牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第33話になります。

今回はけいおんメインの回で、日常回となります。

けいおん!一期の番外編の話になっています。

それでは、第33話をどうぞ!




第33話 「冬日」

桜高の学園祭が終了し、それなりに時間が経過していた。

 

現在は12月前半であり、外もだいぶ寒くなっていた。

 

この日の放課後も、統夜たちは音楽準備室にいた。

 

「うぅ……寒いねぇ……」

 

唯は遅れて音楽準備室に入ってきたのだが、中に入るなりブルブルと体を震わせながらこう言っていた。

 

唯は学生鞄を長椅子に置き、ギー太こと自分のギターを壁に立てかけると、いつもの席に座った。

 

「ねぇねぇ、りっちゃん」

 

「ん?何?」

 

唯は律に呼びかけると、「ふっふっふ……」と笑みを浮かべていた。

 

そして……。

 

「えいっ!」

 

唯は冷たくなった両手を律の頬にくっつけた。

 

「うひゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

唯の手が冷たかったのか律は悲鳴に近い声をあげていた。

 

「りっちゃんのほっぺた暖かい……」

 

『おいおい、何をやってるんだか……』

 

唯の行動を見ていたイルバは唯に呆れていた。

 

このやり取りの後、練習をすることになった。

 

唯はギターケースからギターを取り出すと、ジャラーンと音を鳴らした。

 

「……はぁ、寒くてギー太弾けないや……」

 

唯はギターを鳴らすのだが、あまりの寒さで思い通りにギターが弾けなかった。

 

「あっ!いいこと考えた!手袋をしながら弾けばいいんだよ!」

 

「やってみろよ……」

 

統夜が唯のアイデアに呆れていた。

 

唯はさっそく手袋をはめて演奏を試みるが、当然のようにうまく行くはずがなかった。

 

滑ってピックを落としそうになったり、手袋が弦に引っかかってまともな音が出なかったりでまともにギターが弾けなかった。

 

唯はすぐに諦め、手袋を長椅子に置いた。

 

「失望した!」

 

「「『そりゃそうだ』」」

 

澪、統夜、イルバが同時にツッコミを入れていた。

 

「なぁ、律」

 

澪は律に同意を求めるが、律は何故かぼぉっとしていた。

 

「……律?どうしたのか?」

 

「……りっちゃん?」

 

澪と唯は律の心配をしていた。

 

律は風邪をひいているわけではないみたいだが、ぼぉっとしているからである。

 

「……!な、なんでもない!」

 

我を取り戻した律は慌ててごまかしていた。

 

澪は首を傾げ、統夜はうーんと考え事をしていた。

 

「……なぁ、律」

 

「な、何だよ!」

 

「お前さ、もしかして、好きなひ……」

 

「ちがぁぁぁう!!」

 

統夜が最後まで言い切る前に律は拳骨をお見舞いして口封じをした。

 

「へ……変なこと言うな!馬鹿統夜!!」

 

律は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

 

「痛てて……。何だよ、律の奴……」

 

『統夜。その質問はいきなり過ぎたな。デリカシーがないと言われても仕方ないぞ』

 

「うーん……。そう言うものなのか?」

 

イルバの言葉に統夜は首を傾げていた。

 

「あぁ!ブークロちゃん!怒ってごめんね!」

 

唯は長椅子に置いてある手袋に駆け寄った。

 

「また名前つけてるんですか……」

 

「みんな、冬がいけないんだよ!」

 

「おいおい、冬のせいにするなよ」

 

この日はそれだけ寒いのが冬のせいにしている唯に統夜は呆れていた。

 

「そ、そうだよね。やーくん。冬の日も楽しいことたくさんあるしね!」

 

「確かにそうだな」

 

「あ、そうだ!今度の日曜日、家で鍋しようよ!」

 

唯が突然鍋パーティーを企画してきた。

 

「へぇ、それは面白そうではあるけど……」

 

