牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第31話です。

今回も学園祭の話ということで、学園祭当日から始まります。

この話はアニメ「けいおん!」一期の最終回ということでいい感じに盛り上げようと頑張りました。

学園祭当日となったが、唯は風邪を治すことは出来たのか?そして、学園祭ライブは一体どうなるのか?

それでは、第31話をどうぞ!




第31話 「学祭 後編」

月日は流れ、学園祭当日となった。

 

桜ヶ丘高校の学園祭はこの桜ヶ丘の中でも大きな規模の学園祭であり、多くの人で賑わっていた。

 

そんな中、黒いコートを着た青年が学園祭を満喫していた。

 

「これが高校の学園祭ってやつか……」

 

その青年……涼邑零は統夜から学園祭の話を聞き、模擬店の食べ物目当てで来たのである。

 

それを物語るかのように、零は模擬店で購入したクレープやベビーカステラ。そしてチョコバナナなどを手に持ち、それらを頬張りながら歩いていた。

 

《もぉ、ゼロったら……甘い物は控えなさいって言ってるのに……》

 

(わかってるって♪これでもいつもよりは遠慮してるんだぜ)

 

零はその店のスイーツを全種類注文するなど、甘党故にかなり無茶な注文をしたりもするが、今回は学園祭とのことで、注文は控えめにしている。

 

それでも各店で2種類から3種類くらいは注文していた。

 

当然その注文を聞いた生徒たちが唖然としたりもしていた。

 

しばらく模擬店を満喫していると……。

 

「……おい、零」

 

白いコートを着た青年が零に声をかけていた。

 

「おう、鋼牙。それに、カオルちゃんも来たんだな♪」

 

白いコートの男である冴島鋼牙は、黄金騎士牙狼の称号を持つ魔戒騎士であり、統夜とは前々から面識があった。

 

その鋼牙と共に行動していたのが、鋼牙の妻である御月カオルである。

 

カオルは桜ヶ丘高校の卒業生であることから学園祭にはずっと行きたいと思っていたのだが、画家や絵本作家としての仕事をが忙しく行く機会がなかなかなかった。

 

今回はどうにか行く機会を得たので、鋼牙とともに学園祭に来たのであった。

 

「私、ずっと楽しみにしてたからねぇ♪この学校の卒業生だし♪」

 

「そういえばそんなこと言ってたな」

 

鋼牙もカオルからその話はよく聞かされていた。

 

「ところで零くん、さっそく満喫してるね♪」

 

「まぁね♪これでも全然足りないくらいだぜ♪」

 

「零、お前は相変わらずだな……」

 

鋼牙は零が甘党であることはよく知っていたので、そんな零に呆れていた。

 

「そういえば統夜のライブっていつからだっけ?」

 

「んとねぇ……あっ!13時15分からだって!」

 

カオルは学園祭のパンフレットを取り出し、予定を確認していた。

 

「1時過ぎってことか」

 

「ねぇ、零くん。統夜君のライブが始まるまで一緒に学園祭を見て回ろうよ♪」

 

「もちろん♪まぁ、鋼牙が良ければだけどな」

 

「……別に構わん」

 

「やったぁ♪それじゃあ鋼牙、零くん、行こっ♪」

 

こうして鋼牙、零、カオルの3人はライブの時間まで模擬店や展示物を見て回っていた。

 

 

 

 

 

 

ちょうどその頃、統夜のクラスである2年3組ではお化け屋敷が行われていた。

 

その会場に1人の少女が向かっていた。

 

「……こんにちはー」

 

「いらっしゃい……って!イレスちゃん!?」

 

統夜のクラスメイトはその少女……イレスを見て驚いていた。

 

イレスは以前留学生として1週間だけ統夜のクラスに潜り込んでいた。

 

統夜のクラスメイトたちはイレスを歓迎し、1週間の留学生活は実りあるものとなった。

 

「はいっ♪お久しぶりです♪」

 

「久しぶり!っていうかいつ日本に来たの!?学校は!?」

 

「じ、実は今日が学園祭だと統夜から聞いたのでイギリスから飛んで来たんです♪皆さんにも会いたかったですし♪」

 

イレスは嘘を交えてこう説明した。

 

「え!?そうなんだ。でも、そう言ってくれて嬉しいな♪」

 

「ねぇねぇ、一体どうしたの?」

 

お化け屋敷の会場となっている教室から数人が出てきた。

 

「あれ!?イレスちゃんじゃん!」

 

「久しぶり!!会えるなんて思わなかったよ!」

 

「えっ、何々?もしかして今日のために日本に?」

 

「えぇ、まぁ……」

 

クラスメイトたちがイレスに詰め寄って来たので、イレスは苦笑いをしていた。

 

「イレスちゃんって、もしかして統夜君のライブを見に来たの?」

 

「そうですね。それもありますが、学園祭というものを見てみたかったんです♪」

 

イレスはこう答えたのだが、これは嘘偽りのない、イレスの本心であった。

 

「そっかぁ♪ねぇねぇ、軽音部のライブまでまだ時間あるし、良かったら私たちの手伝いをしてよ♪」

 

「え?で、でも……」

 

「いいからいいから♪」

 

