今回は久しぶりに牙狼メインの回になります。
あと、今回の魔戒烈伝も最高でしたね!そろそろ来て欲しいキャラだったから思わず「キター!!」と言ってしまいました(笑)
さらには意外なゲストに思わず笑ってしまった回でした(笑)
話が逸れましたが、今回はゲームが題材となっています。
今回の話は牙狼でありそうでなかった回になったと思います。
それも含めて、第32話をどうぞ!
……ここは桜ヶ丘某所にあるとあるゲーム会社のオフィス。
ここに、50代前半くらいの男性が力なくパソコンの画面と向き合っていた。
パソコンの画面には「モンスターバスター」という今この国で流行っているゲームの画面が映っていた。
「……くそっ!何がモンバスだ!こんなゲームのどこが面白いんだよ!……俺が作ったゲームの方が断然面白いのに……」
パソコンの画面を見ていた男……河上明宏(かわかみあきひろ)は、流行りの人気作であるモンスターバスター、通称モンバスを批判していた。
明宏も自信が立ち上げたゲーム会社でゲームを作っていたのだが、そのゲームは全く売れなかったのである。
「なんで誰も認めないんだ……!俺のゲームの面白さを!」
明宏は自分のゲームが売れておらず、人気がないことを認めようとはしなかった。
さらに、明宏の会社から人気作が輩出されていないからか経営は傾き、倒産は時間の問題だった。
「くそっ……!次は……次こそは……作ってやるんだ!モンバスなど目ではないほどの最高のゲームを!」
明宏はこう決意しているのだが、次のゲームを作る経済的余裕はなく、今の状況に絶望していた。
その時だった……。
__貴様、それほどまでに作りたいか?最高のゲームを……
突然明宏の見ていたパソコンの画面が真っ暗となり、パソコンの画面から声が聞こえてきた。
「声!?どこから!?」
__答えろ……!貴様はそれほどまでに最高のゲームを作りたいか?
「あっ、あぁ!作りたい!!この日本……いや、この世界で唯一無二の最高の……そして、誰も真似出来ないゲームを!」
__そうか……!貴様はそのために全てを差し出す覚悟はあるか?
「あぁ!そのためならこの命……悪魔だろうがなんだろうがくれてやるよ!」
__よく言った!ならば我を受け入れよ!!
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
突然パソコンの画面から黒い帯のようなものが現れ、その黒い帯は明宏の中に入っていった。
「…………」
しばらく動かなかった明宏は怪しげな笑みを浮かべていた。
明宏がオフィスを出ようとしたその時だった。
「……あ、明宏さん、まだいたんすか?」
オフィスに入ってきたのは、この会社の社員である、20代後半の男だった。
「でもまぁ、ちょうど良かった。俺、この会社辞めるんで」
「……辞める……だと?」
「こんな辺鄙な会社にいても意味ないし、それに、俺、あのカプコムで仕事出来ることになったんで」
男が言っていたカプコムとは、今や人気作となったモンバスことモンスターバスターを制作した会社である。
「!カプコム……だと……!」
自分が忌み嫌う会社に自分の会社の社員が行くことに、明宏は憤りを感じていた。
「まぁ、せいぜい頑張ってくださいね。こんな会社、すぐ潰れるだろうけど」
男は捨て台詞を吐いてオフィスを出て行こうとするのだが……。
「……ちょっと待て」
「何すか?」
「この会社を辞めることは許さん!」
「はぁ!?んなの俺の勝手っしょ!?それに、こんなボロ会社にいるより余程いいだろうがよ!」
男は、明宏の会社のことをボロクソに言っていた。
「……そうか……」
「話は終わりっすね?じゃあ俺は……」
「ならば……俺のゲームをクリアしてみせろ!!」
明宏の目が怪しく輝くと、会社のオフィスから、見たことのない草原に変わっていた。
「!?ど、どこだよ、ここ!?」
男は突然の出来事に困惑していた。
すると、男の目の前にこの世のものとは思えない怪物が現れた。
「ヒッ!?な、なんだよ、この化け物!?」
「まずは手始めにこのモンスターを討伐してみせろ!そうしたら無事に元の世界に帰してやる」
「くっ……くそっ!やってやるよ!」
男は近くに落ちていた木の棒を拾ってモンスターに戦いを挑むが、当然そのような装備でモンスターに敵うわけはなかった。
「……この程度のモンスターにも勝てないか……。お前は一生この世界から出ることは出来ない!」
「そ、そんな……」
明宏の残酷な宣言に男の顔は真っ青になっていた。
「言い忘れたが、この世界でのゲームオーバーはすなわち死だ。このようなモンスターすら倒せない自分の愚かさを呪うんだな」
明宏はそう告げるとその場から姿を消した。
「や……やめろ……来るな……!」
モンスターたちに追い詰められた男は、恐怖に怯えていた。
そして、モンスターたちは一斉に男を喰らい始めた。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
男の断末魔がその場に響いていた。
※※※