統夜のこの言葉を皮切りに、他のみんなも微妙そうな空気を出していた。

 

「……あれ?」

 

「……ごめんなさい……。その日は用事があって……」

 

紬が申し訳なさそうに欠席を伝えた。

 

「あたしも……。弟を映画に連れてくって約束してるからな……」

 

(弟?あぁ、あの子か)

 

統夜は律と澪がギクシャクしている時に律の家に行くと、律の弟が迎えてくれたことを思い出していた。

 

「私もちょっと……。その日は家から出られそうにないんです……」

 

「えぇ!?」

 

律だけではなく、梓も欠席を伝えたので、唯は残念そうな表情をしていた。

 

「……みおちゃんは?」

 

「私もちょっと……。新しい歌詞書きたいし……」

 

『そういえば澪。お前さんはここで歌詞を書こうとしていたよな?』

 

「あぁ、そうなんだけど……。いつも唯や律が邪魔するからなかなか集中出来なくて……」

 

「「うぐっ!」」

 

「なるほど。確かにそうかもしれないな」

 

「「申し訳ありませんでした!」」

 

澪の歌詞作りを邪魔していた唯と律は素直に謝罪していた。

 

「……そういえばやーくんも行けないの?」

 

「そうだな……。行ってもいいっちゃいいんだけど……」

 

『おい、統夜。日曜日はエレメントの浄化があるだろう?鍋が夜だとしても指令があったらダメだからな』

 

「確かにな……。という訳で俺も行けないってことで頼むよ」

 

統夜も欠席ということで、結局日曜日は全員参加出来ないという結果になってしまった。

 

「……仕方ない。その日は私と憂とギー太の3人で鍋するかな」

 

『おいおい、ギターを頭数に入れるのかよ』

 

唯の言葉にイルバがツッコミを入れていた。

 

「ギター汚さないで下さいよ。この間メンテしたばかりなんですから」

 

「大丈夫だよ!ちゃんと前掛けもしてあげるし」

 

「いやいや……そう言う問題じゃないだろ?」

 

「それなら……いいですけど……」

 

「『って、いいのかよ!』」

 

何故か梓が納得していたので、統夜とイルバが同時にツッコミを入れていた。

 

「冬はやっぱし鍋だよねぇ♪」

 

「確かに、それは言えてるな」

 

唯の言葉に統夜は納得していた。

 

練習した後にティータイムを行い、この日の練習は終わった。

 

統夜はこの日も番犬所に寄らなければいけないため、途中まで唯たちと一緒に帰った。

 

この日は指令がなかったため、統夜は番犬所を後にすると、街の見回りを行い、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

そして日曜日となった。

 

統夜はこの日はいつものように起床し、エレメントの浄化を行っていた。

 

「……はあっ!」

 

統夜は魔戒剣を一閃し、邪気の溜まったオブジェから飛び出した邪気を斬り裂いた。

 

「……これで良しっと」

 

統夜は魔戒剣を鞘に納めると、魔法衣の懐にしまった。

 

「さてと……そろそろ腹へったな……。昼飯にするかな」

 

統夜は午前中いっぱい休憩せずにエレメントの浄化を行っていたので、商店街へ向かって、昼食を取ることにした。

 

(さて……今日は何食べるかな……。昨日の昼は牛丼食べたし、カレーかハンバーガーか……)

 

統夜は歩きながら昼食を何にするのか考えていた。

 

(……やっぱり今日はハンバーガーにしようかな)

 

統夜はハンバーガーを食べることを決めたので、いつものファストフード店に向かった。

 

ファストフード店に到着した統夜はいつものように注文を取りに行くのだが……。

 

「いらっしゃいませ♪ご注文を……って、統夜君!?」

 

店員さんが統夜のことを知っているようなので、統夜は店員さんの顔を見ると、目を丸くしていた。

 

「む……ムギ!?どうしてそんなところに!?」

 

店員の正体が紬であったため、統夜は驚きを隠せなかった。

 

「あっ、あのね……。実はアルバイトをやってみたくて……」

 

紬の家は桜ヶ丘屈指の富豪の家なので、バイトは必要ないようにも思えた。

 

(なるほど、社会勉強ってやつかな?)