イレスは半ば強引にお化け屋敷の手伝いをすることになり、1時間ほどお化け屋敷の手伝いをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

統夜たちは音楽準備室で待機をしており、唯を待っていた。

 

この時点で機材は全て講堂に運び終えていたので、唯が来ればライブの準備は完璧であった。

 

「……唯ちゃん……来ないね……」

 

紬は心配そうな表情を浮かべながらボソッと呟いた。

 

「そうだな、携帯は?」

 

「必ず間に合わせるってメールは来てたけど……」

 

「12時半か……」

 

『確かライブは13時15分からだったな?そろそろ来ないとさすがにやばそうだな』

 

イルバの言う通りライブが始まるのは13時15分からであり、13時には講堂に入っていなければならない。

 

そろそろ唯が姿を見せなければ唯なしでライブを行うことも考えなければならない。

 

「……おさらいしておくか?唯抜きの演奏も」

 

律はスティックで鞄を叩きながらこう提案をした。

 

『まぁ、この状況だ。それもやむなしかもしれないな』

 

「確かにそうかもな……」

 

律の提案にイルバが賛同し、澪も賛同していた。

 

「嫌です!やっぱり嫌です!このまま唯先輩抜きで演奏しても意味ないです!」

 

「確かにな。俺は唯は必ず来るって信じてる。だから唯抜きの演奏をおさらいしたって時間の無駄だ」

 

『そうは言っても最悪の状況は考えた方がいいんじゃないか?』

 

「イルバの言う通りだ。統夜の言うこともわかるけど、このままじゃ……」

 

イルバが統夜に指摘をし、澪が不安げに統夜に反論すると、統夜はため息をついていた。

 

「はぁ……。なぁ、澪。お前は唯が来るって信じてないんだな」

 

「っ!そんな訳ないだろ!!」

 

澪の剣幕に不穏な空気が漂うが、統夜はまったく気にする素振りはせず、笑みを浮かべていた。

 

「ふっ……。それでいい」

 

「統夜、お前……」

 

「信じてるならどっしりと構えて待ってればいい。余計な不安は無駄でしかないからな」

 

統夜は唯が来ると信じているので、不安がる様子を一切見せなかった。

 

「……そうだな。統夜の言う通りだと思うよ」

 

唯が来ないのでは?と不安になっていた澪は統夜の自信に溢れた表情を見て、唯は来ると信じようと改めて思った。

 

それは澪だけではなく、他のメンバーも同様であった。

 

その時、音楽準備室の扉が開き、全員の視線が扉に集中していた。

 

音楽準備室に入ってきたのは和だった。

 

「どうしたの?……ステージは10分押しだけど、予定通り講堂に入って」

 

「あぁ、わかった」

 

「……全員揃っているわよね?」

 

和は音楽準備室全体を見回すと、こう言っていた。

 

「……軽音部。出演者全員準備完了……っと」

 

もちろん全員揃っていなかったのだが、和は準備が完了していると書類に書き込んでいた。

 

「……和?」

 

「和も唯は必ず来るって信じてるんだな」

 

「えぇ。……実は昔ね、こんなことがあったの」

 

こう言って和が語り始めたのは昔の話だった。

 

唯と和は幼稚園からの付き合いなのだが、これはまだ2人が幼稚園の頃の話である。

 

唯は川でのザリガニ釣りに夢中になっていた。

 

バケツがザリガニで一杯になると唯はバケツを何処かへと運んでいた。

 

すると再び戻り、ザリガニ釣りを続け、再びバケツがザリガニで一杯になると、再びバケツを何処かへと運んだ。

 

それを日が暮れるまで繰り返し、和は帰宅してテレビを見ていたのだが、唯がバケツを持って和の家を訪れていた。

 

唯は何処かへと移動すると再び和の家から出て行ったのだが、気になった和はお風呂場を覗き込んだ。

 

すると……。

 

風呂桶におびただしい数のザリガニがいたのであった。

 

「ひぃっ!!」

 

その話を聞いた澪は顔を真っ青にして怯えていた。

 

「なんだそりゃ……」

 

「昔から変な人だったんですね……」

 

律と梓は唯の奇行に呆れていた。

 

「でも、何で今その話を?」

 

「和、唯は昔も今も好きなことにはそれだけに夢中になるってことなんだろ?」

 

「えぇ、そうよ。だから、風邪のことなんか忘れちゃうわ。だから……」

 

和がしみじみと話をしていたその時、再び音楽準備室の扉が開いた。

 

「ちょりーっす」

 

中に入ってきたのはさわ子だった。

 

「空気読め!」

 

「えぇ?」

 

しんみりとした空気をぶち壊したさわ子に律が抗議し、さわ子は驚いていた。

 

「……っていうか今まで何やってたんだよぉ!みんな大変だったのに!」

 

「あら、もちろんボーッと過ごしてた訳じゃないわよ。寒さのことを考えて、あの浴衣の防寒バージョンを作っていたのです!」

 

(((((そのやる気を他に回して欲しい……)))))

 

和を除く5人が心の中でツッコミを入れていた。

 

「そして、これがその衣装です!」

 

さわ子の紹介で音楽準備室に入ってきたのは……。

 

