牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!

今回は本編の前に前々から言っていたUA1万記念の番外編になります。

今回の主役は暗黒騎士ゼクスの鎧を身に纏い、統夜を苦しめたでディオスになります。

ディオスがいかにして暗黒騎士になってしまったのかが描かれます。

それでは、番外編をどうぞ!




UA10000記念作品 「ゼクス〜暗黒騎士鎧伝〜」

……黒き闇に堕ちた心……。

 

 

 

 

その心に……輝きはなかった……。

 

 

 

 

その心に……希望はなかった……。

 

 

 

 

それを知りたい者は行くがよい。

 

 

 

 

 

黒く……深い……闇の中へと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……メシアの腕と呼ばれしホラー、「グォルブ」が封印された牙を奪ったディオスは、その復活を阻止しようとする若き魔戒騎士、月影統夜と対峙した。

 

暗黒騎士の力を得ているディオスは暗黒騎士ゼクスの鎧を召還し、その圧倒的な力で統夜を退けた。

 

その後、ディオスはホラーと化した自分のしもべであるダンテと共に、桜ヶ丘某所にある廃ビルに潜伏していた。

 

グォルブ復活前の余興としてとあることを企んでいたディオスであったが、その後のディオスは物思いにふけっていた。

 

それはディオスに敗れて未だ眠り続けている統夜ではなく、自らのことであった。

 

普段は自分の過去のことなどは考えないディオスであったが、この日は何故か自分の過去のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

混沌騎士ゼクスの称号を受け継いだディオスはかつて紅の番犬所に所属する魔戒騎士だった。

 

ディオスは優秀な魔戒騎士であったが、この頃から力ばかりを追い求める傾向があった。

 

ディオスが力ばかりを追い求めるのは幼少期の出来事があったからである。

 

ディオスの父親は魔戒騎士で、母親は魔戒法師というよくある騎士の家柄であった。

 

幼い頃のディオスは父親のような魔戒騎士になるために、修行に打ち込んでいた。

 

父親の修行は厳しかったが、ディオスは必死に修行に食らいついていた。

 

魔戒騎士になりたい。その気持ちかディオスを突き動かしていたからである。

 

そんな努力の甲斐もあってか、修行を始めておよそ2年で、父親の魔戒剣を持つことが出来るようになった。

 

それだけではなく、ソウルメタルもそれなりに操ることが出来た。

 

そんなディオスが12歳の頃、悲劇は起こった。

 

ディオスの両親がホラーに殺されたのである。

 

ディオスの父親は魔戒騎士であったのだが、当時の混沌騎士ゼクスは無名の魔戒騎士であり、実力もあるとはいえなかった。

 

しかも、そのホラーの実力は自分の手に余るものであり、その実力差になす術もなく殺されてしまった。

 

両親が殺され、己の身を守るためにディオスはホラーに戦いを挑むが、自分の師である父も敵わなかったホラーにディオスが叶うはずがなかった。

 

ディオスはすぐさまホラーに追い詰められていた。

 

そんな中、ディオスは憎んでいた。両親を殺した目の前のホラーを。

 

そしてディオスは憎んでいた。何も出来ない無力な自分を。

 

そんな状況に絶望していたディオスだったが、そんなディオスの命を救ったのが奏狼の称号を受け継いだばかりの月影龍夜だった。

 

龍夜が来てくれたことにより、命を救われたディオスだったが、両親を殺されたディオスはホラーを憎む気持ちは変わることはなかった。

 

それだけではなく、ディオスは自分の無力さを憎んだ。そして、誰よりも強い力をこの時から求めるようになっていた。

 

若かりし龍夜はディオスの両親を救えなかったことを負い目に感じて共に来ないかと提案するが、ディオスはそれを拒絶して旅に出た。

 

旅に出ながら自らを鍛え、強い魔戒騎士になるために日々精進していた。

 

ディオスはホラーや自分の無力さへの憎しみから、人を守る者になるという自覚はなく、強大な力でホラーを蹂躙する。それだけを考えていた。

 