 

統夜は紬の事情を何となく察していたので、これ以上は追求しなかった。

 

「ご……ご注文を承ります!」

 

「えっと……ビッグバーガー1つと、チーズバーガー1つ……。あと、コーラのLサイズが1つ」

 

「ビッグバーガー1つと、チーズバーガー1つと、コーラのLが1つですね。……ご一緒にポテトもいかがですか?」

 

「じゃあ、ポテトもLでお願いします」

 

「ありがとうございます!」

 

嬉しそうにドリンクの準備をする紬を見て、統夜は笑みを浮かべていた。

 

(なるほど……。ムギが今日用事あるっていうのはバイトがあるからなのか)

 

統夜は今日唯が提案した鍋パーティーが行けなかった理由を思い出し、納得していた。

 

統夜が物思いにふけっていると、注文した物が次々と置かれていき、全てのものが揃った。

 

「お待たせしました!ごゆっくりどうぞ!」

 

「ありがとう。ムギ、バイト頑張ってな」

 

「うん♪ありがとう♪」

 

統夜は紬に労いの言葉を言うと、そのまま席へ向かうのだが、統夜は紬が見えるところに座ってハンバーガーを食べ始めた。

 

紬は接客をしながらチラチラと統夜のことを見ており、統夜もそれに気付いてそちらの方を見ると、ときどき目が合うことがあった。

 

目が合う度に紬は統夜に笑みを浮かべ、統夜も笑みを返していた。

 

その様子を紬の先輩店員も見ていた。

 

「……ねぇねぇ、琴吹さん。あなた、さっきからあの赤いコートのお客様のこと見てるけど、もしかして琴吹さんの彼氏?」

 

「ふぇっ!?い、いえ!そうじゃなくて!ただの友達で……」

 

「ウフフ♪それじゃあ、そういうことにしてあげる♪」

 

先輩の言葉に紬は顔を真っ赤にするのだが、先輩はそんな紬を見て笑みを浮かべていた。

 

統夜はポテトを頬張りながら紬たちのやり取りを見ており、統夜は首を傾げていた。

 

やがて統夜はハンバーガーを完食すると、トレイのゴミを全てゴミ箱に捨て、店を後にしようとしていた。

 

店を出る前に紬と目が合った統夜は笑みを浮かべながらアイコンタクトを取り、店を後にした。

 

店を出た統夜はエレメントの浄化の仕事を再開した。

 

1時間半ほどエレメントの浄化を行った統夜はこの日の仕事を終わらせた。

 

そして、今は偶然にも梓の家の前にいた。

 

(……梓、今日は家から出られないって言ってたけど、何か用事でもあるんだろうか……)

 

統夜は梓が家で何かしらの用事があると推察していた。

 

『おい、統夜。さっき携帯が鳴っていたが、確認しなくてもいいのか?』

 

「え?そうなのか?」

 

イルバに言われて慌てて携帯を取り出した統夜は携帯の画面を確認した。

 

「……唯からメールだ。なんだろう?」

 

統夜はメールの中身を確認した。

 

 

 

 

From 唯

sub ねぇねぇ♡

 

マシュマロ豆乳鍋と

チョコカレー鍋

どっちが

たべてみたい?? ☆〜(ゝ。∂)

 

 

 

 

「……は?何だよ、そのゲテモノ鍋は……」

 

統夜は唯からのメールに呆気にとられていた。

 

しかし……。

 

(でもまぁ、こんな奇抜な発想は唯らしいよな)

 

内容が唯らしいと思った統夜は笑みを浮かべていた。

 

その時だった。

 

「……あれぇ?やーくん?」

 