「やっほー、みんな!久しぶりだねぇ♪」

 

さわ子お手製の衣装を着たカオルだった。

 

「「「「「か……カオルさん!?」」」」」

 

衣装を着た意外な人物に統夜たちは驚くが、和だけは首を傾げていた。

 

「それにしても知らなかったよ。さわ子にこんな趣味があったなんて♪」

 

「まぁ、言ってなかったからね♪」

 

カオルは同級生の意外な趣味に驚きながらも普段着ることのない衣装を楽しんでいた。

 

そして、カオルと行動していた鋼牙と零。さらにはレオも音楽準備室に顔を出していた。

 

「よう、みんな。久しぶり♪」

 

「!!?れ、零さん!?それに、鋼牙さんとレオさんも!?」

 

鋼牙、零、レオの3人も入って来たことに統夜は驚いていた。

 

それは律たちも同様であり、目をパチクリとさせていた。

 

「……久しぶりだな、統夜」

 

「統夜君、夏休み以来ですね。そして皆さん、お久しぶりです♪」

 

「み、みなさん学園祭に来てくれたんですね!」

 

「おう!模擬店はたっぷり満喫してきたぜ♪」

 

(アハハ……。スイーツをやってた店はかなり繁盛しただろうな……)

 

模擬店の繁盛ぶりを想像した統夜は苦笑いをしていた。

 

「ところで、カオルさんは何でその衣装を着ているんですか?」

 

「あぁ、実はね。鋼牙と零くんとで模擬店を回ってたらレオ君に会って、その後さわ子に会ったの」

 

「それで、私が作った衣装を着てみない?って聞いたら即OKだったから、着替えてここに来たって訳」

 

カオルやさわ子の言う通り、鋼牙、零、カオルの3人は模擬店を見ていたのだが、途中でレオと合流した。

 

その直後にさわ子と出会い、さわ子が軽音部の衣装を作っていると話をして、着てみないかと提案したらカオルは即OKしたので、空き教室で衣装を着替え、鋼牙たちを連れてここまで来たのである。

 

「それに、この衣装はそれだけじゃないわよ!」

 

さわ子の紹介でもう1人が音楽準備室に入ってきた。

 

「し、失礼しまーす……」

 

その正体は、完全に風邪を治した唯であり、統夜たちは安堵の表情をしていた。

 

「ゆ、唯!」

 

「来てたなら真っ先にここに来い!」

 

律と澪が唯に詰め寄っていた。

 

「みんな……ごめんなさい……」

 

唯は申し訳なさそうにしながら梓の方を見ると、梓は目に涙を溜めて黙り込んでいた。

 

「……あずにゃん?」

 

「最低です!……みんなこんなに心配してたのに……。最低です!」

 

梓は俯きながらこう言うと、そっぽを向いてしまった。

 

「唯、後でちゃんと埋め合わせをしておけよ。梓が一番心配してたんだから」

 

統夜が唯にこう伝えると、唯の顔がぱぁっと明るくなった?

 

「……あずにゃん!」

 

「まったくダメ過ぎです!だいたい、風邪をひいた時に……」

 

梓が最後まで言い切る前に唯は後ろからそっと梓に抱きついた。

 

「あずにゃん……ごめんね。心配かけて……。私、精一杯やるよ。みんなと一緒に……ね?……最高のライブにするから……」

 

「……もぉ……。特別ですよ」

 

梓がはみかみながらもこう言うと唯の表情がさらに明るくなった。

 

「仲直りぃ!むちゅちゅー」

 

唯は唇を尖らせて仲直りのキスをしようと梓に迫るが、その前に梓の強烈な平手打ちが炸裂した。

 

「本当に……私のこと……心配してたの……かな?」

 

「多分……」

 

平手打ちを受けた唯の右頬は赤く腫れ、澪は苦笑いをしていた。

 

カオルは今までの一部始終を見ていて笑みを浮かべていた。

 

「うんうん♪こういうの……なんか青春っぽくていいね♪」

 

「あぁ、それは何かわかるよ!」

 

カオルの言葉に零が賛同していた。

 

「青春って……そういうものなのか?」

 

「僕も、さっぱりです……」

 

鋼牙とレオは賛同出来なかったのか、首を傾げていた。

 

こうして、どうにかメンバーは揃い、ライブの準備は完璧に整ったように見えた。

 

しかし……。

 

「……さぁ、みんな。そろそろ時間よ。移動して」

 

「「「「「「おお!!」」」」」」

 

統夜たちは力強く答えていたのだが、唯がすぐに違和感に気付いた。

 

「あれ?ギー太は?」

 

「えっ?」

 

「ここに置いていったよねぇ?」

 

「あっ!あれ、憂ちゃんが持って帰ったぞ!」

 

唯が熱が下がっていないのに学校に来た日、憂はギターを持ち帰り、唯の部屋にギターを置いていたのである。

 

そのことを思い出した唯は顔を真っ青にしていた。

 

「そ……!そうだった!どうしよう!?」

 

「しょうがないわね……」

 

「さわちゃん先生……」

 

「これ……使いなさい」

 

さわ子が唯に渡したギターは自分が愛用しているギターだった。

 