学園祭が終了して1週間が経った。
統夜たちは様々な問題を乗り越えて、ライブに挑み、そのライブも大成功で幕を閉じたのである。
学園祭が終わってからはいつもの生活に戻り、統夜は朝はエレメントの浄化を行ってから登校し、昼は学校と部活。夜はホラー討伐と忙しい毎日を過ごしていた。
この日は学校で、この日の放課後も部活は行われていた。
統夜は日直の仕事があるため、まだ音楽準備室に顔を出していないのだが、音楽準備室ではティータイムではなく、意外なことが行われていた。
「ちょ……律先輩!そんなにむやみにハンマーを振り回さないで下さいよ!」
「ふっふっふっ……あたしの華麗なるハンマーさばきを見よっ!」
「おいおい……そんな隙だらけで大丈夫か?」
「……」
梓、律、澪の3人は今流行りのモンスターバスターをプレイしていた。
どうしてこうなったかは、昨日、律が澪とモンバスの話をしていると梓が乗っかり、一緒にプレイしようということになり、今に至る。
モンスターバスターは携帯ゲーム機で発売されているソフトで、オンライン、オフラインを含めて最大4人プレイが出来るのがこのゲーム最大の魅力になっている。
紬は統夜同様にクラスの用事で遅れており、何故か唯だけは3人とは違う携帯ゲーム機で違うゲームをプレイしていた。
「ふっふっふっ……これで終わりだ!ってあれぇ?外した!」
「ちょ!?だから言ったのに!」
「あー!死んだぁ!!」
「おい!律!」
律の操るプレイヤーが強大なモンスターにやられてしまい、梓と律が呆れていた。
「ういーっす」
「みんな、遅れてごめんね!」
ちょうど同じタイミングでクラスの仕事のため遅れていた統夜と紬が音楽準備室に入ってきた。
「あっ、統夜先輩!」
「ねぇねぇ、みんなで何をやってるの?」
長椅子に学生鞄を置いた紬は、みんなしてゲームをしていることが気になってこう訪ねていた。
「あぁ、あたしらはモンバスをやってるんだよ。唯は違うゲームやってるけどな」
「「モンバス?」」
ゲームについて詳しくない統夜と紬は首を傾げていた。
「あぁ。モンスターバスターっていうゲームで、モンスターを狩るゲームなんだよ」
「へぇ、今時はそんなゲームも出てるんだなぁ」
統夜は魔法衣と学生鞄を長椅子に置き、ギターケースを立てかけると、澪のゲーム画面を覗き込んでしみじみと呟いていた。
『それにしても随分とリアルな画面だな。こいつは俺様も驚きだぜ』
ゲームの進歩を感じ取ったのかイルバも驚いていた。
「ところで、唯ちゃんは何をやってるの?」
「…………」
「?唯?」
「エヘヘ……ピカ太……可愛いなぁ……♪」
「「ぴ……ピカ太?」」
ゲーム画面を見てうっとりしている唯を見て、統夜と紬は困惑していた。
「あぁ、唯先輩がやってるのは「ボールモンスター」っていうゲームで、モンスターを育てて戦わせるゲームですよ」
「ちなみに、通称はボルモンな」
「「へ、へぇ……」」
ゲームに無知な統夜と紬はなかなか話についてこれなかった。
「おっ!律先輩、澪先輩!もう少しで倒せそうですよ!」
「よっしゃあ!あたしに任せろ!ってまた攻撃外した!?」
「だから無理するなって!あと1回やられたらゲームオーバーなんだから!」
「なんの!これでどうだ!」
律が操作するキャラが振るうハンマーがモンスターに直撃すると、そのモンスターは倒れた。
「よっしゃあ!倒したぜ!」
「ずいぶんとギリギリでしたけどね……」
「いい素材取れるかな?」
どうにかモンスターを倒した3人は盛り上がっていた。
「と、とりあえずお茶淹れるね」
「お、待ってました♪」
統夜は紬の紅茶を楽しみにしていたのだが……。
『統夜。残念ながら番犬所から呼び出しだぜ』
「マジかよ……。またホラー討伐の指令かな?」
紬の紅茶を楽しみにしていた統夜はガクッと肩を落としながらも帰り支度を始めた。
「統夜君、気を付けてね」
「あぁ」
統夜は早々に帰り支度を済ませ、そのまま音楽準備室を後にし、番犬所へと直行した。
ちょうどそのタイミングで梓、律、澪の協力プレイは終了し、いつの間にかいなくなっていた統夜に困惑していた。
そして唯は……。
「エヘヘ……ピカ太ぁ♪」
いまだに画面の中のモンスターを愛でていたのであった。
番犬所に到着した統夜はイレスに挨拶をした。
「来ましたね、統夜」
「はい。イレス様、指令ですか?」
「えぇ、指令といえば指令なのですが……」
「?」
イレスの歯切れの悪い言葉に統夜は首を傾げていた。
「実は、この2週間くらいで多くの人が行方不明になっているのです。恐らくはホラーの仕業だと思いますが、未だにホラーの足取りをつかむことが出来ないのです」
『なるほどな。もしホラーの仕業だとしたら結界を貼っている可能性があるからな。ホラーの仕業かどうかの調査をすればいいという訳か』
「イルバの言う通りです。これ以上被害を出す訳にはいきません。統夜、大変だとは思いますが、調査を行い、ホラーの仕業であれば、ホラーを討滅するのです」
「わかりました!すぐに出発します」