唯と憂が梓の家の前で立ち尽くしている統夜を見つけて、声をかけた。

 

「おう、唯。憂ちゃんどうしてここに?」

 

「あずにゃんから電話があって、飛んできたの!」

 

「なるほど、よくわからないけど、訳ありっぽいな」

 

「あのっ、統夜さんはどうして梓ちゃんの家の前に?」

 

「その話は後でしよう。緊急事態なんだろ?」

 

「うん、そうだね!」

 

「はい!」

 

統夜は唯、憂の2人と共に梓の家の中に入った。

 

梓は統夜がいることに驚きはしたものの、そのまま3人梓の部屋に案内した。

 

すると、梓の部屋のソファにいた子猫がぐったりと横たわっていた。

 

統夜がいの一番に子猫に駆け寄ると、子猫に優しく手を当てた。

 

『……統夜、こいつはどうやら毛玉を吐いているだけのようだぜ』

 

「そうみたいだな。特に体調は崩してなさそうだ。もう落ち着いてくる頃だな」

 

「え?統夜先輩、猫のことわかるんですか?」

 

統夜が冷静に猫を診るのを見て、梓は驚いていた。

 

「あぁ、こう見えて俺は動物が好きだからな。医者の真似事くらいなら出来るぞ」

 

統夜は子猫を優しく撫でながらこう答えていた。

 

すると、先ほどは具合悪そうにしていた子猫が元気になっていった。

 

「……うん、もう大丈夫だ。頑張ったな」

 

統夜は誰にも見せたことのない程優しい表情で子猫を撫でていた。

 

「……ニャア♪」

 

それが心地よかったのか子猫は統夜の腕にすりすりと寄り添っており、その姿を見た統夜は笑みを浮かべていた。

 

「……とりあえず、問題はなさそうだ」

 

統夜は子猫にすりすりと寄り添われながらこう宣言した。

 

「統夜先輩……。ありがとうございました」

 

「気にするなって。この子が何でもなかったんだ。それが何よりだよ」

 

「ニャア♪」

 

子猫は早くも統夜に懐いたのか、統夜から離れようとはしなかった。

 

その様子を唯、憂、梓は優しい表情で見守っていた。

 

「……お騒がせして、すいませんでした……」

 

しばらくした後に梓は3人に詫びの言葉を言っていた。

 

統夜に甘えていた子猫はしばらくすると疲れたのかぐっすりと眠っていた。

 

「うぅん。あずにゃん2号なんでもなくて♪」

 

「あ、あずにゃん2号?」

 

『おいおい、その猫は他人の猫なんだろう?変なあだ名をつけるなよ』

 

唯のつけたあだ名に統夜は唖然とし、イルバは呆れていた。

 

「……猫が毛玉吐くなんて知らなかったもので……」

 

そう言った梓は俯いていた。

 

「梓、気にするなって」

 

統夜は梓を安心させるために梓の頭を撫でた。

 

「……は、はい。ありがとうございます……」

 

梓は頭を撫でられて恥ずかしいと思うが、それと同時に嬉しいという感情もあった。

 

「それにしても、統夜さんって猫のこと詳しいんですね♪昔、猫を飼ってたんですか?」

 

「いや、動物は家で飼ったことはないかな。だけど、動物は好きでよく動物の本を読んでたんだよ」

 

「「「へぇ……」」」

 

統夜の知られざる一面を垣間見た3人は驚いていた。

 

「そういえば、やーくんはどうしてあずにゃんの家の前にいたの?」

 

「あぁ。エレメントの浄化の仕事を終えて偶然梓の家の前を通ったんだよ。それで、何してるのかなって考えてたら2人が来たって訳」

 

「そうだったんですね……」

 

「それよりも唯。メールに書いた鍋だけどな、俺はどっちも無しだと思うぞ」

 

「えぇ?食べてみたら美味しいかもしれないのに……」

 