「……ギー太じゃなくていいのか?」

 

「……ていうか、ギー太以外のギター弾けない……」

 

「「「「だろうなぁ」」」」

 

統夜、律、澪、紬はそうだろうと予想していたので苦笑いをしていた。

 

「よっしゃあ!!」

 

唯は自分のギターを取りに行くために音楽準備室を飛び出そうとするが……。

 

「唯!ちょっと待て!」

 

「ほえ?……やーくん?」

 

「今からだったら唯の足じゃ間に合わないぞ」

 

「でも……ギー太がないと……」

 

「それなら俺が行く」

 

「へ?やーくんが?」

 

統夜のまさかの提案に唯は驚きを隠せなかった。

 

それは律、澪、紬、梓、和も同様であった。

 

「あぁ。だから唯はみんなと一緒にライブの準備をしていてくれ」

 

「でも……」

 

統夜の提案に唯は不安げな表情をしていた。

 

「心配すんなって。絶対間に合わせるから」

 

統夜の真っ直ぐな瞳を見た唯は、統夜を信じることにしたので、力強く頷いていた。

 

「和、本番まであとどれくらいだ?」

 

「今は13時前だから……あと15分しかないわよ」

 

「15分か……余裕だな」

 

統夜は長椅子に置いてある魔法衣を羽織り、少しだけウォーミングアップをしていた。

 

「みんな!俺のギターも講堂に移動しておいてくれ!それじゃあ行ってくる!」

 

「あっ、やーくん!家の鍵!」

 

唯は自分の家の鍵を統夜に渡した。

 

それを受け取った統夜はそのまま音楽準備室を後にし、唯の家へと向かった。

 

「……統夜先輩……」

 

「あずにゃん、大丈夫だよ!やーくんならきっと!」

 

「……はいっ!」

 

「それじゃあみんな、衣装に着替えて講堂に移動するわよ!」

 

さわ子の指示で唯たちは衣装に着替え、その後講堂へと向かった。

 

カオルは唯たちが着替えている時に私服に着替えていた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

桜高を離れた統夜は、唯の家に向かって全速力で疾走していた。

 

(……イルバ、ここら辺はあまり人はいないよな?)

 

《あぁ、そうだが……。まさか、お前!》

 

(屋根伝いで行けばすぐに唯の家に着くだろ)

 

統夜は確実に間に合わせるために屋根伝いを移動しようとしていた。

 

《仕方ないか……統夜、あまり人に見られないよう注意しろよ!》

 

(わかってるって!)

 

統夜は人通りの少ない路地裏に移動すると、軽快にジャンプをして民家の屋根に着地すると、屋根伝いに移動し、唯の家を目指していた。

 

統夜は急いで向かっていたものの、人に見られないように注意しながら移動していた。

 

屋根伝いに移動を開始して数分後……。

 

『統夜!唯の家が見えて来たぞ!』

 

「そのようだ!」

 

統夜は唯の家の近くで屋根から降下し、再び走り出した。

 

唯の家に到着すると、鍵を開けて唯の家の中に入り、唯の部屋に入った。

 

「……!あった!」

 

統夜は唯のギターケースを抱えると、すぐさま唯の家を後にした。

 

『統夜!まずいぞ!もう時間がない!』

 

唯の家の鍵をかけて、再び走り出したタイミングでイルバがこう告げたので、走りながら携帯を取り出して時間を確認した。

 

「13時9分……。このままじゃまずいな……」

 

統夜は焦りを感じながらとある民家の屋根に飛び乗った。

 

統夜は急いで移動しているが、このままでは間に合わないのは明白であった。

 

「仕方ない……!」

 

統夜は屋根伝いを移動しながら魔法衣の懐から魔戒剣を取り出した。

 

『統夜!?お前まさか……鎧を召還する気か!?ホラーとの戦い以外での鎧の召還は禁じられていることはお前さんも知っているだろう!?』

 

統夜の目論見を察したイルバは統夜をたしなめていた。

 

統夜たち魔戒騎士が鎧を召還するのはホラーを討滅するためのものなので、それ以外の場面で鎧を召還することは禁じられている。

 

これを破ったものは罰として数日分の命を没収されてしまうのだ。

 

「んなことはわかってるよ!間に合わせると約束した手前、これしか方法はない!」

 

『まったく……仕方ないな……。出来る限り誰にも見つからないようにしろよ』

 

「あぁ!わかってる!」

 

統夜は高くジャンプをすると、魔戒剣を前方に突きつけ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、奏狼の鎧を身に纏った。

 

それと同時に魔導馬白皇を召還し、白皇に乗った統夜は家の屋根やビルの屋上を駆け抜けていった。

 

(ま、魔導馬まで召還するのか!?これは見つかったら厳罰ものだな……)

 

統夜も重い罰を受けること覚悟で鎧と白皇を召還したのだろうと察したイルバはこれ以上は何も言わなかった。

 

(よし、学校まではあと少しだ!間に合え!!)