それから時は流れ、ディオスは混沌騎士ゼクスの称号を受け継ぎ、紅の管轄に配属された。

 

そこでディオスはかつて自分の命を救った龍夜と再会した。

 

この頃の龍夜とダンテはとても面倒見が良く、ディオスにとっては、よき先輩であった。

 

ディオスは魔戒騎士となったのはいいが、人を守るという意識はかなり薄く、ホラーを討滅するためなら手段は選ばないといった考え方を持っていた。

 

この頃のディオスは「守りし者」ではなく、「討ち滅ぼす者」といった感じであり、救えた命を見殺しにして、叱責されたこともあった。

 

人を守れず叱責されても、ディオスは考え方を改めることはしなかった。

 

こうしてメキメキと実力はつけていったディオスであったが、龍夜は番犬所を統べる元老院にその実力を認められ、元老院所属の魔戒騎士となった。

 

龍夜が元老院へと異動となり、ディオスはそれから龍夜と顔を合わせることはなかった。

 

龍夜は元老院付きの魔戒騎士となると、様々なホラーを討滅していたが、やがて闇に堕ちた魔戒騎士や魔戒法師を討伐する仕事をしていた。

 

そんな中、ディオスに衝撃的なニュースが耳に届いた。

 

とある騎士の討伐任務にあたっていた龍夜がその騎士に殺されたというのであった。

 

ディオスは龍夜ほどの実力者を殺した魔戒騎士に興味を示し、その騎士を探すために旅に出た。

 

そしてディオスが龍夜を殺した騎士を見つけるのにそれほど時間はかからなかった。

 

ディオスは龍夜を殺した騎士である暗黒騎士キバと対峙した時、禍々しい程の闇の力に魅入られてしまった。

 

暗黒騎士キバとの出会いこそ、ディオスが闇の力に魅入られてるきっかけとなった。

 

「貴様も私を討伐しに来た魔戒騎士か?」

 

「そのつもりだったが、気が変わったよ」

 

「?気が変わっただと?」

 

「貴様、暗黒騎士だろ?教えてくれ!どうすれば貴様のような暗黒騎士になれるんだ!?」

 

ディオスは暗黒騎士キバの称号を持つバラゴにどうすれば暗黒騎士になれるか聞いていた。

 

ディオスは旅の途中で暗黒騎士の噂を聞き、最強の力を得るためには暗黒騎士の力しかないと思っていたからである。

 

「自ら闇を求めるか……。ふっ、面白い奴だ」

 

バラゴはディオスも葬るつもりだったのだが、ディオスも闇の力を求めていることを知ると、それをやめた。

 

「いいだろう。貴様も暗黒の力に酔いしれたいのなら教えてやろう……。究極の力を得る方法を……!」

 

バラゴはディオスがかつての自分と同じ目をしていると感じたため、あっさりと暗黒騎士になる方法を伝授した。

 

それは、鎧の制限時間である99.9秒を越えた場合に魔戒騎士が陥る心滅獣身の状態を憎しみなどの感情による強大な闇の力で抑え込み、自力で鎧に打ち克つことである。

 

そうすることにより、ソウルメタルで作られた騎士の鎧がデスメタルという特異な金属に変化し、暗黒騎士となる。

 

そうなった瞬間、騎士の系譜は抹消され、その称号は暗黒騎士に統一されるのである。

 

暗黒騎士には鎧の制限時間はなく、さらに封印して魔界に送り返さなければいけないホラーを吸収することで己の力とする「陰我吸収」という特別な能力が得られる。

 

ディオスはバラゴの教えのもと、混沌騎士ゼクスの鎧を召還すると、わざと制限時間をオーバーさせ、心滅獣身の状態となった。

 

ホラーに対する深い憎しみや、強大な力に憧れを持っていたディオスはその強靭な精神力で、鎧に打ち克ち、暗黒騎士となった。

 

この瞬間、混沌騎士という系譜は消え去り、ディオスはそれから暗黒騎士ゼクスと名乗るようになった。

 