統夜はイレスに一礼すると、番犬所を後にし、行方不明事件がホラーの仕業かどうかの調査を始めたのだが……。
『……おい、統夜。快く引き受けたのはいいが、心当たりはあるのか?』
「……まったくわからん」
『まったく……そんなことだろうと思ったぜ!』
「まぁまぁ。とりあえず被害者が行方不明になった場所でも言ってみるか」
統夜はまず情報を得るために被害者が行方不明になった場所へ向かおうと提案したその時だった。
「……なぁなぁ、お前、「ヴァーチャルクエスト」って知ってる?」
「え?何それ?」
統夜の前を通り過ぎようとしていた小学生がこのような話をしていたので、統夜は思わず聞き耳をたてていた。
「最近人気が急上昇してるゲームなんだぜ!ゲームはオンラインらしいんだけど、現実と区別出来ないくらいのヴァーチャル空間でゲームできるらしいぜ!」
「へぇ、やってみたいな!」
このような話をしながら小学生たちはその場から去っていった。
「……ヴァーチャル空間ねぇ……。もしかしたらもしかするかもな……」
『統夜、さすがにそれは考え過ぎじゃないのか?』
イルバはホラーがヴァーチャル空間を操るなんて都合のいい話はないと思っていた。
「でも、調べてみる価値はあるだろ?とりあえずゲームショップに行ってみるか」
『やれやれ……それはお前が行きたいだけなんじゃないのか?』
「まぁ、それは少しはあるけど、さっきのヴァーチャルクエストとかの情報が欲しくてな」
『それなら行ってみるか?』
「あぁ」
統夜は小学生が話していたヴァーチャルクエストというゲームの情報を得るために、商店街にあるTATSUYA(タツヤ)へと向かった。
桜ヶ丘の商店街にあるTATSUYAは、ゲーム、本の販売だけではなく、CDやDVDレンタルもやっている店で、毎日多くのお客さんで賑わっていた。
「ここがTATSUYAか……ずいぶんと広いんだな」
様々なコーナーがあるためにかなり広いので、統夜は驚いて周囲をキョロキョロと見回していた。
《とりあえず、ゲームコーナーを見てみるか?》
(あぁ、そうだな)
統夜はとりあえずゲームコーナーに行ってみたのだが……。
(それにしても、ゲームと一括りに言ってもかなり種類があるんだな……)
統夜はゲーム機やゲームソフトの種類の多さに困惑していた。
魔戒騎士である統夜はゲームに触れる機会はほとんどないため、ゲームの知識もあまりないからである。
どこか適当に見てみようと考えていたその時だった。
「……あれ?統夜?」
偶然TATSUYAに来ていた律たちが統夜を見つけたので声をかけたのだが、統夜がこんな所に来ているとは思っていなかったのか驚いていた。
「おう、みんな。どうしてここに?」
「実はな、統夜がいなくなった後にムギがモンバスをやってみたいってことで来たんだよ」
「うん♪みんながやってるのを見てたらなんだか私もやりたくなっちゃって♪」
統夜が番犬所に向かった直後、紬はモンバスというゲームに興味津々だったため、部活終わりにゲームを見に行こうという話が出たのでこのTATSUYAに来たのである。
「ところで、統夜がこんなところに来るなんて珍しいけど、今日はどうしたんだ?」
「あぁ、実は気になるゲームがあってな」
「おぉ!やーくん、ついにゲームデビュー!?」
「なぁ、統夜、それってもしかしてモンバスか?」
統夜がゲームに興味があると思ったのか、唯たちは統夜の話に食いついてきた。
「いや、そのモンバス……ではないんだよ」
「?だったら何のゲームなんですか?」
「なぁ、ヴァーチャルクエストって聞いたことがあるか?」
統夜は小学生たちが話していたゲームのタイトルを律たちに聞いてみた。
「あぁ、聞いたことあるぞ。最近オンライン専用のゲームで出たんだけど、そのリアルさに出た直後から人気が急上昇してるゲームらしい」
「へぇ、オンラインってことはネットだけってことか……」
「はい。ヴァーチャルクエストならそこに情報が載ってますよ」
梓が指差す方向にヴァーチャルクエストのパンフレットが置いてあったので、統夜はそのパンフレットを手に取り、目を通した。
「ヴァーチャルクエスト……オンラインでリアルな冒険をあなたにお届けします……か……」
統夜は最初のページに書いてあったキャッチコピーに目を通していた。
《確かにリアルな冒険ってところはキナ臭いかもしれないな》
(イルバもそう思ったか。俺もそこが引っかかってたんだよな)
統夜はヴァーチャルクエストの話を聞いた時からこのゲームはホラーが作り出したものではないか?と推測していた。
(このゲームを作ったのは……「シグルド」?名前だけは格好いい会社だな)
このヴァーチャルクエストを制作したのは「シグルド」という小さなゲーム会社だった。
(シグルドか……。確信はないけど、行ってみるか)
統夜はパンフレットを読みながらその会社に直接行ってみようと考えていた。
(……へぇ、コントローラーは脳波型のコントローラーなのか……。ずいぶんと最先端なんだな……)