 

時間内に学校に到着するために、白皇は大きく飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

その頃、そんな統夜の姿を偶然見かけた人物がいた。

 

「……?あれは……まさか……!」

 

その人物は、エレメントの浄化を行っていた大輝であった。

 

「統夜……。あいつ、何故鎧を召還してるんだ?鎧の私的使用は禁じられてると知っているはずなのに……」

 

大輝は物凄いスピードで走り去る統夜を眺めていた。

 

「……まぁ、統夜にも事情があるだろうし、今のは見なかったことにしておこう……」

 

大輝は統夜が鎧を召還していた事は見なかったことにして、再びエレメントの浄化を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……統夜!学校が見えて来たぜ!』

 

「あぁ!鎧を使うのはここが限界か!時間もやばいし」

 

鎧を召還してからすでに80秒は経過しており、そろそろ鎧を解除しなければ危険な状態だった。

 

「よし!一気に飛び上がるぞ!白皇!」

 

白皇は「ヒヒーン!」と鳴き声をあげると、再び高く飛び上がった。

 

そして……。

 

「よしっ、白皇!戻れ!」

 

統夜は白皇を踏み台にさらに高く飛び上がると、白皇の召還を解除し、白皇は魔界へと戻っていった。

 

高く飛び上がった統夜は、鎧を解除すると、学校の入り口付近で着地をした。

 

突如上空から統夜が現れたので、その場にいた人々は驚くが、そんなことはお構いなしに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

その頃、軽音部のライブを直前に控えた講堂は、多くの人で賑わっていた。

 

「それにしても凄い盛り上がりですね……」

 

イレスは数人のクラスメイトと共に講堂に来ていた。

 

イレスたちは一番前の一番いい席を確保していた。

 

「軽音部のライブって盛り上がるからねぇ♪」

 

「うんうん♪楽しみだねぇ♪」

 

「はいっ!楽しみです♪」

 

クラスメイトたちだけではなく、イレスもこれから行われるライブを楽しみにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それにしても凄い人だね……」

 

同じ時間、講堂に来ていたカオルは、鋼牙、零、レオと共に講堂の入り口付近で立ち見をしていた。

 

「……あぁ、それだけ統夜たちのライブを楽しみにしている奴がいるんだな♪」

 

「それにしても、統夜君、大丈夫でしょうか……」

 

レオは唯のギターを取りに行った統夜が時間内に現れるか心配していた。

 

「大丈夫だ。統夜なら間に合う」

 

鋼牙は統夜は必ず間に合うと信じていた。

 

「……そうですよね」

 

レオも統夜は必ず間に合うと信じることにした。

 

その時、講堂の扉が開き、2人の少女が中に入ってきた。

 

「うわぁ……人いっぱいだぁ……」

 

「うん、そうだね……」

 

その少女……憂と純は講堂の人の多さに驚いていた。

 

「こっちで見よっか」

 

「うん」

 

2人は偶然鋼牙たちの近くでライブを見ることにした。

 

「……あっ、皆さん!」

 

憂が偶然隣にいた鋼牙たちを見つけて声をかけた。

 

「お前は、確か唯の妹だったな」

 

「はいっ!妹の憂です」

 

「へぇ、あなたが唯ちゃんの妹さんなんだ♪」

 

「えっと……あなたは?」

 

カオルと面識のない憂は戸惑いながらこう聞いていた。

 

「あっ、私は御月カオル。よろしくね、憂ちゃん♪」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

「あっ!レオ先生だ!」

 

純は鋼牙たちと共にいるレオを発見した。

 

「アハハ……。純さん、お久しぶりです」

 

「先生も軽音部のライブを見に来たの?」

 

「えぇ、そんなところです」

 

純とレオはこのような会話のやり取りをしていた。

 

「もうすぐライブの時間ですね……楽しみです♪」

 

「あぁ、俺も楽しみにしてるぜ♪」

 

零は統夜が唯のギターを取りに行っていることは伏せていた。

 

余計な心配はかけさせたくないという零の気遣いである。

 

(……統夜、お前はどんな感じでこの会場に来るんだ?楽しみにしているぜ♪)

 

零は零で、この状況をも楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

そして、舞台袖では全ての準備を整えた唯たちが待機していた。

 

「統夜君……間に合うかしら……」

 

紬は不安げな表情になっていた。

 

「そうだよな……いくら統夜が魔戒騎士でも……間に合うかどうか……」

 

「大丈夫ですよ!統夜先輩なら必ず間に合います!」

 

紬と澪の不安を梓がこう言い放って一蹴しようとしていた。

 

「そうだぜ!それに和だって、最悪の場合は少しだけ待ってくれるっていうし」

 

和は最悪の事態に備え、統夜が時間になっても現れない場合はライブ開始時間を少しだけ遅らせるよう生徒会に進言してくれたのである。

 

「そうだね!私たちはやーくんを信じて待ってよう!」

 

「みんな!そろそろステージで準備しなさい」

 

さわ子のこの一言で唯たちはステージに移動し、いつでもライブが始められる状態にした。

 

現在は13時14分。ライブ開始まで1分前であるが、統夜が現れる気配はなかった。

 

(まずいわね……。統夜君、間に合うかしら……)

 

和は時計の時間を確認しながら統夜がこの1分で現れるか心配していた。

 

「真鍋さん。ライブなんだけど、延長した方がいいかしら?」

 

