニラ!」

 

「じゃあ……イチゴ」

 

「俺はチーズケーキかな」

 

こうして7個のケーキの振り分けは終わった。

 

唯 →チョコケーキ

律 →オレンジケーキ

澪 →イチゴショートケーキ

紬 →バニラケーキ

梓 →バナナケーキ

統夜 →チーズケーキ

さわ子→モンブラン

 

 

梓のバナナケーキを箱に残し、みんなはそれぞれのケーキを自分の手元に置いた。

 

「いやぁ、これは美味しそうだね♪」

 

唯と律がケーキを一口頬張るのと同時に梓が中に入ってきた。

 

それを見た唯と律は思わず今食べたケーキを吹き出してしまった。

 

「ご、ごめんごめん!すぐビラ配ってくるから!」

 

唯は慌てて立ち上がり、音楽準備室を出ようとするのだが……。

 

「……ムギ先輩、私、ミルクティー下さい」

 

「え?」

 

梓の言葉を聞いた唯はその場で立ち止まった。

 

「あと、バナナケーキも。私、今年だけはイルバとこの6人でやりたくなりました」

 

1番後輩を欲しがっていたであろう梓が、この1年は後輩はいらないと言っていたのである。

 

「あずにゃん……」

 

梓の言葉を聞いて、統夜たちの表情がぱぁっと明るくなった。

 

「あずにゃん!」

 

唯はそんな梓に抱きつこうとするのだが……。

 

「唯先輩。これからはもっと厳しくいきますからね」

 

「へ?」

 

梓の言葉に唯は思わず梓に抱きつくのはやめてしまった。

 

「はい、ギター出して♪」

 

「ふぇ!?」

 

唯は梓の言葉に思わず硬直してしまった。

 

そして……。

 

「やっぱ新入部員、カモーン!!」

 

唯は思わずこう叫んでいた。

 

(アハハ……。唯のやつ災難だな。まぁ、頑張れよ)

 

統夜は他人事のようにケーキを頬張っていたのだが……。

 

「ほら、統夜先輩もですよ!統夜先輩もギター出して♪」

 

「へ?」

 

まさか自分にまで来るとは思っていなかったので、統夜は唖然としていた。

 

『ほら、統夜、諦めろ。お前さんも頑張って練習するんだな」

 

「はいはい。わかってるよ」

 

統夜はゆっくりと立ち上がると、ギターを取り出していた。

 

統夜、唯、梓の3人はギターの練習をすることになり、残りのメンバーはその様子を見守っていた。

 

こうして、統夜たち放課後ティータイムは新入部員を入れることなく、この1年動き始めるのであった……。

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ。部室の物置がひどいことになってるな。ま、きちんと掃除をしなきゃそうなるわな。次回、「整頓」。掃除は定期的にするんだな』

 

 




今回はいつもと比べたら若干短めになりました。

統夜たちは新入部員を迎えずこの6人でやっていこうと決意しました。

今回新歓ライブで統夜たちが歌った「S#0」は、涼邑零役の藤田玲さんがボーカルを務めるバンド「DUSTZ」の曲になっています。

「ZERO Black Blood」のEDでもありますよね!

この作品では、統夜がこの曲の作詞をして、紬と一緒に作曲したという設定にさせていただきました。

次回もけいおんメインの話になると思います。

それでは、次回をお楽しみに!


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