このヴァーチャルクエストはPC専用のオンラインゲームなのだが、コントローラーは両手を使うものではなく、ヘッドギアのようなもので、脳内に直接ゲームの画面を送り込むといった、最先端のものであった。
「……あっ、このコントローラー凄いですよね!なんか時代を先取りしてるみたいですし!」
一緒にパンフレットを見ていた梓はコントローラーに食いついていた。
「確かに凄いよな」
《まぁ、これがホラーの仕業でなければ純粋に凄いよな》
「……俺もそう思うよ」
脳波を使ったコントローラーなんて近未来の話だと思っていた統夜は、このゲームがホラーが作り出したものではないかという疑惑がどんどん強くなっていた。
パンフレットを全部読み終わったその時、その疑惑が確信に変わる会話が聞こえてきた。
「なぁなぁ、知ってるか?ヴァーチャルクエストの噂」
「何だよ、噂って」
統夜たちの近くでヴァーチャルクエストのパンフレットを見ていた中学生の男子2人組がこのように話を切り出していた。
「何か最近行方不明になってる奴が増えてるだろ?そいつらって全員ヴァーチャルクエストをプレイしてた奴ららしいよ」
「何だよ、それ。それがマジだったらこのゲーム超怖いじゃん!」
「!」
統夜は偶然この話を聞いた時に、疑惑が確信へと変わった。
(やっぱりな……。脳波型コントローラー……行方不明になったプレイヤー……。あのゲームはやはりホラーが作ったゲームだったんだな)
統夜はヴァーチャルクエストがホラーが作り出したゲームだとわかった時、誰がホラーなのか見当がついていた。
「……なぁ、その話、詳しく聞かせてくれないか?」
「「え?」」
統夜はヴァーチャルクエストの噂を話していた中学生の男子2人に声をかけ、情報収集をしていた。
2人は突然声をかけられたことに戸惑いながらも先ほどの噂の話を統夜にしてくれた。
「ありがとう!急にごめんな」
統夜は情報を提供してくれた中学生の男子2人に礼を言うと、2人はそそくさとその場から立ち去っていった。
「……?統夜先輩?どうしたんですか?」
「さっき言ってたヴァーチャルクエストだけどな、あれはホラーが作り出したゲームみたいなんだ」
「えっ!?そうなの!?」
「まぁ、確かに時代を先取りし過ぎてるとは思ってたけど……」
「ホラーって、そんなこともするのね」
『まぁ、憑依した人間がゲームを作ってるやつならそれもあり得ることだからな』
「なるほど……」
「まぁ、そういう訳だから俺はこのゲームを作った会社に行ってみるつもりだ。本当にホラーなら斬らなきゃいけないからな」
統夜の顔は穏やかな表情ではなく、魔戒騎士の顔になっていた。
「統夜君、無理だけはしないでね」
「あぁ、俺は必ず戻る。信じてくれよ」
統夜は唯たちを安心させるためにこう告げると、TATSUYAを後にして、ヴァーチャルクエストを制作したシグルドという会社へ向かった。
※※※
その頃、ゲーム制作会社シグルドでは、ゲームについての問い合わせや専用コントローラーの販売など、忙しく仕事をしていた。
「……それにしても凄いですね、ヴァーチャルクエスト。まだ発売して2週間ぐらいしか経ってないのに大ヒットですよ!」
シグルドの社員である20代前半くらいの男はヴァーチャルクエストをべた褒めしていた。
「まぁな。このゲームは俺の最高傑作だよ。モンバスとは臨場感が違うんだよ」
明宏は自分が開発したヴァーチャルクエストは人気作であるモンスターバスターより出来が良いと自画自賛していた。
「まだプレイヤー自体は少ないが、これからこのゲームは伸びる!モンバスを超えるのも時間の問題だよ」
「そうなったら最高ですね!そしたら次回作も考えないといけないですね」
「そうだな、次回作はこれからぼちぼち考えるよ」
明宏は次回作の構想を考えながら怪しげな笑みを浮かべていた。
その時だった。
「すいませーん!失礼します!」
シグルドのオフィスに赤いコートを着た少年が入ってきた。
「あっ、はーい!」
男がその少年……統夜に駆け寄り、対応しようとしていた。
「あの、ご用件は?」
「あのっ、河上明宏社長にお会いしたくて」
「申し訳ありません。社長はアポイントが取れてないお客様とはお会いになられないんですよ」
「そっかぁ……そりゃ残念だな。せっかくゲームのアイデアを持ってきたっていうのに……」
「え?」
自分の構想にそれだけ自信があるのか、統夜は真っ直ぐな瞳をしており、男は困惑していた。
すると、明宏がこちらに歩み寄ってきた。
「どうぞ、お入りください」
明宏は統夜を招き入れ、オフィスの一角にある応接室に案内した。
統夜は椅子に腰をおろすと、自分の考えたアイデアを明宏に伝えた。
「……金の騎士と銀の騎士のゲームですか?」
「そうです。魔界から出てきた悪魔を金の騎士と銀の騎士が退治するというスタイリッシュアクションゲームです!おびただしい魔物をスタイリッシュな動きで蹴ちらす様はプレイヤーたちの快感になるでしょう」
統夜が提供したアイデアは、まるで魔戒騎士がホラーを退治する様をゲーム化したようなものだった。
「あいにく私はその手の話が嫌いでしてね」