暗黒騎士の力を手に入れたディオスは各地を放浪し、ホラーを討滅することでホラーを陰我吸収によって喰らっていた。

 

ディオスが暗黒騎士の力を得て間もなく、暗黒騎士の先輩であるバラゴがメシアに取りこまれるといった形で最期を遂げたことを知った。

 

ディオスはバラゴの死を悲しむことはなく、バラゴがいなくなったことで、自分が最強の魔戒騎士であると自負をしていた。

 

多くのホラーを喰らっていたディオスが桜ヶ丘に一時期だけ戻ってきた。

 

それから間もなく、元闇斬師であり、月影龍夜の妻であった明日菜が、ディオスが暗黒騎士の力を得たことを突き止めた。

 

まだまだホラーの力を吸収したいと思っていたディオスは明日菜の存在が邪魔になり、ある日、明日菜を襲撃した。

 

明日菜の家に突入し、早々に明日菜を追い詰めると、剣を突き刺し、明日菜の命を奪った。

 

その様子を明日菜の息子である月影統夜に見られたのだが、この少年が騎士の称号を継いだとしても自分の敵ではない。

 

そう考えたため、ディオスは統夜を殺すことはしなかったのである。

 

しかし、この選択を後々悔いることになるとは、ディオスは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

明日菜の命を奪ったのがかつて共に戦ったディオスであるとダンテが突き止めたのは、明日菜が死んで間もなくであった。

 

「……見つけたぞ!ディオス!!」

 

ディオスの潜伏先を突き止めたダンテは、ディオスを見つけると、怒りに満ちた表情でディオスを睨みつけた。

 

「ほう……。貴様は剛風騎士ダンテか……。久しいじゃないか!」

 

「貴様!何故明日菜を殺した!あの龍夜の妻なんだぞ!?」

 

「そんなことは知っている!誰かを殺すのに理由などいるか?……強いていうなら存在が目障りだっから……だな」

 

「貴様……!もう俺や龍夜の知ってるディオスじゃないな!身も心も腐ってやがる!」

 

龍夜の妻を躊躇なく手にかけたディオスをダンテは怒りに満ちた目で睨みつけていた。

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

ディオスはダンテの怒りの言葉をさらりと流していた。

 

「御託などどうでも良い。貴様は私を斬りに来たんだろう?」

 

「あぁ!俺はお前を斬る!龍夜や明日菜のためだけじゃない!まだ幼い統夜のためにもだ!!」

 

ダンテは魔戒槍を構えると、ディオスを睨みつけた。

 

「統夜……。あぁ、あの小僧か」

 

ディオスはダンテの語る統夜というのが自分があえて殺さなかった子供だと理解すると、魔戒剣を抜いて、構えた。

 

「……はぁっ!!」

 

ダンテは魔戒槍を一閃するが、ディオスに軽々とかわされてしまった。

 

「まだまだ!!」

 

すかさずダンテは連続で突きを放つが、ディオスは軽々とかわしていた。

 

「くっ……!こいつ……速い!!」

 

「どうした?俺を斬るのだろう?その程度で私は斬れないぞ」

 

ディオスは余裕の表情でダンテを挑発していた。

 

しかし、ダンテは挑発に乗ることなく、冷静だった。

 

「ほぉ、さすがは歴戦の勇士といったところか」

 

ディオスは感情に左右されず、冷静に戦況を見極めるダンテを少しだけ賞賛していた。

 

ダンテは一瞬の隙をついて魔戒槍を一閃するが、それはディオスの持っていた盾で防がれてしまった。

 

「くっ……!ここで盾か!」

 

「ほぉ!なかなか良いところに攻撃するじゃないか!」

 

ディオスは盾を前に押し出すと、ダンテを吹き飛ばした。

 

ダンテはそのまま綺麗に着地して、体勢を整えた。

 

「ディオス!遊びは終わりだ!俺は全力でお前を斬る!!」

 