唯はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「……そういえば、皆さんは今どうしてるんでしょうね……」

 

「ムギなら見たけどな」

 

「え?紬さんは今日は何をしてたんですか?」

 

憂が統夜に紬のことを聞くと、唯の携帯に反応があった。

 

「あっ!みんなからメール来てた!」

 

どうやら唯は統夜だけではなく全員にこのメールを送っていたようだった。

 

「えぇ!?ムギちゃん、バイトしてるんだぁ」

 

「あぁ、昼飯を食いに寄ったらムギ、頑張ってたぞ」

 

「なるほど、それで偶然紬さんにあったんですね」

 

「そういうこと♪」

 

唯は残りのメールもチェックしていた。

 

「え!?みおちゃん、海に行ったんだ!」

 

「へぇ、澪が海にねぇ……」

 

『冬の海とは、澪のやつずいぶんとロマンチックな奴だな』

 

澪は歌詞を考えるために冬の海に行っていた。

 

「りっちゃんは今どこ?だって。……あずにゃんの家だよっと……」

 

唯はこう律にメールを返すと、紬がバイトしているいつものファストフード店に集まろうとの話になった。

 

梓は預かっている猫を引き渡さなければならないので、残りの3人は先にファストフード店に向かって、律と合流した。

 

律と合流してからそれほどかからずに梓も合流した。

 

梓に子猫を預かって欲しいと頼んだのは純で、その純が子猫を引き取りに来たので、梓はみんなと合流した。

 

その後は今日みんな何をしていたのか互いに報告し合っていた。

 

律は弟と映画を観に行ったのだが、その後、弟が友達と遊びに行ってしまったので、暇になってしまったらしい。

 

梓は純から預かった子猫をずっと見ていた。

 

このような報告を続けていると、澪が合流した。

 

「あっ、みおちゃんおかえり♪」

 

「おぉ、澪。いい歌詞は……浮かばなかったみたいだな」

 

澪はガクッと肩を落としながら律の隣の席に腰をおろした。

 

「でも、何か格好いい!1人で冬の海にふらりと行くなんて!みんなすごいよ!私を置いて大人にならないでよぉ」

 

今日はみんな何かしらやっていたことに唯は少しだけ嫉妬していた。

 

「りっちゃんは変わってないよねぇ?」

 

「なっ!あ、あたしだって!」

 

唯に言われたことが癪に障ったのか、律は反論していた。

 

「え、何?何かあったの?」

 

「え、えっと……」

 

律は本当のことを言おうとするがそれを言うことは出来なかった。

 

「……?律?」

 

統夜はそんな律を見て首を傾げていた。

 

「……あぁ、そうだ。律」

 

「?何?」

 

「この間郵便受けに入れておいた歌詞……どうかな?」

 

「へ?か、歌詞?」

 

澪の言葉に何故か拍子抜けした律が固まっていた。

 

「うん。頑張ってパソコンとか使ってみたんだけど……」

 

「パソコン?ってことは……」

 

『澪。だいぶ前に統夜にパソコンの相談をしていたな?もしかして、「冬の日」で始まるやつか?』

 

「な、何で統夜とイルバが知ってるんだよ!?」

 

「な、何でって言われても澪にパソコンのことを相談されたからだけど」

 

「そ……それじゃあ……あれは……澪が?」

 

「うん!」

 

統夜はここまでの話を聞いて今まで律の様子がおかしかった原因を理解した。

 

「な、なぁ、律。お前、まさか……」

 

統夜はそのことを確かめようとこう律に問いかけるのだが……。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「へぶしっ!!!」

 

律は恥ずかしさのあまり統夜に左フックをお見舞いすると、統夜は一撃でノックアウトされてしまい、その場に倒れ込んだ。

 

そして澪の肩をガクガクさせていた。

 

「あれ書いたの……。澪だったのかぁ!!」

 

「ゆ、郵便受けに入れておくって言っただろ!?」

 