ライブ開始まで間もなくとなり、生徒会長が和に確認をしていた。

 

「…………」

 

和は少し考えたのだが、この状況では、延長もやむなしと考えていた。

 

「……それじゃあ、えん……」

 

延長します。そう言おうとしたその時、バタン!と力強く講堂の扉が開く音が聞こえた。

 

和は扉の方を見ると、そこにいたのは……。

 

「はぁっ……はぁっ……ギリギリ間に合った……」

 

時間ピッタリで講堂に到着した統夜だった。

 

「統夜君!」

 

和は歓喜の声をあげた。

 

それは唯たちにも聞こえていたようで……。

 

「え?今、統夜君って言いました!?」

 

「っということは……」

 

「統夜、間に合ったんだな!」

 

「うん!そうだよ!」

 

「統夜先輩!」

 

唯たちは唯たちで統夜が間に合ったことを喜んでいた。

 

「統夜、どうにか間に合ったようだな」

 

扉の近くにいた鋼牙が統夜に声をかけた。

 

「鋼牙さん……」

 

「ほらほら、統夜。早く行った行った!みんなライブを楽しみにしているんだぜ!」

 

「零さん……」

 

「そうだよ!早く行ってあげて!私も楽しみにしてるんだから♪」

 

「カオルさん……」

 

統夜はそれからレオ、憂、純の顔を見るが、3人は無言でウンウンと頷いていた。

 

「皆さん……ありがとうございます!」

 

統夜は鋼牙たちに礼を言うと、そのままステージに上がっていった。

 

それを見ていた和は笑みを浮かべていた。

 

「……今から5分後に、ライブを開始しましょう」

 

「そうね。……そのようにアナウンスをして!」

 

生徒会長はライブを5分後に行うというアナウンスをするように指示を出した。

 

それを聞いたアナウンス担当が、軽音部のライブは諸事情により、5分遅れて開始しますとアナウンスをした。

 

「みんな、待たせたな!」

 

統夜はステージに登り、唯たちの前に現れると、こう言って笑みを浮かべていた。

 

「統夜先輩!」

 

「ほら、唯。お前のギターだ」

 

統夜はギターケースを唯に手渡した。

 

「やーくん……。ありがとう……ごめんね……」

 

「気にするな。どうにかライブに間に合ったしな」

 

統夜は唯に気を遣わせないように笑みを浮かべるのだが、唯の瞳には涙が浮かんできていた。

 

「私……いつもいつも……みんなや……やーくんに……ご迷惑を……グスッ……こんな……だ、大事な時に……」

 

風邪を引いた挙句ギターを忘れるというとんでもない失態をやったことに責任を感じた唯は泣き出してしまった。

 

「唯……。まったく……お前ってやつは……」

 

統夜は優しい表情で唯を見ると、そのまま優しく唯を抱きしめた。

 

「「「「!!?」」」」

 

突然の展開に先に律、澪、紬、梓が先に驚いていた。

 

そして……。

 

「ふぇ!?や、やーくん!?」

 

唯も突然の出来事に驚き、顔が真っ赤になっていた。

 

「気にするなよ。俺たちは、お前のことを迷惑だって思ったことはないぞ。お前の元気な姿や無垢な心に俺たちは何度も元気をもらったんだから……そうだよな、みんな!」

 

「へ?あ、あぁ!そこは統夜の言う通りだ!」

 

「そうだな。あたしたちはみんな唯のことが大好きだよ」

 

「うん♪」

 

「はいっ!」

 

みんなからの優しい言葉に唯はさらに泣き出してしまったので、統夜は唯の頭を優しく撫でていた。

 

その様子を見ていた4人は羨ましかったのかドス黒いオーラを統夜に向けていた。

 

(……?何でみんな、そんなに怖い顔をしてるんだ?)

 

《統夜。さすがに今の行動は迂闊だったな。これじゃあ唯の奴も勘違いするぞ》

 

(?勘違い?何をだ?)

 

《はぁ……今の行動も無意識か……。天然ジゴロも大概にしろよな……》

 

イルバがテレパシーでこうぼやいていたので、統夜は首を傾げていた。

 

(まぁ、唯の奴も統夜が天然ジゴロな朴念仁だってことは知っているし、勘違いすることはないか)

 

イルバはイルバでこのような結論に達していた。

 

「統夜君。お楽しみのところ悪いけど、そろそろ準備しなさい。ライブまで時間がないわよ」

 

事の一部始終を見ていたさわ子がジト目でこう統夜に忠告をした。

 

「!そうだった!」

 

「衣装なら用意しているわ。そこで着替えなさい」

 

統夜な唯から離れると、さわ子から衣装を受け取り、誰の目にもつかないところで着替えを済ませた。

 

『大変長らくお待たせいたしました。これより、軽音楽部「放課後ティータイム」によるライブを開始いたします』

 

統夜の着替えが終わったタイミングでライブ開始のアナウンスが鳴り響いていた。

 

「おっと!急げ急げ!」

 

統夜は衣装の上から魔法衣を羽織り、ステージに移動した。

 

統夜は自分のギターを手に取り、幕が上がり、歓声があがるタイミングでチューニングを済ませた。

 