ダンテは魔戒槍を高く突き上げると、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、白と緑を基調とした鎧に包まれた。

 

この姿こそ、自らが受け継いだ剛風騎士ダンテの鎧であった。

 

「鎧を召還したか……。よかろう!私も少しだけ本気を出してやる!」

 

ディオスは魔戒剣を盾に共鳴させると、魔戒剣を前方に突き付けた。

 

すると、ディオスの前方に円の形をした大きな空間が出現すると、ディオスはそこから放たれた光に包まれた。

 

そしてディオスは漆黒の鎧を身に纏った。

 

この姿こそが暗黒騎士ゼクス。

 

心滅獣身を闇の力で克服し、多くのホラーを喰らってきたその姿は、禍々しいほどのオーラを放つ漆黒の鎧だった。

 

「……!この禍々しいオーラ……!なるほど、これが暗黒騎士か……!」

 

ダンテは禍々しいオーラを放つディオスに畏怖の感情を抱いていた。

 

しかし、ここで退くわけにはいかないと自らを奮い立たせたダンテは魔戒槍が変化した剛風槍を力強く握りしめると、ディオスに向かっていった。

 

「はぁっ!!」

 

ダンテは剛風槍を一閃するが、ディオスは軽々とかわしていた。

 

すかさずダンテは連続突きを放つが、ディオスは盾で連続突きを軽く防いでいた。

 

「どうした?その程度か?もっと私を楽しませろ!」

 

「なんの……まだまだ!」

 

ダンテは剛風槍の切っ先に風を集めると、風の塊をディオスに向けて放った。

 

「なるほど、風の攻撃とは、剛風騎士の名は伊達ではないな。だが!」

 

風の塊はディオスの盾であっさりと防がれてしまった。

 

「貴様はやはり私の敵ではないな……」

 

「なんの!これならどうだ!!」

 

ダンテは剛風槍の切っ先に黄色の魔導火を纏わせると、烈火炎装の状態となった。

 

「なるほど、烈火炎装か。……いいだろう!」

 

ディオスも魔戒剣の切っ先に紫の魔導火を纏わせると、烈火炎装の状態となった。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ダンテとディオスは同時にそれぞれの武器を振るうが、そのパワーはディオスが圧倒していた。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ディオスに競り負けたダンテは壁に叩きつけられてしまい、その衝撃で鎧が解除されてしまった。

 

「うっ……!くっ……!」

 

ダンテのダメージは相当なものであり、ダンテは立ち上がろうとするが、立ち上がることは出来なかった。

 

ディオスはゆっくりと手負いのダンテに近付いていた。

 

「……勝負あったな」

 

「くっ……!殺せ!」

 

潔く負けを認めたダンテはこう言いながらもディオスを睨みつけた。

 

「……」

 

ディオスは何故かとどめを刺さずにジッとダンテの瞳を見つめていた。

 

「……?ど、どうした?何故殺さない!」

 

「……貴様の眼に闇を見たからな」

 

「!や、闇……だと!?」

 

「貴様、月影龍夜に嫉妬……いや、憎悪の感情を抱いているな?」

 

「なっ!?何を馬鹿なことを!」

 

ディオスはダンテに向けた指摘を、ダンテは全力で否定していた。

 

「月影龍夜は元老院の魔戒騎士で、貴様はしがない番犬所の騎士。あいつと自分とで何が違うのか!そうは思ってないのか?」

 

「そっ、そんなこと……!」

 

ダンテは違う!と否定したかったが、それは出来なかった。

 

それは、ディオスの言葉が図星だったからである。

 

ダンテは龍夜のことを良き親友だと思っていたが、メキメキと実力をつけ、魔戒騎士として出世していった龍夜に嫉妬の感情を抱いたことももちろんあった。

 

ディオスはダンテの少し輝きを失った瞳からそのことを見通していた。

 

「隠したり否定することはない。嫉妬と憎悪に溢れた貴様の眼は闇に満ちている。……私にはわかる。だから貴様は殺さない」

 