「それは、そのゲームのラスボスは自分だからか?」
「はぁ?」
統夜の言葉に明宏は唖然とするが、統夜は魔法衣の懐から魔導ライターを取り出し、火をつけた。
すると、明宏の瞳から不気味な文字のようなものが浮かび上がってきた。
それは、明宏がホラーであるという証である。
「やはり……魔戒騎士か……」
明宏はゆっくりと立ち上がり、統夜も立ち上がり、明宏を睨みつけた。
「貴様、俺が魔戒騎士だと知ってここに誘い込んだな」
『統夜。どうやらこのビルには結界が貼ってあるぜ』
「道理で番犬所が気付けないハズだよ」
統夜は番犬所が今までこの会社にホラーがいることに気付けなかったのは結界のせいであると推測していた。
「遅かれ早かれ魔戒騎士には嗅ぎ付けられると思っていたからな。だったら、最高のゲームでおもてなしをしようと思った訳だ」
「面白いゲーム……だと?」
「昔ながらのゲームも捨てがたいが、やはりゲームはリアルであるに限る。中途半端なCGは辟易とするんでな」
「そうか?俺はゲームのことはわからんが、お前の考えが一人よがりだってことはわかるぜ」
「黙れ!ゲームを知らない貴様に何がわかる!」
「そんなことは関係ないね。俺はお前を斬るだけだ」
統夜は魔戒剣を抜くと、明宏を睨みつけながら構えていた。
「まぁまぁ、慌てるなよ、魔戒騎士。いったろ?最高のゲームでもてなすって」
明宏はこう言うと、指をパチン!と鳴らした。
すると、その場の風景は変化し、ビルの一室から草原へ変わっていた。
「……イルバ……ここはもしかして……」
『あぁ。ここはホラーが作り出した空間だ。そのヴァーチャルクエストとやらもこんな感じなんだろうぜ』
統夜はコントローラーを介さずに、ホラーの力でヴァーチャルクエストの空間に誘い込まれた。
__どうだ?魔戒騎士!これほどのリアルな映像は他じゃ再現出来ないぞ!
姿を消した明宏は天の声としてこう統夜に告げていた。
「どうもこうもないさ。さて、せっかくだ!お前のそのゲームとやらを楽しませてもらおうか!」
統夜はホラーを討伐するついでに、ホラーが作り出したゲームを楽しむつもりでいた。
『やれやれ……緊張感のない奴だな』
イルバはそんな統夜に呆れていた。
__いいだろう!まずは小手調べからいこうか!
明宏がこう宣言すると、統夜の目の前に4体のモンスターが現れた。
一体目は水滴型の体にグミ状の性質を持った青い怪物だった。
このモンスターは、有名なRPGゲームである「ドラグーンクエスト」に登場するゲルスライムというモンスターそっくりだった。
二体目は、唯もハマっている人気ゲーム「ボールモンスター(ボルモン)」に登場する黄色く愛らしい電気ネズミことピカテルと呼ばれるモンスターそっくりだった。
三体目は、今や世界的人気を得ている「モンスターバスター」に登場する恐竜のような姿をしているレクボスというモンスターそっくりだった。
四体目は、四つ足の巨大なモンスターで、この四体の中では一番強そうだった。
「……なんかモンスターに一貫性が無さすぎだろ……。これだけパクリをする奴がゲームを語るのか……」
ゲームのことが詳しくない統夜でも四体のモンスターに一貫性がなく、作品もバラバラであることはすぐに理解出来た。
__そんな口はこいつらを倒してから言うんだな。
「やれやれ……仕方ないか」
統夜は魔戒剣を構えると、モンスターたちを睨みつけた。
そして、四体のモンスターは、一斉に統夜に襲いかかってきた。
統夜はいの一番に突進してきたゲルスライムそっくりのモンスターの攻撃をあっさりとかわすと、一撃で葬り去った。
「……弱っ!」
ゲルスライムはドラグーンクエストの中でも最弱モンスターであり、そこが再現されている弱さに統夜は拍子抜けしていた。
『統夜、油断するな!次が来るぞ!』
ピカテルそっくりのモンスターが体から電気を放って電撃攻撃をしてきたので、統夜がそれをかわすと、レクボスそっくりのモンスターが突進してきた。
「おっと!」
統夜はまるでとび箱を飛ぶかのようにレクボスそっくりのモンスターの突進をかわすと、魔戒剣を一閃して、一撃で葬り去った。
その後迫り来る巨大なモンスターの攻撃をジャンプしてかわすと、統夜はピカテルそっくりのモンスターに魔戒剣を突きつけた。
すると……。
「ぴっ……ピカァ……」
ピカテルそっくりのモンスターが瞳をうるうるとさせていたので、統夜は思わず攻撃をやめてしまった。
「うっ……うぐっ……!」
『おいおい、統夜。奴は所詮偽物のモンスターだぜ』
「そ、それはわかってるんだけど……」
統夜が攻撃をためらっていると、ピカテルそっくりのモンスターは至近距離から電撃を放ってきた。
「やべっ!」
統夜は咄嗟に攻撃をかわすと、反射的に反撃でピカテルそっくりのモンスターを斬り裂いた。
「あっ」
統夜が気付いた時にはもう遅く、ピカテルそっくりのモンスターは消滅した。
(危ない危ない。思ったより可愛かったから油断しちまったぜ……。そういえば唯がゲームで可愛がってたのもあいつだよな。その気持ちがわかる気がするよ)