「みんな、色々あったけど、これが「放課後ティータイム」初のライブだ。思い切り楽しもうぜ!」

 

「「うん!」」

 

「「あぁ!」」

 

「はいっ!」

 

統夜の号令に唯たちは笑顔で答えていた。

 

ステージの幕が完全に上がると、多くの観客が統夜たちのライブを心待ちにしていることが統夜たちの目に見えていた。

 

統夜たちはお互いの顔を見合わせて準備が整っていることを合図した。

 

そして……。

 

「1・2・1・2・3・4!!」

 

律の合図で演奏が始まり、このライブ1曲目である「カレーのちライス」の演奏が始まった。

 

軽音部の曲は澪が作詞で紬が作曲をしている。

 

今演奏していり「カレーのちライス」もそのような形で作られた曲であり、テンポの良い非常に軽快な曲である。

 

律の問題や唯の問題があったため、練習が十分だったとは言えないが、6人の息はピッタリと合っており、演奏もバッチリな仕上がりだった。

 

最初から最後まで良い感じで「カレーのちライス」の演奏は終了した。

 

演奏が終わると、客席から歓声があがっていた。

 

『皆さん、こんにちは!軽音部……もとい、「放課後ティータイム」です!』

 

統夜がMCを担当しており、統夜が挨拶をすると、さらに歓声があがっていた。

 

『只今演奏した曲は「カレーのちライス」でした』

 

統夜が曲名を言うと、その奇抜なタイトルに客席から笑い声が聞こえてきた。

 

『今日は、僕たちが「放課後ティータイム」というバンド名になってから初のライブとなります!皆さん、今日は思い切り楽しんでいってください!』

 

統夜が会場を盛り上げるためにこう言うと、客席から歓声があがった。

 

『それでは、次の曲に行きます!次の曲は、プロを目指して活動しているSHUさんが作った曲で、心機一転を機に僕たちに譲ってくれた曲を演奏します!……「bright hope!」』

 

統夜は曲名を宣言すると、歓声があがり、統夜は前奏のギターパートを弾き始めた。

 

それからドラム、ベースと入っていき、曲がスタートした。

 

この曲は統夜が説明した通り、プロを目指して活動しているSHUというギタリストが作った曲である。

 

彼はこの曲でプロを目指していたが、ホラーとの戦いに巻き込まれ、自分の覚悟の甘さを思い知らされた。

 

統夜に命懸けで目標に向かうということを教わったSHUは、新たな曲を作ってプロを目指すことを決意し、その時に統夜たちにこの曲をぜひ使ってくれと託した。

 

統夜がボーカルを勤めてこの曲は演奏されているのだが、統夜は演奏しながらその時のことを思い出していた。

 

SHUの思いも乗せて、統夜たちは最後まで演奏した。

 

『ありがとうございます!「bright hope」でした!』

 

先ほどの曲のような曲調であるものの、ボーカルが変わったことによって曲の色も変わり、その違いを楽しんでいた観客から歓声があがっていた。

 

『次の曲は最初にやった曲と同じで、僕たちのオリジナルの曲を演奏します!聞いてください!「ふでペン〜ボールペン〜」!』

 

またまた奇抜なタイトルに観客が少しだけざわついていた。

 

「……1・2・3!」

 

律の合図で「ふでペン〜ボールペン〜」の演奏が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜唯 side〜

 

 

私は今、ライブの3曲目である「ふでペン〜ボールペン〜」を演奏しています。

 

風邪をどうにか治したけれど、ギー太を忘れた時はどうなるかと思ったけど、やーくんが私の代わりにギー太を持ってきてくれたおかげでどうにかライブをすることが出来た。

 

本当に……やーくんには感謝だよね……。

 

やーくんは魔戒騎士としてだけじゃなくて私たちのことを助けてくれるんだもん……。

 

それに、私がこれだけのことをしたのに、みんなは本当に優しいよね……。

 

私は演奏をしながらあることを考えていた。

 

入学式の時の私は何かしなきゃと思いながら……。何をすればいいんだろうって思ってたよね……。

 

そして、このまま……大人になっちゃうのかなって思いながら……。

 

でもね……。心配しなくてもいいんだよ、あの時の私。

 

すぐ見つかるから……。私にも出来ることが……。

 

夢中になれることが……。

 

大切な……大切な……大切な場所が!!

 

こう物思いにふけっていると気が付けば演奏は終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜統夜 side 〜

 

 

……よし、ふでペンもいい感じだったな……。

 

お客さんもかなり盛り上がってるし、最後の曲でさらに盛り上げないとな……。

 

だけど、その前に……。

 

「唯、最後のMCはお前に任せた!」

 

「え?私が?」

 

「あぁ、お前ならうまく締めてくれると思ったからな」

 

「やーくん……。うん!わかった!」

 

学園祭のライブは終始俺がMCをやる予定だったけど、急遽最後のMCだけを唯に任せることにした。

 

何でかはわからないけど、そうした方がいいと思ったんだよな……。

 

『……改めまして、「放課後ティータイム」です!今日は私がギターを忘れたせいでライブのスタートが少し遅れてしまってすいませんでした!……ギー太も忘れてごめん』

 