「な……なんのつもりだ!」

 

「その代わり……。私のしもべになってもらおうか!」

 

ディオスは自分の口から黒い帯のようなものを放つと、その黒い帯はダンテの中に入っていった。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

黒い帯はどんどんダンテの中に入っていき、ダンテは断末魔をあげていた。

 

そして……。

 

「…………」

 

ホラーに憑依されてしまったダンテは、怪しげな笑みを浮かべていた。

 

「……これから貴様は私のために働いてもらおうか。来るべき私の野望を果たすために!」

 

「はっ……!承知いたしました。ディオス様」

 

暗黒騎士の力によってホラーに憑依されたダンテはディオスに忠誠を誓っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンテを配下にしたディオスはその後もホラーを喰らい続け、力をつけていった。

 

ちょうどその頃になると、元老院にもディオスの存在は知られるようになった。

 

元老院はディオスの存在を危険視し、実力のある魔戒騎士を次々と派遣するが、ディオスはその魔戒騎士たちを次々と蹴散らしていった。

 

そんなディオスであったが、とある魔戒騎士がディオスを追い詰めていた。

 

その魔戒騎士は全力を出したディオスを追い詰める程の実力者だった。

 

この日、ディオスは廃工場に現れた素体ホラーを斬り裂き、自らの糧とした。

 

その時、ディオスは魔戒騎士の気配を感じ取っていた。

 

「……また魔戒騎士が来たか」

 

ディオスはボソッと呟くと、ディオスの目の前に1人の青年が現れた。

 

「……ほう、その出で立ち……。貴様はもしや、影の魔戒騎士最強と言われた絶影騎士ゾロか!」

 

ディオスの前に立ちはだかったのは、元老院付きの魔戒騎士であり、影に生き、影に消えゆく定めを持った隠密の騎士の中で最強の騎士と呼ばれた絶影騎士ゾロの称号を持つ男だった。

 

「……ディオスよ、知っているか?貴様のように闇に心を売り、暗黒の道を歩んだ者たちがいた。……たった1人成功した者はいたが、そいつもホラーに取りこまれ、それ以外は誰1人と成功しなかったんだ」

 

ゾロが指摘したホラーに取りこまれた暗黒騎士とは、バラゴのことであった。

 

「ふん、私はバラゴとは違う。私は純粋に闇を求めている。私こそ、最強の暗黒騎士となるのだ!」

 

ディオスは暗黒騎士キバの称号を持ったバラゴを越える力を持った暗黒騎士になることを決意していた。

 

「絶影騎士ゾロ……。影の魔戒騎士の中で最強の騎士である貴様は、私の糧となるのだ!」

 

「そのつもりはない。私は、貴様を斬る。それだけだ」

 

ゾロは切っ先の短い2本の魔戒剣を取り出すと、鎧を召還し、その体は白銀の鎧に包まれた。

 

「銀の騎士か……。私はどうやら銀の騎士と縁があるようだな」

 

自分を救った騎士といい、目の前の騎士といい、よく銀の騎士を見る。

 

そう思っていたディオスは苦笑いをしていた。

 

相手が何者であろうと目の前に立ちはだかる者は斬り捨てる。

 

そう決意していたディオスは魔戒剣を取り出すと、銀の鎧を身に纏ったゾロを睨みつけていた。

 

「ディオス様!ここは私が!この男、只者ではありません!」

 

「ダンテ、下がっていろ。こいつは私の獲物だ」

 

「はっ、かしこまりました」

 

ダンテはディオスの援護をしようとしたものの、それを拒否されたため、戦いを静観することにした。

 

ダンテはホラーでありながらも、魔戒騎士としての実力は残っており、その本能からゾロの存在を危険視していた。

 

しかし、ディオスはそんなことはおかまいなしで、むしろ手応えのある相手との出会いを喜んでもいた。

 

ディオスは魔戒剣を抜くと、魔戒剣を盾に共鳴させ、それを前方に突き付けた。

 