「今時そんな酷なことをするんじゃねぇ!!」

 

澪と律はしばらくの間このやり取りをしており、統夜は律から受けた左フックが効いたのかしばらく倒れていたが、やがてゆっくりと起き上がった。

 

「痛てて……。律のやつ遠慮なくやりやがって……」

 

『律の左フックはなかなかのものだったな』

 

「か、関心してる場合かよ……」

 

統夜は痛みを抑えながらイルバにツッコミを入れていた。

 

律はギャーギャー騒ぎながら澪の肩をガクガクさせていた。

 

統夜はふと紬の方を見ると、紬は相変わらず接客に追われていたのだが、ふと統夜と目が合うと、紬は笑みを浮かべていた。

 

しばらくすると、紬のバイトの時間が終了し、紬も合流した。

 

紬の合流後は雑談をしながらワイワイと楽しんでこの日は解散となった。

 

この日は番犬所からの呼び出しはなかったので、唯たちと解散した後、統夜は街の見回りを行ってから家路についた。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

数日後の放課後、統夜たちはいつも通り部活をしており、この日はティータイムの前に練習をしていた。

 

「ひゃうっ!!」

 

突然澪が声をあげた。

 

「どうしたの?」

 

「あ……いや……。ベースがすごく冷たくて、それが太ももに当たって……」

 

「ひゃうっ!……だって♪もう一回言って♪」

 

「いーやーだ!!」

 

唯は目を輝かせて澪に詰め寄るが、澪は唯の額を手で押さえ、拒否していた。

 

「そういえば、ムギは普通にキーボードひゃうっ!!弾いてるけど、手が悴んだりしないのか?」

 

澪は話を誤魔化すために、紬に話を振っていた。

 

「私、体温高いから」

 

「あ、本当だ!暖かぁい♪」

 

唯は紬の手を握り、紬の体温を確かめていた。

 

その後、律と澪も同じように紬の手を握っていた。

 

「おぉ、暖けぇ♪」

 

「本当だな!」

 

統夜と梓はそれを遠巻きに見ていた。

 

梓は後輩故に先輩とのスキンシップが行いにくいという理由があり、統夜は男である故に余計スキンシップが行いにくいという理由があった。

 

「うぅーん……。一家に一台ムギちゃんだよぉ♪」

 

『おいおい、紬は家電じゃないぞ』

 

唯の言葉にイルバがツッコミをいれていた。

 

「あっ、あずにゃんも触ってみなよ!」

 

「えっ?わ、私はいいですよ」

 

梓は遠慮がちに唯の提案を断っていた。

 

「暖かいよぉ♪」

 

「はいっ♪」

 

唯が勧め、紬は両手を差し出していた。

 

「しっ、失礼します……」

 

梓は恐る恐る紬の両手を触った。

 

「あっ、本当だ、暖かい」

 

「あずにゃんの手は小さくて可愛いね♪」

 

唯は梓の手を握ってこう言うと、梓の顔が真っ青になっていた。

 

「どうせ私は手が大きくて心の冷たい女ですよ」

 

自分の大きい手がコンプレックスになっている澪は涙目でこう言っていた。

 

「手が冷たい人は心が暖かいんだよ、みおちゃん!」

 

「!」

 

唯の言葉を気にした紬は両手を窓にくっつけていた。

 

「ムギちゃんは手も心も暖かいよ!」

 

唯の言葉が嬉しかったのか、紬はぱぁっと顔を輝かせていた。

 

統夜はそんな女性陣のやり取りを笑みを浮かべながら見ていたのだが……。

 

「ふっふっふ……。次は……やーくんだね……!」

 

唯が目をギラリと輝かせながらこう言っていたので、統夜は嫌な予感を感じ取って、顔を真っ青にしていた。

 

統夜は隙をついて逃げ出そうとするが、その前に紬に捕まってしまった。

 

「ちょ……またかよ!?しかも動けないし!」

 