統夜の言う通り、唯がボルモンをプレイ中に愛でていたのは、ピカテルであり、唯はピカ太と名前をつけて可愛がっていた。
そのことを思い出した統夜は苦笑いをしていた。
すると、巨大なモンスターが再び突進してきたので、統夜はかわす素振りを見せずに、魔戒剣を一閃して迎え撃った。
巨大なモンスターは統夜にぶつかる前に体が真っ二つになってしまい、消滅した。
「どうした!もう終わりじゃないよな?」
__何の!これはまだ小手調べ。本番はこれからだ!
明宏は再びパチン!と指を鳴らすと、再び風景が変化し、草原から闘技場のような風景に変化した。
すると、すぐにとある光景が統夜の目に映った。
「……!これは……!」
統夜の目に映ったのは、息絶えている人間たちの山だった。
『どうやらここのモンスターに敗れたようだな。……統夜、残念だがこいつらはもう助からない。その魂はすでにあいつに喰われたようだ』
「…………」
統夜は何も語らなかったが、怒りを露わにしていた。
『……!統夜!何か来るぞ!』
イルバがこう警告していたので、統夜が魔戒剣を構えると、現れたのはホラーとは違う悪魔のような怪物で、その真紅の出で立ちは、多くの者を葬り去った返り血を浴びてきたようにも見えた。
この悪魔は「レッドイビル」と呼ばれるとあるゲームで多くのプレイヤーを苦しめてきたモンスターに似ていた。
「こいつは……ホラーか?」
『いや、どうやらこいつはホラーではないようだ。こいつは何かのゲームに出てきたモンスターのそっくりなんじゃないのか?』
__こいつは実際のゲームでもこの世界でも多くのプレイヤーを苦しめてきたモンスターだ。貴様に倒せるかな?
「倒すさ……!倒してお前を斬るためにな!」
こう言い放った統夜の声には怒りが含まれていた。
__さぁ!ショータイムだ!
明宏がこう宣言すると、レッドイビルそっくりのモンスターが統夜に襲いかかってきた。
「……!っと」
統夜はかろうじて攻撃をかわすが、レッドイビルそっくりのモンスターのスピードはかなりのものだった。
「へぇ……!思ったより速いじゃないか……!そうじゃないと面白くないからな!」
統夜はレッドイビルそっくりのモンスターのスピードに驚きながらも、ワクワクしていた。
『統夜!また来るぞ!』
「そうだな……だけど」
統夜はギリギリまで相手を引き付けると、絶妙なタイミングでジャンプして攻撃をかわすと、そのまま魔戒剣を一閃し、レッドイビルそっくりのモンスターを真っ二つに斬り裂いた。