俺は今までのMCでライブのスタートが遅れたことを謝罪しなかったのは、唯に任せようと思っていたからだ。

 

客席からは笑い声が聞こえてるし、みんな気にしてないよな?……多分……。

 

『目標は武道館!とか言って私たちの軽音部は始まりました。ギターを買うためにみんなでバイトしたり、毎日部室でお茶を飲んでたくさんおしゃべりをしたり、ムギちゃんの別荘で合宿したり、入部してくれる1年生を探したり……』

 

……懐かしいな……。この学校に入ったのは去年なのにずいぶんと昔のことのように感じるよ……。

 

今思い返すと、本当にいろいろなことがあったよな……。

 

軽音部での楽しい日々があったから、俺は魔戒騎士として今までやってこられたんだと思うよ……。

 

『……脇目も振らず練習に打ち込んできた!なんてとても言えないけど……。でもここが!今いるこの講堂が!私たちの武道館です!』

 

唯のこの宣言に観客から大きな歓声があがっていた。

 

ふっ……。確かにそうなのかもしれないな……。

 

会場の規模なんて関係ない。俺たちは今ここで最高のライブを行っているんだから!

 

『最後まで思いきり歌います!……「ふわふわ時間」!』

 

唯が曲名を宣言すると、律が合図をとって、演奏が始まった。

 

 

 

 

〜使用曲→ふわふわ時間 〜

 

 

唯のギターはとてもいきいきとした良い音だった。

 

1曲目の時から思っていたけど、風邪のせいで全然練習出来てないっていうのにいい感じだな!

 

歌ってる時の表情もすごくいきいきとしているな。

 

それはわかるよ。俺だって演奏しているこの瞬間がすごく楽しい!

 

サビに入った辺りで客席を見ると、何人かの生徒がステージの前で手拍子をして盛り上げてくれていた。

 

……客席全体を見回したんだけど、みんないい表情をしているように見えた。

 

あれ?イレス様?よく見たら先頭の1番いいところでイレス様が見学してるな。

 

……きっと、鋼牙さんたちも聞いてくれているよな?俺たちの演奏を……。

 

今の演奏は6人の思いが1つになってるよな。じゃないとここまでいい演奏は出来るわけがない!

 

この時間が続けばいいのにとは思うけど、演奏というのはいつかは終わるもので、俺たちの気持ちが込もった演奏は終了してしまった。

 

あーあ……。もう終わりかよ……。本当に楽しい時間だからまだ終わってほしくないんだけどな……。

 

その時だった。

 

 

__♪♪♪♪

 

「!?ムギ、お前……」

 

演奏が終わり、会場が拍手と歓声に包まれて終了ムードが漂う中、ムギがふわふわのイントロを奏で始めた。

 

……まだ終わりにしたくないのはみんなも同じって訳か。

 

その後、律のドラムが加わり、澪のベース、梓のギターと加わっていき、音の層が厚くなった。

 

唯は音が増えるたびにその人の顔を見ていた。

 

よし……次は俺だな……。

 

俺もみんなに続いてイントロを奏で、唯の方を見て無言で頷いた。

 

さぁ!次は唯の番だぜ!!

 

唯は満面の笑みで返すと、唯のギターが加わり、完全にふわふわのイントロになった。

 

『もう一回!!』

 

客席の盛り上がりが最高潮に達したところで、俺たちはふわふわのサビをもう一度奏でた。

 

ムギはこの演奏を終わらせたくない一心であんなことをしたんだろうけど、そのおかげで会場がさらに盛り上がったからな。

 

余計に最高のライブになったって思うよ!

 

ふわふわのサビも終了し、唯は客席に向かって思い切り叫んだ。

 

『……軽音!大好き!!』

 

アハハ……。唯の今の一言でまたまた会場が盛り上がってるな……。

 

もうライブは終わりなのに……。

 

「りっちゃん!もう一曲!」

 

「よっしゃあ!」

 

「ちょっと唯!」

 

「あっ、和ちゃん!」

 

「もう時間切れよ!」

 

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

アハハ……さすがにこれ以上の演奏は出来ないよな……。

 

こうして学園祭のライブはどうにか無事に終了した。

 

……本当に……最高のライブだったよ……。

 

この後、鋼牙さんたちと一緒に食事に行ったんだけど、それはまた別の話ってことで♪

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『最近のゲームというのは随分凄いな。これは現実と区別するのが難しいほどだぜ!次回、「空想」。ゲームは1日1時間だぜ!』

 




無事に学園祭ライブは終了しました!

今回の見所は何と言ってもカオルのコスプレですかね(笑)

一期の牙狼でも、カオルは着ぐるみを着たりとしてましたが、カオル久しぶりのコスプレだと思います(笑)

それにしても高校の学園祭に魔戒騎士が4人とか……「桜高安全宣言」を出してもいいくらいですよね(笑)

今回は戦闘はないものの、鎧召還はありました。

鎧を使ったとはいえ、約15分で唯の家を往復できた統夜はすごいですよね(笑)

そんなことがありながらも無事にライブを行うことは出来ました!

次回は久しぶりの牙狼メインの話になります。

今までの牙狼でありそうでなかった話にしようと考えています。

そこも含めて次回をお楽しみに!


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