すると、前方に円形の空間が出現し、そこから放たれる光に包まれたディオスは漆黒の鎧を身に纏った。

 

「「………」」

 

鎧を召還した両者は、迂闊に動くことはせず、互いの出方を伺っていた。

 

そして……。

 

「「……はぁっ!!」」

 

両者は同時に駆け出すと、それぞれの剣を一閃するが、その一撃は互いの剣に防がれた。

 

その衝撃はかなりのものであり、両者の周囲には稲妻が轟いていた。

 

その後、ディオスはゾロを弾き飛ばし、距離をとった。

 

ゾロを弾き飛ばしたディオスは魔戒剣を一閃するが、ゾロの素早い動きに翻弄されていた。

 

「……!ほぉ、面白い!」

 

今まで戦ってきた魔戒騎士以上の力を感じ取ったディオスは笑みを浮かべていた。

 

ゾロは変化した魔戒剣をまるで鎖鎌のように飛ばした。

 

ディオスはその攻撃をかわすが、その攻撃は囮であり、ゾロの攻撃が迫ってきた。

 

「……!」

 

ディオスは剣と盾を用いてどうにか攻撃を防ぐことが出来た。

 

すかさずディオスは剣を一閃するが、ゾロは瞬間移動を繰り返し、ディオスを翻弄していた。

 

ディオスほどの実力者でもゾロの攻撃を捉えることは出来ず、少しずつダメージが蓄積されていった。

 

「くっ……!最強の影の魔戒騎士の名は伊達ではないか……!」

 

「ディオスよ、思い出せ。貴様が魔戒騎士となったその日のことを!その日の想いを!」

 

ゾロは戦いの中でもディオスの良心に訴えかけ、罪を償ってもらおうと考えていた。

 

殺す事は容易だが、殺さずに罪を償ってもらえるならそれに越したことはない。

 

そう考えていたからである。

 

「そんなもの……とうに忘れたわ!」

 

しかし、暗黒騎士になってからは、ディオスは余計に力を追い求めるようになった。

 

それだけではなく、魔戒騎士になった頃もただ力を追い求める騎士だったので、純粋な「守りし者」としての気持ちは始めから持ち合わせてはいなかった。

 

ディオスは再び魔戒剣を一閃するが、ゾロは瞬間移動でその攻撃を回避した。

 

「ならば……!この私が引導を渡してやる!」

 

ゾロは2本の魔戒剣をクロスさせると、そこから雷の弾を出現させ、それをディオスめがけて放った。

 

ゾロは魔戒騎士であるが、魔戒法師の心得も持ち合わせており、瞬間移動や雷の弾など、いくつか法術も会得しているのである。

 

「……くっ!そんなもの!」

 

ディオスは魔戒剣を一閃すると、雷の弾を真っ二つに斬り裂いた。

 

しかし、その雷の弾は囮であり、青の炎に包まれたゾロがディオスに向かっていった。

 

「面白い!!」

 

ディオスも慌てることなく、烈火炎装を発動し、両者は激しくぶつかり合った。

 

そして……。

 

「もらったぁ!!」

 

烈火炎装対決に競り勝ったディオスはそのまま魔戒剣を一閃し、ゾロの体を斬り裂いた。

 

「ば……馬鹿な……!暗黒騎士の力……これほどとは……!」

 

全力を出してディオスに敗れたゾロの体はそのまま消滅した。

 

ディオスはゾロが消滅する様をジッと見つめていた。

 

「……絶影騎士ゾロ……。その名前……覚えておこう……」

 

ディオスは自分が戦ってきた騎士の中で1番の強敵の名を胸に刻んでいた。

 

影の魔戒騎士最強の名を持っており、黄金騎士牙狼とも互角ではないか?と噂される程の騎士をディオスは倒したのである。

 

ディオスは追い詰められながらもこれ以上ない強敵との戦いが楽しいとさえ感じていた。

 

しばらくゾロを討伐した余韻に浸っていたディオスは戦いを見守っていたダンテと共に、何処かへと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