紬の力はかなりのもので、抜け出すことが出来なかった。

 

「さてと……」

 

唯は統夜の右手を掴み、澪が統夜の左手を掴んでいた。

 

「おぉ!意外とやーくんの手って暖かい♪」

 

「本当だな♪」

 

「え?本当に?」

 

「どれどれ……」

 

続いて律と紬が統夜の手を掴み、その後は梓が統夜の手を掴んだ。

 

「おぉ、暖けぇ♪」

 

「本当ね♪」

 

「そうですね♪」

 

律と紬は満足そうな表情を浮かべ、梓は頬を赤らめていた。

 

「やーくんは……心が暖かい……のかな?」

 

「おい!何で疑問系なんだよ!」

 

「それは……だって……なぁ……」

 

「クスッ、そうですね♪」

 

澪と梓ははっきりと言わなかった。

 

『まぁ、お前さんの普段の言動を見ていれば言わずともわかる気がするがな』

 

イルバの言葉に唯たちはウンウンと頷き、統夜は首を傾げていた。

 

「なぁ、とりあえずそろそろ離してくれないか?さすがに恥ずかしいんだけど……」

 

「「「「「ダメ(です)!!」」」」」

 

「何でだよ!?」

 

統夜は未だ紬に捕まったままなのだが、唯たちは統夜を解放しようとはしなかった。

 

「そりゃあ、ねぇ……」

 

「久しぶりにやーくんとスキンシップを取ろうかと♪」

 

「な、何を言ってるのかなぁ?」

 

統夜はこれから何をされるのかおおよその予想がついていたので、顔を真っ青にしていた。

 

「「「「「ふっふっふ……」」」」」

 

そして唯たちは何故か怪しい笑みを浮かべていた。

 

「おい……やめろ……来るな……」

 

統夜はいつぞやの衣装決めの時のように怯えていた。

 

(やれやれ……また怯えてるのか……。こう何度も見ていると、本当にこいつがあのグォルブを討滅したのかと疑いたくなるぜ……)

 

イルバは統夜の怯えように呆れ果てていた。

 

そして……。

 

「だっ……ダレカタスケテー!!」

 

統夜の悲鳴が響き渡るなか、統夜は頭をくしゃくしゃに撫でられたり等、唯たちのおもちゃと言っても過言ではないほどもみくちゃにされていた。

 

(やれやれ……。唯たちは純粋に統夜とスキンシップを取りたいだけだろうが、男子にとってはこの光景は天国に見えるだろうな……。まぁ、当の本人は地獄なんだろうが……)

 

イルバは唯たちのやり取りを冷静に分析していた。

 

数分のスキンシップで唯たちは満足したのだが、統夜の髪はくしゃくしゃになっており、心身ともにボロボロになっていた。

 

(おいおい……。これがあの白銀騎士奏狼かよ。ずいぶんと無様な姿になっているが)

 

イルバは相棒のあまりのボロボロぶりに呆れていた。

 

その後唯たちは練習を終了させると、そのままティータイムを楽しんでいた。

 

律は澪が書いた歌詞を却下するのだが、全員に反対され、この歌詞は新曲の歌詞として採用されることになった。

 

こうしてこの日は紅茶を飲んで、体を暖め、談笑を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『ほう、ライブハウスでのライブか。軽音部のお前たちにはいい機会かもしれないな。次回、「響家 前編」。さて、どのようなライブになるのやら』

 

 




統夜が羨まし過ぎる(笑)統夜、そこ変わってくれ(^_^;)

唯たちのスキンシップはこう言いたくなるくらい羨ましいですよね(笑)

さて、余談ですが、もうすぐこの小説のUAが1万オーバーになります。

そうしたら活動報告にも改めて書くつもりです。

次回はけいおん!一期の番外編の話になりますが、その前にUA1万記念の番外編になるかもしれません。

どちらになるかわかりませんが、次回をお楽しみに!


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