「……そんな動きじゃ俺を捉えられないぜ!」
レッドイビルそっくりのモンスターを斬り裂いた統夜はこう言い放つと、何故かドヤ顔をしていた。
__ほぉ、やるじゃないですか。さすがは魔戒騎士だ。多くのプレイヤーが挫折したこのボスを難なく倒すとは。
「こんなもの、序の口だ。それよりもボスはもう終わりか?だとしたらもうエンディングか?」
__まぁまぁ、慌てるな!本当ならこのゲームのストーリーはまだまだあるが、これはとっておきだ!
明宏は再び指をパチン!と鳴らすと、再び風景は変わり、闘技場のようなところから、城の中へと変わった。
しかも、この場所は禍々しい空気に満ちており、まるで魔王の城のような雰囲気を出している広い部屋だった。
「……なるほど。一気にラスボスまでご案内ってことか。これは好都合だ」
統夜はこの場所の雰囲気からここがラスボスが出てくる場所と推測していた。
__その通り!まだここまで到達したプレイヤーはいないがな。貴様を葬れるのはこいつしかいないようだ。
「へぇ、そしたら俺がエンディング到達第1号になるって訳か。光栄だね!」
統夜は皮肉を込めてこう言い放った。
__減らず口はそれまでだ。貴様にこいつを倒すことは出来るかな?
明宏がこう宣言をすると、統夜の目の前に巨大なドラゴンが現れた。
「へぇ……ラスボスがドラゴンとかリアルを追求する割にはずいぶんとベタだな……。そんな貧相な発想でよくゲーム会社なんて立ち上げたもんだよ」
明宏が作り出したヴァーチャルクエストはリアルは圧倒的ではあるが、展開や登場モンスターがあまりにベタ過ぎると統夜は感じていた。
__黙れ!貴様はこのキングドラゴンに倒されて俺の餌となるんだ!
「餌になる気はないね!俺はお前を斬らなきゃいけないからな」
統夜は魔戒剣を構えると、目の前のドラゴン……キングドラゴンを睨みつけた。
__行け!そいつを殺せ!!
明宏の指示で、キングドラゴンは動き始めた。
キングドラゴンは先制攻撃と言わんばかりに口から高温の炎を吐き出した。
統夜は難なくそれをかわすが、その熱さは伝わってきた。
「熱っ!こりゃ、これをまともに受けたらひとたまりもなさそうだな」
統夜はおどけながらこう言っており、まだまだ余裕があることを物語っていた。
統夜は炎の息を吐き終わったタイミングでキングドラゴンめがけて突撃するが、キングドラゴンはすかさず尻尾による攻撃を繰り出して来たので、統夜は攻撃をかわし、反撃を断念した。
「へぇ……。思ったよりも隙がないな……!こりゃ少しだけ苦労しそうだぜ」
このゲームのラスボスと言うだけのことがあると統夜は心の中で思っていた。
このゲームは発売して2週間くらいなのだが、まだクリアした者はいなかった。
先ほど統夜が倒したレッドイビルそっくりのモンスターを倒した者は何人かはいたのだが、その何人かは未だラスボスまではたどり着いていなかった。
キングドラゴンは再び炎の息を吐くと、統夜はそれをかわしながら反撃のチャンスを見計らっていた。
(くそっ……!面倒くせぇ!このままじゃジリ貧だ。鎧を召還するか?いや、それは今より状況が悪くなったらだな)
統夜は炎の息をかわしながら鎧の召還も考えていたが、今は様子を見ることにした。
統夜は何度か反撃を試みるが、尻尾による攻撃や牙による攻撃が飛んできたので、かわすしかなかった。
(くそっ!こうなったら、あのうざったい尻尾を叩き斬る!)
統夜はキングドラゴンの本体ではなく、尻尾に狙いを定めた。
キングドラゴンの炎の息をかわし、尻尾による攻撃もジャンプでかわし、尻尾に狙いを定めた。
「そこだ!」
統夜はキングドラゴンの尻尾を切り裂くと、痛みのあまりキングドラゴンは断末魔をあげていた。
「……これで決める!」
尻尾を斬られて隙が出来たのを見逃さなかった統夜は魔戒剣を一閃し、キングドラゴンを真っ二つに斬り裂いて葬り去った。
「……よしっ!ラスボス撃破♪」
統夜は鎧を召還することなく、キングドラゴンを撃破したのであった。
「おい!ラスボスは倒したぞ!さっさと姿を見せたらどうだ?」
__よかろう。俺自らが真のラスボスとなり、貴様を葬ってくれる!
明宏が指をパチン!と鳴らすと、再び風景が変化した。
魔王の城から、異次元空間へと変化していた。
「……なるほど、真のラスボス戦にはピッタリだな」
統夜の目の前に明宏が現れた。
「さすがは魔戒騎士だ。私のゲームを難なくクリアするとはな」
「お前のゲームが簡単過ぎるんだよ。展開もベタだったしな。そんなんでゲームを作ろうだなんて、笑わせるぜ!」
統夜は余裕の表情で明宏を挑発していた。
「黙れ!この俺が貴様を葬ってやる!」
怒りに満ちた明宏の体は変化し、ホラーの姿へとなった。
『統夜。こいつはホラー、クラフトリィ。自分の考えたものを作り上げることの出来るちょっと変わったホラーだ』
イルバの言う通り、このホラー、クラフトリィは、自分の考えたものを作り上げることが出来るという力を持っている。
このヴァーチャルクエストの空間もクラフトリィの力で作り上げた空間で、最先端に見えるコントローラーもクラフトリィが作り上げたものであった。
「なるほど……。この世界はお前が作り上げたって訳だな。……だったら尚更お前の発想の貧相さに驚くよ」
「黙れ!貴様のその減らず口、叩けなくしてやる!」
「そうはさせるかよ!……貴様の陰我、俺が断ち切る!」
統夜はクラフトリィに向かってこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
そこから放たれる光に包まれると、統夜は奏狼の鎧を身に纏った。
「貴様に見せてやる……!私の力を……!」