ゾロを討伐したディオスはこれ以上の強敵と出会うことはなく、再び桜ヶ丘に戻ってきた。

 

桜ヶ丘に戻る前も魔戒騎士は立ちはだかったのだが、ディオスの敵ではなく、魔戒騎士たちは圧倒的な力によって蹂躙されてしまった。

 

桜ヶ丘に戻ってきたディオスは現在魔戒騎士になっている月影統夜の戦いを見ていた。

 

戻ったばかりの頃は統夜が魔戒騎士の称号を受け継いだことは知らなかったが、その街にいる魔戒騎士の情報をダンテが調査して報告していたからである。

 

統夜が魔戒騎士になったと知り、どれだけの力があるのか期待をしていた。

 

しかし……。

 

「あれがあの時の小僧か……。奴の実力は絶影騎士に遠く及ばないな……」

 

ディオスは統夜の実力はまだまだであることに落胆していた。

 

それなりの実力はあると評価はしたものの、自分を追い詰めたゾロ以上の力はない。それがすぐにわかったからである。

 

「奴がその程度の実力なら、我が野望の邪魔は出来ないだろう……」

 

自分を追い詰め、倒せるのはゾロくらいのものである。

 

それだけゾロのことをディオスは課題評価していた。

 

当然、黄金騎士牙狼や銀牙騎士絶狼など最強と言っても過言ではない魔戒騎士は存在したが、ディオスは牙狼や絶狼も自分の敵ではないと思っていた。

 

ディオスはその後、強大な力を持つホラー、グォルブを復活させるために動き始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……様!ディオス様!」

 

「……!」

 

物思いにふけっていたディオスはダンテに何度も呼びかけられるまでぼぉっとしていた。

 

「……あぁ、すまない。昔のことを思い出していてな」

 

「昔のこと……ですか?」

 

「あぁ、かつて私が倒してきた魔戒騎士のことを思い出していてな」

 

「魔戒騎士……ですか?あぁ、そういえば絶影騎士ゾロは、かなりの実力者でしたね」

 

ダンテもディオスがゾロと戦った時のことを思い出していた。

 

ダンテもゾロの実力は認めざるをえない程であった。

 

「そうだな……。あいつ以上の騎士は現れなかった。……だからこそ、私を止める者はいないのだ!」

 

ディオスは昔の出来事を思い出し、自分を倒せる魔戒騎士が現れることはないと確信していた。

 

だからこそ、強大な力を持つグォルブを復活させ、一体化することで、さらなる強大な力を手に入れて、ついでにこの世界を理想の世界にしよいと企んでいた。

 

「……ダンテ、そろそろ行くぞ」

 

「はっ!かしこまりました」

 

「……月影統夜……。グォルブ復活前の余興……楽しませてもらおうか……!」

 

こうしてディオスはダンテと共に統夜が運ばれた琴吹総合病院へと向かい、統夜の動向の調査を始めた。

 

統夜はまだ生きており、目が覚めてからが余興の始まりである。

 

そんなことを考えながらディオスは統夜が目覚めることを待っていた。

 

この後待ち受ける運命を、ディオスはまだ知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

……終。

 




以上、ディオスの過去が明らかになりました。

本当は精神世界でキバか龍夜奏狼とのバトルを入れる予定でしたが、彼らを倒してしまうと、バラゴ以上の強敵感が出るのでやめました。

ディオスとバラゴの違いを比較したかったのですが、ディオスは力ばかりを追い求める小者な感じを出したかったのです。

そして、絶影騎士ゾロが出てきたのは驚きだったと思います。

ですが、このゾロは当然あの人ではありません。

戦い方にしても、今回出てきたゾロは、鎧はゾロだけど中身はバドといった感じになりました。

ゾロは義流やクロウのように影の魔戒騎士という設定にしましたが、銀の騎士なのに影の騎士かよ!というツッコミは無しでお願いします(笑)

次回は、本編に戻って、予告通りライブハウスの話になります。

それでは、次回をお楽しみに!


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