クラフトリィは自らの力でかなりの数のモンスターを作り出した。
「ほぉ、結局は数にものを言わせるか。ここまで単純だともう呆れるな」
「いくら魔戒騎士でも、これだけの数は倒せまい!……かかれ!」
クラフトリィの指示で、モンスターたちは一斉に統夜に襲いかかってきた。
「…………」
統夜は反撃や迎撃の準備をすることなく、何故かその場に立ち尽くしていた。
そしてモンスターたちが一斉に統夜に押し寄せていった。
「フハハハ!!何も抵抗しないとは……これだけのモンスターに恐れをなしたか!」
クラフトリィは一切抵抗しない統夜を見て高笑いをしていた。
しかし……。
統夜に一斉に押し寄せたモンスターたちの間に光が放たれると、統夜が姿を現し、モンスターたちは一斉に消滅した。
「な……なんだと!?あれだけのモンスター相手に無傷だと!?」
クラフトリィはかなりの数のモンスターをけしかけたにも関わらず、統夜は無傷でモンスターを全滅させたことに驚いていた。
「あんなモンスターなんていくら数がいようと俺の敵じゃない!」
「く……くそっ!」
『残念だったな!そんな攻撃じゃ、ソウルメタルに傷1つつけることは出来ないぜ!』
「おのれ……!何がモンバスだ!何がボルモンだ!何がマレオブラザーだ!そんなゲームよりも俺が作ったゲームの方が断然面白い!何故誰も俺のゲームを認めない!俺のゲームこそ、やがて世界も認めるゲームとなるというのに!」
『おいおい、こいつ、ずいぶんと熱くなってやがるぜ!』
「俺はゲームのことは詳しくないが、他を認めないお前の傲慢さが売れない理由なんじゃないのか?」
「黙れ!ゲームを知らぬ小僧がゲームを語るな!!」
「お前のその傲慢さと強欲が、多くの人をこの世界に迷い込ませたんだ!……その陰我、俺が断ち切る!」
「ほざけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
統夜の言葉に激昂したクラフトリィは統夜めがけて突撃した。
統夜は皇輝剣の切っ先に赤い魔導火の炎を纏わせて、烈火炎装の状態となった。
統夜は迫り来るクラフトリィに向かって皇輝剣を一閃し、クラフトリィは真っ二つに切り裂かれた。
「そ……そんな馬鹿な……!俺は……最高の……ゲームを……作らねば……ならんのに……!」
クラフトリィの姿から明宏の姿に戻ると、そう言葉を残し、消滅した。
クラフトリィが消滅したことを確認した統夜は鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を青い鞘に納めた。
クラフトリィが討滅されたことにより、クラフトリィが作り出した空間は崩壊し、統夜はゲーム会社「シグルド」のオフィスに戻ってきていた。
「ふぅ……」
『どうにか、戻ってこられたようだな』
「あぁ。……とりあえずホラーは討滅したことだし、帰ろうぜ、イルバ」
『そうだな』
統夜はシグルドのオフィスを後にすると、そのまま帰路についた。
※※※
翌日の放課後、統夜はこの日は教師から呼び出しを受けて遅くなっていた。
早々と集合した唯たちはこの日もゲームで遊んでいた。
「……だーかーら!律先輩は迂闊にハンマーをブンブンと振り回し過ぎですって!」
「何おう!あたしのハンマーさばきをなめるなよ!」
「おいおい、そこは慎重に頼むぞ、律!」
「りっちゃん!援護するね!」
なんと今回は紬までゲームに参加していた。
「エヘヘ……。ピカ太ぁ♪今日も可愛いよぉ♪」
唯は変わらずボルモンをプレイ中で、国民的電気ネズミことピカテルを愛でていた。
「おーっす!遅くなった!」
教師から呼び出しを受けていた統夜が音楽準備室に入ってきた。
「あっ、統夜先輩!」
「お前ら、またゲームか……」
『やれやれ。ここはいつからゲーム部に変わったんだ?』
「むぅ……!れ、練習だってちゃんとするからな!」
「『どうだか……』」
律の苦し紛れの言葉に統夜とイルバが呆れていた。
「ねぇねぇ、統夜君!見て見て!」
紬は統夜に自分のゲーム機を見せびらかしていた。
「む、ムギ!?お前も買ったのか!?」
「うん♪統夜君と別れた後に買ったのぉ♪私もみんなとゲームがしたかったから♪」
「アハハ……そ、そうなんだな……」
統夜は紬までゲームを始めたことを知り、苦笑いをしていた。
「ねぇねぇ、統夜君も一緒にゲームやろうよ♪」
「おっ、それはいいな!統夜もやろうよ!」
「おっ、俺はいいよ!」
「えぇ!?何でだよぉ!」
統夜がゲームをやることに反対したことに律はぷぅっと頬を膨らませていた。
「もう、ゲームはこりごりなんだよ」
「こりごりって何かあったのか?」
「ま、まぁな……」
「まぁ、その話は後でゆっくり聞きましょ♪」
紬たちは今行っているクエストをクリアすると、ティータイムの準備を行い、そのままティータイムになった。
統夜はティータイムの時に昨日のホラーの話をすると、この日は終始その話で盛り上がったのであった。
……続く。
__次回予告__
『季節が冬になってきたな。まぁ、俺様は冬だろうが関係はないがな。次回、「冬日」。この寒い日、お前さんはどう過ごすんだ?』
以上、ゲーム回でした。
今回苦労したのは、いかに本家の名前を出さないかというところでした(笑)
今回、色々なもののそっくりさんが出てきましたが、いくつ出てきたでしょうか?ちなみに僕は数えてないのでわからないです(笑)
今回のホラーは自分の好きな世界に引きずり込むというところは「魔戒ノ花」に出てきたイルギシンと似てるところはあると思います。
さて、次回は再びけいおんメインの回になります。
次回は日常描写がメインになってくると思います。
それでは、次回をお楽しみに!